・あい 
古代より「用いられている植物染料です。主に蓼藍と山藍の2種類が栽培されています。一般には蓼藍を指す。徳島県が主な生産地で阿波藍とも呼ばれます。自然の独特の色合いは、科学染料では味わえない為珍重されています。摩擦には弱い。
  
・あいあか 藍赤
江戸時代に武家の女性が打掛の下に着た赤色の小袖をいい、正式には綸子を使用した。⇒(間着)
  
・あいおいむすび 相生結び
紐の結び方の一種。⇒(あわびむすび)
  
・あいおおしま [藍大島]
藍大島とは、かつて鹿児島地方で生産されていた藍色の大島のことで、大島紬と同じ組織で、本絹糸を藍染めにした、絣糸で織られた絹織物。今では、色落ちが激しい理由から作られなくなった。
  
・あいおぼろ [藍朧]
藍朧返しともいう。浅葱(あさぎ)地に紺と白の模様が入り混じったにぎやかなもの。白地の型付けと地染まりの型付けを併用した染め方である。
 
・あいがた [藍型]
沖縄県の型染の一種です。「紅型」に対して、藍一色で染められる事から、この名称となっています。型紙、柄付け等は紅型と同じ傾向にあります。浸染にて染られる。「えーがた」と読む。
      
・あいがたうちくい [藍型うちくい]
うちくいとは風呂敷のことである。二布(ふたの)、三布(みの)の大風呂敷もあり、婚礼の布団包みに多く使われた。現在では民芸品として一般向きの小型の風呂敷を主に染めている。模様は松竹梅、牡丹唐草、菖蒲(あやめ)など。ふつう風呂敷の中央に大きく染める。紺地に浅葱(あさぎ)の模様で、模様の周囲を白線でくっきりと染め抜くのを特色とする。
  
・あいがめ [藍瓶]
染色用具の1つ。藍染をする時、染料液を入れる大きな瓶。藍壷ともいう。約130~360リットル入る。昔の中形や藍染の小紋はすべて、この中で浸し染めされた。
   
・あいがら [合柄]
合柄とは、柄と柄の間で同じ柄を繰り返し用いる柄または地紋のことをいう。
     

・あいき 間黄

江戸時代に武家の女性が打掛の下に着た黄色小袖をいい、正式には綸子を使用した。⇒(間着)
  

・あいぎ 合着

夏物と冬物の中間の時期に着る衣服をいう。和服では、厚地の着尺地の単、毛織単、単羽織、レースの半ゴート、白系の袷長者などを指し、洋服では、総裏でないのが特徴で合服ともいう。
    
・あいぎ [間着]
間着とは、江戸時代の武家女性が、打掛の下に着た小袖を指し、特別の行事に着る正式の間着は、黄色・白・赤の無地の綸子を使う為、それぞれ間黄(あいぎ)・間白(あいしろ)・間赤(あいあか)と呼ばれた。そして、普段は友禅染・絞り・刺繍などの施された、綸子や縮緬、紗綾などが着用された。また、間着には羽二重はぶたえの白い下着を重ねることが多かった。
   
・あいくち [合い口]
仕立て上がったキモノの縫目を境にした、模様と模様との合わせ目を合い口という。
      
・あいざらさ [藍更紗]
更紗の一種。室町時代の末にインド、シャム[タイ]、ジャワ、ペルシャ[イラン]などから渡来した模様染。藍染めによる藍色を主色とした更紗のこと。
   
・あいした [藍下]
染色技法のひとつ。前もって藍で下染めをしておき、その上を他の染料でもう一度染める。色の深みをつけ、堅牢度を高めるための方法で、主に黒や紺などの染色に応用されている。
 
・あいしたぐろ [藍下黒]
黒紋付を染める前に、青色の化学染料によって下染めを行った黒紋付を藍下黒といいます。
 
・あいじるし [合印・合標]
裁縫用語正確に縫い合わせるために、袖付け、衿つけなどの接合する両方の布の同じ位置に、それぞれつけておく印のこと。
   
・あいずり [藍摺り]
摺り染色法の一つで、布の面に藍を擦り付けて模様を染め付ける。この染め方で模様をつけた衣を、摺り衣という。山藍の羽を摺りつけて模様を出したものを特に青摺り、または青摺り衣という。
   
・あいぞめ [藍染]
藍は植物染料の一種。
日本で最も古い藍は山藍といわれている。その後中国から伝わったのが蓼藍〈タデアイ〉で、日本全国に伝わる。昔は草をそのまま乾燥して用い、水に入れて腐敗(発酵)する時の還元性を利用して生地に染めつけ、酸素による酸化で発色させていた。後には、乾した葉を大気中で水を打って腐敗させ、 〈スクモ〉を造って貯蔵し、さらに玉藍にして貯蔵していた。必要に応じて、そのつど利用する。
   
・あいだま [藍玉]
中国原産の蓼科の植物(蓼藍)の葉、茎を刈り取って乾燥しておき、水をかけて発酵させて熟成した蒅(すくも)を堅く固め、乾燥したものを藍玉といいます。藍玉は、約10%の青藍(インジゴ)を含んでいます。昔は運搬の便のために、5センチ角位に切って乾かしてあったので、玉藍とも呼ばれていた。
 
・あいづまはば [合棲幅]
合棲幅とは、着物の衿先の付止まりで衽幅のこと。普通、衽の裾幅より1.5センチ狭くする。現在の標準は、13.5センチである。
    
・あいばな [藍花]
藍液は生きているため、藍瓶の中で発酵するが、このためにできる泡のことを藍花という。
   
・あいづもめん []
福島県会津若松市ほかで産出される木綿の名称。素朴な藍染の縞木綿。丈夫で吸湿性がよい。この地域では古くから自家用の木綿が織られていたが、商品としての会津木綿の始まりは、寛永20(1643)年頃に、会津藩主・保科正之が武士の妻女の内職に奨励したことにもとめられる。明治中期頃に紡績糸が出まわってから商品として本格的に市場に進出した。また、この地域は藍の栽培に適していたために、明治末期から大正にかけて生産の最盛期を迎えた。
   
・あいみじん [藍微塵]
縞柄の名称。微塵とは非常に細い縞をいう。経は藍染糸2本、地糸を2本を一柄として織り込んだもの。染縞としても、江戸小紋に微塵縞がある。
   
・あいゆかた [藍浴衣]
夏用の木綿の藍染浴衣をいう。中型ともいわれ、同じ藍染なのだが、藍染の木綿浴衣に対する特別な呼び名である。
   
・あおいもん [葵文]
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・あおかえでもん [青楓文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あおじま [青縞]
経、緯ともに濃い藍染の糸を用いて織り上げた木綿の平織物。縞目もわからないほど細かい縞というところから、紺無地、織紺などの名称がある。
 
・あおずりのころも [青摺衣]
青摺衣とは、宮中の神事の際に舞人が着用する祭服で、斎服や小忌とも呼ばれる。袖の中央に紙縒(こより)がさげられ、右肩には二条の黒と赤の紐をつけられるのを特徴とする。青摺衣の呼び名は、山藍では紋様を青摺りにしたところから由来する。
   
・あおばな [青花]
友禅染の下絵などに用いる染料。青花紙、藍紙ともいう。露草の青い花の汁から得ることから、この名がある。青花は、露草の花汁を絞って和紙にしみ込ませ、乾燥させるという工程を繰り返して作る。これを水に溶かして、手書き友禅などの下絵を描くのに用いる。この色汁は水洗いで落ちるので、描き直しができるため、重宝されている。露草の花の色の変わりやすさは古くから知られ、「世の中の人の心はつゆくさの移ろいやすき色にぞありける」と歌にも詠まれている。現在は、化学青花も使われている。
   
・あおばん [青判]
生地に難がありA反(正反)にならない生地のことであり、反末の精錬後の検査印が青色で押してあるところからこのように呼ばれる。B反と同じ。
 
・あかいしおり [赤石織]
織物の名称
群馬県伊勢崎地方で生産した絹と綿の交織と綿織物の総称。縞柄が多い。明治中期に絶滅。
   
・あかし [明石]
明石縮のこと。
   
・あかしおり [
織物の名称
経(たて)・緯(よこ)ともに絹糸を使った縮(ちぢみ)織の盛夏用着尺地。明石織、明石縮(ちぢみ)(絹縮)ともいう。織物組織は、経糸に生糸、緯糸に練った強撚(きょうねん)糸を使う片しぼの絹縮。中国から撚糸技法が伝来し、近世初頭から各地で縮織が生まれたが、この技法は寛文(かんぶん)年間(1661~73)に播磨(はりま)国明石(兵庫県明石市)で織り始めたと伝えられ、地名が織物名となった。京都の西陣でも織られたが、その後明石の浪人堀次郎将俊(まさとし)が、技法を越後(えちご)に伝え、麻糸を素材とする麻縮(小千谷縮(おぢやちぢみ)、越後縮)を生み出した。1887年(明治20)ごろ新潟県十日町を中心に西陣の明石織を導入し、緯糸の強撚糸と仕上げ整理法を研究して絹縮生産に成功、十日町明石の名で知られた。十日町明石は(かすり)から縫取りや、両しぼのものまで改良を加え、1940年(昭和15)ごろまで織られ、その後市場から姿を消したが最近わずかながら復活している。
   
・あかしちぢみ [明石縮]
織物の名称
明石縮とは、明治20年頃から昭和15年頃迄の間、新潟県十日町付近で織られた絹縮の一種。西陣の明石織に改良を加えた夏季用の婦人着尺地で、縦糸に生糸、横糸に練った強撚糸を使った薄地の平織り。
  
・あかそがすり [
織物の名称・滋賀県
麻織物の一つ。赤みを帯びた平織の白地絣のことで、もと、赤苧を原料としたことからの名称。滋賀県を主産地とした麻織物の一種。夏用着尺。後世には、紡績亜麻・大麻平苧をそれぞれ経緯に使い、絣には紡績亜麻を使った。綿と麻の交織もあった。
   
・あかね [茜]
植物染料の一つ。アカネ科の多年生つる草で、わが国の赤色染料として最も古い。染料として用いられるのは草の根で、色は黄赤色。主に絹をそめるのに用いられてきた。
   
・あかねぞめ [茜染め]
茜染めとは、茜の根で染めること、または染めたもの。古くは現在の静岡の遠州茜、岩手の「南部茜染・南部紫紺染」の名があった。あらかじめ糸や布に椿、さわふたぎなどの灰から採った灰汁に幾度も下づけをし、干し上げておき、茜の肥根を臼でつき砕き、ぬるま湯を加えてしぼり出した液をかけるかその液に浸して染める。無地染めのほか絞り染め、板締めに使う。日本で最も古い赤染めで、やや黄色みを含む鮮やかな赤で日光にも堅牢であり、衣料のほか旗指物などに用いられた。日本茜で染めたものは西洋茜(トルコ赤)ほど鮮やかではない。染料の扱い方が難しいため、中世以降しだいに他の赤色染料にその座を譲った。近世、茜木綿と称するものは本当の茜染めではなく、五倍子(ごばいし)の下づけの上に蘇芳(すおう)染めをしたもので、茜染めとは色相が異なり、紫みを帯び、くすんだ色を呈する。
   
・あきかみこ [安芸紙子]

織物の名称・広島県
安芸紙子は古い『毛吹草』にすでに登場し、『和漢三才図会』にも巻七十九安芸国土産の項に載せている。また『国家万葉記』の安芸国名物の中には「紙袍」「廣島にて作之」と見えている。この「紙袍」というのはいわば紙の衣装という意義で紙衣の代わりに用いた言葉であろう。この地には厚紙の一種として安芸産の「広島海田」がある。これは因幡海田紙(海田紙)と同法によって漉かれた厚紙である。周防産の岩国海田、備後、長門にも産したものであるから、多分それらの厚紙を広島城下で加工して「安芸廣島紙子」と称して販売したものではあるまいか。明治初年に上梓された「皇國産物略」(明治六年刊)と「日本物産字引」(同八年刊)のいづれも「安藝紙子」と見えているところから見ると、明治維新後までも引続いてこの国では紙子が製産されていたものと思われる。

 
・あきくさもん [秋草文]
文様名 →紋様のページへ
    
・あきたうねおり [秋田畝織]
織物の名称・
秋田畝織とは、秋田で織られるごく細かい桝目のような畝のある絹織物いいます。秋田八丈の柄の絹織物で、織が畝のように見えることから由来する。江戸後期に織られたのが初めと伝えられている。秋田八丈は平織が極めて多いが、昔の秋田八丈には畝織が多かった。羽織裏や紋服地に使用されていることから、今の畝織りよりも生地が薄かったようです。
 大正時代に途絶えたましたが、1953(昭和28)年に秋田市の滑川晨吉氏が復元。1980(昭和55)年に、秋田畝織は秋田八丈とともに、秋田県の無形文化財となり、滑川氏が指定技術保持者となりましたが、2003(平成15)年に滑川機業場は操業を停止しました。
    
・あきたはちじょう [秋田八丈]
織物の名称・秋田県秋田市
秋田地方で生産される「黄八丈」です。黄八丈に似ている織物は各地にありますが、伊豆の八丈島と秋田のものが直物染料によって糸染めします。伊豆の八丈は染料に刈安(かりやす)を使用していますが、秋田八丈は浜茄子(はまなす)の煎汁を染料に使います。現在は手機ではなく力織機によって織られています。
    
・あく [灰汁]
染料の媒染剤の一つ。木炭や藁灰などに水を注ぎ、これをろ過して作る。特に紅染めには必要。染色の効果を上げる媒染剤として、また、絹糸の精錬などに用いられる。
   
・あくあらい [灰汁洗い]
灰汁で汚れを洗い落とすこと。昔は選択にも用いられていた。
  
・アクリル
石油を原料とした化学繊維。絹のような光沢があり、ウールのような柔らかさを持ち鮮やかな発色性がある。堅牢度は良いが、ポリエステルに比べると、強度はやや落ちる。シワになりやすい。旭化成ではピューロン、三菱レーヨンではボンネルの名称で製造されている。
  
・あげ [揚げ]
長めに仕立てた子供のきものを、実際の寸法に合わせて背丈や裄丈を調整するための、摘み縫いの部分をいう。
     
・あげくび [盤領]
あげくびとは、埴輪(はにわ)や男の装束類にみえる衿形をいう。領は衿と同義語であり、盤は円形を意味するところから円形の衿をいう。
   
・あげはちょうもん [揚羽蝶文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あげぼうし [揚げ帽子]
女性のかぶりものの一つで、御殿女中や上流階級の女性が、外出などの際に塵除けとして用いられていた。現在の花嫁衣裳の、角隠しの祖型である。
   
・あけぼのぞめ [曙染]
ぼかし染めの一種で、意匠の上の部分を濃くし、裾に向けて次第にうすくぼかしたものをいう。また、友禅染の裾の部分を12cmから15cmくらい白地のまま残して、模様染めした物を言うこともある。
   
・あこめ [袙]
袙とは、装束に用いる衣服の一種。装束の表着(うわぎ)単ひとえの間にこめて着る衣の略装。
    
・あさ [麻]
麻とは、亜麻(あま)、苧麻(ちょま)、ラミー、大麻、黄麻(こうま)、マニラ麻などの総称で、植物繊維である。衣料用としては亜麻、苧麻、ラミーが用いられ、繊維製品の品質表示ではこの3種類を麻という。主成分はセルロースで、かたく、伸びにくい。強い繊維で、しゃり味をもち、更衣料に用いられる。
      
・あさいと [麻糸]

大麻、苧麻(からむし)などの皮の部分を発酵させ、柔らかくして繊維状にしたものを紡績機、または手紡機を用いて糸にする。麻を糸にすることを績(う)むという。

   
・あさうらぞうり [麻裏草履]
草履の一種。藁表の草履の裏に、麻糸で編んだ紐を縫いつけたもの。
   
・あさおりもの [麻織物]
原料である麻繊維の種類によって、亜麻(あま)・苧麻(ちょま)・黄麻(こうま)・芭蕉(ばしょう)布など、さまざまな麻の織物があります。
麻の織物は上布(じょうふ)とも呼ばれ、代表的なものに「越後上布」「宮古上布」「能登上布」などがあります。風通しがよく吸湿性があり、盛夏用の着尺地・帯地に用いられています。
    
・あさがおもん [朝顔文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あさぎもめん [浅葱・浅黄木綿]
綿織物の一種。浅葱色の無地の木綿。浅葱色は比較的薄い藍染の色で、やや緑を帯びたライトブルー。主に男物の裏地に用いた。
   
・あさぎうら [浅葱裏]
浅黄木綿の裏地。また、その裏をつけた男の衣類のこと。
   
・あさくさじま [浅草縞]
江戸時代、八王子で織られていたもの。 絹綿交織の紬織だったといわれている経 (たて) 糸にくず生糸、緯 (よこ) 糸に綿糸を用いた紬縞 (つむぎじま) 。女物。 
 ※青梅は江戸時代、青梅縞という反物で有名だった。
 これはタテ糸に絹を使い、ヨコ糸に木綿を打ち込んだ、交織の織物だ。
 一見すると庶民にも許された木綿布だったが、絹のしなやかさを持ち合わせた独特の風合いで、
 全国に知れ渡っていたという。
 糸は紺屋が藍染し、農婦たちが手機で織っていた。
   
・あさのは [麻の葉]
文様名 →紋様のページへ
六個の菱(ひし)形を一つにまとめて放射状とした単位模様を順次続けた割付文様の一つ。各菱形に対角線を加えることから、葉脈のある植物の葉を想起し、とくに形態上の類似から麻の葉に見立てたもの。すでに平安時代には仏像に截金(きりかね)で装飾した文様に多くの例がある。江戸時代の染織文様として人気を得、絞り染めや小紋染めなど多様である。 
    
・あしかがめいせん []
栃木県足利市で産出される先染織物の一種。綿銘仙、絹綿交織の文化銘仙で有名です。足利地方では平安時代にすでに足利絹が生産され、室町時代には旗地として用いられていました。
明治から大正にかけては伊勢崎、秩父、八王子と並ぶ銘仙産地として繁栄、とくに文化銘仙は人気がありました。現在足利では、銘仙に代わりトリコットの生産がさかんです。
   
・あしぎぬ [絁]
経〈タテ〉・横〈ヨコ〉の糸が、太細入り混ざった不揃いの平組織の絹。粗悪な絹という意味もある。
   
・あじさいもん [紫陽花文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あしつけ [足付け]
一般に、黒の地色に用いるぼかし染めのことをいう。
   
・あしでもん [葦手文]
文様名 →紋様のページへ
   
あしぷみき [足踏機]
織機の一種で足の運動だけで綜桃(そうこう)、筬(おさひ)、抒を操作するもの。それ以前の.バッタン機に比べて、手の操作が楽になった。手機(てばた)から力織機への過渡的な織機といってよい。一八〇二年、イギリスのレイデクリフが発明、わが国では明治二年(一八六九) に中津川藤吾が考案し、第一回内国勧業博覧会で受賞したのが最初といわれている。
    
・あしもん [葦文] 
文様名 →紋様のページへ
  
・あしらい
友禅染のなされた模様の部分に、ワンポイント的な刺繍や金加工を加えることをいう。
   
・あじろもん [網代文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あずまえりながじゅばん [東衿長襦袢]
長襦袢の仕立て方からの名。通し衿仕立ての長襦袢のことをいう。主に関東地方で用いられていた仕立てかたのため、関東仕立て、東京仕立てとも呼ばれている。
   
・あずまコート [東コート・吾妻コート]
女物の防寒コートの旧名。江戸時代に雨ゴートとして用いられていたものが改良され、明治の中ごろに東京で大流行したのでこの名がある。衿の形は道行きやヘチマ衿がほとんどで、現在では、単に和装コートと呼ばれている。
    
・あぜおり [畦織]
畦織りとは、平織りから派生した変化組織の一つで、畝織りともいう。布の表面に畝が見られる。
  

・アセテート

化学繊維の名。酢酸セルロース系の化学繊維で半合成繊維に属する。レーヨンなどの普通人絹系に比べて、弾力性や耐水性に富み、絹に似た手触りがあり、染め上がりが美しいことから、さまざまに用いられている。
 
・あせとり [汗取り・汗除け]
汗取りとは、夏季、肌に直接着て汗を吸い取るのに用いるもの。装束に用いるものと、江戸時代末期にできた民間で襦袢の下に着用するものとがある。
   
・あたまづれ [頭擦れ]
縮緬等でシボの上の部分にスレが出ていることでシボズレとも言う。スレた部分は毛羽立っているために光の反射が異なるので白っぽく見えることが多い。煮染(たきぞめ)の染色や水元時に、生地がこすれたときに生じやすい。ビロードに落花生油を浸ませて軽くこすると目立たなくなる。
   

・あたり

模様をどこに置くか等の目安をつけること。位置づけ。
   
・あついた・あついたおり [厚板織り]
厚板織りとは、平織りの地組織に、絵緯(えぬき)によって文様をあらわした織物の一種。絵緯には、練染め糸、金銀糸などを使い、織り面に浮かせるが、その浮きが長いと弱くなるので、別からみ糸によって部分的におさえ、堅牢にした地厚の織物。婦人用の帯地、袋物地などに用いられ、また能装束のなかで、男役、あるいは荒神鬼畜の着付けに用いる。
   
・あつしおり [厚司織り]
織物の名称
もとは、アイヌ民族が衣服に用いた織物をさす。オヒョウ、シナノキなどの樹皮から採った繊維を原始的な居坐機(いざりばた)で織った厚地の織物です。漂白せずに、自然色のままで用い、アイヌ独特の模様をアップリケや刺繍によって施したもの。
     
・アップリケ
手芸用語。布地に異なった小裂を縫い付けたり、貼り付けたりして模様を表現する手芸のこの。着物では趣味のおしゃれ着、帯、羽織などに用いられる。
   
・あづまコート [吾妻(東)コート]
→あずまコート 
     
[]
生地・柄・色・加工方法等を好みに応じて染めることをいう。別誂え(染)や誂えと呼ぶ場合もある。主に、色見本や柄見本から、好みの色・柄を選択し、寸法等を指定して染色すること。
   
・あつわた [厚綿]
厚綿とは、歌舞伎衣装の仕立て方の一つで、舞台上の人物を大きく見せるために、衿などにかたく綿を詰めて棒状にし、着用者の役柄を誇張して見せるように構成されたもの。
    
・あてぬの 当て布
アイロンがけの際使用する布。布地が焦げないようにする為、布地の上に置いてアイロンを当てる。あてぎれともいう。
    
・あとぞめ [後染め]
織り上がった白生地に後から染加工すること。
     
・あとねり [後練り]
後練りとは、生糸を織ったあとに練ってセリシンを除いて練織物にするエ程をいう。羽二重、縮緬は後錬りである。これに対して、生糸を練ってから織る場合を、先練りという。
   
・あとねりしゅす [後練り繻子]
後練り繻子とは、生絹を織ってからのちに精練した繻子織物。生繻子ともいう。ふつう先に錬った絹糸を織ったものを本繻子というのに対していう呼称である。
     
・あとべら [後標]
先標が縫う前に全ての標をし終えておくのに対し、後標は縦べら(丈べら)だけを先にして、縫いながら次々に次の幅べらを当たって行くへら付けの方法。先標は関西式、後標は関東式と言われる事もある。
    
・あとゆうぜんかこう [後友禅加工]
友禅染工程のうち、地染をした後に、挿友禅などをしていく加工工程をいう。
   
・あべかわかみこ [安倍川紙子]
織物の名称・
三大紙衣産地として名高い駿州安倍川紙衣は別名「賤機紙子」とも呼ばれ、静岡県北方にある賤機山麓付近で紙子の縮緬細工などが製作された。
   
・あぼしもん [網干文]
文様名 →紋様のページへ
   
・あまいと [亜麻糸]
アマ科に属する植物の繊維を紡績して作った糸のことをいう。
   
・あまぎしぼり [甘木絞]
甘木絞とは、福岡県甘木地方の絞り染め。簡単な鹿の子絞りを連続させて松や城などをあらわした藍染めの和服地や夜具地。
   
・あまくささらさ [天草更紗]
更紗は、15世紀の初期にも明(中国)よりわずかに輸入されていたが、本格的に輸入されるようになったのは、南蛮船が渡来した室町時代末期からである。江戸時代も中期になると、渡来更紗を模して、「鍋島更紗」、「長崎更紗」、「堺更紗」、「京更紗」などの和更紗がつくられるようになった。
熊本県本渡市周辺で産出された「天草更紗」もその中のひとつで、オランダ人、および京都の職人から染色技法を習得した金子為作と森伊衛門により、文政年間(1818~1829)の頃に始められた。その後、明治初期まで染められたが、明治二十年代に途絶えた。昭和初期に中村初義氏により復興され、現在その伝統は、初義氏のふたりの子息にうけ継がれている。
  
・あまこーと [雨コート]
雨の日の外出時に、長着の上に着用するコートをいう。(=和装レインコート)
   
・あまさぎぜんまおおり [天鷺ぜんまい織り]
織物の名称・薇白鳥織の復元→ぜんまい白鳥織を参照
   
・あみいとつむぎ []
織物の名称・滋賀県
縮仕上げのきめこまかな風合いと独特の絣模様をもち、清涼感のある上等な麻織物。琵琶湖の水で麻を晒して染色し、平織する。
高宮地方(現在の彦根市近辺)は古くから大麻栽培のさかんな地域で、室町時代には高宮布として献上品、土産物に用いられていた。
江戸時代になると、彦根藩が近江麻布の品質の向上にのりだし、天明年間(1781~1789)に近江麻布改役所を設けた。幕末には板締め絣が織りだされて、この地方は麻織物の一大産地としての名を高めた。伝統的に手紡ぎ糸が使われていたが、明治10年頃、亜麻紡績糸に変わり、明治末にはラミー糸に変わって、現在に至っている。
   
・あみおりつむぎ [
織物の名称・滋賀県
江戸中期、この地域は養蚕が盛んだったため、琵琶湖では絹の漁網が使用され、使い古したもの を糸にして織り込む織物が生まれた。地域特産の生糸や日本各地の糸を縦糸に、漁網から作った糸を横糸にして織り上げていく。網を切った時のひげ状の切り口が反物の表面に出る、独特の風合いがある織物である。漁網が化繊に変わってからは、絹糸製の漁網を特注している。漁網のひげを表面に出す作業に熟練の技を要する。
   
・あみぎぬ [編衣]
編衣とは、阿弥衣とも書き、山村衣服としては「あんぎん」ともいう。藤の繊維を経緯の糸にして、駒糸で米俵を編むように編み上げたもの。鎌倉時代に踊念仏の際に用いられ、南無阿弥陀仏をとなえることによって人間は極楽に行けるところから、編衣を阿弥衣にあてた。豪雪地帯の新潟県魚沼郡松之山や秋成などの山村では、明治のころまで仕事着の上に袖なしの「あんぎん」をはおって労働した。
   
・あみめもん [網目文]
網目文とは、漁などに用いる網の、編み目を図式的にあらわした割付文様の一種。江戸時代を通じてしばしば多樣に用いられた。また陶磁器には染付けの文様がよく知られている。
   
・あめがすり [雨絣]
絣柄の名。経糸だけで模様を織り出す小絣の柄。小さな絣が経に切れ切れに走っているため、雨が降っているように見えるところから、この名がある。雨縞ともよばている。
   
・あや [綾]
糸の入り交じった状態をさす。このことから転じて織物三原組織の一つである斜文組織、あるいは綾織りをさすことになっているが、もとは歴史的名辞として使われることが多い。
織面に経糸・緯糸により綾目が斜めに連なって現れる織物。経糸・緯糸、それぞれ三本以上の組織(三本の場合は「三枚綾」)がつくられるので平織に比べて緻密に厚くでき、風合いが柔らかく光沢に富む。ただ「綾」と言えば無地、「文綾」と言えば有文の綾地を指すこともある。
 
・あやおりもの [綾織物]
経糸と緯糸が浮いて、交差する部分が織り面に斜めに向って配列された織物で、「平織り」「繻子織り」とともに織物三原組織のひとつです。「斜文織り」とも呼ばれています。
経糸と緯糸が浮いて、交差する部分が織り面に斜めに向って配列された織物で、「平織り」「繻子織り」とともに織物三原組織のひとつです。「斜文織り」とも呼ばれています。
平織りよりも強さは劣りますが伸縮性があります。糸の交錯方法により、いろいろな斜文があり「正則斜文」「変化斜文」に大別されます。さらに「破れ斜文」「山形斜文」などがあります。
      
・あやかいき [綾甲斐縞]
綾甲斐縞とは、絹織物の一つ。綾組織の甲斐絹。表面が平滑で光沢があり、裏地、夜具地、座布団地、風呂敷地、洋傘地などに用いられる。
   
・あやぎぬ [綾絹]
綾組織(斜文織ともいう)で織られている絹織物のことである。主の裏地として用いられている。
  
・あやこくら [綾小倉]
綾小倉とは、綾組織の小倉織。霜降り、紺無地などの綿織物で、学童服、学生服などに用い、実用的、耐久的な織物である。
    
・あやじあや [綾地綾]
地も文も三枚綾で織られた綾織物。しなやかで光沢がある。五衣などに用いられる。
   
・あやちりめん [綾縮緬]
綾縮緬とは、縮緬はふつう平織りであるが、これを綾組織にしたもの。手触りが柔らかで光沢に富む。主として和装用。
   
・あやなみおり [綾浪織り]
綾浪織りとは、絹織物の一つで、変わり織り紋縮緬。昭和初期に京都府の丹後地方で製せられ、色無地に染めて羽織やコート地に用いられた。
   
・あやにしき [綾錦]
綾も錦もともに美しい絹織物のことを指す総称である。多彩な帯や着物、紅葉の鮮やかさに対する形容詞として使われている。
  
・あやのてつむぎ [綾の手紬]
織物の名称・宮崎県東諸県郡綾町
真綿の手紡ぎ糸を植物染料で染め、手織で織った絹紬織物。琉球ふうの雰囲気がある。
昭和二十六年に秋山常磐氏により創出された新しい織物。
自宅近辺の原生林から植物染料の豊富な材料が得られることと、染色に適した水にも恵まれることに気づいた秋山氏が自然を活かして創作したのが、綾の手紬である。秋山氏の熱意が綾の手紬をはぐくんでいる。
   
・あやめかたびら [嘗蒲帷子]
嘗蒲帷子とは、帷子の一種で、江戸時代初期から、たんごの節句の時季に着用する単衣<ruby><rb /></ruby>をいった。菖蒲湯惟子とも菖蒲浴衣ともいう。
  
・あやめぽうし [菖蒲帽子]
菖蒲帽子とは、野郎帽子の一つ。元禄年間ころ、歌舞伎の女形の芳沢あやめが用いはじめた紫帽子。名称は女形の名からのもの。
  
・あやもめん [綾木綿]
綾木綿とは、綾織りの綿布の総称。狭義には、太縁、ドリルなどの綾綿布をさすことが多い。いずれも生地のままで用いたり、染色など加工をほどこし、衣料のほかに各種の用途に広く使われる。
  
・あやろ  [綾絽]
綾絽とは、絽の一種。斜文織りになっていて、普通の絽の平織りに比べて外観の変化に富み、装飾的である。
   
・あゆい [脚結]
脚結とは、5、6世紀ごろの古墳時代の男子人物埴輪像にみられる、衣袴(きぬばかま)の袴の膝関節の下をひもで結束すること。このひもを脚結の紐という。これは袴の筒がだぶだぶしているので、歩行に便利なように脚に結びとめたことによる。
   
・あらいしゅ [洗い朱]
朱をやや薄くした色合いからこの名がある。着物の地色として人気があり、広く愛用されている。
  
・あらいぞめ [洗い染]
染め色の名。うすい紅色のことで、荒い染は、紅の色を洗ってあせた色の意味がある。
 
・あらいそもん [荒磯文]
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・あらいそどんす [荒磯緞子]
荒磯緞子とは、名物裂の一つ。古渡り上等の名物裂で、古来とくに有名。竜門を越えた鯉は竜と化すという中国の故事にちなみ、萌葱地に金茶で波間に躍る鯉を織り出した吉祥文。それを和様に荒磯と称した。経緯の糸が強力に撚られて組織され、布面に凹凸をつくっている。古渡りから近世に至るまで優劣さまざまなものが現存する。
    
・あらいはり [洗い張り]
きものの手入れの1つ。汚れたキモノや布地をほどいて洗い、板に張ったり伸子を張ったりしてしわを伸ばし仕上げる。
     
・あらししぼり [嵐絞り]
嵐絞りとは、巻絞りの一つ。棒絞り、棒巻き絞りともいい、直径20cm、長さ5、6mぐらいの丸棒に布を斜めに巻きつけ、その上を綿糸で細かく螺旋状に巻き、布を樟の一端に押し詰め、次々と棒いっぱいにこの工程を続けてそのまま藍染めにする技法。愛知県鳴海地方の代表的技法。浴衣染めに多用した。
    
・あらたえ [荒妙]
荒妙とは、藤、緒こうぞ、稗かじなどの木の皮の繊維を採取して糸にして、織った織物類を一般に妙という。そのうちで、やや粗く太い糸で織ったものを荒妙とよんだ。奈良時代前後に用いられた衣料の一種。
   
・あらだち [荒裁ち]
地直しのすんだ反物を寸法に合わせて裁ち切り寸法で裁ち分ける事。へら付け前の和裁の一工程。
      

・アラベスク

装飾模様の一種。元来はアラビア風装飾の意味であったが、現在はアラビア文様や、これより変化した模様まで含む総称である。典型的な回教美術の優雅な曲線の唐草模様なのだが、一般には植物をモチーフに、線がもつれ合った唐草模様のことをいう。
   
・あられがすり [霰絣]
絣柄の名。経、緯糸ともに絣糸で織った絣模様の小さな四角形が、霰に似ているところからこの名がある。
   
・あられもん [霰文]
霰文とは、色の異なる方形を交互に並べた文様。江戸時代には市松文様として人気を得た。また大、小の円粒形を随意にいちめんに散らした文様のこと。
     
・ありあけてんさんつむぎ []
織物の名称・長野県松本市穂高町有明
天蚕は、山繭とも呼ばれるヤママユガ科の昆虫の繭。この天蚕の繭と家蚕の繭からとった真綿を合わせて手で紡いだ糸を緯糸に、絹糸を経糸に用いて織る。絹なりがして、上品な薄緑色の光沢がある。軽くて丈夫であたたかい。天蚕の飼育は、天明年間(1781~一1789)に有明地方のクヌギ林で始まった。
文政年間(1818~1830)には商品として軌道にのり、明治初期から中期にかけては有明村の農家の50パーセントが天蚕飼育農家となり年間八百万粒の繭を生産するほどになった。しかし明治時代の後期から、害虫の発生や焼岳の噴火灰などが原因で衰退した。
天蚕自身が病気に弱いことや、戦後、天蚕の主食であるクヌギ林が減少したことなどから増産は難しいが、関係者の努力により、現在でも少量ながら天蚕繭が生産されている。
なお、100%天蚕の紬はない。天蚕紬の繭の混合率は、天蚕一粒に家蚕十粒の割合である。古代あしぎぬは天蚕の糸で織ったものと考えられる。
    
・ありすがわにしき [有栖川錦]
有栖川錦とは、名物裂の一つ。有楢川錦には数十種の裂が伝わるが、いずれも太い木綿糸を厚手の錦地に組み、文様は強い斜め格子のなかに種々の動物を直線的にあらわしたものである。色彩も赤、茶、白、黄、藍、緑などを大胆、巧妙に配し名物裂中異色である。強靭な織り風や直線的な文様表現は中央アジアから小アジアまでのものを思わせる。
     
・ありすがわもん [有栖川文]
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・ありまつなるみしぼり [有松鳴海紋]
有松紋とは、有松地方(現在の愛知県名古屋市緑区有松町)で産出される木綿絞り。1610(慶長15)年、名古屋城築城の際、工事に来ていた豊後の人たちの着ていた絞り染めを、有松の竹田庄九郎が木綿を用いてまねてつくったのが始まりという。現在、100をこえる種類があり、浴衣などで代表される。
 
・あわしじら [阿波正藍しじら]
織物の名称・徳島県/徳島市 
徳島県(阿波)で生産される、特産の藍で縞に染めた木綿の織物です。縦方向に縮のようなしわがある夏用の織物で「阿波縮」「綿縮」ともいいます。
この地に住んでいた海部ハナ(天保2~大正8年)が、織り上げた反物を雨で濡らしてしまい、そのまま乾かしたところ生地に凹凸が生じました。この偶然の発見を元にしてさまざまな工夫を重ね、縮のある織物を完成させたといわれています。現在は力織機を中心に大量生産されています。
阿波しじら織は、18世紀の末に阿波地方で盛んに織られていた「たたえ織」という木綿縞に、明治時代の初めに、改良が加えられて織られるようになったものです。改良のきっかけについては色々な説がありますが、いずれの説も、濡れた布地を、そのまま日光で乾かしたところ、布の面に自然な面白い縮が出来たのを発見したのがきっかけだと言われています。
      
・あわせ [袷]
裏をつけて仕立てたキモノの総称。袷羽織・袷長襦袢なども含む。男物袷の裏は通し裏。女物は胴裏・裾回しを用いて仕立てる。
    
・あわせばかま [袷袴]
袴の一種。裏を付けた袷仕立ての袴。昔は多かったが、現在では日本舞踏の衣装等特殊なものは別として殆ど見ない。
   
・あわちぢみ [阿波縮]
→あわしじら
   
・あわびむすび [阿波縮]
紐の飾り結びの一つ。水引きの基本形で、一般慶事やその他一般儀式用に結ばれる。淡路結び、相生結び、葵結びともいう。
 
・アンサンブル [ensenbli]
和服の場合は1対である事を意味するフランス語。和製英語風にA・S.と略する場合も有るが、本来は誤り。普通は長着と羽織。又は長着とコートの対をいう。
   
・あんどんばかま [行灯袴]
袴の一種で、マチのない袴のこと。マチのある馬乗り袴に対する言葉。筒型の形が行灯に似ているところから、この名前がある。

・いあお [位襖
古代の武官の礼服。単に襖(あお)ともいう。 

 ・いいだつむぎ [飯田
織物の名称・長野県飯田市
飯田紬とは、長野県飯田で自家用として織られていた紬着尺を商品化されたものである。現在も真綿手紡糸による投杼式高機によって織られ、地質も良心的で、柄も色も都会的センスを心得ている。植物染料で糸染し、手織で織った絹織物。江戸時代の文化一三(一八一六)年、喬木村富田の筒井サキノが玉繭から手引きした糸で織った薄絹が富田絹として商品化され、京都で紅梅に染められて人気を集めた。大正時代には力織機が導入され、さまざまな製品がつくられたが、現在は素朴な手機紬と白生地の生産のみとなった。   

・いいのぎぬ [飯野絹
玉絹の一種で、小節絹ともいい、加賀地方で産出されたものの旧称。   

・いかだもん [筏文]
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・イカット
インドネシアのスンバ島の経絣(たてがすり)を指します。「くくる」とか「しばる」という意味のインドネシア語が語源と言われています。現在では世界各地の絣(かすり)を総称してイカットと呼ぶ場合が多いです。  

・いがばかま [伊賀袴]
伊賀袴とは、安土桃山時代の立付(たっつけ)袴を江戸時代に入って伊賀忍者の用いたところより伊賀袴と称した。挙動、歩行に便利なところから、武士の道中やきこり、猟師の間に用いられ、幕末には調練服の袴として重要視された。  

・いかん [衣冠]
衣冠とは、広くは、衣服と冠の装束をいう。本来は下袴、単、袙(あこめ)、指貫(さしぬき)、袍(ほう)に冠をつけた装束で、束帯の略装。束帯から下襲(したがさね)と石帯(せきたい)をはずし、表袴(うえのはかま)を指貫に代えたもので、くつろいだ服装であるために夜間の宿直(とのい)装束とされた。   

・いき [粋]
「意気」から転じた語。粋の字の転用。気持ちや身なりのさっぱりと垢抜けして、しかも色気を持っていること。気前よいこと。すい。人情の表裏に通じ、特に遊里・遊興に関して精通していること。      

・いけあらい [生洗い]
衣装に付着した、汚れや汗などをしみ落としで補正する方法。現在の和装クリーニングに相当する。   

・いげたがすり [井桁絣]
井桁絣とは、絣柄の一つ。堀井戸の上部の縁を木材で四角に組んだ象形文字が井戸の井であり、それを図案化した柄である。とくに絣柄に多く用いられ、これを井桁絣という。   

・いこう [衣桁]
キモノを掛けておく木製の家具で、鳥居に似た形をしている。展示用は、キモノの模様がよく見えるようにするのに用い、家庭用は、着用後のキモノの汗抜きやしわを伸ばすために用いる。    

・いざりばた [居坐機・居座り機]
居坐機とは、日本や朝鮮で古くから使われてきた手織り機の一種。5世紀ごろ、中国から機織り技術が伝わり、弥生時代の原始機が、この機に転換した。   

・いしうちじま [石内縞
織物の名称・奈良県
奈良県月ヶ瀬村の奈良晒(ならさらし)奈良県月ヶ瀬地方において産出する麻織物。大麻・亜麻を用いた夏の着尺が中心。フランスのパリ博覧会に出品し、銅メダル賞状を授与した石打縞(いしうちじま)という黒地に白縞の入った帷子(かたびら)は有名である。   

・いしがきみうら [石垣三浦
絞り染めの一種。不規則に絞って、独特の感じを出したもの。三浦絞ともいい、慶長の頃、豊後(大分)のひと三浦玄忠の妻が有松に伝えたといわれている。

・いしがけこもん [石崖小紋
染模様で、石崖の形に染め出した小紋。  

・いしきあて [居敷当 尻当]
和裁用語。「いしき」とは臀部の古語で尻当てともいう。本来は、一重の着物の臀部の位置に、補強のために裏から縫い付けておく当て布のこと。着物を着て座ると体重がかかるので、表布がたるんだり、縫い目がほころ鐚利するのを防ぐため、予め補強しておく。しかし、現在は、単の着物の後ろ身ごろの裏に、左右いっぱいにウエストから裾まで付けるようになった。透けたり、皺が付くのを防ぐ目的が主となっており、用いる生地も胴裏羽二重となった。背伏せにて代用とする事もある。   

・いしげつむ [石下紬]
 (豊田紬・豊田縮・絹田紬・筑波紬)
織物の名称・茨城県筑波郡谷和原村
石下紬とは、茨城県の石下町地方で生産される絹綿交織の紬織物です。豊田紬、豊田縮ともいいます。明治の末に、結城紬の編に似せた夏の着尺地としてつくりだされ、昭和の初めから、餅糸を使うようになりました。交織の締地合いに独特の雅味があるといわれます。
経糸は片撚りの生糸、あるいは玉繭から紡ぎ出される玉糸で、緯糸は木綿の強撚糸(きょうねんし)を用いて、主に足踏み織機で平織りに織られます。
    

・いしこぎれ [石子切]
緞子の名物裂。樺茶色の地に媚茶で1.5cmほどの陰の石畳の上に梅花を散らした文様を織り出したもの。   

・いしずり [石摺り]
紬の一種。無地染めの紬の布面を軽石でこすって、表面に濃淡のむらを出したもので、主として男物の羽織時や着尺、葉尺地に用いられている。そのほかに深いしぼの縮緬を竹の皮でこすり、しぼの面だけ色を変えたものもある。   

・いしぞこじ [石底地]
綿織物の一種。足袋底に用いられる厚地の綿織物で織底ともいう。経糸に中番手の双糸(もろいと)(2本経て)、緯糸に太い綿糸と細い綿糸を2本ずつ交互に織り込んだ家宅で丈夫な布地。主産地は埼玉県忍(おし)地方。同じものに雲斎織がある。   

・いしだたみきんらん [石畳金欄]
石畳金欄とは、名物裂の一つ。「石畳切」ともいう。萌葱色の地と金箔による石畳文で、金箔地の部分に七宝を、地の部分に珠を織り込んだ「宝尽し」と称する文様である。唐末・宋初以来流行した吉祥文であって、金欄特有の荘厳さはないが、文様の親しみやすさと温かな美感によって古くから知られている。  

・いしだたみもよう [石畳模様]
模様の名で、敷石を並べたように白黒を配置したもの。市松と同じ。  

・いしょう [意匠]
工芸上の製作物にに応用する形状、模様、色彩またはその結合による美術的工夫。意匠は表現に至る過程をいい、その結果が図案である。   

・いしょうし [意匠糸]
意匠糸とは、素材、太さ、色などが異なる糸を撚り合わせて作ったもの。あるいは、一本の糸で部分的に異なった太さを変えたものなどを含めた総称。加工法により様々に呼び分けられる。  

・いしょうしろきじ [意匠白生地]
地紋を織り出した白生地。紋綸子、紋緞子、紋縮緬などの総称。好みの地色や模様を染める染め下生地として用いる。  

・いしょうひながた [衣装雛形]江戸時代に刊行された、着物の見本帳で、模様雛形、雛形本ともいう。雛形とは実物をかたどって小さくしたものの意味。寛文のはじめ頃から刊行されたといわれている。現在のファッションブックに相当するもので、肉筆のもの、木版刷りのものなど約180種類が残されている。   

・いしわりせった [石割雪駄]石割雪駄とは、雪駄の一種。雪駄の表を淡竹はちくの皮製とし、真のかかとの部分に鉄片を打ちつけたもの。その丈夫であるところから路上の小石などを踏み割るという意でつけられた名称。   

・いしやまぎれ [石山切]金襴の名物裂。花色地に紋を金糸で中牡丹唐草とし、ところどころに輪宝を織り出したもの。 

・いずみもめん [和泉木綿織物の名称・
大阪は古くから綿織物が盛んで「和泉木綿」「河内木綿」「摂津木綿」などと呼ばれ、日本全国へ出荷されていた。
和泉木綿とは江戸時代の頃、大阪府の南部(和泉の国)で作 られていた棉や綿織物やその製品などの名称をさす。
名ブランド『和泉木綿』 
綿作開始当初の農家では、収穫したままの「実綿」または種を取り除いた「繰綿」として換金し、残りを家族用に織る程度でしたが、やがて換金のための木綿織りが始まります。そして元禄~ 宝暦年間(1688~1763)には多くの絹織職人が木綿織りを始めるなどして木綿生産は急成長しました。少し時代が下りますが、文化7年(1810)には泉州木綿の年間総生産量が100万反に、さらに文久年(1861~1863)には200万反にも達しています。毛足が長く良質な、和泉産の綿花は細い糸を紡ぐことができたため、その糸で織上げた布は、染め下用の薄手の晒木綿にして手拭地や紅裏地(紅花で染めた着物の裏地)に用いられ『和泉木綿』の名で高く評価されていたのです。
 木綿織りの現場では、織機が改良されて生産効率や品質が高まるなど、和泉の木綿産業は発展し続けました。しかし、糸が手紡糸から紡績糸へ移り、布も手紡木綿から半木綿(輸入された紡績糸を半分使用)、そして丸唐木綿へと変わり、『和泉木綿』は消えてしまいました。 その後、紡績所の設立や力織機の導入で、工場での大量生産が始まり、泉州は日本の綿織物の約50%を生産する日本一の産地となりましたが、あの『和泉木綿』は幻の地場産品となって しまったのです。
   ・いずもいわいふろしき [出雲祝風呂敷]出雲地方で、婚礼の際に伝統的に用いられる筒引き藍染風呂敷のこと。出雲地方で藍染が開始された時期は明らかではないが、木綿栽培がさかんになった江戸末期頃からと推測される。ただし、この地方でとれる藍は良質ではなかったので、価格は阿波藍の12分の1程度だったという。それでも、布を補強し虫を防ぐ効果のある藍染は、農山村の作業着としては重宝なものだった。そのためか、出雲では藍染は人の一生のさまざまな節目に顔をのぞかせる。嫁入り支度には筒引きの藍染布(祝風呂敷、油単、布団地など)を持参する風習があったし、また、子供の産湯の湯上げ、子背負い帯、節句ののぼりなどに使われる布はどれも、藍染であった。しかし、近年はそんな風習もすたれ、出雲藍染を伝承している染業者は、わずか二軒だけになった。  

・いずもおり [出雲織]織物の名称・島根県
農民工芸の精華と言える出雲織が知られるのは、昭和34年のこと。米子の農家出身の青戸柚美江氏は、昭和21年に安来市の青戸家に嫁いだ。13人家族の切盛りをしながら、実家の母や祖母が綿を栽培、糸を紡ぎ草木で染めて機織りする、子供は手伝いしながら習い覚える。同33年頃から家計を助ける機織りを始めた。全国の農村工芸展でも入賞、青戸氏の織物は徐々に存在感を増した。安来工芸会の設立にも参画、安来美術工芸協会へと活動の範囲は広がった。
 綿・絹・天蚕素材を生かした風雅な絵絣や、おしゃれな着物は、出雲織工房ならではの作品。後継者の三男・秀則氏は、四角形の石甕で藍を建てる日本で唯一の紺屋・佐々木茂氏(平成5年12月逝去)のもとに10年通って藍建てを修業。いまでは見事な藍の華が建つ。出雲織は伝統の技法を基に、藍・草木の彩りで、創作着物を制作する。同55年から手織りを学びたい女性を全国から受け入れているが、青戸氏の指導を得た研修生は、既に百名余りが巣立った。また、安来市の白鳥ロード沿いに平成16年に市が開設した「出雲織・のぎ白鳥の里」にある萱葺き屋根の交流棟でも、出雲織の研修生が機織の技法を学んでいる。藍染場では秀則氏が藍染に励む。
 その裏手に白鳥観察棟がある。晩秋に飛来する白鳥の観察には最適の田圃が広がっている。
   

・いずもさきおり 出雲裂織織物の名称・島根県広瀬市
経糸には麻糸や木綿糸を、緯糸には古布(絹布、綿布)を細く裂いたものを用いた再生織物。
古布の組み合わせにより、美しい縞柄が織りだされる。
厚地で丈夫なうえに防寒にも役立つ。東北の北部や佐渡、あるいは山陰地方では、綿花が育たず貴重品だったため、このような再生織物が生産され、自家用の衣料として用いられてきた
ツヅレ織又は屑織とも呼ぶ裂織(さきおり)は、いまリサイクル織物として注目されている。かつて島根県下の各地でも古布を裂織にしていたが、広瀬町比田(現・安来市)が県下で最後の裂織だった。全国の民芸店で比田裂織の素朴な山着は評判をとった。昭和50年頃に仕事は止んだようである。
    

・いずもじぎれ 出雲路切緞子の名物裂。花色地に浅黄で梅の折枝を散らして織り出したもの。   

・いせがた [伊勢型]→いせかたがみ   

・いせかたがみ [伊勢型紙]伊勢型紙とは、伊勢の白子、寺家(現在の三重県鈴鹿市白子町、寺家町)で特産的につくられる染め物用の型紙。略して伊勢型という。渋を引いた和紙に図柄を彫ったもの。古くからつくられていたが、江戸時代徳川御三家の一つである紀州家の藩領になってから保護を受け、専売的な権利を得て発展し、今日に及んでいる。非常に高度の技術を要求され、昭和30年その技法が重要無形文化財に指定された。   

・いせさきがすり 伊勢崎絣織物の名称・群馬県伊勢崎市
伊勢崎絣の歴史は古代にまで遡ることができますが、産地が形づくられたのは17世紀後半になってからです。明治、大正、昭和にかけて「伊勢崎銘仙(いせさきめいせん)」とよばれて全国的に知られていました。伊勢崎絣の特色は括(くく)り絣、板締(いたじめ)絣、捺染(なっせん)加工の技法にあります。単純な絣柄から精密な絣模様まで、絹の風合いを生かした手作りの絣として、色々なものが作られています。
    

・いせさきめいせん 伊勢崎銘仙織物の名称・群馬県伊勢崎市
絹の風合いを活かした先染の平織物のことで、さまざまな絣糸の技法を用いて、単純な絣柄から精緻な絣模様までを手作業で織りだしたものです。
縞に絣糸を配した縞織は明治初年に生産が開始され、明治一二、三年頃から銘仙と呼ばれるようになりました。
その後、筬台絣が発明され、板締め絣、解絣の技法導入により伊勢崎銘仙が業界をリードした形です。
現在では銘仙の名がほとんど用いられないため、消滅したかのように思われがちだが、実用的な絹織物として、別の名称で多くの人々に親しまれています。
    

・いせもめん [伊勢木綿織物の名称・
室町時代の綿の種の伝来以来、伊勢地方は土・水・天候等に恵まれて綿の一大産地となり、最高級の木綿との評価を得ました。伊勢参宮のみやげに津の街道で名物の一つとして売られたり、江戸から戦前まで日常着として全国の人々に愛用されるなどして、当時の伊勢商人達の経済的基盤を作りました。
しかしながら、戦後化学繊維の発展や着る物文化の変化の中で伊勢木綿の需要は激減し、現在では作り手が臼井織布(株)一社となったため、大変貴重なものとされています。国内最高級の純綿糸を使用し、明治時代から受け継がれた機械を使って当時と変わらぬ製法から生まれるそれは、綿とは思えないほど暖かく、しわになりにくいのが特徴。一般の綿は洗えば硬くなるのに対し、伊勢木綿は洗えば洗うほど光沢や風合いが出ます。
昔から変わらぬ製法で出来る小巾の反物は、最高の肌触りと古布のような素朴な風合いがあります。その秘密は糸(弱撚糸)にあります。強く撚りをかけずに綿(わた)に近い状態の糸を天然のでんぷんのりで固めて、昔の機械でゆっくりと織っていく。一台の機械で一日一反(13メートル)しか織れません。出来上がった布は洗っていくうちにのりが落ちて、糸が綿(わた)に戻ろうとするので、生地がやわらかくなっていきます。この肌触りこそが伊勢木綿の魅力なのです。
   

いそだか [磯高]磯高とは、束帯、衣冠などを着用する際に用いる冠の部分名。冠の縁を磯といい、その縁が高いものをいう。また厚額ともいい、縁の低いものを薄額と称した。これは冠をかぶる人の年齢によって使い分け、磯高は壮年以上の料とされていた。   

・いたあげゆうぜん [板揚友禅]板揚友禅とは、友禅染の一方法で、型紙捺染を応用したものをいう。模様を切り抜いた型紙で色糊を捺染する手法で、型付け友禅、または写し友禅ともいわれる。    

・いたうらぞうり [板裏草履]板裏草履とは、草履の一種。板付草履ともいう。江戸時代末期ごろから用いられた履き物で、草履の真に厚さ2cmほどの木片を、つまさきからかかとまで幾つかに区切りをつけて打ちつけたもの。明治以降、紡績場の工女や小学生などに履かれた。   

・いだしぎぬ [出衣]出衣とは、衣冠、直衣(のうし)を着るときに、下に着る衣の裾を出して着ることをいう。出袿(いだしうちき)、出褄(いだしづま)ともいう。  

・いたじめ [板締め]大昔からあるそぼくな染色法。布地を三角形や方形に畳んでから二枚の板に挟み、強く縛って染液に浸して染める方法で、板に挟まれた部分は白く残り、板のあたっていない部分が染まり模様になる。模様の周囲が暈された柔らかい染味が特色で、麻の葉模様が代表的である。着尺地、長襦袢などに用いられている。また、二枚の板に同じ模様を彫って染めると左右対称の模様が現れるが、これは正倉院に残っている夾纈(きょうけち)に見られる技法である。先染め織物にも用い、東京の村山大島や山形県の白鷹御召の絣糸は、この方法で糸染めをしている。 

・いたじめがすり [板締め絣]板締め絣とは、絣の糸染めに板締めを応用して織った絣のこと。   

・いたじめしぼり [板締絞り]布地を様々な形に屏風だたみし、両面から板を当てて強く縛り、染色する方法で、板の当たっていない部分が染色される。布の折り方、板の形によって様々な模様が染め出される。模様の端がぼかしたように仕上がるのが特徴的。      

・いたじめゆうぜん [板締友禅]型紙の代わりに板を用いて、これで布を挟んで染め上げる。古代の染色法で「きょう纈」ともいう。現在ではほとんど用いられない。   

・いたば [板場]型紙捺染(友禅染、小紋染め、中形など)をするとき、反物をのせて糊置きする長い板を置いてある作業場のことを指す。  

・いたばなておりさーじ [板花手織手巾]織物の名称・沖縄県八重山郡与那国町
白地に色糸(紺、赤、茶、黄、黒など)で九本の太い横段を織り込んだ紋織物の一種。布の表裏両面とも同じ市松模様になる花織手巾。
与那国島は他島との交渉の少ない孤島だったため、沖縄に多い絣織はなく、他島には見られない独特の縞物が発達した。
花織手巾は、親兄弟の航海や道中の安全を祈願する「情けの手巾(ナサキのテサージ)」として、また意中の若者へ思いの丈を伝える「思いの手巾(ウムイのテサージ)」として織られた。また、女性の肩や髪にかける装飾用としても用いられた。
板花手織手巾は、かつては麻糸や芭蕉布で織られていたが、現在は綿糸で織られている。
   

・いたばゆうぜん [板場友禅]型友禅や摺友禅の型置をする場所を板場といい、そこで部分的に印捺し、伏糊の後に板からはがして、しごき染や引染で地色を染めるものを板場友禅という。    

・いたりあおめし [イタリア御召]ナイロン糸に特殊加工をしてクリンプ(ちぢれ)状とし、これとレーヨン糸を「交織」したものに機械捺染で結城風の柄を染め上げたもの。市田㈱の創案によるもので日常着として人気があり、類似品や同種品の別チョップ(商標)が多く出た(かしわ御召、ローマ御召など)。今はない。  

・いちいぎれ [一位切]緞子の名物裂。藍茶地に牡丹唐草模様を織り出したもの。   

・いちごぎれ [猪智子裂・覆盆子裂・苺裂]いちごぎれとは、名物裂の一つ。数種あるが、前田家伝来の通称「菊いちご」が著名。うす茶の錦地に長円形の12弁の花文様を白、藍、緑、黄などでそれぞれ横1段ずつ織り出す。地と文様とでは糸の太さや撚りを変え、数段ごとに筋を入れ、さらに華麗な配色によって、文様の単調さを巧妙にやぶる。  

・いちじょうさなだ [一丈真田]男帯地の一種で、広島地方の男真田帯の総称。   

・いちのかいがすり [一之貝絣織物の名称・長岡市「旧栃尾市」
栃尾郷は古くからの織物の産地であり、この栃尾織物が、歴史的にまた、社会的に意義をもつようになったのは、天明年間(江戸中期)に先染の縞織物が生産されてからであるといわれています。
つまり、天明の飢饉(1782年~1786年)を契機として、長岡藩より養蚕・機織りが奨励されて、縞紬の生産をみてからです。
寛文元年(1661年)の白紬に加えて、この縞織物の出現により、全国的に市場を確保するに至りました。
しかし、その後、時代の変遷により、紬の製織は次第に衰え、やがて姿を消しました。郷内各地では、それぞれ特有の製品が織り続けられてきました。その中でも、この一之貝の絣は名高く、栃尾紬を代表する程のものです。
  

・いちのはしぎれ [一の橋切緞子の名物裂。花色地に白で2cmほどの「真向兎」を織り出したもの。   

・いちのひだ  [一の襞]袴の部分名称の一つ。袴の前襞の一番外側で左右2本ある。  

・いちまつもん [市松文]色の異なる方形を交互に並べた割付文様。石畳文、団七、元禄模様ともいう。江戸時代中期末、江戸で活躍した上方の若衆方役者、佐野川市松が袴に用いて大流行したことにより、それ以後は一般に市松文様とよばれた。紅と白、紫と白など対照的な色を用いて、あでやかな効果を示す。  文様名 →紋様のページへ   

・いちょうもん [銀杏文] 文様名 →紋様のページへ   

・いちよくぞめ [一浴染]単衣染ともいい、一浴で同色に染め上げる。 

・いちらくおり [一楽織・市楽織]綾織の一種。縞のあるものを縞一楽ともいう。一楽の名はその組織が和泉(大阪)の人・土屋一楽の創作した籐編物に似ているため。星一楽、菱一楽、市松一楽、紗綾形一楽、壁一楽などがある。   

・いつうら [五裏]羽織裏用の甲斐絹(かいき)で、幅1尺8寸5分で1裏の長さ6尺1寸、これを5枚分で一疋としたことによりこの名がある。

・いつぎぬ [五衣]中古の男子制服ひと揃えで、袍(うえのきぬ)、半臂(はんぴ)、下襲(したかさね)、袙・引倍木(あこめ・ひべぎ)、単衣の五品をいう。   ・いっきゅうぎれ [一休切]緞子の名物裂。萌黄地に5㎝くらいの蓮花唐草模様を花色で織り出したもの。一休禅師の袈裟裂と同種のためこの名がある。   ・いっちんぞめ [一珍染]友禅染の一種で、小麦粉を主成分とした糊を一珍糊という。この糊で糊置し、色挿しをした後、蒸し工程に移る前に生地を斜めに引いて糊を掻き落とす方法を用いた技法をいう。    ・いづつがすり [井筒絣]絣糸で井桁形を表現した絣をいう。   

・いつつぎぬ [五つ衣]五つ衣とは、女房装束の袿(うちき) のうち、5牧重ね袿の衣をいう。重ね袿の枚数は平安末期が最も多く、20枚という記録もあるが、鎌倉以降は5枚に定着した。 

・いつつもん [五つ紋]礼服の男女長着および男物羽織に用いられる。背紋は背縫いの衿付縫い目から1寸5分(5.5cm)下がった所に一つ。袖紋は後袖の袖山から2寸(7.6cm)下がった所の巾の中央に左右一つずつ。抱紋は前の肩山から4寸(15cm)下がった所の巾の中央に左右一つずつ、計五つ。五つ紋が最も正式で、紋の数が少なくなるほど略式。     

・いづつもん [井筒文]文様名 →紋様のページへ  

・いといれ [糸入れ]伊勢型紙を製作するときの一技法。極細の縞や地白部分が多い柄の型紙は、曲がったりよれたりしやすいので、それを防ぐために、二枚に剥がして彫った型紙の中へ細い糸を入れ、柄がずれないように柿渋で張り合わせる。熟練と手間を要する技術で、近年は技術者も減り、型紙の表に漆で紗を張る「紗張り」の方法を用いることが多くなった。しかし、現在も縞彫には糸入れが行われ、不可欠な技術として受け継がれている。    

いとおり [糸織り]絹糸織の略で、経緯とも絹糸で織った織物のこと。意図の種類や撚り、組織によって多種類ある。   

・いとこき [糸こき]手縫いで運針やくけを行う場合、縫いこんだ途中や、縫い終わりで、糸がつれないように縫い目を指先と爪でしごくこと。しごきともいう。糸こきが十分でないと縫い糸がつったり、仕上がりがいびついたりする。   

・いとじるし [糸印]裁縫用語。主に袖山とか肩山などにつける合印。へらやルーレットがきかない布地や、道具を使うと布地が傷む場合に、糸で印をつけることをいう。多くの場合は、白のしつけ糸で切りじつけにする。その他の使い方としては、布地の傷や汚れの箇所を、あらかじめ示す場合に糸印を用いる。   

・いとぞめ [糸染め]先染め織物の一種として、糸のままで染めてから織る場合をいう。縞、格子、絣(かすり)、各種色模様織りなどすべて糸染めで織られたものである。    

・いとにしき [糸錦]美術って機名絹織物で錦の一種。金糸、銀糸、その他各種の色糸を用いて豪華に模様を織り出した織物。その折技法は天正年間(1573~92)頃に中国の明から伝えられたという。友禅染は多彩な染色なので、色と色が混じりあわないように、糸目糊で防染して染めるが、この防染糊が糸のように見えるところから、この名がある。化学染料の進歩から糸目糊で防染せずに、染料で直接模様を表現する無染友禅がある。この無染友禅との区別のために、糸目友禅、本友禅の名が必然的に用いられている。 

・いとぬきがすり[糸抜絣]各種の道具または機械を用いて、糸束に「抜染」する方法をいう。   

・いとねり [糸練り]生糸はセリシンという膠(にかわ)質の物質が表面を固めているので、これを除去する作業(精錬)が必要である。織物に織り上げてから行う場合と、糸の内に行う場合があり、後者を糸練と呼ぶ。主として糸染の際の前工程として行われる。別名「精錬」。   

・いとまきぎれ [糸巻切]金襴の名物裂。藍茶の繻子地で、唐草を金で通しに織り、ところどころ一行で唐草模様などを表したもの。  

・いとまきもん [糸巻文]文様名 →紋様のページへ   

・いとめ [糸目]手描き友禅染の技法で防染糊(ぼうせんのり)を置いた線が、染め上がりに糸状に細く現れるため、この名になる。また、それ自体で模様を表すこともある。白い細い線を残すことを白糸目といい、地色とは違う細い色の線を残すことを色糸目という。黒く細い線で残すことをカチンという。また、金や銀で線を入れることを金糸目、銀糸目という。      

・いとめのり [糸目糊]友禅染に使用する糊で糯(もち)糊と小紋糠(ぬか)で作るが、糯糊を多くして普通石灰を入れない(入れる場合もある)。この糊は、使用しない場合でも、毎日湯煎しながらかき回し、水飴のような滑らかで引きのある糊で琥珀色をしている。使用するときは先金を入れた封筒に入れて、糊を押し出すようにしながら細い線を描いていく。これを糸目という。糸目糊にはその材料の違いから、糊糸目とゴム糸目とがある。 

・いとやぎれ [糸屋切]金襴の名物裂。金の上紋輪宝の形に似ているので輪宝裂ともいう。大阪堺の人・糸屋宗有が明国から伝えたのでこの名がついたといわれているが詳細は不明。   

・いとやふうつう [糸屋風通]糸屋風通とは、名物裂の一つ。風通は織物組織名で、経糸と緯糸を2重にし、それぞれの経緯で表裏を交ぜさせて織る、つまり表裏は同一文様だが配色は2重の経緯に応じて逆になる織り方である。糸屋とは堺の唐糸屋に伝わったことからといわれるが詳細は不明。 

・いとよしぎぬ [糸好絹]胴裏地に用いる絹裏地。「糸好絹」と「秩父(ちちぶ)絹」とあり、「糸好絹」は、本絹糸で、「秩父絹」は、玉糸などの節のある絹なので、丈夫ではあるが、体裁は、「糸好絹」のほうが美しい。 

・いとよしぎぬひらみみ [糸好絹平耳]糸好絹で耳糸の密度を増したもの。最も紅色染に適す  

・いなづまがた [稲妻型]稲妻(電光)の形を模様化したもの。   

・いなづまもん [稲妻文] 文様名 →紋様のページへ   

・いなつむぎ [伊那紬織物の名称・
伊那紬は、松本紬、上田紬、飯田紬とともに、総称として信州紬と呼ばれています。天竜川添い地方は、18世紀初めからすでに養蚕と織物が地場産業として興り、「信州、蚕の国、絹の国」として知られてきました。蚕が繭を喰いやぶってでてきてしまい穴のあいた繭など、京都、名古屋などの消費地に出荷できない繭を引き、自家用として染め織りをしたのが伊那紬の始まりです。
伊那紬の大きな特徴は、まず糸。経糸には生糸、山繭糸、玉糸、真綿の手紡ぎ糸など、緯糸には玉糸か真綿の手紡ぎ糸を使います。玉糸とは、偶然2匹の蚕が一つの繭を作り、その繭から2本の糸を一緒に引き出したもので、空気が入る分だけふんわりとした風合いの布になるという稀少価値の高い糸です。 もう一つの自然な風合いの伊那紬, 伊那谷は、古くから養蚕が盛んで、伝統的工芸品の伊那紬は、伊那谷の女性特徴は、染材に地元伊那谷から手に入る植物しか使わないことです。リンゴ、いちい、唐松、山桜、白樺などの木の皮、やしゃぶし、団栗、胡桃などの木の実、15種類ほどもの植物が使われます。
  

・いなみつむぎ [井波紬織物の名称・富山県南砺市井波
井波では天正年間(1573~1592)に居座機で生絹を織っており、文政年間(1818~1830)から紬織が始まったといわれる。井波紬は手紡ぎの太糸を用い、刈安など植物染料で主に茶褐色に染めて織り上げたもので、独特の風合いを持っていた。そのため着尺や茶人のコートなどに用いられたという。
最盛期は大正年間だが、その後衰退し、昭和19年に消滅した。
   

・いぬやまつむぎ [犬山紬織物の名称
絹織物の一つ。大正十年(一九二一)ころより愛知県古知野町付近で生産された紬。緯に生糸または山繭屑糸を利用。黒茶無地で男物羽織男羽織、兵児帯、コート地などに用いた絹織物。
   

・いねもん [稲文]文様名 →紋様のページへ   

・いばらきぎれ [茨城切]金襴の名物裂。白地に1.5cmと横1.2cmの三重菱の中に菊花一輪ずつを繰り返したもの。   

・いぶきぎれ [伊吹切]緞子の名物裂。花色地に太さ5ミリほどの角を十字、上下左右に貫き通した白い紋のもの。   

いへいおり[伊兵衛織]

織物の名称
伊兵衛織は、民芸運動発祥の地静岡県浜松市で織られている紬で、牛首紬と同様、当時屑繭とされた玉繭を手紡ぎした「玉糸」を使用している。大きな特徴は、一般の紬と比べ、4倍程の太さに撚りをかけた太糸で織り上げているところ。その厚めのしっとりとした風合いは、冬でも裏地をつけずに単衣仕立てで着られ、手軽にクリーニングに出せるという特筆すべき実用性を備え持っている。
   

・いまがわぎれ [今川切]金襴の名物裂。紺地に幅1.2cmほどの菱垣を金で織り出し、上紋に雲竜を3cmの大きさで表したもの。   

・いよがすり [伊予絣]織物の名称・愛媛県松山市
伊予絣とは、現在の愛媛県である伊予で織られる絣の一つ。伊予絣は平織りの紺木綿絣である。他の紺絣と比べて農村向けの大衆品といえよう。藩政時代、今出(いまず)で生産されたので今出絣といったが、産額が増大するにつれて、いつしか伊予絣とよぶようになった。盛んに生産されたのは明治末期から昭和初期までで、「久留米絣」「備後絣」と共に日本三大絣産地の一つに数えられながらも、現在では衰退の方向にある。
   

・いよかみこ [伊予紙子

織物の名称・愛媛県松山市
伊像国宇和島にいた泉貨居子が発明した厚紙はその丈夫さから全国に知れ渡り特に紙衣用紙として人気を博した。

 ・いよすだれどんす [伊予簾緞子]伊予簾緞子とは、名物裂の一つ。十数色の整然としたたて縞を緞子に組織したもの。文様は段替りに織られ、すなわち、黄色みの淡藍のよこ糸で梅花文を散らした部分と金色のよこ糸で細かな石畳文と宝尽し文を織り出した部分とに分かれている。名物茶人伊予簾の任務(しふく、茶器を入れる袋)に用いられたと伝えられ、この名をつけられている。    

・いれかたびら [入帷子]昔、小袖をしまうとき包んだもので後世の袱紗(ふくさ)または風呂敷のようなもの。   

・いれかわりもん [入替文]文様名 →紋様のページへ   

・いろあげ [色揚げ]普通の染め直しはいったん白生地の状態に戻しその上に新しく染色するが、色揚げは、褪色(たいしょく=いろがあせる)した染め物を染め直すこと。同系の濃色をかける場合と、暗色に染める場合とがある。    

・いろあわせ [色合せ]きものと帯、帯と帯〆、羽織ときもの、きものと半衿や裏地、下着や履物、バック類など、すべての調和美を考えて、色彩効果を上げるように調整すること。染色上の用語では、見本の色相と同じ色に染め上げることをいう。何度も色袷をして見本の色を出すようにする。   ・いろえり [色衿]色物の半襟のこと。白半衿に対していう。戦前の半衿は色衿が多く、刺繍や絞りが施されていたが、戦後は白衿がおおくなった。これには、髪型や化粧の変化が大きく影響している。しかし現代では色衿も広く愛用されている。   

・いろおおしま [色大島]絹織物の一種。色物の大島紬のことをいう。元来大島紬は、藍大島、泥大島、泥藍大島であるが、流行や好みに応じて多彩な大島紬も織られるようになった。これらを総称して色大島とよんでいる。   

・いろがすり [色絣]色絣とは、紺白の絣に、他の色を配して織ったものをいう。絣はかすったような模様が特徴である。   

・いろぎぬ [色絹]「糸好絹」を時色、クリーム色、浅黄色などに染め上げたもの。裏地として使用するほか、幼児の宮参り用産着の下着などにも使用する。   

・いろさし [色差し]型染め、友禅、更紗(さらさ)などの小部分に色を小刷毛や筆で加えること。糊置きをした上に加える場合と、仕上げ後で加える場合とがあり、仕上げ後のものを後差し(あとざ)し、手付け紅ということもある。    

・いろたび [色足袋]色足袋とは、色染めされた革や裂(きれ)の足袋。慶長(1596~1614)のころに描かれた風俗絵屏風の「豊国大明神臨時祭図」などによれば、男はうす茶、焦げ茶、金茶、水色、萌葱、卵色、紫など、女は紫、うす茶、卵色、水色など種々の色足袋の用いられていたことが知れる。昨今では男の黒足袋のほかは、色足袋は多く年配者の普段ばきとなっている。   

・いろとめそで [色留袖]きものの名称。黒地以外の色地の裾模様の総称。民間では黒留袖が第一礼装だが、宮中では色留袖が用いられている。黒留袖は既婚者だけが着るが、色留袖は未婚者も着ることができる。五つ紋、三つ紋、一つ紋があり、紋の数によって着物の格が決まる。  

・いろなおし [色直し]結婚、出産、葬儀のときは白無垢を着ることが、古くからのならわしであったが、その後で色物のきものに着替えることを色直しといった。現在では、結婚式の当日、新婦が式服を脱いで別の衣服に着替えることを言う。最近では一種の演出として二回も三回も色直しをすることもある。   

・いろながしぞめ [色流し染]色流し染めとは、染色法の一つ。顔料や染料にアルコールなどを加えて染液をつくり、水の上にたらして緻密な木目状や波紋状に乱し、紙あるいは布ですくい上げるか、上から布を当てて染める技法。「墨流し染」も墨汁を用いたこの方法。   

・いろなき [色泣き]色泣きとは、染め色がにじみ出して他の色と重なってしまうことをいう。「泣き」は、にじむ、しみるなどの意味。   

・いろぬき [色抜き]染物から色を抜き取ることをいう。普通染め替えをする場合は、薬剤(ハイドロサルファイト)を用いて脱色するが、絹のきものに用いる染料は、直接染料と酸性染料が多いため、色抜きは比較的簡単である。   

・いろのり [色染料を混ぜた糊のことをいう。また、もち粉や米ぬかなどの天然の糊料(元糊〈モトノリ〉)に染料を合わせて作る。写し糊、友禅糊ともいう。       

・いろふりそで [色振袖

きものの名称。地色の重い黒振袖に対して、地色がいろものの振袖を色振袖という。

・いろみほん [色見本]基本となる色、あるいは染料を操作するための標準となる色相や濃度、色合せの割合などを示す目的をもってつくられた染色の見本帳。色名、染料、操作方法を併記してあるものが多い。誂(あつら)え染めの注文取りの目的につくることもある。  

・いろむじ [色無地]

黒以外の色の一色無地染のきもの。紋綸子のような地紋のある生地を用いることが多い。色無地のきものは紋をつけて、吉凶両用の準礼装や略礼装として用いることができ、黒無地は染抜きの五つ紋をつけて礼装の喪服として用いる。

・いろめ [色目]配色による色合いや、色調のことをいう。また、単に色彩の名称をいう場合もある。奈良時代より前から衣服の色によって階級が決められていたが、平安時代にはその傾向が一層強くなり、一般庶民は使用することができなかった。またこの時代は、衣服を何枚も重ねて着る習慣があり、その色の重なりを襲色目(かさねいろめ)と呼んで重視された。襲色目には桜襲、菊襲など数多くの種類があった。   

・いろもんつき [色紋付]一・三・五つ紋などの家紋を付けた、色無地のきもののこと。     

・いわいおび [祝い帯]祝い帯とは、妊娠5か月めに、女性が胎児を正しく保つ目的で締める木綿の白い布をいう。岩田帯に同じ。    

・いわいぎ [祝い着]祝い事のとき着るきもののことである。現代ではお宮参り、七・五・三、十三参り、還暦祝いなどに用いられる。 

 ・いわいずみなんぶつむぎ [岩泉南部紬]織物の名称・岩手県下閉伊郡岩泉町
クルミ、キワダ、その他の草木を染色の原料とするほか、化学染料による先染加工(手織)をし、男女物の着尺からアンサンブル、帯まで生産し販売しています。手織紬特有の優雅にして自然の風格、軽やかにして温かい肌ざわりと強靭で着崩れない格調の高い製品として好評を得ています。南部紬は藩政時代から領内各地において生産され、ムラサキ・アカネなどの野草を原料として縞に先染めした素朴な織物でだったが、染原料の野草が消滅するにつれ白地のまま販売されるようになりました。今は紬を織る人も少なくなりましたが、南部紬を復活するため、昭和43年に三陸製糸(株)で取り組まれましたが、昭和62年に工場閉鎖となり、現在は数名によって生産されるのみとなっています。
岩手県岩泉町や花泉町で織られている美しい縞柄の紬で、玉繭をつむいで高機で織られています。また糸染めは紫根染めで行われているために南部紫根染めとも言われ、色調は紫系が中心になっています。
   

・いわいばかま [祝い袴袴の一種で、七五三の五歳の男児がはく袴のことをいう。紋織りや縞の袴が一般的だが、羽織と同じ熨斗目模様の羽二重を用いる場合もある。   

・いわいゆうぜん [祝い友禅七五三など子供のお祝いのときに着る友禅染のこと。  

・いわくにちぢみ [岩国縮織物の名称・山口県
山口県岩国地方で生産されていた綿縮(めんちぢみ)の一種。寛延(かんえん)年間(1748~51)に富山秀意が丹後縮緬(たんごちりめん)の製法に倣い、木綿に応用して綿縮をつくりだしたことに始まる。天保(てんぽう)年間(1831~44)から岩国縮の名称で知られるようになり、明治以後も地場産業の一つとして盛んであった。第二次世界大戦前の綿縮は、義済堂(ぎせいどう)のものが著名であり、経糸(たていと)に32番手、緯糸(よこいと)に20番手の左右強撚糸(きょうねんし)を使用していた。
   ・いわたおび [岩田帯]岩田帯とは、斎肌帯(ゆはだおび)、結い肌帯ともいい、妊産婦が5か月めから締める帯をいう。さらし木綿を用いるが、初生児の場合は嫁の里から贈られるが、嫁の里では安産祈額のため神社に詣でて、これを受けてくる場合が多い。多くの場合、最初産婆が締めてくれるが、この帯の目的は生理的現象というよりは、古くは呪術的な行為から出ていた。岩田帯を締める祝いを帯祝いともいう。   

・いわてほーむすぱん [岩手ホームスパン]織物の名称・岩手県盛岡市
手で紡いだ羊毛を草木染にしたホームスパン。
明治初期に緬羊の飼育が開始され、イギリス人宣教師に織法を教わったのが始まり。大正から昭和にかけ梅原乙子が生産と普及に尽力、すぐれた製品として県の特産品と認められ、現在に至る。
   

・いわみしふ [石見紙布]織物の名称・島根県
平安時代中期の藤原明衡の随筆集『新猿楽記』に、地方特産品として石見紬を挙げているが、その詳細は幻の彼方である。優れた紬であったと思われる。その古を現代に復活させようとした人がいた。昭和63年、絹製糸の町・鹿足郡日原町(現・津和野町)の文化祭で石見紬復元の試作を実演したのは中井将善氏。当時すでに製糸界は中国・ブラジル生糸を輸入。日本の製糸業は斜陽。山陰地方唯一の生糸工場・石西社はまだ操業していた。その後の紬復元の経過は不明。また、製糸工場の石西社はすでに廃業した。現在は日原の絹を若い人々に伝えるべく、町立シルク染め織り館を設立。手織り教室では県内外の研修生が学んでいる。
   

・いわみつむぎ [石見紬]織物の名称・島根県
平安時代中期の藤原明衡の随筆集『新猿楽記』に、地方特産品として石見紬を挙げているが、その詳細は幻の彼方である。優れた紬であったと思われる。その古を現代に復活させようとした人がいた。昭和63年、絹製糸の町・鹿足郡日原町(現・津和野町)の文化祭で石見紬復元の試作を実演したのは中井将善氏。当時すでに製糸界は中国・ブラジル生糸を輸入。日本の製糸業は斜陽。山陰地方唯一の生糸工場・石西社はまだ操業していた。その後の紬復元の経過は不明。また、製糸工場の石西社はすでに廃業した。現在は日原の絹を若い人々に伝えるべく、町立シルク染め織り館を設立。手織り教室では県内外の研修生が学んでいる。   

・いんかふ [印花布・印華布]500年以上の歴史を持つ、中国の代表的な藍染めの布の一つです。模様を彫った型紙を布の上に置いて、ノリで防染して藍で染めます。
中国更紗を華布、唐華布、印華布と称するが、印花布は本来、更紗ではなく、中国庶民が着用する型染めの木綿布。竹の繊維を紙料にしてすいた厚紙に、桐油、豚油を塗布して型地紙をつくり、これに一枚型の模様彫りをほどこして型紙にする。大豆粉に石灰を混ぜた印花麺で型置き防染ののち、紺屋の藍がめに浸染して紺地に白の模様をつけたものを藍印花布、多色の色料で着彩したものを彩印花布という。
   

・インカもよう [インカ模様模様の名。南アメリカ、ペルーで栄えたインカ帝国(13世紀~16世紀)で生まれた模様。大要を神とする宗教と、非常に高度な文化を持っていた。綴織を中心とする織物や、生活用具の土器や木工品などに残る、素朴な模様を総称して、インカ模様と呼んでいる。模様のモチーフは擬人、動物、植物、魚、鳥などで、単純な線で表現されている。主に帯の模様として用いられている。   

・いんきん [印金]金彩加工技術の昔の呼び名,別名。
印金裂とは、布面に糊置き金箔を接着し糊から出た部分を掃き取って文様をあらわした裂。唐代に始まり宋代に盛行する。往時の技法の詳細は不明である。金欄とは異なり、羅、紗のように薄手の裂にも金箔で豪華な文様を表現でき、その文様も「織り」よりも柔軟なものにすることができる。日本には袈裟裂や打敷(仏壇、仏具などの敷物)として14世紀以降流入した。
   

・インディゴ(インジゴ)染料の一種。人工的に合成した藍のこと。天然の藍は原料となる植物の葉や茎から採取する青色染料で、還元作用によって可溶性として繊維に染めたのち、空気中で酸化発色する方法で染色する、建染(たてぞめ)染料の一種である。現代では合成によって人造藍として大量に生産されている浅葱色、紺色の堅牢な染料として広く用いられている。そのため、植物藍の使用は激減している。   

・いんでん [印伝]革染めの一種。鹿や羊のなめし皮に、染料や漆で模様を染め付けたもの。インドから伝わってきたためにこの名がある。江戸時代には革羽織や足袋などに用いられていた。現在は山梨県甲府市の特産品として有名である。   

・いんどさらさ [印度更紗]更紗の一種でインドで産する更紗のこと。主として多彩な木綿の染模様を意味する。ほかにはペルシャ、タイ、ジャワ更紗が有名。インド更紗は、わが国に最も古くから伝えられており、古渡り更紗といわれるものの中にはインド更紗が多い。藍染めが多く、ペーズリー模様が特色といえる。技法は手描きのカラムカリーとよばれるものと、パランポアと呼ばれるチーク材に模様を彫った木版捺染のブロックプリントがある。   

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この用語集は日本繊維新聞社「新語服に強くなる本」アシェット婦人画報社「きもの用語事典」等から引用しています。

 

・うえだつむぎ [上]
織物の名称長野県上田市
上田紬とは、絹織物の一つ。長野県上田市で産出する、縞柄を主とした紬織り着尺である。各地の紬産地と比べ、歴史的には古く寛文年間(1661~72)と伝えられている。縞織物で、上田縞ともいう。 厚地で丈夫な縞紬である。
起源は明らかではないが三百年ほど前から織られていた織物で、江戸時代の文化年間(一八〇四~一八一八)から天保年間(一八三〇~一八四四)にかけて最盛期を迎えた。京、大阪まで販路を広げ、上田から上方へ「紬飛脚」が仕立てられるほどの隆盛ぶりだった。また、当時の上田紬は藍染系の縞柄で、碁盤縞(格子縞)が主体だった。
明治以降衰退を続けたが、戦後、金井章次氏らの努力により復活し現在に至っている。
現在は、糸紡ぎも織もほとんどが機械化され縞柄も豊富である。
  
・うえつしなふ [羽越しなふ]
山形県/鶴岡市 、新潟県/岩船郡山北町・織物の名称
日本では、遠く縄文や弥生時代から山野に自生する科(しな)、楮(こうぞ)、楡(にれ)、藤(ふじ)、葛(くず)、苧麻(ちょま)などの草木から取り出した繊維で糸を作り、自家用として布に織り上げ衣装や装飾品などに利用してきました。明治、紡績技術の発展による綿製品の普及から多くの地域で生産されなくなりましたが、当地地域においては長く着流しや農作業等の仕事着として利用されるとともに、漁網、漉し布、敷布や収納袋としても流通していました。
     
・うかしぞめ [浮し染め]
浮し染めとは、色流し染めともいわれ染料または顔料を樹脂などのアルコール溶液に混ぜて水上に浮かせ、これを吹いたり針先で動かして流動模様をつくり、この上に紙または布を置いて色を吸いとらせて模様を染める方式である。墨を流したものは墨流し染めという。
   
・うきおり [浮織り]
経糸か緯糸のどちらかを地の布から浮かせて模様を織り出す技法です。模様の部分の糸が浮いて刺繍のように見えるのが特徴です。文様が刺繍のように立体感豊かだが、糸が引っかかりほつれ易いので注意。表袴、子供・若年者の装束、特に指貫などに使われる。
  
・うきもん [浮文]
古代紋織りの一種。浮織の文様のこと。紋の部分になる経糸を浮かして織り上げた綾織のもの。古来より綾地が多いため、浮線綾(ふせんりょう)とも呼ばれている。
   
・うこんげた [右近下駄]
下駄の一種で、高い歯を設けず、靴底のように台の底を平らにしたもの。昭和になってから作られたタイプで、アスファルトの道でも歩きやすいのが特徴。
   
・うこんぞめ [鬱金染]
染色の名。生姜科に属する、うこん草から採取した染料のなで、転じて色名となった。青味がかった強い黄色である。うこん草は西インドや中国の南部に産する多年草で、根茎を黄色染料に用いる。日本では沖縄などの温暖な地で栽培されている。
    
・うさぎもん [兎文]
文様名 →紋様のページへ
   
・うしくびつむぎ [牛首紬]
織物の名称・石川県/白山市
牛首紬の名は、その生産地である白山の麓の牛首村(現在の石川県白峰村)の地名に由来します。平安時代末期の平治の乱で敗れた源氏の落人大畠氏が、牛首村に逃れて来て山城をかまえた時、同行していた大畠氏の妻たちが機(はた)織りに優れていたため、その技を村の女性たちに教えたところから始まったと伝えられています。文献では江戸時代初期の「毛吹草」の記述が最初です。江戸時代後期には全国に広く販売されたと言われており、昭和10年前後に生産のピークを迎えました。
    
・うじょうつむぎ [烏城紬]
織物の名称・岡山県
大正初期から岡山市内で作られています。手紡ぎ、手織りのため繊維のばらつきが多く、独特の光沢と素朴な味わいを出しています。緯糸(よこいと)に生糸をより合わせて巻き付ける「からみ」と呼ばれる伝統の技で織り上げる。烏城紬は寛政10(1798)年、塩分に強い綿の栽培が盛んだった児島湾干拓地(現在の岡山市灘崎町)で起こった袴(はかま)地織りが始まりとされている。保温性に優れ、光沢のあるしなやかな感触が特徴で、現在は着物のほか、小物入れやテーブルクロスなどの生活品としても好評という。
   
・うしろおび [後帯]
近世前期において、背後で結んだ帯姿のことをこういった。既婚者は前で結ぶ前帯もあった。
  
・うしろなが [後長]
袴の寸法用語。袴の前丈(紐下)よりも後丈を長くする長さのこと。後長=後丈(腰板の付け根から裾まで)-紐下  体系により加減するが、普通の男子では行灯袴で8cm、襠付袴で8.4cm後長をとるのが標準。

・うしろひだ [後襞]
袴の後ろ側にある襞。男袴の見かけ上の後ろ襞は一つ、女袴は三つ又は五つ、神官袴は四つ。
   
・うしろみごろ [後ろ身頃] 
着物の身頃で、肩山から後ろ側の部分の名称。後ろ巾は背縫いから脇縫いまでの巾をいう。
    
・うすおめし [薄物御召]
糸づかいや織り方に工夫をこらし、盛夏用に作られる御召。さらっとした風合が特徴である。薄物の一種だが、絹や紗、上布のような本格的な薄物ではない。
   
・うすぎぬ [薄衣]
細い糸で織り上げた、薄い地風の絹織物の総称。絽や紗、透かし織りなどがこれにあたる。主に夏用の衣服に用いられる。薄御召もこれに属する。
   
・うずどんす [雲珠緞子]
雲珠緞子とは、名物裂の一つ。柄地に白茶より黄色みがかった藍までの緯糸で雲状の渦を織り出す。緯糸の変化で地色の変わるおもしろさをいかした近代的な造形感覚から、中国明代の製織と思われる。
   
・うずまきもん [渦巻文]
渦巻文とは、幾何学的文様のうち曲線文様の一種。<ruby><rb />螺旋(らせん)状に巻かれた曲線文様。未開の人類が本能的に描く表現形式の一つで、古代の発掘品に往々みられる。
文様名 →紋様のページへ</ruby>
  
・うすもの [薄物]
絽や紗、薄御召のように透ける布地の総称。経糸や緯糸の密度を粗くして、風通しを得ることと、色や柄でも涼感を工夫する。
   
・うすものじたて [薄物仕立て]
絽や紗などの薄物の仕立て方をいう。一般に薄物の仕立ては、縫い目がつれたり、伸びたりしやすく、透けるために縫い代の始末が難しく、高度な技術を必要とする。、透けても見苦しいくないように、肩当てをごく小さくしたり、居敷当てをつけず背伏せ布で背縫い代を包んだり、褄(つま)先を額縁などにしたり、羽織の裾は三つ折りにする。
   
・うずらおめし [鶉御召]
鶉御召とは、鶉縮緬(うずらちりめん)と同じ組織で織り上げるが、縮緬は後染めであるが、御召は先染めである。現在、生産が途絶えている。
   
・うずらちりめん [鶉縮緬]
縮緬の種類のひとつです。しぼが荒く大きいのが特徴で、「鬼縮緬」「鬼しぼ縮緬」ともいいます。
経糸は生糸で、緯糸に強い右撚りの糸を4~6本と、同じ本数の左撚り糸を交互に打ち込んでいきます。逆方向に撚られた糸が隣り合うことでしぼが生じます。この緯糸の本数が多くなるほど、しぼが大きくなっていきます。主に風呂敷や袱紗、化粧座布団地などに用いられています。
    
・うそつきじゅばん [うそつき襦袢]
一般に二部式襦袢や半襦袢の一種で、着用して見える袖だけを絹や化繊などの襦袢地を用い身頃を晒し木綿で作ったものをいう。
   
・うたえもんよう [歌絵文様]
歌絵文様とは、葦手文様と同じように、文芸的性格をもち、和歌をふまえたもの。ー首の意味を象徴的な形や絵様にするものと、その歌の一句の文字を書き入れる両様がある。成立は葦手文様とともに平安時代中期とされ、扇絵やその他の調度類にもほどこされた。
  
・うちあげ [内揚げ]
のちのちの必要に備えて、あらかじめ裏で縫い込んでおく長着の縫込み分をいう。たとえば男物長着は対丈に仕上げるので、仕立て直しの際、汚れた裾を切り捨てることができるように、帯の下になる位置に、6~10センチ内揚げをする。また女物長着では、衿肩を2センチ繰り越すために、後ろ身頃に4センチ縫い込むもの。丈が長すぎる場合は、前身頃もの縫込みをすることがある。それらを内揚げという。
  
・うちかけ [打掛]
近世武家女子の夏以外の礼装で、小袖の上に打ち掛けて着る表着〈ウワギ〉をさす。形は小袖と同形で、袿〈ウチキ〉からきた言葉といわれている。現在では、花嫁衣裳・舞台衣裳にのみ用いられている。四季の花を主体にした総模様のものが多い。関西地方では、かいどりともいわれている。
     
・うちぎ [袿]
婦人の古服の一種。平安時代の貴婦人の盛装で、広袖のきもの。袿の名は唐衣(からぎぬ)の下に着る内着、打ち掛けて着ることによっての名である。儀式などの晴れの日は、袿に裳(も)をつけ、唐衣を重ねる。常の日は袿を上着とする。
  
・うちぎばかま [袿袴]
婦人の古服の一種。明治以降の女官の正装。十二単から唐衣(からぎぬ)、裳(も)を略して長袴を切り袴にした装い。白小袖に緋の切り袴をつけ、単
   
・うちこみ [打込み]
織物の緯糸(よこいと)の密度のこと。「打込みがあまい」とか「打込みが悪い」というふうに、地風を表現する。

・うちひも [打ち紐]
打ち紐とは、組み紐と同じだが、やや古語に属する語。組み紐をつくるときに、へら状のもので、組み目を詰めるために打つことから打ち紐という。
   
・うちわもん [団扇文]
文様名 →紋様のページへ
   
・うつしぞめ [写し染]
捺染方法の1つ。写し・糊写しともいう。型紙を用いて、染料を加えた糊を布面にヘラで型付けし、模様を出す染色方法。手工捺染・型紙捺染と同様。また、筆や刷毛で写糊を布面に手描することもある。
     
・うつしのり [写し糊]
写し糊とは、色糊のことで、糊に染料などを混合し、布に直接模様をあらわすことができる。1880年前後に発明され写し友禅に利用、発展して現在は種々の捺染糊として応用されている。
   
・うつしゆうぜん [写し友禅]
写し友禅とは、手捺染友禅、型付け友禅、型友禅ともいう。本来の手描き友禅に対し、型紙を使い、染料を混合した写し糊によって模様を印捺し染め出す友禅のこと。
   
・うねおり [畝織]
平織りの変化組織。経糸か緯糸のどちらかを太くすることで布面に畝のような凹凸を表した生地。畦折とも呼ばれている。
   
・うねめしょうぞく [采女装束]
采女装束とは、大嘗会(だいじょうえ)、新嘗会(しんじょうえ)など儀式の際に奉仕する後宮女官を采女といい、その女官たちが着る服装を采女装束という。
  
・うばおくみ [姥衽]
鈎衽裁ち(かぎおくみだち)の一種で、片面物の総尺の足りない場合の処理法の一つ。鈎衽に裁つが、下前の衽はつまむ必要がある為、つまみの分長めに裁つ事。

・うぶぎ [産着・初着]
産衣とも書き、「うぶぎぬ」の略語。新生児に初めて着せるきもの。
          
・うまげた [馬下駄]
馬下駄とは、下駄の一種。一材でつくり裏を大きく六角形にえぐった連歯下駄の一つ。
   
・うまのり [馬乗り]
動きやすいように衣服の裾・縁(へり)の部分に入れた各種の切り開きのこと。スリットのようなもの。乗馬の際、両足の開きを楽にする為に切り開いたことからきた名。現代の和服では肌襦袢、柔道着にある。
   
・うまのりはかま [馬乗袴]
襠有袴・襠付袴・襠袴ともいう。乗馬の際、またぎやすく、馬上でスネを出さぬように襠を高くした時代もあったが、現在では30~36cm(8寸~9寸5分)の襠高が標準である。用尺は並巾で10m前後(2丈6尺~7尺)
   
・うめがえし [梅返し]
和服の表裏の取り合わせ方で、元禄時代、羽織の裏に紅梅色の生地を用いるのが流行した。

・うめぞめ [梅染め]
梅染めとは、梅の樹皮や根で染めること、および染めたもの。赤みのある茶色から黒みの茶色までを得る。室町時代より加賀の梅染めが有名。
  
・うめもん [梅文] 
文様名 →紋様のページへ
   
・うよくもんよう [有翼文様]
ゆうよくもんようとも読む。実在の生物としては、翼をもつことが考えられないものに、翼をつけた表現をしている文様である。古代において、天空は神秘に満ち、人々にとって、太陽や月は信仰の対象になることが多かった。その大空を自由自在に飛びまわることのできる翼は超能力を示し、地上の強力な獣や人体と結びつくことにより、いっそう迫力を増し、また神聖視されることとなった。

・うらうち [裏打ち]
伸縮の著しい布に、一定の張りを与えたり、その状態を保つために、裏に別布などを当てて、補強したりすること。絞りのしぼが失われないように、裏から薄地の布を当てたりする。
        
・うらうちじたて [裏打ち仕立て]
表布の裏に別布を張り、この二枚を一枚として仕立てる方法。絞り染地などは、この方法を用いて仕立てる。
   
・うらうめ [裏梅] 
文様名 →紋様のページへ
   
・うらえり [裏衿]
女物着物を広衿仕立にするとき裏衿をつける。布は胴裏地から裁ち合せる。裏衿の衿先には裾回しと同じ布をつける(衿先布) 絹、化繊、木綿、麻等の平織りの布が裏衿用として市販されている。夏物には絽を使う。
     
・うらぎぬ [裏絹]
生絹を精錬したものを裏絹という。裏絹には本耳と節絹の二種類があり、本耳は主に埼玉、福島で、節絹は群馬、長野、福島、茨城で生産する。節絹が玉糸を原料とするのに対し、本耳は正繭である。糸好絹と同じ。
   
・うらじ [裏地]
袷仕立ての表地に対し、その裏側に付ける布をいう。和服の裏地は普通、胴裏・裾回し(八掛)・羽裏など、それぞれ専用に織られている。裾回しには、着る人の好みや、表地との配色によって選び、無地・ぼかし染・柄物などがあり、羽裏は羽織を脱ぐことを配慮し、すべりがよく、色柄の美しい豪華な模様を染めた額裏をつけたものがある。また、表地を裏地として用いる場合もあり、無双と呼ばれている。
   
・うらじま [裏縞]
二重織にして裏を縞柄にした織物。洋傘地や広幅毛織のオーバー地などにも多いが、和服では「紗」のコート地などに利用することがある。

・うらづまもよう [裏褄模様]
江戸褄模様が表裾になくて、裏八掛の両褄にだけ付く模様のこと。
   
・うらもよう [裏模様]
きものの模様付けの名称。江戸時代後期に行われた、小袖の裏にのみ模様をつけたものをいう。江戸時代に幕府の倹約令で、着物の模様が地味になったため、反発心からでたもの。
     
・うらはく [裏箔]
きものの模様付けの技法のひとつ。絽や紗(盛夏用のきもの)のように透ける布地の裏から箔置きで模様を描いたもの。格調の高さと品のよさを感じさせる表現方法である。
   
・うらもよう [裏模様]
柄の付け方からの名称。  画像と解説はこちらへ
   
・うらもん [裏紋]
陰紋に同じ。表門に対する語で、紋の輪郭線を細い線で表したものをいう。略式の紋となる。
   
・うらやなぎ [裏柳]
襲(かさね)の色目で、表は白、裏が萌黄。
   
・うらやまぶき [裏山吹]
襲(かさね)の色目。表は黄、裏が紅または青、あるいは表が黄朽葉で裏が青の組み合わせ。
   
・うらくぎれ [有楽切]
織田有楽斉の秘蔵の緞子の名物裂。花色地に同じ薄色の細かい網目地紋を配し、その上に雲竜または雲鳳などの模様を飛紋に白く織り出したもの。

・ウールおめし [ウール御召]
絹にかわってウールで織った御召ということだが、しかし本来、御召は「御召縮緬」 のことである。つまり地が縮緬だが、ウール御召は縮緬ではない。ウール地に御召の感じを取り入れた先染のウール織着尺と考えれはよい。御召のイミテーションともいえるが、むしろ御召とはまったく別のもの、といったほうがよさそうだ。
   
・うるしいと [漆糸]
漆の箔を切断して、綿糸に撚りつけたもの。漆糸を模様に織り込んだ意匠白生地は、漆糸の部分が染めつかないので、後から好みの地色に染めることができる。また、帯地などに用いて金糸、銀糸に漆の光沢の豪華さを得る方法として利用されている。
   
・うるしはく [漆箔]
鳥の子紙(良質の和紙)に漆を塗った光沢のある箔。細く裁断して帯地などに織りこみ、豪華な効果を上げるために用いられる。
   
・うろこもよう [鱗模様/鱗型]
文様の名称。三角形が交互に入れ替わって、互いに地と模様の部分を構成する、幾何学的な模様である。重ね方で三つ鱗、五つ鱗などと呼ばれ、織物や染物の文様として古くから用いられてきた。厄年の女性が厄除けとして、鱗模様を身につける風習があった。能衣装では摺り箔で、鱗模様を表し(鱗箔)、女の執念を表す模様として、蛇身や鬼女の役柄に用いる。また、厚板にも使われ、鬼畜や悪霊に用いる。
   
・うわえ [上絵]
本来は仕上げの絵という意味で、下絵に対する語。きものに紋を描きいれること。白く染め抜いたところに、墨や顔料で紋を上書きすることをいう。これを職業にする人を上絵師、上絵屋という。
   
・うわえり [上衿]
「掛衿」のこと。「共衿」ともいう。

・うわかこう [上加工]
染色用語。染め上がった模様の上から、さらに胡粉や顔料で加工して、染め効果を高めることをいう。染め替えの技術でいう上加工は、もとの布地をそのまま生かして、その上から染加工をすることをいう。
     
・うわまえ [上前]
着物の部分名称。きものを着て前を合わせた時に上になる部分。左身頃の前身の部分。
   
・うわもん [上紋]
織物上に描き出す文様のことだが、特に二陪織物の地紋の上に配した文様を指す。
   
・うんかく [雲鶴]
模様の名前。雲と飛んでいる鶴とを配合した模様。おめでたい柄なので「丸帯」などに用いられる。

・うんげん [運]
暈し染めのこと。1つの色を濃色から淡色へ断層的に重ねて彩色する手法。また、1つの色以外にも、よく似た色を順に並べて仕上げる技法も、繧繝と呼ばれている。また織物で模様の色をこの式にくま取っていくものを暈繝錦と称する。
    
・うんさいおり [雲斎織]
備前の人雲斎が創始したという綾(あや)織の綿織物。津山などで作られた。ドリルともいう。現在は化繊,合繊も用いられる。小幅で地厚のものは丈夫で足袋底に用い(雲斎底),帆布や作業服にも適する。
   
・うんしゅうもめん [雲州木綿]
江戸後期、出雲の簸川地方では直江村(現・斐川町)では毎月6回、2と7の日に木綿市が立った。また、平田町(現・出雲市)の木綿市も賑わい、文政5年(1822)は約22万反の取引があり、京都の豪商三井家が多くを買付けていたと言われる。出雲平野の集落では主に素木綿(もともめん)の白木綿を主に副業で織っていた。白木綿の盛況で村々に表紺屋(おもてこんや=布を藍染する)が増加、明和8年(1771)の『出雲郡万指出帳』に紺屋22軒の記載。明治期の23年の雲州木綿は353,459反(島根県農商務統計表)まで上昇している。しかし手紡綿糸製の雲州木綿は明治17~18年から次第に減産、市場では紡績糸へと移行して行く。明治30年代に紡績糸による新商品「八雲縮」を伊野波村(現・斐川町)で考案したが、大正10年に商品は消えた。雲州木綿も大正年間に商品取引は終えたようである。
戦後、雲州木綿をしのぶように平田市(現・出雲市)で、昭和61年から土江弥生氏が平田木綿織りに取り組んでいる。
   
・うんもん [雲文]
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・えがいき [絵甲斐絹] 
無地甲斐絹の経糸に肉筆または型紙を用いて顔料で模様を刷り込みつつ、織り上げたもの。
  
・えがきぞめ [描き染]
「書染・描染(かきぞめ)」と同意語。
   
・えがすみもん [エ霞文] 
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・えがすり [絵絣]
緯糸で絵模様を織り出した紺木綿の絣です。主に久留米、広瀬、弓ヶ浜などの絣が有名で、民芸調の着尺としてつくられています。かつては布団地にも織られ嫁入り道具のひとつとされていた地方もありました。
織物の横幅と同じ木枠の両端に竹ぐしを並列させて、下に図案となる下絵を置きます。糸を竹ぐしにからめて下絵に合わせて墨打ちを行い、糸で括って防染を施して絵模様を織り出します。
   
・えーがた [藍型]
藍型の沖縄での発音。他の色彩を用いず藍一食で染める沖縄の型染め。藍型に対して華やかな色彩のものを紅型という。「藍型(あいがた)」
   
・えきがきぞめ [液描染]
「書き染」の一種で、ゴム液で直接模様を書いていくので、液の濃淡、厚薄の加減によって肉筆の筆運びの感じをそのまま表すことができる。
   
・エジプトもよう [エジプト模様]
古代エジプトの工芸品や日用品に多く見られる独特の模様。人間、牛、蛇、雄鷲、スカラベ、山犬などの動物模様やナイル川沿いに生えている葦に似た草のパピルスやすいれん、しゅろなどの植物模様、そして七宝、亀甲、鱗などの幾何学模様が代表的である。エジプトにはじまった植物模様は、その後に大発展した唐草模様のもとになっている。エジプトキリスト教美術として、ナイル川沿いの地域に産した織物のコプト模様は、現在も帯柄として用いられている。
   
・えちごがた [越後型]
戦後に北陸や信越、東北地方一帯で広く用いられた型染めの総称。主に木綿の藍染であるが、型紙は伊勢型が用いられている。
   
・えちごじょうふ [越後上布]
織物の名称・新潟県小千谷市
昔は越後(新潟県)の小千谷(おぢや)市、十日町市、塩沢町を中心に産する麻織物の一つであった。現在は六日町付近でわずかにつくられている。上布とは中布、並布に対する語で上等の麻織物という意であり、細い麻糸で平織りにしたもの。本来、麻には大麻(たいま)、亜麻(あま)、苧麻(ちょま。から、むしともいう)などがあるが、越後上布は苧麻を原料にする。苧麻の茎の皮をはぎ(青苧<あおそ>という)、手で紡ぎ、居坐機(いざりばた)で縞や絣(かすり)を織りだし、雪晒(ざら)しをする。夏用の高級着尺地で、その技法は古くから伝えられ、重要無形文化財になっている。
   
・えちごちぢみ [越後縮]
織物の名称・新潟県小千谷市
越後(新潟県)の小千谷市地方で生産される麻織物の縮です。
この地方で織られる越後上布の糸に、強い撚りをかけた縮み糸で織り上げ、しぼのある縮地にしたものです。越後上布と同じように、縞や絣柄の夏の高級着尺地です。
    
・えちごまんがんがすり [越後マンガン絣]
マンガン染の麻または綿糸を用いた染絣のこと。織絣と区別がつかないほど精巧な染絣である。大正4(1916)年、矢島丑松がマンガン化合物を染色に利用、マンガン絣を発明した。白絣がおもで、夏の着尺地に用いられている。
   
・えちぜんかみこ [越前紙子]
紙子は紙を糊と張り合わせ、その上に渋を引いたりするため、紙自体がこわばりやすくなります。これを柔らかくするには、張り合わせた後、渋を引いて から天日で乾燥させ、その後手でよく揉んで夜干しをします。翌日にはまた干 して、夕刻に取り込みまた揉みます。これを何回か繰り返して、こわばらない ように仕上げます。江戸後期には更紗染めや小紋染めなども行われ、防寒着や 布団地に使用されていました。江戸時代には各地に紙子が作られていましたが、現在ではほとんどが廃れてしまっております。
白石紙子(宮城県)  安倍川紙子(静岡県) 華井紙子(和歌山県)
美濃紙子(岐阜県)  越前紙子(福井県)   大和紙子(奈良県) 
安芸紙子(広島県)  土佐紙子(高知県)   伊予紙子(愛媛県) 
肥後紙子(熊本県)  八女紙子(福岡県)などがあります
   
・えちぜんすみながし [越前紙子]
墨と筆の伝来後、貴族のあいだでは、墨流しは遊戯として行われていた。越前の墨流しの歴史は仁平元(1151)年に、治左衛門が春日大社の神託をうけ「紅藍墨流し鳥の子紙製法」の秘伝を授かり、その製造に適する清水をもとめて諸国を遍歴、最適の水のある武生に定住し、初代・治左衛門となった。それ以来、墨流しの技法は一子相伝に伝えられ、現在の五十五代目の治左衛門にうけ継がれている。墨流しはもともと和紙の染色法である。布染への応用がなされたのは明治になってからのこととされる。
   
・えっちゅうがすり [越中絣]
織物の名称
綿織物で農村での作業着などに用いられた。
  
・えどこもん [江戸小紋]
江戸時代、武家の裃(かみしも)の小紋や、その技術を受けて民間の小袖、羽織となった単色型染め小紋をいう。1955年、文化財保護委員会が、とくに江戸小紋と名づけて、その染めの技術者、小宮康助(1882~1961)を重要無形文化財保持者に指定した。小紋を、小さな図柄のものと広義に解する場合、色差しをした型友禅小紋などと区別するためのよび名である。
   
・えどちゅうがた [江戸中形]
長板本染中形のこと。中形とは小紋や大紋に対しての文様の大きさを示す語。中形が木綿藍染の浴衣専用に染められたことから中形、すなわち浴衣といわれる。江戸中形は、江戸時代からの伝統技法の、長板染で行われるのが特徴である。
   
・えどづまもよう [江戸褄模様]
小袖の模様づけの1つ。長着の袖の褄に近い部分に模様を配置したもので、江戸後期からある。現在では、留袖の模様づけがこれにあたる。  
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・えどときもんよう [江戸解紋様]
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・えどむらさき [江戸紫]
一般に江戸紫というと、青みをおびた紫のことをいう。これに対して赤みを帯びた紫を京紫といっている。本来の紫に江戸の名をつけるのは、京都の京紅に対してのことで、紫染めは江戸が優れているというところからの表現。色そのものを指しているのではない。紫は古くから日本人に愛好されてきた色で、清少納言の『枕草子』にも「すべてなにもなにも、紫なるものは、めでたくこそあれ、花も色も紙も」とあるし、『古今和歌集』には、紫草が武蔵野の名花とされていたことが残されている。紫は紫草の根と藍に染めていた。江戸時代の末期までは、神田紺屋町に紫染を専門にする紫屋があったが、明治初期に合成化学染料が輸入され、紫草による紫染が衰退してしまった。
   
・えぬき [絵緯]
紋織物の色模様をあらわすため、緯糸(よこいと)として用いる色糸や金銀糸のこと。「色緯(いろぬき)」 「縫取糸(ぬいとりいと)」「色糸(いろいと)」などともいう。縫取御召などにも使われている。
  
・えぬきおめし [絵緯御召]
緯糸に使う色糸のことを「絵緯」というが、この絵緯を用いて模様をあらわした御召。また「絵抜御召」と書くこともある。
  
・えば [絵羽]
絵羽は、模様のつけ方、縫い方、模様そのものなど、広範囲に用いられる言葉で、絵羽模様は、生地を染める前に白生地を裁断してから、キモノの形に仮縫いし、背や脇、衽、袖などの縫目を渡って模様が続くようにしたものをいう。この時の仮縫いすることを絵羽縫・仮絵羽仕立てといい、これの良し悪しで次の模様づけに影響を多分に与えるので、重要な工程といえる。現在の振袖・留袖・訪問着・羽織などがこれにあたる。
    
・えばおめし [絵羽御召]
模様を絵羽づけにした御召のこと。絵羽とは、きもの全体を一枚の画布にみたてて模様づけしたもので、もともとは染めのきものに対して行なわれる抜法である。御召を豪華にするため、織模様を絵羽にしたものだが、生産量は少ない。
  
・えばおり [絵羽織・絵羽羽織]
白生地を仮縫いし、縫目に渡って模様を染めた羽織。長着の絵羽づけ同様に、模様が一続きになっているもの。
    
・えばぬい [絵羽縫い]
仮絵羽に対する言葉。下絵羽ともいう。絵羽付けをする前の工程の一つ。絵羽付けする前に白生地を裁って、注文通りの寸法に仮仕立てすること。
     
・えばもよう [絵羽模様]
高級きものの模様付けの一種。模様がきもの全体に絵画的に展開されたもの。白生地のまま裁断して仮縫い(仮絵羽、絵羽縫いという)したものに、絵画のように模様を描く。下絵を描いた後、仮絵羽をほどいてから染加工、刺繍、印金などを施し、すべての加工が終わってから、また仮縫いしてから販売する。この方法で模様付けするものを、絵羽模様という。振袖模様、留袖模様、訪問着模様がこれに該当する。絵羽模様のきものは、ほとんどが礼装、正装用であるため、その模様は豪華絢爛で格調高く品位のあることが多い。
柄の付け方からの名称。  画像と解説はこちらへ
   
・えびちゃ [えびちゃ]
色の名前。明治の末期に女学生が用いた海老茶の袴がある。生きた伊勢海老の色である。
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・えびもん [海老文]
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・えぼしちりめん [烏帽子縮緬]
縮緬の緯糸に縮緬二本と平糸二本を交互に打ち込み織り上げたもの。
   
・えもん [衣紋]
着物の着付けの事。公家の装束の着付けから起こった言葉。江戸、明治時代の小袖になっても着付けの事を「衣紋を着付ける」「衣紋をつくろう」「衣紋をとる」といった。元は襞をきれいにとって身体にぴったり着せ付けるという意味。衣紋つき、衣紋風、衣紋を抜く、という言葉は衣服の着付け方をいったもの。室町時代「のけえもん」といって衿の後を深く下げてきた事から出た言葉は、現在の抜衣紋として残っている。
   
・えもんかけ [衣紋掛け]
着用後のキモノをかけて、風を通したり、しわを伸ばしたりするための道具。折り目を正しくするためにも用いられる。和服用のハンガー
     
・えもんぬき [衣紋抜き]
長襦袢の半衿と一緒に縫い付けて着付けを楽にする小道具。衣紋を抜く際に生地を傷めず抜く事が出来る。また着崩れした場合にもそれだけを引っ張ることで、直す事が出来るので便利。
  
・えり [衿]
衣服の首回りにあたる部分の名称をいう。長着の衿には掛衿があり、掛衿には、長衿と半衿がある。江戸時代の長着の掛衿には、ちりめん・ビロード・黒襦子・紋塩瀬などの美しい生地が使われていた。また、襦袢の半衿には、羽二重・ちりめん・絽・紗・絞り染などの絹織物が用いられてきた。また、掛衿はキモノの衿を補強する働きもある。現在の長着には、共通の掛衿を掛けるので、共衿とも呼ばれる。
    
・えりあて [衿当て]
あらかじめ衿に当てて汚れを防ぐ布のこと。
   
・えりうら [衿裏]
衿の裏側のこと。
   
・えりがけ [衿掛]
昔は、旅行などで出かける場合、衿の中に護符(ごふ)、金銭など大切なものを縫いこんでおく習慣があり、これを衿掛といった。
   
・えりかたあき [衿肩明き]
裁縫用語。長着、羽織、長襦袢などの肩に衿を付けるため、あらかじめ裁ってあけたところ。衿の下端の部分のことをいいます。この部分に衿がつきます。通常、男物9cm、女物5センチくらいです。
   
・えりさき [衿先]
着物の部分名称。きものの衿の下端の部分をいう。または女物の袷長着の衿裏の下端につける衿先布を、単に衿先ということもある。これは裾回しと同じ布を用い、普通は衿裏に接ぎ合わされる。
    
・えりじ [衿地]
婦人用襦袢の衿にかける布地。いわゆる「半衿地」のこと。また丹前の衿にかける黒の「繻子」や黒「琥珀」のことをいう。これは普通幅3寸(11.4cm)、長さ6丈(23~24m=疋)のものである。
   
・えりした [衿下]
きものの衿付け止りから衽(おくみ)の褄先(つまさき)までの長さ、およびその部分の名称。
    
・えりしん [衿芯]
和服え用いる衿芯には、きものの三つ衿芯、羽織、長襦袢(じゅばん)の衿芯がある。きものは縫込み分の皆無な衿肩回りに晒(さらし)などを入れて、出来上がりの衿の厚みを一様にする。羽織は衿のかたさと重さを増し、なお、表布が縮緬(ちりめん)や絞りの場合の伸びや垂れを防ぐために新モスなどを入れる。長襦袢には衿肩回りに、かたさを保つために帯芯程度のものを入れる。
   
・えりたけ [衿丈]
和服の衿の背中心から衿先までの長さをいい、時にはその二倍、すなわち一方の衿先までの長さをいうこともある。
    
・えりどめ [衿留]
きものの着付け用具の一つ。衿元の崩れやはだけるのを防ぐために使うクリップ状の金具。現在は男性用だけが使用されている。
   
・えりまき [衿巻]
和装、洋装ともに防寒用として首の部分に巻く布で、明治時代中頃までは男女とも四角形の毛織物の無地や紋織、またはメリヤスなどを用いていたが、次第に男子用は幅が狭く長いものを用いるようになり、最近はマフラーと呼ばれているものに変わった。婦人用は肩の部分まで覆うショールが中心となり、春のレースショールなど防寒用よりむしろ装飾品に近いものもあらわれていろ。毛皮風のシール織、ビーバー織、毛織のモヘアや毛糸手編みなど和装ショールの種類は多い。
   
・えるむゆーからおり [エルムユーカラ織]
北海道の手紬。「エルムユーカラ織」アヤ錦は、北海道の自然とアイヌ、ギリヤーク、オロッコなどの先住民族が伝承した文様文化を織り混ぜて、近年旭川で製作され始めたもので、ユーカラ織独特の色を作り上げている。技法は金糸・銀糸で織る錦織であるが、絹に代えて北海道のすぐれためん羊の毛を素材にしたのが特徴。一部に寒冷地にしか育たない亜麻が使われている。初めは家庭の主婦などの趣味としてネクタイなどが作られていたが、最近ようやく帯地、茶羽織などが製織されるようになった。
   
・えんじ [臙脂]
色の名前。サボテンに寄生する臙脂虫(コチニール)の分泌物から製した染料で染めた色。赤茶系の色。
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・えんしゅうつばき [遠州椿]
文様の名称。椿の花を図案化したもので、きもの、帯、羽織などに用いられる。名称の由来は明白でない。一方、遠州緞子は、名物裂の一つで石畳文である。
  
・えんぶたぞめ [鉛蓋染]
防染剤を用いて模様や文字を白く染め残すかわりに、生地に直接型紙を置き、その上から色糊を塗って、一度乾かした上で布全体を蒸し、着色させ、水洗いをして仕上げる簡単な染色法で、のぼりや袢纏などの大型で簡単な染に用いられる。
  
エンブロイダリーレース
刺繍レースのこと。生地に穴を開けてその周辺に刺繍を施し柄を作るもの。盛夏着尺や羽織用に用いるレースの多くはこれである。

・お [苧・麻]

大麻、苧麻(ちょま)などの繊維の総称で、「お」とも「あさ」ともいう。

・おあつらえ [お誂え]

着物を自分の好みに合わせて、染め上げたり仕立ててもらうことをいいます。

・おいだち [追裁ち]

裁ち方の一種で生地が一定方向に向くようにする裁断方法をいう。追裁ちしなければならないケースは、①柄の向きが一方向きの場合。②縞柄で、縞が反物の片側に寄っている場合。③うるし、金銀糸等の織物の場合。④ビロードで毛の向きにより光沢が違う場合。④絞りで向きの違う場合。

・おいたまつむぎ [置賜紬]

織物の名称・山形県/米沢市、長井市、西置賜郡白鷹町
置賜紬は、この地区で生産されている織物すべての呼び名です。その種類は米琉板締小絣、白鷹板締小絣、緯総絣、併用絣、草木染紬、紅花紬がありますが、いずれも糸を先に染めてから織る先染めの平織(ひらおり)です。

・おいわいゆうぜん [お祝い友禅]

七五三などの子供のお祝いごとで、お宮参りをするときに着る友禅染のきものの総称。

・おうぎ [

扇子ともいう。涼をとるため、儀礼用にも使われ、和装の正装には吉凶を問わず用いる。末広と呼ばれるのは中啓の形の扇からでた言葉。地紙が金色に塗られたものを礼装の時や花嫁が持つのは金色には破魔除災の力があるとされるため。持つときは金色の側を相手に向けて持つのが作法とされる。

・おうさかぎれ [逢坂切

金襴の名物裂。赤鳶または花色地で金糸を用い竜および七星を織り出したもの。逢坂丸壺という人が覆袋として愛用したことでこの名がある。

・おうみじょうふ [近江上布]

織物の名称・滋賀県/東近江市、愛知郡愛荘町、犬上郡多賀町
近江上布は、「緯糸絣」と「経緯併用絣」があります。緯糸絣は主に緯糸を羽根巻にして「型紙捺染(かたがみなっせん)」を行います。また、経緯併用絣は両糸に「櫛押捺染(くしおしなっせん)」をし、経糸と緯糸の絣を合わせながら織るので最高級品となります。麻は、水気を良く吸うので、身に付けると涼しく爽やかな着心地です。

・おうみちぢみ [近江ちぢみ]

織物の名称・滋賀県愛知郡
伝統ある技術によって織り上げられた麻生地の欠点と言われるシワを生かす為、昭和初期にしぼ取り板上で手もみ作業による“シボつけ”(ちぢみ)が考え出された。ちぢみ加工独特の凹凸により肌離れが良く、麻が持つ吸湿、放散性をさらに高めました。感触は湿度が高く吸汗性、爽やかさが求められる日本の夏に最適です。
ヨコ糸に「つや」「しゃり感」をもたらす特殊加工や、種々のかすり染めをし、強撚を施して捺染された、タテ糸のかり糸を「ほぐし」ながら織り上げます。このため「ほぐし」織りと云われます。
織りあがった布は、ぬるま湯に浸したあと手で揉むと、撚り糸の作用で独特の凹凸「しぼ」ができます。そのあと乾燥して、巾を整え近江ちぢみとして完成します。

・おうみまふ [近江麻布]

滋賀県の神崎、愛知・犬上各郡で生産される麻織物の総称。徳川期享保年間の創製で手紡ぎ糸によって絣生地や蚊帳・畳べりなどが織られていた。明治になって機械糸が使用されるようになり、夏季の絣着尺地・蚊帳地、座布団地などが生産されているが、最近では夏の着物の需要の減退により長襦袢地にやや人気がある程度である。

・おうみもめん[正藍染・近江木綿]

織物の名称・
正藍染は、昔、阿波特産の葉藍を原料とした紺染であったが、その後四国の葉藍(はあい)を当地で栽培、その染め上がりは従来のものとは異なり、光沢および堅牢さに独特の味を発揮し、名声は全国に及んだ。近江木綿は、染織した糸を手織ったものである。最盛期の大正年間には各農家で織られていたが、現在では一軒だけになった。現在も藍の栽培から発酵、染色、織りまで昔の技法が守り続けられている。ハンカチなどの藍染体験も行われている。

・おうめじま[青梅縞]

東京・青梅地方で産出した縞柄で、享保年間に信州上田縞を倣って縞紬を製織したもの。

・おうめわた[青梅綿]

着物用中入れ綿の名称。きもの一枚分の容量として30~50匁(140~180g)くらいの綿を三枚に綿打ちしてひと包みとしている。徳川時代、青梅の綿打ち職人により作られたのでこの名がある。関西では「小袖綿」と呼ぶ。

・おおいしからいとおり[大石唐糸織]

織物の名称・山梨県都留郡河口湖町 
黄縞が主体の厚手で重めの絹織物。河口湖畔では天保年間(1830~1844)に、すでに黄縞の紬織が織られていた。明治に入り、経糸に撚糸を使う甲州唐糸織の技法が導入され、大石唐糸織が生産されるようになった。現在でも、昔ながらの一貫作業により生産されている。唐糸(可良糸)とは中繭と玉繭の諸撚糸のこと。

・おおうちぎ[大袿]

袿とは公家装束のひとつで、「大袿」は裄・丈を大形に仕立てた袿(うちぎ)のこと。禄(下賜品)として用いられた。裄・丈などが大きいもので、着用する時には仕立て直す。

・おおうちぎり[大内桐]

金襴の名物裂。紫、白、丹、茶、花色などの種々の地色があって、9cmほどの桐唐草を金で織り出し、その蔓太く枝葉がある。大内義隆が明(中国)に依頼して織らせたものという。

・おおうちびし[大内菱]

唐菱ともいう。元禄時代に流行したもの。大内氏の菱紋。

・おおくらぎれ[大蔵切]

金襴の名物裂。地は花色、赤、萌黄、白、浅黄などの5色の1.5cmほどの石畳の地紋に、5cmほどの竜の丸の金で織り出したもの。

・おおしまつむぎ [大島紬]

絹織物の一種。鹿児島県奄美地大島が発祥の、絹平織りの高級着尺地のこと。紬としては結城紬と並ぶ代表的なものである。第二次大戦中、島から工人が鹿児島市に疎開し、そのまま鹿児島で作られるようになり、現在では奄美大島の名瀬周辺と鹿児島市が主産地。昔は、真綿から紡いだ紬糸で織られていたが、現在では絹撚糸が用いられている。
大島紬は、島に自生する植物、テーチギ(車輪梅)を染料とし、泥で鉄媒染する糸染(一般に泥染といわれる)で知られ、独特の黒褐色の地色が有名である。しかし、その他にもさまざまな種類があり、泥染だけの泥大島、藍染の糸で織った藍大島、藍染と泥染併用の泥藍大島のほか、多彩な色大島や白大島(地が白で模様を色で織り出したもの)がある。また、薄地に織った夏大島もある。

・おおだいみょう[大大明]

竪縞柄で、大明縞の大きなものをいう。

・おおだち [大裁ち]

裁縫用語。本裁ちともいう。一反の反物を使って裁ったきものの意。大人ものの長着の裁ち方で、子供ものの小裁ちや中裁ちに対する語。

・おおふりそで [大振袖]

振袖は未婚女性の第一礼装であるが、振袖の中で最も袖の長いもの。またはその袖のことをいう。本振り袖とも呼ばれている。ほかに中振袖、小振袖もあるが大振袖が最も格が高く、花嫁のお色直しにも用いられる。大振袖の袖丈は、110から120cmぐらいある。着る人の身長に合わせて袖丈を決めるが、大振袖は着付けてから手を下げると袂の丸みが、足のくるぶしあたりまでくる。最近は女性の体格がよく、大部分が大振袖になっている。文様や染の技は、さまざまなものがある。

・おおうちぎり[大内桐]

藍以外の染料で「引染」「摺り染」「書染」などを行うことをいう。藍壺(昔は地面に埋めた)で「浸染」するのに対して地上で染めるところから出た言葉。

・おかもめん [岡木綿]

綿織物の一種。愛知県知多地方が主産地なのだが、栃木県真岡地方一帯に産する真岡木綿を模して製織されたための呼称である。単に岡とも呼ばれている。中形(浴衣)の原反となる白生地木綿である。

・おがわぎぬ[小川絹]

埼玉県小川地方に集散する生絹で、経緯とも本絹糸使い糸好(いとよし)、緯の玉糸使いを散好(ちりよし)、その他を小節といい、後者を玉絹、本絹製を小川絹という。主として裏地用。糸好絹参照。

・おきたまつむぎ [置賜紬]

→おいたまつむぎ。長井紬参照

・おきなごうし [翁格子]

模様の名前。太い格子の間に細かい格子の交錯したもの。

・おくしま [奥島・奥縞]

棧留縞(さんとめじま)、唐棧(とうさん)の一種。紺と樺茶との竪縞の綿織物。長崎の外人居留地奥島からこの名が付いたとされる。

・おくみ [衽・袵]

左右の前身頃につけた半巾の布の事。着物の前を合わせるのに便利なようにしたもの。小袖の発生と共につけられるようになった。

・おくみさがり [衽下がり

着物の前身頃の衿肩明きから衽先までの寸法。女物23センチ、男物19~21センチが普通。

・おくみさき [衽先

剣先ともいう。衽(おくみ)の上部、前身頃と衿付線に挟まれ、三角状に尖ったところ。

・おくみはば [衽巾

衽の裾の部分の幅。男物15、5センチ、女物15センチが標準寸法。

・おくりぼし [送星]

型紙捺染で記事を長さの方向に型紙大ずつ染めていくとき、連絡する模様の継ぎ目を正確にするために型紙の四隅にうがつ子孔をいい「合せ星」ともいう。生地の上にはたえず2個の小さな点が染めつけられることになり、それを目印にして次の捺染が行われる。

・おけしぼり [桶絞り

絞り染の一種。模様の周囲を縫ってから引き締め、染めるときに染液に浸さない部分を桶の中に入れ、しっかりとふたをしてから桶のまま染液に入れて染める方法。桶の中の部分の防染ができ、桶の外に出ている布は染まるので、多様の絞り染めができる。桶締め、桶上げ絞り、桶染ともいう。

・おこそずきん [お高祖頭巾

頭巾の一種。女性が顔を隠すためや、塵除け、防寒に用いた頭巾。高祖日蓮の像の頭巾に似ているところからこの名がある。また着物の袖の形に見えるところから、袖頭巾とも呼ばれている。

・おそめおび [お染帯

帯の名称。麻の葉模様の緋鹿の子絞りの帯で、両端に4~5cmの黒繻子の縁をとった鏡仕立てのもの。江戸の中期、大阪東堀の油屋太郎兵衛の娘・お染が、丁稚の久松と心中した事件を、歌舞伎が取り上げて上演した際に、お染が締めていた帯から有名になり、この名がある。

・おたいこ [お太鼓]

普通の帯結びで結び上げたとき、背中に出る部分。

・おたいこがら [お太鼓柄]

帯の模様づけの一種で、背のお太鼓の部分と前胴の部分だけに、模様をつけた帯柄のこと。

・おたいこむすび [お太鼓結び

女帯の結び方、17~18歳以上の女性の正式な結び方で、文化14年東京・亀戸天満宮の太鼓橋再建のとき、帯の結び方に太鼓の形をとったのに始まるという。

・おぢやちぢみ [小千谷縮]

織物の名称・新潟県/長岡市、小千谷市、十日町市、北魚沼郡川口町 
小千谷縮(おじやちじみ)とは、新潟県小千谷地方で産する麻の縮織をいいます。江戸初期、播州明石の堀次郎将俊が小千谷で明石の縮織の技法を改良して創案したと伝えられる。

・おぢやつむぎ [小千谷紬 ]

織物の名称・新潟県/長岡市、小千谷市、十日町市、北魚沼郡川口町
江戸時代中期に始まった養蚕とともに紬織物は始められました。江戸時代後期には、現在の群馬県にあたる上州や京都等の織物の盛んな所から生糸商人が商談に訪れるほどの産地でした。くず繭を使った紬は自家用として織られたもので、小千谷縮の技法が使われていました。紬織物は小千谷縮に隠れた存在でしたが、昭和の初期には本格的に紬の生産が始まりました。紬糸に改良を重ねて、現在の紬織物の基本が出来ました。

・おつい [お対

和服では、長着と羽織を同じ布地で仕立てたものをいう。単に対ともいう。

・おとこおび [男帯

男性用の帯のこと。兵児帯と角帯の二種類だけである。女帯は機能的なものの他に、装飾性を重視するため多種多様であるが、男帯は実用面のみで、付属品は一切ない。兵児帯は片輪や総輪結びにして、普段着に締めるが、角帯は一般的に貝の口に結び、礼正装に用いる。

・おとこじたて [男仕立て]

男性の専門家によって仕立てられた長着、羽織、帯、袴のことをいう。

・おとこじたて [男仕立]

男性によって仕立てられる事及び、仕立てた衣服をいう。また、男仕立の流儀で学んだ女性の仕立て士のそれも同様に男仕立てという。

・おとこばおり [男羽織]

羽織の一種。女羽織に対する語で、男性用の羽織のこと。女羽織に比べて、袖が身頃に縫い付けられ、振りがないことが仕立て上の相違点である。女性の羽織は無地に一つ紋をつけて略礼装に着る以外は、おしゃれ用か普段用だけであるが、男性の場合は紋付羽織袴が正装である。

・おとこばかま [男袴]

袴の一種。男性用の袴のことで、女袴に対する語。マチのある馬乗り袴のことである。他に略式仕立てでマチのない行灯袴がある。

・おとしぞめ [落染]

「霜降染」ともいう。平板の上に生地を広げて染料を浸した刷毛で、目の細かい金網または篩(ふるい)の網目を擦り塗料を霧雨のように落して染める方法。布面に型紙や木の葉などを置いておくとその部分だけ白く残すことができる、二度、三度重ねて濃淡をつけたり二色、三色を合せて霜降り調にしたり、いろいろ応用できる。

・おとしばり [落し針]

裁縫用語。しつけをかける際に用いる縫い方で、糸の渡り巾が広い部分に対し、狭い部分がいくつ続くかによって一目落し、二目落し、三目落しという。

・おどりおび [踊り帯]

舞踊に使う帯をいいます。おもに市松・縞が多く金・銀を使用した物が多い。

・おなんど [御納戸]色の名前。花色、すなわち藍に少し赤みある色と鼠色を加えたもの。納戸色ともいう。
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・おにいしぎぬ [鬼石絹]

群馬県多野郡鬼石で産した「玉絹」をいう。昔は着尺地にも使われたが、最近ではもっぱら裏絹用となっている。

・おにしぼちりめん [鬼しぼ縮緬]

縮緬の一種。縮緬のしぼ立ちの大きいもの。一般的には、風呂敷や袱紗に多く用いられている。鶉縮緬、鎖縮緬などと呼ばれている。

・おはしょり [お端折り]身丈より長い部分を胴部でたくし上げ、紐で締めて着るが、そのたくし上げた部分のこと。
明治中期より着丈にたくしあげて着るようになる。お端折りの長さは帯の下に6~7cm出る程度が見た目にすっきりしている。

・おび [帯]

きものの胴部にまきつけるものの総称。中世までは紐、または紐状のものを帯といった。現代の帯には丸帯、袋帯、名古屋帯、袋名古屋帯、半幅帯、腹合わせ帯、細帯、黒共帯(喪服用)、角帯、兵児帯などがある。他に夏用の単帯、子供用の祝い帯、兵児帯がある。帯は材質、柄、仕立て方によって格が異なる。織組織で柄を表したものを織帯、染の技法で柄を表したものを染帯と呼んでいる。

・おびあげ [帯揚げ]

帯を形良くむすぶために用いられるもの。 嘉永(1948~54)頃から帯揚をしている姿がみられる。明治時代から現在のような帯のたれをたくし上げて形を整えるものとして用いられるようになった。人絹、化繊のものは解けやすく、かさばる欠点がある。織幅が20~25cm、長さは1.4m~1.5mほどである。礼装用には白無地に金糸入り等、喪服には白無地又は黒無地を使う。

・おびあげしん [帯揚芯]

女帯を結ぶときに帯揚げ布に包んでお太鼓の形を作る芯。俗称ぼて。

・おびあわせ [帯合わせ]

きものに帯を取り合わせること。きものの格や色調、文様などにつりあう帯を選ぶ。

・おびいた [帯板]

きものの着付け小物の一つ。帯を締めるとき、胴回りに皺ができないように、前にはさむ厚いボール紙の板状のもので、前板ともいう。現在はプラスチックのものもある。

・おひきずり [御引

着物の裾を長くひいて着ること。または裾(すそ)を長く仕立てた着物。対丈だった小袖が長裾になったのは、江戸時代中期以降で、明治から大正の初め頃まで、上流階級の婦人たちはこの着方をしてた。潜在は芸者や花嫁衣裳に見られるだけである。ほかに、だらしのない女の人に対しての呼び方として用いられる。

 ・おびじ [帯地]

 帯に用いるために織られた布地のこと。帯側とも呼ばれている。現在の帯は、装飾的な役割が主であるため、帯地は、ある程度の厚さや張りが必要である。錦、綴れ、緞子、唐織などが多く用いられる。夏用には、羅、紗、麻などがある。他には染帯地として塩瀬羽二重、縮緬などを用いる。ふだん用としては紬地や木綿地がある。帯地の主な産地は西陣が最も多く、次いで桐生、米沢、博多などで織っている。染帯は京都や東京で染められている。

・おびじめ [帯締め]

帯を結び形を整え、仕上げに締める紐をいいます。

・おびしん [帯芯]

帯に張りをもたせるため帯の中に入れる芯地のこと。明治以降帯を締める位置が高くなり、帯の胴回りがくびれないよう厚い芯地を入れた。太鼓結びには張りを必要とするため、芯地の質が重要視された。帯地が織物の場合は薄手の芯を入れる。染帯には厚手の芯を入れる。透ける夏物用として、カラー芯やメッシュの帯芯も出回っている。多くは木綿で織られているが、絹や化繊もあり、不織布(フェルト)でつくられた、軽くてシワになりにくい素材のものもある。仕立てるときは、帯地より帯芯をゆるめにとじ付けると仕上がりがぴんとする。

・おびつき [帯付]

長着に帯を締めた姿のことをいう。羽織姿に対する語。女性の羽織姿は塵除けとも呼ばれ、正装には用いない。

・おびとき [帯解き]

子供が付紐をやめて、はじめて帯を使いはじめるお祝いの儀式のことをいいます。男児は五歳、女児は七歳の十一月に行なわれていた。

・おびどめ [帯留め]

帯締めと同じ意味であるが、現在ではその紐につけた留め具の、宝石や金属などの細工物を言う。

・おびまくら [帯枕]

帯を結ぶ時に用いられる小道具。太鼓結、文庫結など、結び方の型、年齢によって枕の高さを変えて使用する。

・おぼろがすり [朧絣]

織物の名称・
木綿絣の一種。経に白の綿糸、緯に紺の綿糸と絣糸を撚り合わせた糸を用いた物と、経糸に紺の綿糸と絣糸、緯糸に白綿糸を用いた物とがある。ねずみ絣、きゃぴたんなどともいう。肥前(長崎県)島原地方に産したが、現在は見られない。

・おぼろぞめ [朧染]

染め方の一種。裾を薄くして、上に行くほど濃くなっている、ぼかし染めのことをいう。寛文時代(1661~73)に、京都の紺屋、新右衛門が春の月夜の美しさを染め上げたといわれている。春の夜のもやを朧というところからこの名がある。

・おぼろもめん [朧木綿]

経に白糸、緯に紺糸を使った綿織物で「もぐさ縞」「しもふり」ともいう。

・おみなえしもん [女郎花文]

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・おめし [御召]

「御召縮緬」の略。先練り先染めの高級な絹織物で、縞御召や絣御召のほか、無地御召、紋御召、見通御召、絵緯(えぬき)御召、縫取御召など、種類が多い。それだけに技法的にも少しずつ異なるが、白縮緬と同じように緯糸に強い撚りをかけて織り、最終的にはその撚りを戻して、布面に細かいシワ(シボという)を作り出した織物、という点では共通している。
 まず経糸(たていと)は「諸撚(もろよ)り」をかけ、「精練」「染色」を行なう。縫糸は「下撚り」(右撚りと左撚りとがある)をし、「精練」「染色」を行なってから「糊づけ」「張り糸」をして、さらに撚糸機で「強撚」々かける。そのあと経糸は「糸繰り」「整経」を行ない、緯糸「糸繰り」「管巻(くだま)き」をする。これらの経糸、緯糸を織機にセット(機拵えという)し、織るわけだ。
 織り上げたあと、湯で洗って「シボ寄せ」を行なうほか、糸を撚っているために織幅が縮むので、湯のしをし、「幅出し」をして仕上げる。
もともと「御召縮緬」は「柳条(しま)縮緬」と呼ばれていたもので、色彩も茶系統、鼠系統、藍系統と、意外に質素な渋いものであった。「御召」という名称は「御召羽二重」 「御召小葵」のように、天皇や将軍の御召料として用いられる織物につけられていた総称であり、柳条縮緬のごく上等なものが御召料とされたために「御召縮緬」と呼ばれるようになった、と考えられている。 とくに、この御礼縮緬を好んで着用したのが十一代将軍・徳川家斉(在職一七八七 ~一八三七)で、納戸地に白の万筋があり、二分(約七ミリ)おきに横筋のある格子柄を将軍専用の「留柄(とめ)」にしたほどであった。

・おめしちりめん [御召縮緬]

普通の縮緬は一越といって緯糸に交互に撚り方向を変えた撚糸を一本おきに織り込むが、これは御召と同じく日本おきとする。したがってしぼが大きく御召風の感じとなってしろ縮緬の生地をいう。

・おめしのり [御召糊]

うどん紛や正麩(しょうふ)、わらび粉などを混ぜて作った糊。強い撚りをかけた緯糸(よこいと)に、この糊をつけて織ったあと、糊を落とす。

・おめしひら [御召平]

袴地のこと。仙台平に次ぐ正装であるが、現在は織られていない 。※「平」とは平織組織という意味

・おめしよこ [御召緯]

御召の緯糸に使う強撚糸のこと。

・おもだかもん [沢瀉文]

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・おもてみごろ [表身頃]

和裁用語。袷や綿入れなどの裏にあるきものの表の「身頃」をさしていう。

・おもてもん [表紋]

 紋の表し方の一つ。紋の形を白く染め抜く表し方で、日向紋(ひなたもん)ともいう。紋の中では最も正式で格調高い紋である。男女ともに、礼装には表門を用いる。

・おやこじま [親子縞]

縞柄の名称。太い縞と細い縞が、2本一組で並んでいる縞模様。

・おりえだもん [折枝文] 

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・おりがすり [織絣]

「絣糸」を使って織り上げた絣織物をいい、「染絣」に対する言葉。

・おりだん [織段]

織物の欠点で、緯糸の品質不良や打ち込み語の誤りによって横に部分的に色合いの違ったところが段になって現れることをいう。

・おいおび [織帯]

染帯に対する語。先染めの糸を用いて織った帯のことをいう。礼装用の格調高いものから訪問着や付け下げなどに締める帯は、ほとんどが織帯である。染帯は、おしゃれ用や町着用に用いられている。

・おりきじゃく [織着尺]

長着を仕立てる和服地で紬や御召、木綿地などの織物の着尺の総称。小紋や友禅のような染着尺に対する語。織機尺のきものは礼装に用いない。

・おりぎせ おりごて [折鏝]

きせをかける際の鏝使いの一種で、平鏝に対する言葉。長所は平鏝に対して簡単で初歩向き、欠点は折れ筋が残る事

・おりきり [織切]

柄と柄の間に無地部分を増やすことによって身頃の裾、袖の裾などの無地部分が増えて、見た目良く仕立てあがる。それを目的に、身頃は身頃(8尺)だけ、袖は袖だけ(4尺X4)を織ることを織切という。人間が紋型紙を付けはずしするため価格は高くなる。

・おりじたて [折仕立て]

織物の仕立て方の一つ。ここでいう仕立てとは、反物をたたむとか巻くとかすること。夏物類に多く用いられる仕立て方で、たたみ仕立てとも呼ばれている。一反を二つ折りにしたものを、60cmほどに折りたたみ、さらにこれを四つ折にする方法である。このほかに、角仕立て、文庫仕立て、長仕立て、丸巻き仕立てなどがある。これらは、産地の織物の種類や用途によって、使い分けられている。

・おりつけちゅうがた [折り付け中形]

折り付け注染中形、注染中形、手ぬぐい中形とも呼ばれている。一般には浴衣を染めるときに、型紙の長さに生地を折りたたんで型付けし、上から染液を注ぐ方法で行うのでこの名がある。これに対して、生地を長いまま板に伸ばして染める長板中形がある。

・おりつづれ [織綴]

紋織物の一種。蛇ガード機を用いて織った織物なのだが、綴織を模倣しているところからこの名がある。紋綴ともいう。本来の綴織はすべて手織りであるため、織綴に対して本綴という。

・おりつぶし [織潰・織盲]

備後地方の経緯全部に絣糸を用いて製織した絣木綿をいう。

・おりづるもん [折鶴文]

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・おりのきもの [織の着物]

糸のうちに染める、先染めのきものの総称。染めのきものに対する語。御召、紬、木綿などがある。主に街着や日常着に用いられている。紬の高級着尺は趣味性の高いおしゃれ着として用いられる。また、絵羽御召は晴れ着になるものもある。

・おりもの [織物]

経糸と緯糸とが、原則として直角に一定の法則にしたがって、交差して織られた布地のことをいう。原料によって絹織物、綿織物、毛織物、化合繊織物、交織織物などがある。織り方の組織上から分類すると平織、綾織、繻子織などに分けられる。織物の幅は小幅物、広幅物、三幅、四幅などがあるが、和服地はほとんど小幅物である。表地と裏地用とがある。

・おりものしあげかこう [織物仕上げ加工]

織りあがった布地は特別の例外を除き、糊抜き、精錬、漂白などの処理をして完成されるが、このような後処理を総称して仕上げ加工といっている。また、用途に応じて防縮、防水などの加工をしたりすることもある。

・おりものそしき [織物組織]

織物は経糸と緯糸を一定の規則に従って組み合わせ、面状に織り上げるが、この組み合わせることを組織するといい、組み合わせ方を織物組織という。平織、綾織(斜文織)、繻子織があり、これを三原組織という。この組み合わせ方の応用変化で、多くの織物ができるのである。
平織:経糸と緯糸が一本ずつ交互に組み合って織られる。基本的な織り方で単純な仕組みであるが、丈夫で広範囲に用いられている。紬、御召、縮緬、羽二重、木綿地などが代表的なものである。
綾織:経糸と緯糸が三本以上で、組織点が斜めに現れたもの。経糸と緯糸が同数で、糸の太さと織り込みの密度が等しいときは、45度の角度で斜文様が現れる。これを正斜文という。平織りに比べてやや柔らかく、光沢がある。
繻子織:平織りや綾織のように組織点が連続せず、まばらに散って組織されたもの。完全組織は経糸、緯糸ともにそれぞれ五本以上である。織物の表面に経糸だけが出ているものを経繻子、または表繻子という。反対に緯糸だけが出ているものを緯繻子、または裏繻子という。五本ずつで組織するものを五枚繻子、八本ずつのものを八枚繻子という。非常に光沢があり、柔軟な地風が豪華に見える。この組織の応用で模様を織り込んだものを、紋綸子という。帯地のほかに振袖、訪問着などの染下生地として広く用いられている。

・おりもよう [織模様]

織物の模様の一種。唐錦、糸錦、綴などのように地色と異なった色糸で織り出された模様のことをいう。染模様に対する語。染模様を後染模様というのに対して、織模様を先染模様という。染模様の絵画的な美しさに比べ織模様は格調高く重厚な感じのものが多い。

・おりわけ [織分]

上下が明確な文様の布地の場合、そのまま反物ひと続きで前身・後ろ身を作ると、後ろ身の文様が天地逆さまになってしまう。そのため身頃肩部分(袖も同じ)で紋型紙を反対にして織ることを織り分けという。

・おんしょく [温色]

暖色または熱色ともいい、色彩のなかで温暖な感じを与える色をいう。令色(寒色・涼色)に対する言葉で、普通赤、黄、橙などを含む色であるとされる。

・おんなばかま [女袴]

平安時代までは、上下全員が着用。鎌倉時代からは女房以下は着用禁止。明治初め華族女学校で、海老茶色の襠のない袴を制服とした(海老茶式部とよぶ)。近年は短大などの卒業式によく着用されている。

・おんなもん [女紋]

女性が結婚するとき、嫁入り道具に実家の母方の紋をつけ、引き続き使用する紋所。陰紋のことをいうこともある。

 

・がーどかこう [ガード加工]

染め上げた生地を整理仕上げするのに、その品質や性能を改善したり、特性を付与する目的で種々の処理を行うことがあり、これらを特殊加工と呼んでいる。その加工の一種で、防水、防汚、防縮、防油等が一般的であり、これらを総称して、ガード加工と呼んでいる。
現在この加工には、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂等が使用されている。フッ素系樹脂、シリコン系樹脂で加工すると繊維表面の光の反射率が小さくなり、色の深みの改良と同時に、「撥水性・撥油性」も付与される"一石二鳥”の加工法といえる。しかし、この加工をした商品では、後に染直しができないものがある。

・かいあわせもん [貝合文]

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・かいおけもん [貝桶文]

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・かいき [甲斐絹]

絹織物の一種。慶長年間(1596~1615)以前に伝わった舶来織物で、帯地や袋物地などに用いられた。その後、寛文年間(1661~73)に、甲斐(山梨県)の郡内地方で、この織物にそっくりなものを織り、郡内甲斐絹と称したことにはじまる。絹練り糸による平織物で、経糸を濡れたまま強く張る、濡れ巻きという技術を用いている。そのために布面は滑らかで、かつ光沢があり、こすると絹鳴りを生ずる。羽織やコートなど、和服の裏地として用いられていた。現在では夜具地、座布団地などに使われる縞甲斐絹(郡内という)がわずかに残るのみで一般の甲斐絹は絶えている。

・かいきり [界切]

主として小幅の織物にある両端の織留めをいう。地糸と相違した色目または太さの糸を使用し、また装飾の目的で、飾撚糸を織り込むことがある。例えば「結城紬」では、昔から赤染の糸を広めに織り込むのを特徴としている。
装飾の目的で織り込むこともあるが、主な目的は、機屋ごとに異なった織り込みを入れて機屋を特定することにある。つまり織りあがった生織を精錬する段階では端末の判子はまったく押されておらず、洗練、湯のし、検品をへたあとに、工場名、産地、精錬工場、目方表示等の目印を押しているので、数社の生織を同時に扱っても機屋を判別できるように工夫されている。

・かいこ [蚕]

昆虫類、かいこが科。繭から生糸をとるために世界各地で飼育されている。一般に幼虫をカイコ、成虫をカイコガという。成虫は開長約4cmで白色。卵はふつう黒か藤色で径約1.5mmの球形。人工的に飼育される蚕を家蚕といい、野生のものは柞蚕、天蚕、エリ蚕などといい区別される。また、飼育の時期によって春蚕(はるご)、夏蚕(なつご)、秋蚕(あきご)などに区別される。紀元前2650年頃にはすでに中国で養蚕が行われていた記録があり、日本では推古天皇のころ中国から伝えられたといわれる。

・かいしいれ [懐紙入れ]

懐紙を入れて、懐中におさめておく袋物。懐紙挟みともいう。懐紙とは、ふところに入れておく紙のことで、それに即興の詩歌を書いたところから、和歌などを詠むのに用いる紙のことを、指す用語にもなっている。現在では、主に茶席に携帯して菓子を取っておいたり、指先をぬぐうのに使われている。従って懐紙入れも茶の湯道具として用いられている。西陣織、唐織、名物裂写しなどの美しい布地を用い、袋物仕立てにしてある。

・がいちゅう [外注]

染色工程で不可欠な加工部分を自の工場で行わず他の専門業者に加工を委託すること。京都の染色業界では古くは、より専門の技術を重視することから、 一つの製品が出来上がるまでに多くの専門家の手を経て仕上がる細かい分業体制をとって、仕事が行われていた。
黒紋付染を例に取ると、白生地から完成品に至るまでおよそ22工程を要するが、染色工場自身の手で行う作業はおよそ17工程で、紋糊置、湯のし、張整理、紋洗い、上絵の各工程についてはそれぞれ専門業者に委託している場合が多い。

・かいづくしもん [貝尽くし文]

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・かいどり [掻取]

打掛と同じ事。一般に上方で打掛、江戸では掻取といった。掻取姿とは打掛の褄を掻取って対丈に揚げをしたような形になること。略してかけともいい江戸の遊女のものはしかけともいい、今日歌舞伎の花魁の着る打掛に「しかけ」の名が残っている。

・かいねり [掻練・皆練]

精錬した絹のことで生絹に対しての名称。

・かいのくち [貝の口]

角帯の結び方の一つ。一端を折り返し、他の一端を二つ折りにしてこれと真結びに結ぶ。女性は半幅帯の際、浴衣、普段着、羽織下などに用いる。

・かいぶもん [海賦文]

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・かいまき [掻巻]

夜具の一種。衿つき、広袖のどてらより大きい綿入れのもの。ふきが厚く衿があるので、身体にぴったりと添って暖かいので重宝された。江戸時代から民間で用いられはじめたもので、木綿や麻で仕立てた。

・かえしえり [返し衿]

明治期までは、女性の晴れ着用長襦袢(じゅばん)の半衿に赤い裏をつける習慣があった。黒小袖の下にこれを着て、いったん衿もとを合わせたのち、下前だけを外に折り返して、裏の赤い色をのぞかせる着方を返し衿といった。今日では芸者の座敷着に残っている。

・かえしぞめ [返し染]

染色用語。「抜染」または「防染」した部分に、さらに違う色を染めることをいう。たとえば、「ひわ返し」といえば防染した部分がひわ色に着色されていることをいい、鹿の子絞りの疋田の中に別な色が入っているように使う。一名「着色抜色」あるいは「着色防染」とよぶ。

・かえしぬい [返し縫い]

手縫いの基礎縫いの一種で、縫い目を丈夫にするときに用いる方法である。本返しと半返しがあって、返し縫いは掛け針に掛けて布を張り、一針ごとに糸を引き締めながらあと戻りの針目で一針ずつ縫う。縫い代を割るときなどに用いる。

・かえもん [替え紋]

公的に決まっている家紋(定紋)の代わりに使う略式の紋で、その模様は自由に用いられる。江戸時代によく行われ、現在も歌舞伎俳優の各家などで用いられている。

・かかえおび [抱え帯]

和装では補助具の一つ。きものの裾をたくしあげたとき裾を押さえるために用いた帯。しごき帯のことで、略してしごきともいう。江戸時代初期に、広幅の小袖の足さばきのいいように用いたのに始まる。それが江戸中期ごろには裾が地をひくようになり、外出には裾を持ち上げるか帯の間からつまみだしたりしたが、しだいにしごき風の裂(きれ)地でこれを押さえるようになった。そして、やがて絎(く)けひも状のものもできるようになった。明治になって常時お端折(はしょ)りをするようになると、これは腰ひもとしてきものの中に隠れ、現在抱え帯は、花嫁が帯の下部にそえて締めるアクセサリー的平絎けひもとして残っているだけになった。

・かがかみこ [加賀紙子

「二俣紙子」とも呼ばれる。原料は楮(こうぞ)から作られる和紙。

・かがぎぬ [加賀絹

生織の平絹で経糸は細く、緯糸の太いもの。裏地用として鎌倉時代から石川県加賀地方で算出。丹後精好、美濃上品などと並んで天下の絶品と評価されたが、明治20年以降、羽二重の発達で市場から消えた。

・かがくあおばな [化学青花]

科学的に作られた青花液で、ヨード液にでん粉を混ぜて作る。青花液の代わりに用いたことから、代用青花とも呼ばれている。

・かがくせんい [化学繊維]

天然繊維に対して、人造繊維を総称していう。化学的製造工程をへてつくられた繊維という意味であり、代表的なものとしては、再生繊維(レーヨン)、半合成繊維(アセテート、トリアセテート)、合成繊維(ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル)などがある。

・かがくせんりょう [化学染料]

合成染料ともいい、石炭や石油などを原料に精製した染料。直接染料・酸性染料などがある。

・かがこもん [加賀小紋]

石川県金沢で染められる型染の小紋。江戸小紋のように武家の裃から発展したもので、伊勢型紙を用い、細かい柄を主に一色染めにしたものをいう。

・かがすり [蚊絣]

蚊絣とは、絣柄の一種で、十字形のごく細かい柄。

・かがぞめ [加賀染]

加賀染とは、石川県金沢で染めたものを一般にいう。梅染めと、加賀友禅が代表的なものである。

・かがみしたて かがみじたて [鏡仕立]

表裏2枚の布を縫合せるとき、片面の布を四方に批を出して額縁のように仕立てる事。額仕立、額縁仕立ともいう。掛蒲団、座蒲団によくつかわれる仕立て方。帯にも応用され、この仕立て方をした帯を鏡帯という。長襦袢や襲下着を胴抜き仕立にしたものもいう。

・かがもん加賀紋

衣服につける紋の一種。江戸時代中期に流行した加賀友禅染から出た紋といわれている彩色紋で、色つき紋とも呼ばれた染紋のこと。紋を装飾のひとつと考えて、家紋を崩したり自由にデザインし、無地のきものなどに一つ紋として用いたりした。おしゃれな趣が好まれ、近年、また使われるようになった。
加賀紋という名称は、加賀染(梅染)の黒地に、この色彩紋を表したことに由来している。現在では、刺繍のしゃれ紋もこう呼ぶことがある。

・かがゆうぜん [加賀友禅]

加賀友禅とは、友禅染の一種。江戸時代初期末、加賀の金沢に発達した。模様に特徴がある。一般には、手描友禅染を指す。京友禅が早くから、レーキ染料(染料のレーキ化)を使用していたのに対し、大正の頃まで顔料を使用していた結果、臙脂〈えんじ〉、藍、黄、緑などの彩色と虫喰いという独特の模様を生んだ。

・かがる

裁ち目がほつれないように、布端に、縫い糸やしつけ糸を一定の方向に巻きつけていく方法。裁ち目かがり、穴かがりなどがある。

・かきあげゆうぜん [描上友禅]

友禅染の一種。無線友禅のことで、化学染料の使用が定着した、明治末期か大正の初期に始まったものと考えられる。糸目糊による防染を行わずに、生地に直接染料で絵模様を描く。すっきりした、新鮮な染め上がりが特色とされるが、留袖や振袖のように格調高いものには適さない。主に訪問着や着尺などに用いられる。

・かぎおくみ [鈎衽]

用布の総尺が不足した場合、衿・衽の裁断法を意味する和裁用語。鈎型に裁つのでこの名になる。両面物の生地に限られるが、片面物では下前衽をつまんで姥衽にする方法がある。最近ではあまり使われない。

・かきさらさ [描更紗]

更紗染めの一種。型更紗に対し手描更紗ともいう。模様を羽ペンで描き、筆や刷毛で色を塗る。機械的な方法に比べて不規則で、それが帰っておもしろく趣がある。代表的なものにインド更紗、ジャワ更紗がある。

・かきぞめ [書染・描染]

顔料あるいは染料に適当の豆汁・明礬などを加えて、筆や刷毛などで直接生地に模様を描く方法。手描き染ともいう。型染(かたぞめ)に対する言葉で、型染がある程度量産できるのに対し、量産がきかずかつ自由な柄ができるので高級とされる。

・かきちゃ [柿茶]

色の名前。柿の実からきた色。歌舞伎の黒、茶、萌黄の三色定引幕(じょうひきまく)の茶は柿茶である。また「勧進帳」の弁慶の衣装や「暫」の衣装も柿茶である。

・かきつばたもん [杜若文]

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・かきびった [描疋田]

絞り染の疋田鹿の子の四角な形を、手で描き染したもの。糊筒を使って鹿の子を描き、後から染色する。絞り染で表したような立体感はないが、糊による独特の味わいがあり、模様を自由に配置して描けるために広く応用されている。

・がく [額]

① 女帯地の「垂れ」となる一端の部分に金・銀糸を縫糸として12~15cmの長さの「界切り」を作り、そこに花鳥・山水・文字などを織り出したもの。喪服の帯(黒共帯)に「如」「源」などの文字を表したものを見かける。 ② 額裏のことも「額」という。

・がくうら [額裏]

羽織用裏の高級品の一種。生地は広幅物で仕立て上げたとき、額のように囲んだ中に花鳥風月などが一杯に連続して現れるように染めまたは織ったもの。主に男物の羽裏に用いる。現在の羽織の額裏は、明治以降に始まる。額裏寸法は、幅約73cm、長さ約2.3mである。その性質上「広幅の羽二重」「チェニー」のどが用いられる。

・かくえり [角衿]

衿型の一種。衿開きが角型になっている衿で婦人コート地、あるいは今はほとんど見られないが男子の角袖外套に応用される。

・かくおび [角帯]

男帯の一種。兵児帯は織られたままを締める柔らかい帯であるが、角帯は男物として織られた帯に芯を入れて仕立てたもの。幅が狭く、質が堅いため縫い仕立てのほかに絎仕立もする。帯側の中へ芯を引き入れて通す(引込芯)仕立もある。袋織や単帯に織った物はそのまま締められる。幅は8~11cm、長さは380cm~420cmである。着流しの場合は貝の口、片ばさみに。袴下には文庫(一文地)に結ぶ。

・かくしじつけ [隠し躾]

しつけの一種。きせをおさえるために用い、着るときにも取らない。目立たないように、表は表の縫い糸で、裏は裏の縫い糸を用いる。

・かくずそ [額裾]

裾回しの一種。袵(おくみ)と袖口、裾のまわりの部分だけをぼかし染めにした裾回しのこと。白地や淡い色のきものでは裏地の色が透けて見えるため、考案されたものである。

・かくそで [角袖]

角袖とは、和服の袖形の一つ。小袖のたもとに丸みをつけない角のままのもので、男物に用いられるが、地方によっては12~17歳ぐらいの少女が用いる所もある。

・かくとおし [角通し]

模様の名称。細かい模様が縦横に連なったものを「通し」といい、小さな正方形が並んでいるものを角通しという。江戸小紋の代表的な柄の一つである。先端が正方形になった道具で彫りぬいた型紙で染める。

・がくぶち [額縁・額仕立て]単仕立の長着の褄先の処理方法の一。道行衿の角、鏡仕立の掛蒲団の角にも使用。明治初年東京仕立でこの方法が使用されていた事から徳川時代に考案されたと思われる。褄先の額縁を作るとき、衿下と裾の絎幅は同じか、衿下を少し細くする。上等の薄物の単衣やセルなどの毛織物は必ずこの方法でする。

・がくぶち [額縁]

柄の付け方からの名称。 画像と解説はこちらへ

・かけ [掛け]

帯の部分名称。帯を締めるときに、腰に巻く側の端のほうを「掛け」といい、もう一方の帯結びをする側を「垂れ」という。また、掛けのことを「て」と呼ぶ場合もある。

・かけえり [掛衿]

補強の為に掛ける衿。長着、丹前、どてら、夜着などの地衿の上に掛ける。江戸~明治時代、町人女性は普段着の長着に黒襦子の掛衿をつけた。現在の長着には共地の掛衿を掛ける(共衿という)。

・かけがわくずふ 掛川葛布

織物の名称・静岡県掛川市
葛の蔓からとった繊維で織った布。「かっぷ」とも呼ばれる。
繊維としてはもっとも古いものである。
延喜年間(九〇一~九二三)の頃、朝廷で「けまり」をする際の奴袴として用いられていた。
鎌倉時代から江戸時代にかけては葛袴と呼ばれて夏袴地として用いられていた。無地、縞物、紺染、茶染があった。

・かけした [掛下]

打掛の下に着る振袖のこと。現在は花嫁衣裳の打掛の下に着るきもののことを指す。白の紋綸子が多く用いられている。「間着」とも呼ばれる。

・かけしたおび [掛下帯]

女帯の一種。打掛の下に締める礼装用の帯のこと。江戸時代に、武家の女性が礼装に用いていた帯であるが繻子総縫いの丸帯で、一般の女帯よりも幅、長さともに小型のものであった。結び方は種々考案されたが、打掛姿を形よく見せるため、文庫結びが多かった。現在では、打掛も掛け下帯も、花嫁衣裳にのみ用いられている。帯地は以前は金襴、銀襴が用いられたが、現在は、白綸子や白の唐織が多い。

・かけつぎ かけはぎ [掛接ぎ]

布端を突き合わせて接ぎ目が表にひびかないように細かく接ぎ合わせる方法。衣類の傷の位置が分からないような高度な技術が必要。当て布は共地を使い、縞・柄・布目をきっちり合わせる。縫い糸は同布の経糸を抜き取って用いる。緯糸、経糸を1つずつ針ですくってまつる。針は必ず直角の方向に刺し、均一に糸を引きつれないようにする。修理費は高く、薄物、縞、柄物は厚地のものよりさらに高い。

・かけめ [掛目]

繭の取引において繭の価格の基準を示す言葉。

・かげもん [陰紋]

紋の表し方の一つ。日向紋に対する語で裏紋ともいう。図柄は日向紋と同じであるが、紋の輪郭だけを白く表した紋のことである。訪問着、色無地、付け下げ、羽織など、正装以外に用いる略式の紋。

・かこうきじゃく  [加工着尺]

染加工をした着尺のことで、丸巻きのままの反物を指す。たとえば生地の地紋を生かすようにして染める地紋越こしやろうけつ染、絞り染、または型友禅の上に空絞りをしたものなどがある。以前は付下げや付下げ小紋も加工機尺の中に含まれていたが、今日では別にされている。現在では、絵羽物に対して丸巻きの品を小紋というようになったので、加工着尺も小紋の範疇に入れている。

・かごじゅう [籠十]

絣柄の名称。長方形の縁取りを縦横に十字に重ねた柄。「伊勢崎銘仙」の珍絣はこれである。

・かごつけちゅうがた [篭付け中形]

明治の末頃に考案された中形染の一種。薄い真鍮の二枚の板に同じ模様を彫り、円筒形に形作って回転させ、その二枚の間に生地を通して両面に糊付けを行う。この真鍮の型が篭のような形であることが、この名称の由来である

・かこみもよう [囲文様]

文様の名称。同一の柄を丸文や菱文(円形や菱形の輪郭の中に花などを収めた文様)に構成したり、同じものや、異なったものを組み合わせて、一つの枠組みの中に収めた文様の総称である。

・かごめもん [籠目文]

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・かざおりちぢみ [風織縮]

縮緬の一種。平織で緯糸に平緯と縮緯を一定の間隔で織り込み、布面に横筋状の模様を表したもの。

・かさしぼり [笠絞り]

絞り染めの一種。模様の輪郭線をぐし縫いして、その糸を引き締め、中の部分を巻き上げて絞ったもの。染め上がりが傘を開いたように見えるところからこの名がある。有松絞りに多く見られる技法で、浴衣柄として有名である。蛇の目巻き絞りともいう。

・かさね [襲]

中古のころは、袍(ほう)の下に重ねた衣服のことをいい、下襲(したがさね)を指すものであった。現在は二枚重ね、三枚重ねのように、同形態のものを何枚も重ね合わせること。または揃いの着物のことをいう。日本のきものは、平安時代にはじまる十二単に見られるように、重ね着による色彩の階調美が襲色目といわれ、衣服美の大きなポイントになっていた。

・かさねいろめ [襲色目]

装束や和紙の重ねによる配色をいう。直線裁ちのきものを着重ねる装束においては、その色の組合せによる美の表現は非常に重要な要素で、当時の文化的情趣がそのまましのばれる。ことに、女房晴れ装束では、衣紋をとって、衿もとと袖口の構成を整えることによって衽(おくみ)から裾まで直線的な流線となって表現され、王朝文学や王朝絵巻を飾っている。重ね袿(うちき)の内から外に向かって同色をしだいに濃くしていく場合を裾濃(すそご)、逆を匂(におい)中間を濃くする場合を村濃(むらご)という。また、白を上から重ねて下の色を透かせて見せる場合を薄様(うすよう)という。色のよび名は桜襲、松襲などと称して、その季節や情景をあらわすもので、当時の人々の自然界の繊細さを受け止める感覚の鋭さと、年中行事が自然と結びついて生活の中に深く浸透していたことによる。これは甲冑(かっちゅう)装束の鎧縅(よろいおどし)にも一種の哀感をもって受け継がれている。

・かさねえり [重ね衿]

重ね仕立てにした衿のこと。今では、後から衿に色々付け替えれるようになった、衿のことを指す。

・かさねじたて [襲仕立て]

襲物、すなわち二枚襲、三枚襲の長着の仕立てを襲仕立てといい、和裁のなかでも最高の技術を要するものとされている。その源流は有職(ゆうそく)の十二単(ひとえ)などに求められ、形を変えて現在の礼装に残ったものとも考えられる。技法としては、二枚あるいは三枚のきものがきちんとそろうように素たてなければならないうえに、襲物は多く礼装であるところがら、紋合せや絵羽付けの模様の縫い目合せ、また、生地が仕立ての難しい縮緬類が多いため、熟練した技術が要求される。

・かさねしゃもんおり [重紗文織]

織物組織の一種。方向相反して走る2個の紗文織を重ね、その接続した部分を削除して作る組織。

・かさねぬい [重ね縫い]

布の端と端を1センチほど重ねて、中央を一度縫い、もしくは両端を縫う。薄い芯など、かさばらないはぎ方である

・かさまつもん [笠松文]

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・かざりじつけ [飾り躾]

和装用語。和服の被(きせ)(縫い目より少し億で折り返すことで縫い目を隠している部分)を整え、また仕上がったときの装飾をかねて、要所要所にするしつけのこと。木綿には木綿の仕付け糸、絹にはぞべ糸を使用し、着るまでつけておく。ただし、子供の付け紐にかけるしつけは、両面しつけにして着るときもとらない。

・かざんおり [華山織]

紋織物の一種。厚板に似て紋様の一部にビロードの組織を応用したもの。帯地や装飾用とし、西陣を主産地とした。

・カシミア

毛織物の名称。インドの西北部、カシミール地方に産する山羊の毛を紡績した糸で織った綾織の上等の布地をいう。柔らかい風合いと暖かさが特徴。

・かじのはもん [梶の葉文]

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・ガスいと [ガス糸]

綿糸・絹紡糸などで、表面の毛羽立ちをガスの炎で焼き取った糸。張力と光沢が備わる。ガスの炎の中を高速で通過させて行う。これらをさらに苛性ソーダの処理(シルケット加工)すると絹糸のような外観になる。これを用いた織物は「ガス小倉」「ガス縮」などと呼ばれる。現代の薩摩絣などでも用いられている。

・かずさもめん [上総木綿]

上総木綿(かずさもめん)とは、江戸時代後期から大正期にかけて上総国山辺郡・長柄郡・武射郡(明治後期以後は千葉県山武郡・長生郡に再編される)を中心に生産された木綿のこと。九十九里浜沿岸の砂丘地帯上の台地(現在の成東-東金-大網-茂原一帯)を中心として江戸時代より農家の副業として木綿の生産が盛んになっていた。文化年間以後、茂原や下総国八日市場の商人らがこの地域の木綿を各地で販売してその質実堅牢ぶりが評価されて生産が高まった。幕末に入ると高機の導入なども図られたが、農家の副業としての性格上により専業機屋の発生をみなかった。明治7年(1875年)には太織8.2万反・縞4.8万反をはじめとして年間14.5万反が生産されて最盛期を迎えたが、以後は専業生産地との競争に敗れて急激に衰退していった。

・がすたいしょく [ガス退色]

空気中に含まれる酸化窒素ガス、亜硫酸ガス、空気中のオゾンなどにより染色された物が変退色すること。最近では、自動車の排気ガス、都市ガス、重油、灯油などの燃焼ガス中の酸化窒素ガスによる染色物の変退色が増加している。一例として現在の家屋が密閉構造であるため、室内の暖房に使用したガスストーブや石油ストーブの燃焼ガス中に含まれている異常ガスがそのままタンスの奥深く滞留してタンスの中に保管された染色物が変退色する事故が増加している。(ガス焼け)

・かすみいり [霞入り]

金・銀糸または柞蚕糸を霞状に縫い取りで織り込んだもの。羽織地・コートに用いられる。

・かすみもん [霞文]

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・かずらおびもん [鬘帯文]

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・かすり [絣]

織物を構成する経糸(たていと)、あるいは緯糸(よこいと)、または経緯の糸の双方の柄になる部分を、他の糸で堅くしばって染めた糸で織った平織の織物。御召や紬のほか、木綿絣が有名だし、上布などにも絣柄が織り出されている。柄がかすれて表現されるところに特色があり、また絣の美しさも、そのかすれた部分にあるといえよう

・かすりあし [絣足]

絣は糸を手工的な方法で作ったり、締め付けたりして染めるので、織りあがったとき、模様にいくらかのズレができる。この自然にできるズレを絣足と呼ぶ。

・かすりいと [絣糸]

絣柄の部分を白く染め残したり、逆に絣柄の部分を染め、地を白くするなど、要はまだらに染めた糸のこと。「縞糸」という地方もある。この絣糸を作る基本技法は「手括り」だが、防染材(括るもの)は綿糸のほか、クラフト紙やゴムなどが使われる。

・かすりおめし [絣御召]

絣柄を織り出した御召。木綿絣や紬絣などと同じ技法によるものだが、異なるのは縮緬地でシボがあらわれている点だ。明治、大正、戦前まで、多くの女性に愛好されたものの一つに矢羽根を織り出した紫の矢絣がある。これなど絣御召の代表だったが、しばらく姿を消し、最近ふたたび復活してきた。ほかに「立湧」「壷だれ」「猫足」 「井桁」など、単純明快な柄が多い。

・かすりもめん [絣木綿]

木綿地に絣模様を織り出したもののことで、木綿絣に同じである。

・かすりくくり [絣結り]

絣糸を作るために、柄にしたがって糸のところどろをしばること。「絣糸」の項参照。

・かせ [綛

糸を連続したまま一定の長さの輪にし、たばねたもの。糸を扱いやすくすると同時に、糸の長さを計算しやすくするためにこうしておく。

・かぜいんカゼイン

乳中にある一種の蛋白質。硼砂〈ホウシャ〉を混ぜたカゼイン水溶液は、接着力が強く、熱を加えることで、より強く固まる。この性質を利用し、顔料や染料液の接着剤として使用されている。

・かせん花氈

花は文様のことを表わし、氈は毛氈で、毛を圧縮したフェルト。文様のある毛の不織布。中国の西方オリエントに起源をもち、日本へは中国を経て、奈良時代に伝わり、正倉院に残されている。

・かせん [化繊]

石油・石炭を原料とする化学繊維の略称。ポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロンなど。ただ「化繊」と言った場合、装束生地ではポリエステルを指すことが多い。レーヨン(木材パルプが原料)、キュプラ(綿花芯が原料)などは「再生繊維」と呼ばれる。これらの総称が「合成繊維(合繊)」。

・かたあげ肩揚げ

子供用のキモノの衽を調整するため、肩山を中心に前身頃にかけて縫い上げをとることで、子供の成長に応じて加減する。

・かたあさ[片麻

麻の交織物の名称で、経糸または緯糸の一方に麻糸を用いて織ったもの。両方ともに麻糸を使った「両麻」、「丸麻」、「純麻」などに対する言葉。

・かたあて [肩当]

単長着の肩の部分に補強する為、裏側に当てる布。肩は衣服の重みがかかり、衿肩回りの裁ち目があるのでその力布となるように付ける。肌襦袢、単長襦袢にも応用。上等の着物、薄物の着尺には三日月布などの力布を目立たないように付ける。

・かたうらじ [肩裏地]

羽織の型から前身の上部および背部ならびに両袖裏に用いられる織物で「羽織」ともいう。普通「羽二重」の「友禅染」あるいは「綸子」の無地染や友禅が使われる高級品は「緞子」「襦珍」などがある。普通小幅長約4.5m、中羽織用約5.2m。

・かたえぞめ [型絵染]

型染の一種。一般の小紋染めと違う点は、作者が絵を描き、型を彫った一枚型で、しかも絵のように多彩に染め付けたものである。それを現代では、型絵染と呼んでいる。代表的な作家には芦沢銈介、稲垣稔次郎などがあげられる。

・かたおき [型置き]

染色工程の一つ。小紋や中形、型友禅の模様をつけるとき、布の上に型を置き、防染糊や写し糊(色糊)をへらで摺りつけることをいう。型付けともいう。

・かたがいもめん 片貝木綿

織物の名称・新潟県小千谷市
素朴な風合いが特徴の木綿織物。洗っても地風が変わらない。紡績糸を中心に、一部に手紡ぎ糸を用いて織る。
現在の小千谷市片貝町付近では、古くから綿花の栽培が行われていた。綿花を「ぶんぶん」と呼ばれる手紡ぎのための道具で糸にし、縞木綿や紺無地木綿を織っていたのである。また、白木綿も織られ、伊勢型で型付けをしてから藍染がなされていた。最近では、松煙染や紅柄も工夫されている。

・かたがみ型紙

和紙を3~4枚、紙の目を交互に柿渋で貼り合わせ、乾燥した後、模様を写して彫刻刀で模様の部分を切り抜いたもの。手捺染、金彩加工などに用いる。

・かたがみなっせん型紙捺染

捺染法の一つ。模様を彫った型紙を用いて、手で捺染する染色法をいう。型紙を使うので紙型捺染ともいう。小紋、中形、型友禅などはこの方法を用いる

・かたがわおび[片側帯

女帯の一種。片面ずつ異なった帯地を合わせて仕立てた帯を言いう。はじめのころ、黒天鵞絨(くろビロード)に白繻子ヲ合わせたことから鯨帯と呼ばれ、白と黒を昼と夜にたとえて昼夜帯の名もある。元禄時代(1688~1703)の少し前から用いられ、明和、安永年間(1764~80)のころに流行した。布地も初期の白と黒に限らず、同じ地質で色違いのもの、まったく異なる地質とあわせたものなどがある。丸帯に比べて安価であり、しかも締めやすいことから、一般女性の人気を呼び、明治時代から第二次大戦前のころまでは、女帯の主流を占めていた。その後、さらに便利で安い名古屋帯の流行で廃れ、現在では趣味的なものとして、一部に愛好されているに過ぎないがコントラストを楽しむ粋な帯といえる。

・かたぎぬ [肩衣]

普通、裃(かみしも)と称する徳川時代の武士の礼服。

・かたこもん [型小紋]

型紙捺染により染められた小紋。本来小紋は型染めのものであるが、小紋の名称が現在では手描き小紋、蠟染小紋まで拡大して用いられるのに対して、特に型染の小紋を明示した着尺のことをいう。

・かたじあや [固地綾]

地を三枚綾、文様部分を六枚綾で作る非常にしっかりとした腰の強い地質の織物。経緯ともに生糸で織り、その後で精錬・染織を行う。袍や下襲、指貫、狩衣など装束の多くがこの織物で仕立てられる。先染めの布を特に「固織物」と呼ぶことがある。

・かたじあやいっちょうおり [固地綾一丁織]

経糸一本に対して緯糸一本の綾織物。表の地色は経緯の糸色が混じり合い、光線の加減で色が変わる「玉虫色」の仕上がりとなる。

・かたじあやにちょうおり [固地綾二丁織]

経糸一本に対して緯糸が二本ある綾織物。緯糸は二本にするため細い糸を使うことが多い。緯糸のうち一本が経糸と同色の場合と違う場合がある。経緯計三本がすべて違う色糸である場合は、玉虫色の地色に違う色の上紋が付く織り上がりとなる。三丁織になると、二倍織物に近い織物になる。

・かたしぼちりめん [片皺縮緬]

各種縮緬の中で、緯糸に片撚りの強撚糸を織り込んで、縦方向にのみ縮みを与えたもののこと。絹縮みともいう明石縮や楊柳縮緬などは片皺縮緬である。木綿地では綿クレープがある。これに対して右撚りと左撚りの強撚糸を、数本ずつ交互に織り込んだもの(普通の縮緬)を両皺縮緬(縮)という。

・かたすそもよう [肩裾模様]

小袖の模様取りの名。肩と裾にだけ模様を付け、胴の部分はぬいてあるものをいう。桃山時代の、刺繍による肩裾模様小袖が有名である。
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・かたすべり [肩滑り]

単仕立の衣類など、表地の裏と中に着る衣服との摩擦を軽減するために付ける裏布の事。肩と背、胸につける。ウールなどで単仕立にした羽織や防寒コートには肩滑りを付ける場合が多い。

・かたぞめ型染染色方法の1つ。模様を染める時、型紙などを用いて染める。手描染に対する語。同じ模様を繰り返し染めることができる。代表的なものに、小紋・中形・更紗・紅型・型友禅がある。その他に近年では、スクリーン捺染・ローラー捺染などが行われている。

・かたづまもよう型染

江戸褄も用途同様な模様のつけ方だが、下褄だけに裾模様を配したもの。

・かたはば [肩幅]

身頃の肩山の幅のことであり、その寸法のこともいう。これと袖幅を足したものが裄(ゆき)であり、ふつう、袖幅と肩幅の差は袖が2センチぐらい広い。同寸のこともある

・かたびら帷子

衣服の一種で、裏無しの単〈ヒトエ〉物の総称。江戸時代末期より、絹・木綿の裏無しを単といい、帷子は麻布の単物を指すようになる。

・かたみがわり [片身替り]

きものの模様付けの一つ。背縫いを前身頃、、後身頃、両袖をそれぞれ片方ずつ分けて、違う模様をつけたもの。桃山時代から江戸時代初期にかけて流行した。能衣装に優れたものが見られる。
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・かたみほん [型見本]

染物の柄見本のこと。巻き見本ともいう。薄地の縮緬4mくらいのものを、約30cmに区切り、新柄の見本を染つけて注文を取るためのもの。模様にはそれぞれ名前がつけられ、一柄、一柄に通し番号がつけてあるので、型見本で注文すると間違いなく好みの柄を誂えることができる。
全国にある悉皆屋(一般には京染屋)は、この型見本で注文を受け、染工場に依頼する仕組みである。染工場では主として春秋に新柄を作り、そのたびに新しい柄見本を作る。また、巻き見本は、主に染め替えを目的とするもので、型見本を丸く巻いておくことからのこの名がある。小紋柄として今も少しある。
昭和30年頃から、モデルに新柄のきものを着せ、写真とともに布地の実物見本をつけた、スタイルブック型のものが多くなった。絵羽風の型染が多いため、全体の写真がいるようになったからである。

・かたやま [肩山]

きものの部分名称。きものの身頃は前後が続いているが、その中心であり、肩の最も高い部分のことをいう。きものの身丈や袖丈は、この肩山を基準にして寸法を測る。

・かたゆうぜん [型友禅]

友禅染の技法の一つ。型紙と写し糊を用いて染める技法で、手描き友禅に対する語である。型友禅の略。型紙による多色染の型友禅は、明治初期に京都で、合成染料ともち糊を混ぜた色糊(写し糊ともいう)が考案されて以来、急速に発展し、現在は着尺地や羽尺地、長襦袢、羽裏、帯地、七五三の女児の祝い着まで幅広く用いられている。手書きの本友禅に比べて量産が可能であり、価格も安くなる。
型友禅は、多色を使って華やかに花鳥、風物を表現する模様染めなのだが、型紙は一色に一枚を要し、20色から50色以上の数になると、何度も型紙を取り替えなければならず、熟練を要するものである。京都をはじめ東京、金沢、新潟の十日町市などが主産地である。

・かたよせもよう [片寄せ模様]

反物の模様付けの一つ。模様を布幅の片方に寄せてつけたもの。裁ち合わせに注意が必要であるが、柄の合わせ方によっては、斬新な感覚のもようである。

・かたわぐるまもん [片輪車文]

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・かちいろ色・勝色]

染色の名称。紺色の濃いもの。藍を搗(か)ちて染めるので、この名があり、染めることを搗染、染めた布を搗布(かちふ)という。なお褐を勝にごろ合せをして鎧の色にこの色を用いたともいう。

・かちょうもん [花鳥文]

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・かちん [褐]

茶色に用いる顔料の一種。油煙を膠(にかわ)で練って固めた黒墨。主に細線描き技法に用いる。黒の引染に用いて「カチン黒」の言葉がある。

・かちんそめ [褐染]

染色法の一つ。顔料の一つであるかちんを用いて描いたものをいう。

・かつおじま [鰹縞]

縞柄の名称。鰹の瀬から腹にかけての色調のように、濃い色から薄い色へと縞柄に織ったものをいう。染の場合は、鰹暈しという。主として藍色系統の濃淡によるものである。

・かつぎ [被衣]

古服の名称。女性が頭からかぶったきもののこと。武家時代には、身分のある婦人の外出着として用いられたもの。本来は単、白色、広袖であったが、次第に裏つき、模様のものへと変わっていった。普通の小袖とは、衿付がやや違う。

・かづのあかねぞめ [鹿角茜染]

秋田県鹿角市で産出されたためこう呼ばれる。「紫根染」のこと。染料に茜や紫根を用いて、羽二重、紬、木綿の布地を無地染か絞染にしたもの。大升、小升、立涌、花輪絞の四種類の紋様がある。明治維新後、藩の保護の消失と化学染料の普及により衰退した。現在では、原料の入手難、長期におよぶ生産期間などの困難をかかえながらも、伝統ある染技術の伝承に力をそそぐ栗山家の努力により、古代からの茜染、紫根染が守られている。

・かっぱ [合羽]

防寒や雨、雪のときに着る外套の一種。15世紀後半に南蛮貿易によって渡来したという。ポルトガル人が着ていた外套、capa(スペイン語)をまねて作ったもので、着物の上に羽織った。
日本では、もともと蓑を着ていたが、織田信長をはじめとする武将たちの、舶来趣味から取り入れられ、江戸時代にはわが国の衣生活に合わせて、いろいろな種類のものが生み出された。素材はラシャ。綿布、桐油紙などを用い、袖のない丸合羽、引きまわしや、袖をつけた座敷合羽、鷹匠合羽などがある。鷹匠合羽は、後に被布や道行コートに発展する。

・かっぺたおり [かっぺた織]

織物の名称・東京都八丈島
現在はただ一人の女性によって技術が守られる。 かっぺた(真田織)織は、日本に現存する織技法の中では、もっとも祖型に近い織技法を用いて織られる。
経糸、緯糸ともに色糸を用いる。経糸を屋内の柱にくくりつけて、数枚の綜絖と一枚の筬に通す。
 他端を腰につけた腰当に結び経糸を張る。右手に持った木製剣形のへら(これをかっぺと呼ぶ)を経糸の間に差し込み上糸と下糸を分ける。その間に緯糸を交互に入れて文様を出していく。最初文様に合わせて一段目の表を拾ったら、裏返し、今度は裏の2,3段目を拾う。次ぎにまた表に返し、表の2、3段目を拾う。織は表裏交互に織り進めていく。織幅は3~15 センチの細幅。文様は幾何学的で、そろばん・山道・鱗・市松・井桁と名付けられている種々のパターンがある。二重平織で、表模様、裏模様がリバーシブルに織られている。

・かつらぎおり [葛城織]

綿織物の一種。組織は31または32斜文の厚地綿布で、細綾物に似ており、地色によって白葛城、茶葛城ともいう。

・かつらで [桂手]

大きな文を織り幅に一文ずつ左右に寄せた配置のこと。大文がまばらに配置される、高齢者、高位の装束に用いる

・かなきん かねきん [金巾]

28~40番ぐらいの単糸を経緯に使って平織りに織った薄地の綿織物。言語は canniquin で東部インド地方の手織りで織った平織りの晒木綿。「生金巾」「晒金巾」「綾金巾」「色金巾」「更紗金巾」などと種類は多く、寝具のカバーやシーツ、エプロンに使う。無地染して和服の裏地にする。

・かなくもしぼり [金蜘蛛絞]

絞り染めの一種。細い針金製の螺旋に生地を嵌入れして絞ったもの。

・かにぼたんもん [蟹牡丹文]

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・かねじゃく 曲尺

長さの単位の1つで、単に尺ともいう。1尺は約30センチ。金属製の直角に曲がったものさしは、長い方に1尺5寸(約45.5センチ)、短い方に7寸5分(約22.7センチ)の目盛がついている。

・かのこ [鹿子]

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・かのこおり [鹿子織]

文織物の一種で、纐纈織と同じ。

・かのこしぼり [鹿子絞り]

絞り染の技法。くくり絞りの一種で、絞り染の最高級品である。染め上げた後でくくり糸をほどくと、仔鹿の背の班点のような模様が現れるのでこの名がある。
疋田絞り、一目絞りなどを総称する意がある。京都の近郊で生産されたので、京鹿子と呼ばれることもある。絞り目を一つ一つ丹念に指でつまんで絞るために目結(めゆい)ともいう。きもの一枚絞るのに数ヶ月を要するものも多く、振袖や着尺地、羽尺地として用いられている。全体を絞りで埋めたものを総絞り、または総鹿子とよび、最高の贅沢なものとされている。

・カピタンおり [甲比丹織]

ポルトガル語Capitaoによる。徳川時代に長崎に来た外国船が持参した一種の縞織物。経糸に絹、緯糸に綿を用いた交織織物である。色合いは黄茶系統やねずみ色が多かったことから、朧縞、鼠縞ともいわれるようになった。「朱子織」の縞柄を朱とした「銘仙」で、八王子の特産であったが、現在は廃れている。

・かびらおり [川平織]

織物の名称・
昭和53年に東京から石垣島に移住して、からん工房と言う名前の工房を運営している深石美穂さんが織っている織物。したがって「川平織」というもの自体は伝統工芸品ではない。しかし、使われている技法は、手結い、ロートン、花織など、沖縄の伝統に忠実なものである。作品の創作性やレベルの高さは定評があり、また手括り・手織・草木染などの真実性は全く疑うところがない。価格は、沖縄の織物で一番高いかもしれない。

・かぶきもんよう [歌舞伎文様]

 江戸時代の歌舞伎役者が扮装に用いたり、自ら考案したりした文様を総称していう。役者の部屋着や手ぬぐいなどに染められ、それが庶民の間にも流行した。縞や格子のほか、役者の名前にちなんだ柄やしゃれを効かせたものなど多種多様にある。斧琴菊(よきこときく)や釜輪奴(かまわぬ)、市村格子など。

・かへいじひら [嘉平次平]

 

絹袴で、経に座繰糸を、緯に熨斗糸を用いた絹袴地としては下級品。紺と浅黄の縞物で、明治の中頃、八王子付近で盛んに製織された。埼玉入間の人「藤山嘉平次」の創始。

・かべいちらく [壁一楽]

一楽織の緯糸に壁糸を織り込んだもの。

・かべいと [壁糸]

撚り糸の一種で、細い糸に太い糸が螺旋状に巻きついて見える糸。強く下撚りをかけた太い糸に無撚りの細い糸を引き揃えて、下撚りと反対に撚りをかけたもの。この糸を用いた織物には壁透綾、壁羽二重、壁縮緬などがあり、しぼのような凹凸が見られる。

・かべおめし [壁御召]

緯糸に壁糸を用いて織った御召のこと。壁糸というのは「壁撚りしと呼ぷ撚りをかけた糸で、織り上がりは地風がさらっとし、ふつうの御召よりシボが細かいのが特徽。一種の御召のイミテーションである。

・かべろ [壁絽]

壁糸を用いて織った「絽織」で「絽錦紗」ともいう。また「人絹壁絽」「正絹壁絽」「交織壁絽」など使用する壁糸の種類によっても分けられる。白や時色、浅黄色などに染めて盛夏の襦袢地や下着などに多く使われ、また黒染にして紋付礼服にする。

・かま [釜・加間]

生地幅に同じ柄がいくつ繰り返しているかを言う。織物の生地巾に同じパターン(文様の配置)の柄が一つあれば一釜、二つあれば二釜と言う。釜数が多いと文が小さく多くなる傾向があるが、ひとつのパターンが幅全体にわたる場合は、細かな文柄でも一釜となる。

・かまずれ [釜ずれ]

染色上の欠点。「浸染」の場合染器に和釜を用いるが、生地がその釜の底に接触して過熱され異常な光沢を呈したもの。

・かみこ [紙子]

安中期に和紙が大量生産されて普及した結果、紙が本来の目的以外に利用されるようになり、もともと麻クズを原料にして製造されている和紙は衣料として利用されるようになった。絹の衣よりも安価なため、低所得者が利用する着物と思われがちだが、丈夫で持ち運びに便利なため、武士や俳人などが好んで利用し、性空や親鸞が愛用していたことでも知られる。

・かみしも [裃]

戦国時代に発し、徳川時代に至って武士の礼服および勤務服となった。現在では祭り衣装に残っている程度である。米沢で織られている。

・かみしもこもん [裃小紋]

江戸時代、武士の礼装であった裃に用いられた小紋柄の総称。各大名は、それぞれの自藩の定め小紋を裃に染めたので、この名がある。現在は、江戸小紋に属する淡色型染の小紋である。江戸城中ですれ違う武士たちは、その裃の小紋柄で、その人物が何藩の武士であるかがわかったという。徳川家の御召十、薩摩島津の鮫小紋や佐賀鍋島の胡麻柄小紋などが代表的で、その文様はどれも芥子粒のように小さい型染である。そのため型彫り、型染職人は相当の熟練を要した。
明治期、裃小紋は一般大衆の文様として、用いられるようになったが、現代風の派手な小紋におされ、戦前には非常に少なくなった。その後、昭和30年に、裃小紋をはじめとする小さい型染の小紋がまとめられて、江戸小紋の名で國の重要無形文化財に指定され、現在は江戸好みの粋に通じる染着尺として、脚光を浴びている。

・かめだぜんまいおり 亀田ぜんまい織

秋田県由利郡岩代町亀田新町・織物の名称
ぜんまい織は、明治二十年代に綿布商人の佐藤雄次郎が考案、商品化したとされる。その後、ぜんまい綿、綿花、白鳥の羽根毛を混ぜて織ったぜんまい白鳥織というめずらしい織物もつくられたが、現在は生産されていない。

・かめもん [亀文]

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・かもがわぞめ [鴨川染]

京都で生産される染物の総称。京染めともいう。京都の鴨川は水質がよく、染物に適するため、染め上がりがよいといわれた。この川で晒した染物を意味し、京染めの代表として、友禅染を指す場合が多い。

・かももめん 加茂木綿

織物の名称・新潟県加茂市
素朴な風合いが特徴の、堅牢な木綿織物。着尺には経縞、夜具地には格子縞や緯縞が多く用いられる

発生は江戸時代、全盛期は大正末期であった。
明治二二年に紡績糸が輸入されると紡績糸を経糸に、和糸を緯糸に用いた縞木綿が織られ、これがのちに加茂縞と呼ばれるようになった。
現在は、化合繊維織物および絹織物が主軸となり、加茂縞などの木綿織物はわずかになっている。

・かもん [家紋]

定紋、紋所ともいい、その家の由緒を示すものである。平安時代、公家の間で混雑時の目印として、牛車に紋をつけたことにはじまるという。その後、家具や調度にも付けられるようになり、戦国時代、武家の間では旗などにつけて戦場の目印に用いた。
江戸時代になると、定紋は正紋(しょうもん)、本紋として幕府に届けだされ、武家の威儀を正すためのものとなった。また、役者や裕福な町人の間に、武家にならった紋の使用がはじまり、現在に至っている。

・かもんおり [華紋織]

御召縮緬の一種で、西陣では普通の紋御召をいう。

・がらあわせ [柄合わせ

和裁用語。着尺地を仕立てるとき、その柄がバランスよく、美しく着映えのするように、全体の配置を考えて見積もること。

・からあや [唐綾]

昔、中国(唐)より渡来した織物で綸子のこと。綾とは地と紋とを同色で織り出したもの。

・からいとおり [可良糸織]

昔、交付付近で織られたもので、中繭、下繭、玉繭などの原料を使った手取糸で経全部を諸撚りするか、縞のみを諸撚りした万筋様の織物をいう。

・からおり 唐織

 古来中国より伝来された綾・紋織物の総称。多彩な縫い取り糸を用いて織るので重圧感があり豪華。

・からおりにしき 唐織錦]

「錦」の一種で、文様(柄)を作る緯糸が降りこまれず、表地経糸にからんだだけなので、うらに一面に浮き上がって綿状に見えるために綿錦ともいう。高級「丸帯」などに良く見られる織り方で、京都西陣が主産地である。

・からくさもん [唐草文]

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意匠化された異国的な草花をさすが、通例は蔓(つる)状の茎が連続的に宛転(えんてん)するのをいう。基本となる茎にそえた他の要素から牡丹(ぼたん)唐草、菊唐草、葡萄唐草などとよぶ。 

・からくみ [唐組]

組紐の一種。中国から伝わったところからの名称。わが国における最古の遺品として、正倉院や法隆寺献納御物の中に残っている。その組織は、五彩の糸を用いて、菱文をつくりながら組んだ平らな紐で、平安時代に入ると、宮中で公卿が着用する束帯の平緒として使われた。現在では、女性用の帯締めとして広く用いられている。

・からげおび [紮帯]

着物の着付け用具の一つ。着物を着るときに、お端折りをからげるために用いる帯のこと。腰帯、抱え帯、扱き帯、あるいは扱ともいう。江戸時代初期より使われはじめ、現代も花嫁衣裳に用いられている。

・からこもん [唐子文]

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・からじしぼたんもん [唐獅子牡丹文]

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・からじしもん [唐獅子文]

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・からしぼり [から絞り]

 染色した後、布地をくくって絞り染のような凹凸と立体感を持たせる加工のこと。

・からはなもん [唐花文]

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・からみおり [絡織・搦織]

からみ織りとは、2本の縦糸が横糸と もじり合ったように絡んで組織された 織り方です。
横糸を縦糸で縛った形になるので、 粗くても目ズレが起きません。 そのため、透かし
目ができて、涼感 のある生地に仕上がります。

からむし空蒸

蒸しの方法の1つ。湿度の少ない蒸気を当てるので、生地への給湿が少なくなる。手描友禅や糊分の少ない無地物の蒸し工程に利用されている。

・からむし [苧麻]

イラクサ科の多年草。苧麻(ちょま)の古い名称でともいわれた。むしは朝鮮語のmosi(苧)、あるいはアイヌ語のmose(蕁麻)からの転訛(転化)であろう。青苧(あおそ)とよぶこともある。中国で多く産するので支那麻(China grass)ともいわれる。

・からむしおり [からむし織

織物の名称・福島県昭和村
「からむし」とは原材料「苧麻(ちょま)」の古い呼び名。着尺もあるが夏帯も最高。からむし織りは奥会津昭和村で栽培から織まで完全手作業で作られている極上の夏の織物です。
昭和村で600年以上前から栽培されていて、栽培と苧引きは、平成3年に国選定保存技術に認定されています。イラクサ科の会津苧(アイヅソ)という植物の皮を、繊細な作業を経て美しい繊維に加工し、草木染を施し、熟練の技で織り上げ、更に厳しい会津の冬の気候に雪ざらししています。からむしは、細くて強靭でかつ吸湿性に富んだ大変優れた素材です。その糸を手織りしています。100%からむし織りのきものというのは、現在大変珍しいものです。

・かりえばじたて [仮絵羽仕立て]

上絵羽ともいい、下絵羽も含まれる。絵羽付けされた模様の生地を絵羽通りに仮仕立てすること。上絵羽の合い口は広いめに縫い、模様が並んだように仮仕立てする方が、本仕立てする場合に都合が良い。

・かりもん [雁文] 

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・かるさん [軽衫]

もんぺ・裁付・踏込などと同じ系列の袴の一種。語源はポルトガル語の calcao で、漢字は当て字。

・かわごえとうざん [川越唐桟]

織物の名称・入間郡(現在の埼玉県の一部)
紺や浅葱・赤などの細い縦縞の木綿織物で、輸入物の唐桟を真似て作られました。武州入間郡(現在の埼玉県の一部)で生産され、川越が集散地だったことからこの名で呼ばれています。
江戸末期から大正まで下町の男物として広く親しまれ、羽織や半纏の裏地などに用いられました。

・かわちもめん [河内木綿]

織物の名称・大阪河内地方
大阪河内地方で生産されていた厚地の白木綿織物です。江戸時代に、農家の副業として自家製の綿で織物に仕上げたことから始まりました。
丈夫で耐久性に優れ、庶民の作業着・暖簾・はっぴ・足袋地などに用いられ親しまれてきましたが、明治になり機械化により安価な木綿織物が作られたり、外国綿が輸入されるようになり、次第に減少していきました。

・かわまたぎぬ [川俣絹]

福島県川俣地方で古くから織られていた平絹。もっぱら夏季の羽織地に用いられたが、幕末の頃から衰退、その後、本羽二重、玉絹の産地に転進。

・かわまたはぶたえ [川俣羽二重]

福島県川俣地方で産出する輸出用羽二重の総称。軽目羽二重または片羽二重ともいう。

・かわわじま [川和縞]

現在の神奈川県津久井地方で産出した別名「岸縞」ともいう絹織物。紫紺地の大柄、中柄の着尺地で絣物が多い。

・がんぎもん [雁木文]

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・がんきんぞくさんせいせんりょう [含金属酸性染料]

酸性染料の一種で、化学的な構造中に、クロムやコバルトの金属が入ったもので、染色している間に、繊維と金属と染料が固く結びつく性質を持つ染料をいう。

・かんこうしゅす [観光繻子・看光繻子]

経に絹糸、緯に綿糸を使った交織物で、「織姫繻子」「南京繻子」「葵繻子」「九重繻子」「都繻子」などは同種。

・がんさいしあげ [顔彩仕上げ]

友禅染をより効果的にするための技法で、模様の中の人物の顔や草木、花の枝先花弁などの繊細な部分を、一旦模様を染めた後に、描いていく方法。

・かんさいじたて [関西仕立て]

和服の仕立て方の一つ。関東仕立てに対する関西風し立て方のこと。長襦袢では、関東の通し衿仕立てに対して、関西の別衿仕立てにしたもののことをいう。深くエリア早稲ができるのではだけにくい。現在の長襦袢の仕立て方の主流。

・かんしゃ [官紗・寒紗]

中国名で古来官吏の服地を指す。日本では神官に用いられた。経緯とも生糸を使った搦織(からみおり)の一種。

・かんぜみずもん [観世水文]

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・かんとう [間道]

(しま)の意味。古く渡来した外国産の縞織物のことをいう。室町時代から桃山時代にかけて、渡来した縞木綿のこと。かんとうの名は、中国の要港、広東(かんとん)に由来すると考えられる。茶道の茶器を入れる仕覆(しふく)(袋物)に用いた名物裂には望月間道、吉野間道などをはじめとする、名のある数多くの間道裂がある。

・かんとうじたて [関東仕立て]

長襦袢の仕立て方の一つ。関西仕立てに対する語で、東京仕立てともいう。長襦袢の衿を裾まで通してつけたもの。用布量が少なく、裾さばきがよい分、はだけやすい。

・かんばた [綺]

日本固有の古代錦の一種。真田紐に似た幅の狭い薄地の竪縞で、帯や巻物の紐に使用された。

・かんぱち [貫八]

「羽二重」や「糸好絹」などで10疋につき生糸を1貫800匁使用したものをいう。織り上げ精錬すると25%くらい目方が減るので、結局1疋の目方は「140匁(525g)」となる。貫五と呼ばれるものもある。

・かんぶんもよう [寛文模様]

和服の模様付けの一つ。独特の構図をもつ寛文時代(1661~73)の小袖模様。刺繍と絞りを用いたもので、文様の配置は背面の右肩に重点を置き、余白を取って裾のほうに流れるように、大胆な構図のものが多い。これ以前の慶長文様に見られるような、きもの全体に模様を詰めたものに対して、模様の部分は少ないものの、斬新さが大きな特徴といえる。

・かんれいしゃ [寒冷紗]

絹紗のような薄地の平織綿布で、日覆や窓掛、蚊帳などに使用された。

・がんりょう [顔料]

染料と並ぶ重要な着色料。水にも油にも溶けない色素。有機顔料と岩絵具のような無機物の鉱物顔料とがある。白色はすべて顔料に含まれる。

 

・きいと [生糸]

マユから取ったままで、精練しない絹糸のこと。マユから取り出した細い糸を七~十本ほど合わせたものから、さらにそれを二~六本合わせたものまで、さまぎまな太さがある。いずれにしても糸のまわりのセリシン (膠質)を取り除く以前のものを「生糸」という。セリシンを取り除いた糸は「練り糸」である。

・きおりもの [生織物]

生糸を「精練」せず生のままで織ったものの総称で、「羽二重」「縮緬」「塩瀬」「綸子」などの白生地がこれで、多く織りあがった後、精錬、染色して使用する。

・きかいなっせん [機械捺染]

マシンプリント。その名のとおり機械による捺染法で、手工に対する語として使われる。ロール捺染、平板捺染などの種類がある。

・きかもんよう [幾何(学)模様]

方形、三角形、菱形などが精巧に入り組んで、構成される装飾文様のこと。一般には、幾何学の図形に似た文様を指し、直線を主としたところに、曲線をまじえた抽象的な線模様である。鱗、亀甲、麻の葉、市松なども、幾何模様の一種といえる。

・きかがくもんよう [幾何学文様]

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・きがらちゃ [黄枯茶]

染色の名で、桃皮汁で染めた茶色。すなわち錆黄茶色をいう。

・きぎぬ [生絹]

すずしともいう。精錬されていない生のままの絹織物の総称。生織物に同じ。経糸、緯糸ともに普通の生糸を用いたもの。あるいは経糸に生糸、緯糸に玉糸(節のある絹糸)を用いたもの。経緯ともに玉糸を用いたものなどがある。
ごわごわし、突っ張った感触の布地。絵絹(日本画などの画布)のほか、きものでは趣味的な夏物として用いられる。オーガンジーとして洋服地にも用いる。

・ききょうもん [桔梗文]

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・きくもん [菊文] 

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・きくからくさもん [菊唐草文]

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・きくきりほうおうもん [菊桐鳳凰文]

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・きくきりもん [菊桐文]

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・きくすいもん [菊水文]

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・きくづくしもん [菊尽くし文]

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・ぎしゃ 紗]

正規の捩り織(もじりおり)の織り方で作らず「紗織」の感じだけを表したもの。盛夏着尺として使われるが、本来の紗織に比べて値段は安い。

・きじゃく [着尺]

和服の長着に仕立てるための生地。標準丈は約11.4メートル、幅約36センチ。白生地に織り出した後に染める先着尺と、染めた糸を使って柄を織り出す織着尺とがある。初着尺=友禅・小紋・更紗・紅型など。織着尺=御召・紬・銘仙など。

・きしゅうネル [紀州ネル

綿織物の一つ紀州(和歌山県)に産する綾織、明治初期に、紀州の瀬戸重助が作り始めたところからいう。
または平織の綿ネル。明治の初期から織られた物で、色ネル、捺染ネル、英ネルなどがある。

・きじょかのばしょうふ [喜如嘉の芭蕉布]

織物の名称・沖縄県/国頭郡大宣味村
芭蕉布は、13世紀頃にはすでに作られていたと考えられますが、人々の間に広まったのは近世になってからのことです。家の庭や畑に芭蕉の木を植え、主婦や娘たちが自家用の布を織っていました。19世紀に入ると絹や綿が出回るようになりましたが、あいかわらず芭蕉布は人々に親しまれていました。この伝統を受けついでいる喜如嘉の芭蕉布は、昭和49年に国指定の重要無形文化財の総合指定を受けています。
糸芭蕉が繁茂していたため、奄美諸島から与那国島にかけては昔から芭蕉布がさかんに織られ、身分の上下なく晴着や普段着として着用されていた。
芭蕉布の起源は明らかではないが、一三七三年頃の明朝への入貢品目録の中に、芭蕉布のことと思われる「生熟夏布」の名があるので、十三、四世紀にはすでに織られていたものと考えられる。
芭蕉布は沖縄の代表的、かつ一般的な織物であった。慶長十四(一六〇九)年に薩摩藩が琉球に侵攻したのち、藩が琉球に対して課した貢租の中に「芭蕉布三千反」が含まれていたことからも、それがうかがえる。柄は当初、無地、縞、格子などが多かったが、明治二九年に仲原ナベが絣の芭蕉布を織りだしてから、絣柄が主流となった。
芭蕉布は沖縄の代表的な織物でありながらも、ほとんど県外に知られることなく生産され続けた織物である。明治時代には高機の導入や技術の向上により生産性が高まったが、需要はほぼ県内にとどまった。そして、第二次世界大戦後のアメリカ統治時代には、生産が途絶えさえした。
現在の芭蕉布は戦後、平良敏子さんにより復興されたものである。昭和三一年に結成された「喜如嘉芭蕉組合」は、さまざまな芭蕉布を発表、それにつれて芭蕉布は世に知られるようになり、昭和四九年には国の重用無形文化財に指定された。

・きせ [被せ]

和服を仕立てる時、縫い込み部分を割らずに一方へ織る際、縫目より少し奥を折山とする。この縫い目と折山の間のわずかな部分のことをいう。着用した時、引張によって受ける力を減少させ、布地がいたむのを布施ぐ作用がある。

・きたけ [着丈]

和服の長着類に用いる言葉で、身丈(仕立て上がりの寸法)に対して、着用した時の実際の丈のことをいう。着丈は普通身長に対する と概算する。着丈寸法は、肩山から裾までを計る。

・きだておめし [生経御召]

大正14年ごろまで桐生地方で盛んに産出された経に生糸、緯に強撚綿糸の交織物。別名を羽経御召(はだておめし)ともいう。

・きちょう [几帳]

調度品の一つ。中世において、貴婦人が座る側に立て、他と隔てるのに用いたことにはじまる。部屋を区切る道具。高さ90㎝~1m20cmの柱を台の上に2本立て、柱の上に長い横木を渡し、それにとばり(垂れ布)をかけたもの。とばりの幅は五幅とされ、冬は綾絹、夏は生絹や綾織が用いられた。

・きちょうもん [几帳文]

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・きつけ [着付け]

きものを身につけること。また、着付けられた状態を言う。平安中期以降、貴族の間で装束の仕立てが大きくなるにともない、自分で着られなくなり、着付けることが行われた。また、能や歌舞伎においても、特殊な舞台衣装を着るため、特別な着付けが行われてきた。
今日、着付けとは、下着から上着の着方、衿の出し方、帯の締め方まで、きもの姿を美しく整えるためのすべてを意味するとともに、その上手下手はきもの姿に影響する。

・きっこう [亀甲]

状が亀の甲に似た幾何学的六角形模様。絣織、染柄などに用いられ、特に男物の絣に良くみられる。普通絣に比べて柄の絣を合せるのに手数を要するため、高価なものが多い。

・きっしょうもよう [吉祥文様]

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吉祥はおめでたいこと、よいしるしを意味する語で、瑞祥ともいう。松竹梅、鶴亀、宝船、宝尽くし、鳳凰等種類は多い。吉兆模様ともいう。

・きながし[着流し]

男性の、羽織・袴をつけない略式の着物姿。男性は羽織、袴を身に着ける事を正式とするため、この言葉あり。女性は早くから羽織をつけない、着物姿を正装としていたため、女性には着流しという言葉は使わない。

・きぬ [絹]

蚕の萌から取った織維、またその織物のこと。特徴は光沢があって染め上がりが美しく弾力のある点だ。衣服の素材として、これ以上のものはない。ところで蚕だが、これは「鱗麺目(りんしもく)カイコ蛾科カイコ蛾」の幼虫で、桑の菓を食べて成長する。前後四回の休眠(脱皮)を経て繭をつくり、サナギになるが、ここで熱気に当てて内のサナギを殺す。そのあと繭を熱湯で煮て、糸を取り出すわけである。
一本の糸は外径が八~二十五ミクロン(一ミクロンは千分の一ミリ)という細かいもので、一個の繭に二本ある。これを教本合わせて一本の糸にしていく。一個の繭から取れる糸の長さは、明治の頃には約五百メートルだったが、現在は千メートルから千五百メートルである。

・きぬ [衣]

衣服、身にまとうものの総称。今日では小袖も含めて、きもののことをいう。

・きぬあさじょうふ [絹麻上布]

80番手以上の細い上質の麻(苧麻)糸で織った麻織物で、絹のような光沢があり盛夏用長襦袢などに多く用いられる。これは織り上げた後に苛性ソーダ液に布を緊張させながら通過させ水洗い乾燥させるもので、触感もサラサラして感じが良い。滋賀県能登川地方で多く織られ「からむし上布」あるいは単に「絹麻」とも呼ぶ。

・きぬおりもの [絹織物]

絹糸を使った織物のこと。大別すると「後練り」のものと「先練り」 のものとに分けられる。後練りとは縮緬や羽二重のように生糸で織ってから精練するもの。先練りとは御召や紬のように生糸を精練、糸染めしてから製織するものである。

・きぬこうばい [絹紅梅]

夏着尺の一種。絹糸を用いた紅梅織(太さの違う糸を経緯に配して、表面に畝を浮き立たせる織り方)。一般に細い絹糸の間に経緯とも一定間隔で太い綿糸を織り込み、格子状の畝を表した生地。主に高級浴衣に用いられる。

・きぬしじら [絹縬]

縬練(しじらねり)ともいい、阿波縬と同種のものだが、経緯ともに練絹糸を使用している点が異なる。

・きぬじょうふ [絹上布]

絹織物の一種。薄地の夏着尺。経糸に生糸、または練り絹糸を用い、緯糸に練り絹糸を用いたもの。感触が麻の上布に似ていることから付けられた名称。透綾と同じ。

・きぬしんかべ [絹芯壁]

人絹「壁糸」の軸芯となる糸に生糸(普通、14デニール)を用いたもので、これに120デニールの人絹糸をからませたもの。

・きぬずれ [絹擦れ]

きものを着て体を動かしたときに、布地などがすれ合って、発する音のこと。絹鳴りともいう。

・きぬた [砧]

砧とは杵敲(きねたたき)または衣板の略で、織目固く粗織した織物を打ち和らげたり地合いを密にするために用いる道具。

・きぬたしあげ [砧仕上げ]

織物仕上げ法の一つ。織り上げた綿織物。麻織物、絹織物を巻いたりたたんだりして、木の台の上に置き、木槌でたたくことによって布面を平らにし、地合を密にすること。織物に光沢を与え、柔軟にするために古来から行われてきた仕上げ方で、宮古上布や久米島紬などにみられる。

・きぬなり [絹鳴り]

絹組織の発する衣擦れの音。精錬した絹糸や絹織物を握ったり、摩擦したりすると、絹独特の一種の音が出る。
博多帯地は、締めたり解いたりするときに絹鳴りの音を発し、情緒あるものとして知られている。

・きばた [生機]

織り上げたままで、精錬、仕上げなどを施さない織物をいう。主として絹、人絹織物の場合に用いる語である。

・きはちじょう [黄八丈]

織物の名称。本場黄八丈の項参照。

・きびら [生平]

漂白しない麻糸で織った織物をいう。昔はこれに漆で紋を書いて武士の羽織としたが、現在では漂白または染色して夏季の襦袢や着尺にまれに用いられる程度で、多く祭礼の衣装などに需要がある。手紡糸を用いたものを「本製生平」、紡績糸を使用したものを「半洋」あるいは「丸洋生平」という。張りがあるので夏の男物や染帯などに用いられることもある。

・ぎふうつう [風通]

経と緯とに色違いを使い、風通組織としない紋綾織、外見は風通のような文様となる。

・ぎふちりめん [岐阜縮緬

岐阜市周辺で織り出される縮緬。1722年(享保7)に、京都から技法が伝えられ、さらに1771年(明和8)には、紋縮緬の技法が伝えられた。丹後(たんご)・長浜と並んで、縮緬の産地で、大垣藩の保護と奨励によって生産された。京都に送られ友禅染に加工されるが、その需要によって生産が左右されるのは、いずれの生産地も同様である。とくに玉糸による無地縮緬、紋縮緬が知られているが、現在は人絹縮緬の生産に移行している。

・きぶつもん [器物文]

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・ぎまかこう [麻加工]

綿布に麻のような外観と手触りを与えて代用とするもの。リンネット仕上げともいう。和装では綿のマンガン染め絣にこの加工を施して「麻上布」の擬いとする。

・きめ [生目]

精錬しない前の「生織物」の重量をいう。使用糸の重量にほぼ等しい。(これに対し精錬後の重量を「練目=ねりめ」という)。「羽二重」や「裏絹地」の貫八、貫五等はこれで、一疋150匁、180匁の意味である。

・きめがえし [生目返]

絹の増量法の一つ。生糸を「精練すると15~25%重さが減る。これを染色・糊付けなどによって増量し、元の生糸の重量まで返すことをいう。「生目戻し」とも称する。なお元の量以上に増量するときはその割合によって生目何割と称する。

・きめこみ [極込み・木目込み]

押絵の一種。綿などを入れずに、布地を平らに貼り付けたもの。また、板や箱型の木などに筋彫りで模様を施し、金襴や縮緬などの布地を、彫った筋を利用して張り込むこと。また、各種の裂を張り込んでつくった人形を木目込み人形という。

・きもう [起毛]

布の表面を針や薊(あざみ)の身を用いてかき立て、毛羽を密生させる工程をいい、これにより厚さを増し手触りは柔らかく暖かさを感じさせる。ネルなどはこれである。「ウール丹前地」の裏面もこの工程を施すことが多い。

・きもの [着物]

洋服に対する、和服の意に用いられているが、本来は着るものの全体の意である。着るものがつまってきものになったと考えられる。きものは、和服を意味する国際語として通用している。羽織、コート、襦袢などは含まず、もっぱら長着のことをいう。

・ぎゃくぐも [逆雲]

雲と雲のすき間を表わした形。裏雲ともいう。

・キャラコ

綿織物の一つ。キャリコのなまったもの。インドではじめて製織され、キャリコ地方から輸出されたので、この名がある。薄地の平織木綿であり、製織後、強く糊付けして光沢を出したもの。安価であるため、シャツ、エプロン、寝具のカバー地など、用途は広い。

きゅうすんおび[九寸帯]

女性帯地の一種。以前は腹合わせ帯にしたが、通常は名古屋帯仕立ての事をいう。帯幅は仕立上がりは8寸2分前後だが、仕立前の状態で9寸(34cm)内外あることからの名。長さ一丈三寸(約3m90cm)。織九寸といえば、織の名古屋帯のことを指す。

・キュプラ

化学繊維の一種である。再生繊維として作られた、銅アンモニアレーヨンのこと。コットンリンター(綿花を取った後、綿の実に残る短い繊維)を主成分とし、銅アンモニア琺によって製造した、再生セルロース系繊維。光沢と感触は、本絹によく似ており、本絹よりもはるかに安価であるため、裏地や下着などに広く利用されている。

・きょうがた [京型]

染の型紙の種類。京友禅に用いる。

・きょうかたびら [経帷子]

経衣(きょうえ)ともいい、死人に着せた単衣。生地は主に並幅の粗い白木綿。

きょうかのこ [京鹿子]

京都で製作された鹿子絞りの意。絹地の上等な鹿子絞りである。きもの、羽織、帯、帯揚げなどに用いる。

・ぎょうぎこもん [行儀小紋]

小紋柄の一つ。行儀には秩序といった意味があり、芥子粒のような小紋柄が、規則正しく並んでいることから、この名が付いた。一般に、細かい模様が縦横に並ぶ「通し」に対して斜めに並んでいるものをいう。行儀霰も同じ。

・きょうけち [きょう纈]

纐纈(こうけち)(絞り染)、﨟纈(ろうけち)(蠟染の古称)と合わせて天平の三纈と呼ばれる。いわゆる板締めのことである。模様を彫った二枚の板に、布地を挟んで染液に浸すと、左右対称の文様が現れる。
きょう纈の発祥は、インドであろうと推定されている。四世紀ごろ中央アジアで知られ、中国に伝わり、唐の時代には盛んに応用されたらしく遺品が残されている。日本へは唐文化とともに輸入され、奈良時代より盛行した。平安中期以降衰退したものの、江戸期には板締め絞りとして復活し、現在は応用した形が、白鷹御召や村山大島の糸染に取り入れられている。

・きょうごふく [京呉服]

本来は、京都で作られた絹繊維の染織品を指す語であったが、現在では、京都で生産される高級呉服の意味が強い。古くから有名な代表的京呉服としては、西陣織の帯地と御召着尺、そして友禅染と絞り染がある。

・きょうこもん [京小紋]

江戸小紋に対する語であり京都で伊勢型紙を用いて染める細かい柄の小紋のこと。

・きょうぞめ [京染]

京都で生産された染物の総称。京都は古来より奈良とともに日本の文化の中心であり、宮廷の服飾を調達する必要から、外来の進んだ技術を積極的に取り入れてきたため、その技術はみがきあげられてきた。また、染物に欠かせない水も、水質のよい鴨川に恵まれたことから、染め色が鮮やかで質の高い京染めが生まれた。

・きょうねんし [強撚糸]

撚り数が多い撚糸(ねんし)をいう。撚り数が多いほど縮む性質があらわれるので、縮緬、御召、縮み、クレープなど、表面にしぼのある織物の織り糸は強撚糸である。縮緬糸はセリシンが付着している生糸(きいと)を用い、御召糸は生糸を精練した練り糸を用いる。いずれも1メートル当り3000回以上撚りをかけた強撚糸である。

・きょうむらさき [京紫]

染色の名。赤みの強い紫。江戸紫の対語。京紫のページへ

・きょうゆうぜん [京友禅]

京都で生産される友禅染の総称。金沢で生産される加賀友禅やその他の地方で生産される友禅とを区別するのに用いられる言葉。

・きょうりもん [鏡裏文]

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・きらくつむぎ 喜楽紬

織物の名称。絹織物の一つ。経糸に玉糸、緯糸に特製縮緬くず糸と玉糸を用いて織った物。主として、縞物で、男女着尺地、羽尺地として用いる。

・きりかえ [切替]

① 緯糸で織り出す柄の色を替える時に色糸を取り替えること。裏から見ると幅広の横縞柄に見える。② 裁縫用語。布地のある一箇所を切って線をいれ、それに別の生地を接いだりして表す意匠。

・きりたけほうおうもん [桐竹鳳凰文]

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・きりたてわく [桐立涌] 

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・きりつぎ [切継ぎ]

「縫い合わせ」、「寄裂(よせぎれ)」ともいい、色や模様の異なる2種類以上の小裂(ぎれ)をつなぎ合わせ、1つの衣服にする技法。あるいは、そうしてできたものきもの。帯、羽織、袋物などなどの趣味的なものに用いられる。

・きりつけ [切付け]

模様を表す手法の一つ。主となる布地の上に、紋や文様などの別裂を好みの形に切ってのせ、周囲を縫いとめたり、糊で貼り付けること。アップリケと同じ。「切付け模様」などともいう。「切付け紋」もこの一種。

・きりつけもん [切付け紋]

無地のきものや羽織に、同地質の別裂に紋を描いたものを切り抜き、張りつけて、まわりを糸でとめたもの。張付紋ともいう。

・きりはく [切箔]

織物に使うきり白とは、金、銀の箔を漆で雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)などの薄い和紙に貼り、これを細かく切ったもの。単に箔ともいう。また、平箔糸、平金などともいう。金襴、銀蘭などの織物に用いる。また、細かく切った金、銀箔のことをいう。

・きりばめ [切嵌め]

1つの裂地に別裂を切ってはめ込み、文様を構成する技法。きもの、羽織、帯などに応用する。模様、小紋と呼ぶものは、布地を実際に切り取らず、模様を染織で表しの効果を見せたものである。

・きりばめもよう 模様]

文様の名。模様の異なる布地の小片を切り取ってはめ込み、継ぎ合わせた文様のこと。また、実際にはせずに、の効果をデザインして、染めた文様のこと。小紋の模様として、古くから親しまれてきたものの一つである。

・きりふきぞめ [霧吹き染

染色法の一つ。霧降り染、吹き染、ふっかけ染、落とし染、霧染などともいう。霧吹きやスプレーに染料を入れて、布面に吹き付けたり、刷毛に染料を含ませて篩(ふるい)などの上からこするなど、細かい霧状の粒を布面に落として、ぼかしや霜ふりなどに染める方法。

・きりぼり [錐彫り

型紙彫りの一つ。江戸小紋の型紙を作るのに、半円形の錐状の刃物を型紙に立ててまわしながら、霰、鮫小紋などの模様を彫る技術のこと。三重県鈴鹿市白子町で型紙が作られるものが有名。「いせかたがみ」参照。

・きりもん [桐文]

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・きりゅうおめし [桐生御召

織物の名称・群馬県桐生市
先練り、先染の高級絹織物でお召しは粋と渋みをほどよく合わせもった上品な着物です。からだに馴染んで裾さばきがよい反面、湿気に弱いという欠点もあり、水に濡れると布地が縮むのが難点です。
お召しとは、お召し縮緬の略語で、徳川十一代将軍・家斉が好んで着用(お召し)になったことから「お召し」と呼ばれるようになったということです。

・きりゅうおり [桐生織]

織物の名称・群馬県/桐生市、太田市、みどり市 栃木県/足利市 
1200年ほど昔、宮中に仕える白滝姫が桐生の山田家に嫁に来て、村人に養蚕や機(はた)織りを伝えたのが始まりと言われています。鎌倉時代末の新田義貞の旗揚げや、1600年の関ヶ原の合戦では、徳川家康が桐生の白絹(しらぎぬ)の旗を用いたこと等から、桐生織物はその名を全国的に高めました。さらに19世紀前半には幕府の保護もあって、金襴緞子(きんらんどんす)や糸錦(いとにしき)のような高級織物を生産するようになり、この技術・技法は今の桐生織に引き継がれています。

・きりゅうめいせん [桐生銘仙]

先染めの平織りの絹織物です。銘仙の源流は、屑繭や玉繭からとった太い糸を緯(よこ)糸に用いた丈夫な縞織物(太織)で、養蚕地帯の人々の自家用のものでした。

それが明治期の縞柄の流行に乗って関東一円で着られるようになり(「縞銘仙」)、大正期には絣模様を織り出した「絣銘仙」が流行し、伊勢崎、桐生(群馬県)、秩父(埼玉県)、足利(栃木県)、八王子(東京都)など北関東・西関東を中心に盛んに生産されるようになりました。
桐生銘仙の特徴は、やはり御召銘仙すなわち御召に使う撚糸を使った銘仙です。

・きりんもん [麒麟文]

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・きれ ・切]

一般に、織物や反物の断片を指す。または、名物裂といわれる古代織物の断片を指す場合もある。

・きれどり [・切取り]

文様の名。模様のこと。柄置きの1つでもある。不定形な形を寄せ集め、一定の区画を作る(パッチワーク風)。さらに区画内には別々の小柄を配したり、色を変えたりして表現する。

・ぎろ [絽]

搦織(からめおり)しない特別の組織で絽に類似させたもの。「紗」または「模紗織」ともいう。

・きんかざんおり [金華山織

紋ビロードの一種。紋部分を毛切りまたは環奈として地を繻子織したもの。

・きんぎんきりはく [金銀切箔

金または銀を打ち伸ばして薄片とし、長さ曲1尺4寸、幅2尺5寸くらいの雁皮紙または鳥の子紙に漆で片面または両面に貼り付けたものを「平箔」という。この平箔を長さの方向に曲1寸につき70~130切れに切断したものを金銀切箔という。これを織物の緯糸として織り込み(箔通し)あるいは模様を縫い取り(金銀縫い取り)する。両面に箔を貼り付けしたものを「両面切箔」という。

・きんさいゆうぜん [金彩友禅

印金技法をベースにしている。樹脂の発達とともに立体感が出るようになり、金、銀、白金箔粉の他に、銀箔に着色された多彩な色箔と金属箔に模様を表した模様箔によって描かれたもの。なお、樹脂によってドライクリーニングに耐える金彩技法もある。

・きんし [金糸]

金箔や金色の金属箔を、絹糸や綿糸に巻きつけた糸のこと。また、金箔を細く切断して絹糸などに撚り合わせた糸もこれに含まれる。

・きんじき [禁色]

平安時代、天皇や皇族の袍(ほう)の色を、一般家臣が着用することを禁じた制をいう。またその色のこと。ただし、これらの色の中には、天皇の許可があれば着用することのできた聴(ゆるし)の色もあった。
青、赤、黄丹
(きあか)、梔子(くちなし)、深紫(こきむらさき)、深緋(こきあけ)、深蘇芳(こきすおう)の七色は、天皇、皇室以外の使用を禁じられた。

・きんしゃ [錦紗]

錦紗縮緬の略称。普通の縮緬よりも、しぼが細かくて滑らかで光沢がる。経糸に細い生糸を用い、緯糸に右撚り、左撚りの強撚糸を交互に織って練り上げたもの。着尺、羽尺、裏地などとして使われる。ごく薄地のものは裾回しなどに用いられる。大正期以後流行した。

・きんすなご [金砂子]

金箔を細かい粉状にしたもの。金砂ともいう。装飾効果を上げるため、金箔の粉末を、接着剤で布地に蒔きつける。蒔絵などと同じ。

・きんちゃく [巾着]

口もとに紐を通して縫い絞った形の袋物。

・きんちゃくひだ [巾着襞]

巾着の口元を絞ったような襞(ひだ)のこと。

・きんでいがき [金泥・]

金粉を膠(にかわ)液でといたもので、模様を描いたり顔彩仕上げと同様の使い方もする。装飾効果を上げるため、文様の一部に金泥を用いて描く。同類のものに銀泥がある。

・きんとうし [金

織物全体に、緯糸に金糸を織り込んだもの。帯地のほか、染下生地用の白生地などがある。

・ぎんとうし [銀]

織物全体に、緯糸に銀糸を織り込んだもの。帯地のほか、染下生地用の白生地などがある。

・きんぱ [金波]

東北地方で同名の織物があるが、別に、「紋綸子縮緬」のことを一部で金波と称することがある。「紋金波」、「色金波」などという。

・きんぱく [金箔]

金を槌で打って、ごく薄くのばし紙状にしたもの。金箔は工芸品などに多く使用されているが、染織には箔置き、摺り箔、平箔などとして用いる。銀を用いたものは銀箔という。

・ぎんぱく [銀箔]

銀を叩きのばし、薄い紙状にしたもの。金箔同様に用いる。

・きんらん [銀欄]

織物の名称。襴地(三枚綾地)に金糸を織り込んだものを指すが、一般には、金糸を織り込んだ織物を総していう。室町・桃山時代に多く渡来し、名物裂として武家や茶人に珍重された。日本では、天正年間(1573~92)に生産されるようになった。能装束、女帯に用いられる。

・きんしゃちりめん [錦紗縮緬]

「縮緬」の一種。普通、縮緬より細い経糸を用いて「シボ立て」を細密に品質を優美にしたもので、一般には「パレス縮緬」と同意に解されているが、厳密には使用糸の太さ、打ち込み(糸数)も違い、パレスほど平滑な感じはない。

・きんじき [禁色]

平安時代、天皇の御服「の色、高貴の人の服色を一般臣下が着用することを禁じていた。

・くくり [括り]

織物・糸を糸でしめること。絣柄の部分を糸で縛り防染し、模様をつける。 又は、絞染の技法の一つ。鹿子絞り、三浦絞り、蜘蛛絞りなどがある。 古くは結機(ゆいはた)、目結(めゆい)と呼んでいた。

・くくりぞめ [括り染]

糸または織物の一部分を麻糸あるいは綿糸で堅くくくって、そこだけ染まらないようにしておいた全体を「浸染」する。この糸で製織すれば「絣織物」ができる。織物の場合は「絞り織物」となる。

・くくりがすり [括り絣]

糸のところどころを模様によって固く縛って染め上げた後、これを解く方法。最も原始的な方法である。

・くけ [絎]

和裁用語。裁断した布の端を折り返し、または布を縫合する際縫糸の見えないよう、あるいは縫い目のあらわれないように隠し縫いすること。

・くけえり [絎衿]

和裁用語。着物の衿の仕立て方の一つ。ばち衿や棒衿の衿幅を折り、衿付をした縫い目に絎けつける仕立て方。または、そうして仕立てた衿のことをいう。

・くけおび [絎帯]

絎け縫いで仕立てた帯のこと。帯の地質がかたかったり帯幅が狭かったりして、表返しができないものを、あわせ仕立てにし、その縫い目の糸が表から見えないように縫い合わせたもの。

・くけひも [絎紐]

形成方法から類別した紐の一種。紐は、普通中表にして二つ折りにし、縫ってから表に返してつくるが、はじめからでき上がり幅に縫い代を裏に折り、その折山を絎けて作る方法もある。この方法でつくった紐を絎け紐という。裁ち紐を平に絎けたものを平ぐけ紐といい、丸く絎けたものを丸ぐけ紐という。形を整えるために真綿、綿、布など適当な芯を入れ、腰紐や帯〆に用いる。丸くげの帯〆の白、黒無地は礼装に用いる。

・くさきぞめ [草木染]

天然の植物色素を染料として染色すること。また染色されたもの。

・くさりぬい [鎖繍]

刺繍技法の1つ。鎖状に線を表わす繍い方。線・輪郭を太くはっきり表現したい時に用い、流動感を与える。

・ぐしじつけ [ぐし躾

留袖や上等な縮緬の袷の衿や袖口、裾に施される装飾的な躾。きせ山を抑える実用性に加え、通常の躾より細かいぐし縫い(並縫い)で装飾的な役割もするので、着る際にはこの仕付け糸は取らずに着る。

・グーシーハナウイ [串花織]

織物の名称・
地機でロートンを織る時は綜絖を用いるが、綜絖の代わりに竹ぐしを用いるもの。地機で平織りを織っているときから、綜絖をつけた地機でロートンを織るまでの進化の過程にあったものではないか。

・くじゃくもん [孔雀文]

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・ぐじょうつむぎ [郡上紬]

織物の名称・岐阜県郡上郡八幡町
岐阜県郡上八幡町で生産される紬織物です。かつては自家用として織られる程度でしたが、第二次世界大戦後に「エリ蚕」を使い、今まであったものを元にして丈夫な紬が織られるようになりました。
現在も、草木染めの糸を用いて高機によって手織りされています。縞・格子・ぼかしなどの柄が多く、民芸織物として広く親しまれています。
手紡ぎ、植物染、手織による紬織物。初めの頃は野蚕の一種であるインド産のエリ蚕の糸を用いて織っていたが、現在では玉繭の原糸がほとんどである。
柄はおもに縞、格子、絣だが、斬新な幾何模様のものもある。
絹とウールの特徴を合わせもったような風合いがあり、丈夫でしわになりにくく、あたたかい。

・くじらおび [鯨帯

女帯の一種。昼夜帯、腹合わせ帯、両面帯、裏つき帯ともいう。表裏を異なる布で仕立てた女性用の袷帯のこと。はじめのころ、片側に黒天鵞絨(ビロード)、他の一面に白繻子を合わせて、絎けた帯であったため、鯨の腹の白と背の黒になぞらえて名づけられた。

・くじらじゃく [鯨尺]

和裁用に用いた尺度。もともとは、鯨のひげで物差しを作ったためにこの名があるという。鯨尺1尺=曲尺〈カネシャク〉1尺2寸5分(約38センチ)を規準とする。曲尺を小尺、鯨尺を大尺・呉服尺ともいう。

・くずしじま [崩縞]

縞柄で、経糸縞割の配列を崩した平織。一崩、二崩、三崩などという。

・くずづかじま [葛塚縞

織物の名称・長岡市
越後各地の木綿織物が特産物化する時期は、1818年からの天保年間(1818年~1843年)である。そのきっかけは高機 などの導入である。産地として知られるところは、亀田・葛塚(豊栄市)・吉田・白根・小須戸・長岡・今町・見附・村松などであり、その多くは平野部の町場であった。縞木綿が多くその用途は農作業用の野良着である。
葛塚でも地機(躄機)によって自給自足の織物を織っていた。
1820年(文政3年)に大和機 の導入が行われ、葛塚織りは特産物としての量的拡大を成し遂げる。それまでの地機は一反(3丈4尺)織るのに、3日半要したというからそうとうな新鋭機だったことになる。

亀田縞
亀田縞の起源については享保年間(1716~1736年)という説と寛政年間(1789~1801年)という説の両者がある。1722年(享保7年)には、鎌田町の権兵衛が大阪商人から藍玉を購入していたとの記録 がある。自給用の藍 は身近な生産物である蒲原藍を使用していたのであるから、このころから商品化が始まったというべきであろう。寛政年間には生産量も増加し機屋を始める者もあらわれた。このころから亀田町の製品を亀田縞と呼ぶようになった。
文化年間(1804~1817年)には木綿織物を扱う商人は仲買仲間を結成している。1808年(文化5年)には、植村仁四郎が野州から「長機」を伝え、品質の向上を図っている。この織り機は高機であり、葛塚や小須戸で「大和機」と呼ばれていたものと同じ型と考えられている。亀田縞も一応の水準に達し、生産量も伸び、産地を形成していったといえよう。
 天保期(1830~1844年)には生産技術と共に流通面でも拡大がみられる。白根・三条・見附・二本木(横越村)の在方商人や農民がそれぞれの土地の木綿織物を持ち寄り、集荷された。
この約7割を葛塚の商人が買い占め、新発田・加治・中条・村上方面の商人に販売したと伝えられている 。

小須戸織
1801年(享和1年)竹石留吉が地機により木綿を織ったことが始まりとされる 。1866年(慶応2年)には織子が町内289人、新保村(小須戸町)4人の記録 がある。

・くずふ [葛布]

葛葉マメ科の蔓草。その茎の表皮をはいで織った布のこと。綿、麻、絹などを経糸とし、葛の繊維を緯糸に用いた交織布。丈夫で水に耐えるため、雨具や袴、襖張りなどに用いられたが、現在は非常に少ない。静岡県掛川の特産品。

 

・くちわたいれ [口綿入れ]

袖口、裾の袘(ふき)にだけ綿を入れて、ふっくらと仕立てたきもののこと。この綿を「口綿」という。かつては、綿入れと袷の間の季節に着るものであったが、現在では綿入れ同様に口綿入れもほとんど着られなくなった。
古式を尊ぶ花嫁衣裳や、振袖などの礼装に口綿入れは残っており、口綿には普通真綿が用いられる。

・くびぬきもよう [首抜模様]

キモノの模様の付け方の1つ。首から肩にかけて、模様を付けることで、江戸前期の小袖に見られる。現在でも、祭礼の揃いの浴衣などに使用されている。
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・くみひも [組紐

数十本の糸を一束にして、それを幾束か一定の方式で、斜めに交差させながら組んでいき紐状にしたもの。交差したところを、きつく締めるため、へらなどで打ち込みながら組むので、打紐ともいう。形の上から平打、丸打、角打があり、束の数で三つ組、四つ組、八つ組などの種類がある。現代では、帯締めや羽織の紐に多く用いられている。

・くめじまつむぎ [久米島紬]

織物の名称・沖縄県島尻郡仲里村(久米島)
沖縄県久米島で生産される紬織物です。島内の植物染料を用いて泥染めと併用して染色し、砧(きぬた)打ちによって布を柔らかくすることで独特の風合いのある紬となります。主に縞・格子・絣などの柄を織り出しています。
沖縄は、江戸時代に薩摩に統治され、織物を献上するために役人の管理のもとで織られていましたが、明治時代に自由となり久米島紬の名で生産高も増加しました。
14世紀頃、南方貿易によりインドをルーツとする製織法が伝えられました。また、中国から養蚕の技法等を習い、島民に教えたのが織物の始まりと伝えられ、日本の紬の発祥の地と言われています。江戸時代初期から明治時代の後半までは、人頭税として紬織物を代納していました。

・くもどり [雲取り] 

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・くらよしがすり [倉吉絣]

織物の名称・鳥取県倉吉市 
太番手の綿糸を地藍で染めた経緯絣の木綿織物。
紗綾形、亀甲つなぎ、青海波、輪違い、麻の葉、松皮菱、菱に向い鶴などの有職紋様を織り込んだ絵絣で、厚手のものが多い。
山陰の三絵絣(弓ヶ浜絣、倉吉絣、広瀬絣)の中では歴史がもっとも浅い絣といわれる。
倉吉絣は、久留米絣や弓ヶ浜絣の影響をうけて織りだされ、明治初期に行商人の手により各地に広まった。
初期の柄は経絣や縞絣だったが、明治二十年代から複雑な経緯絣柄が織られるようになった。
初めは農家の副業として織られていたが、やがて機業化し、明治後半から大正にかけてはさかんに生産された。その後衰退したが、近年、伝統の復興が試みられている。

・くりこし [繰越し]

衿肩明きを肩線より後ろにあけること。抜き衿にして、着やすくし、女らしさを出すためにあけるので、子供物、男物には必要がない。

・くりこましょうあいぞめ [栗駒正藍染

宮城県栗駒市で産出される藍染の麻織物のこと。初夏の気温で藍を発酵させる、藍の原始的自然染色法「冷染、正藍染」を用いて染色する。普通藍染は藍瓶を火であたためながら一年を通して染めるが、栗駒正藍染では人工的な保温、加熱をいっさい行わず、五月頃からの気温の自然上昇を利用して木桶に入れた藍を自然発酵させる。そのために「冷染」とも称された。

・くりむしつむぎ [栗虫紬]

織物の名称・山県県米沢
 栗虫は野蚕で胡桃(くるみ)樟(くす)の葉を食べて育つ。
昭和44年から山県県米沢で作られており、経糸に玉糸、緯糸に栗虫の作る栗綿と家蚕真綿の混紡しを使っています。染めると染まり方が異なるのでそれが味わいになる。
くりむしつむぎは 【くりまゆつむぎ】 とも呼ばれる。とても軽くてやや毛羽立った感じが趣味的で、彩りのある色では無地染めが表情の豊かさが味わえる。

・くりんぷ [クリンプ]

羊毛繊維の持つ自然の波型の縮れであり、これが羊毛に柔軟性、保温性などを与えている。人工的にこのクリンプス状をナイロン糸に与えたものが「クリンプナイロン」で、通常「イタリア御召」といわれるのは、この糸を使用した織物である。

・くるまだち [車裁]

裁縫用語。並幅の布で裁った身頃から衿を落す方法。

・くるめかすり [久留米絣]

織物の名称・福岡県久留米市、八女市、筑後市、大川市、うきは市、八女郡広川町、三潴郡大木町
福岡県久留米市周辺で生産される紺木綿絣です。江戸時代後半に創始者の井上伝女は、それまでの地方的な絣織りを改良工夫して久留米絣の基礎を作り上げました。明治10年、西南戦争で集まった軍人たちが持ち帰ったことこから、全国的に広まるようになったといわれています。
19世紀初めに、一切れの木綿の古い布のかすれた糸をヒントに、12歳の少女によって始められました。その後、現在の福岡県南西部にあたる久留米藩が産業としての奨励したことに加えて、絵絣技法や、小絣技法といった改良工夫によって、久留米絣は、大柄小柄絣、そして絵絣等、他に類のない特徴的な技術を持った木綿絣産地として発達してきました。
戦後、機械織りや化学染料などの近代化により多彩な絣柄が織られるようになりましたが、現在も本藍で手括りによって糸を染め、手機で織る伝統的な技法も守られ、昭和32年に重要無形文化財に指定されました。

・くれーぷ [クレープ]

「縮緬」および「ちぢみ」類の総称で、「緯糸」または「経糸」あるいは双方に強撚糸を使用して織り上げた後、糊抜き精錬して撚りを戻し、その収縮により布面にシボを表したもの。綿、毛、麻、人絹、合繊などいずれにも応用されるが、狭い意味でクレープといえば「縮緬」を指すことが多い。

・くれない [紅]

呉(中国)の藍の略で、紅花の古名。

・くろたにしふ [黒谷紙布

織物の名称・京都府綾部市黒谷町
黒谷は、現在京都に残る数少ない紙郷であるが、平家の落武者が子孫へ残す仕事として細々と始めたものと伝えられている。昭和時代後期には紙衣や紙布の伝統を生かして、座布団や絨毯なども製作される。

・くろとめそで [黒留袖]

既婚者の第一礼装です。色留袖に対する言葉。留袖とはそれまで来ていた振袖の袖丈を短くして振りと留め、嫁いだ先に留まるという意味を持っています。特徴は黒地に裾模様(江戸褄模様)、染め抜き五つ紋付。白の下着を重ね着して「本重ね」としていましたが、羽二重や精華等の生地で比翼仕立にし、重ね着しているように見せるのが多くなっています。

・くろともおび [黒共帯]

喪服用の女帯。黒地の両面腹合わせ袋帯が正式だが、現在では名古屋帯が一般的。襦子、綴れ、錦、絽などの組織で織られている。

・くろはちじょう [黒八丈]

絹織物の一種。経糸に生糸、緯糸に生糸または座繰糸を用いる。緯糸は矢車草の煮出し液で煮てから鉄分を含む泥土液につける。この工程を数回繰り返して黒染にする。太い緯糸を強く打ち込んで表面に横畝を表す織り方で「琥珀織」に似たものである。「衿地」「袖口地」などに用いられた。主産地は東京・五日市で五日市ともいわれたが、現在ではほとんど生産されておらず、琥珀織で科学染料を用いた黒衿地をこの名で呼ぶ習慣だけが残っている。「洋八」と呼ばれる綿織の衿地も洋黒八丈の略である。

・くろふりそで [黒振袖]

黒地の振袖模様のこと。白地を含めて、黒以外の地色の振袖を、色振袖というのに対しての語。かつては打掛を着ない場合の花嫁衣裳に用いられ、黒地縮緬の総模様に、白と紅色の下着と三枚重ねで着た。現在では、一般的な振袖として黒地総模様のものが多く作られている。

・くろむじ [黒無地]

色無地に対する語。黒一色染のきもののことであり、五つ紋を付け、男性は第一礼装として、女性は喪服として用いる。

・くろもんつき [黒紋付]

黒無地に紋の付いた着物や羽織の事。女性の黒無地紋付は喪服用。男性の黒紋付羽織袴は第一礼装として、結婚式の花婿の衣装や成人式、仲人の衣装また、葬式や他の公式な場での衣装として用いられます。

・くわやまつむぎ [桑山紬

織物の名称・南砺市
明治初期、福光地方で絹の生産が多く行われ、一般家庭でも紬が盛んに織られたのが始まり。綿織物で農村での作業着などに用いられた

・くんじょういろ [群青色

色目の名で、かなり鮮やかな青色をいう。群青色のページへ

・ぐんちゅうおり [郡中織

女帯地の一種で、経に生糸、緯に綿糸を使った繻子地に紋を表したもの。白繻珍の代用品。

・ぐんない [郡内]

織物の名称・
山梨県東部、および都留郡地方で生産された織物で、「郡内絹」「郡内織」「縞郡内」の略称です。「縞甲斐絹(しまかいき)」とも呼ばれます。色は主に茶・黒・黄などで、やや太めの格子縞を織り出したものが多くあります。

 

・けいかおり [京華織]

明治40年頃から西陣で織られた平織の女帯地。地緯以外4越目に強撚の裏緯糸を打ち込んで縫取とし、仕上げの際蒸気で裏緯糸を収縮させて地合いに畝をだすもの。

・けいこ [桂袴]

平安時代の公家女子の服装。元来は、普段の装いだったもの。それが時代とともに宮中での礼服となり、明治17年(1884)以降、男子の狩衣(かりぎぬ)や浄衣に相当する、女子の服装となった。着用の折、髪は垂髪にする。

・けいそうおび [軽装帯]

太鼓の部分と胴の部分を別々に分けて仕立てたもの。文化帯、付帯ともいう。

・けいちょうもよう [慶長模様]

17世紀前後の慶長年間を中心に考案された小袖の模様で、この模様の小袖を慶長小袖という。現存する慶長小袖で最も有名なのが、重要文化財の染分四季花鳥文様縫箔小袖。

・けいとうぎれ [鶏頭切]

古代に宋から渡来した金襴の名物裂。海老茶色に金で5cmほどの鶏頭(植物の花)一房を織り出したもの。

・けしがた [消型]

型紙捺染で同一色で同模様を二枚に彫り分けた場合、最初に型付けする物を主型といい、後を消型という。

・けしぬい [芥子縫い]

刺繍技法の1つ。芥子粒のような小さな点を表わす繍い方。布地の経緯の糸を1本ずつ返し針をして点を表わす。縫紋や模様の中を繍い詰めて、輪郭線や霞のようなぼかし、花芯などの表現に用いられる。

・げた [下駄]

和装履物の一種で、木あるいは竹の台に鼻緒をすげ、そこに歯が付いたもの。歴史は古墳時代にさかのぼれるほど古いが、装飾的な広がりを見たのは、江戸時代以降で、駒下駄、雨下駄、日和下駄、右近下駄など、用途や形、地方によってさまざまな名称を冠した下駄がある。昭和以降は草履の発達により、普段用や、浴衣用に用途が狭められる傾向にあったが、最近は見直され、畳表の台や刺繍の鼻緒など、しゃれ向きの下駄が多く見られるようになった。

・けだし [蹴出し]

和服着用の際の女性用下着の一つ。裾よけ、裾まわしともいう。半襦袢を合わせて着用し、長襦袢の代わりをすることもできる。歩くたびにちらちらと蹴出して見えることから、この名がある。

・げっかおめし [月華御召]

「シボ」立ちのある縮緬風の御召と違って、強撚糸を用いて表面を滑らかに織り上げた御召。「強撚り(こまより)」糸を用いるから「駒御召」ともいう。京都西陣で産出され一時非常に流行したが、現在ではあまり生産されていない。

・げっしょうもん [月象文] 

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・けぬきあわせ [毛抜合せ]

裁縫用語。裏付きのものを縫うとき裏表をきっちりそろえること。長着の袖口は2㎜ぐらい紕を出すが、羽織や道行は紕を出さない。羽織や道行は裏と表を着られるように毛抜合せに縫う。毛抜合せに仕立てるのを毛抜仕立という。晩春の袷で表、裏を薄手の生地を用いて毛抜仕立にしたものをぺっちゃり袷といって、茶人などが着る。

・けぬきじたて [毛抜仕立て]

二枚の布地(表地と裏地)を、同寸法に縫い合わせる仕立て方のこと。主として、紗合わせや両面コートの仕立てに用いられる。

・けまわし [蹴回]

裁縫用語。袴の裾まわり全体をいう。

・けんさき [剣先]

着物の部分の名称のひとつ。袵(おくみ)の一部分で、肩山に最も近いところで剣のように先のとがったところをいう。

・げんじえもん [源氏絵文]

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・げんじぐももん [源氏雲文]

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・げんじぐるまもん [源氏車文]

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・げんじこう [源氏香]

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・けんしゅくすふ [捲縮スフ]

人工的にスフに縮れを持たせる加工をし、羊毛に近い性質を持たせたもの。羊毛との混紡はほとんどこれが用いられる。

・けんじょう [献上]

博多帯の代表柄。江戸時代に福岡藩主が幕府に献上した独鈷模様の織物のこと。

・けんじょうとっこもよう [献上独鈷模様]

文様の名。博多帯の代表的模様。仏具の独鈷や花皿の形を縞柄に表現したもの。

・けんちゅう [絹袖]

「柞蚕糸」を経糸とも使用した織物で、糸の原色そのままの「絹袖色」と称する独特の黄味を帯びた色彩がある。柞蚕は、その大部分が中国産のため、現在は原糸輸入がほとんどないため、ほとんど生産されていないが、染色により、この色彩を模した製品はいろいろ作られている(いろは絹、まるは絹など)。呉服ではもっぱら夜具裏地として使用される。

・けんぼうし [絹紡糸]

屑繭や絹糸のくずなどの「副蚕糸」を原料として機械紡績して得た絹糸のこと。その練り方(精錬)によって半練、七分練り、本練に分けられ、また仕上げ加工によってガス焼(毛羽はガスで焼いて光沢をつける)と無ガスの二種類となる。富士絹や銘仙などが有名であるが、着尺・服地などにも用途は広い。

・けんぽうぞめ [憲法染・憲房染]

小紋染の一種で、剣士吉岡憲房が京都西洞院四条で染めさせたのに始まる。

・けんぼうちゅうし [絹紡紬糸]

「絹紡紬」な紡績作業中に生ずるブーレット(屑)から、さらに「絹紡紬糸機」で糸にしたもので、節があり凹凸な太糸で一見「真綿」の手紡糸に似ている。したがって一般に紡ぎの代用品、値頃品などはこの糸を使用するものが多い。

・けんもんしゃ [顕文紗]

紗の地に平織で文を作る、つまり文様部分が地よりも厚く織られてくっきりと表れた紗。衣紋道高倉流では「文紗」と呼ばれるらしい。

・けんろうど[堅牢度]

 染織物の、日光・洗濯・水洗・汗・摩擦などに対する耐久性、丈夫さのあどを表わす。堅牢=固くて丈夫なこと。

・げんろくこそで [元禄小袖]

友禅染による自由な文様表現と、丸みのある袂(たもと)が特徴である。花見小袖ともいう。
元禄時代(1688~1704)は、文化の爛熟した時代として知られ、町人の財力も伸びて生活も万事派手になる一方、華やかで繊細な友禅染もこの時代に生まれた。このような時代の空気を吸って、江戸の金持ちたちは正月や祝い事の晴着よりも、花見に出かけるためのきものに心血を注ぎ、豪華で華やかな花見小袖をつくった。花見に興がのれば、桜の木に張りめぐらした紅白の紐に、女性の小袖をかけて花見幕とし、その中で歌や踊りに興じた。

・げんろくそで [元禄袖]

女物・子供物和服の袖型の一種。明治時代にできた名称。日清・日露戦争後復古調となり作家や学者たちが元禄復興を提唱し、このとき、元禄時代に流行した丸袖を特に元禄袖と称したのが起源。

・げんろくもよう [元禄模様]

元禄時代は、五代将軍・徳川綱吉(1680~1709)の時代にあたる。友禅染が出現して、多彩で精緻な模様表現が可能になった。際立った模様のパターンはないが、絵画風な自由な模様が特徴といえる。

 

 

・こあいちゅう [小合中]

絣柄の名。多くは久留米絣をいい、一幅に三十通り前後の小中柄を経緯絣としたもの。

・こいぐちそで [鯉口袖]

筒袖の一種。袖口が小さく、鯉が口を開けた形に似ているところから、名づけられたもの。水仕事をするときなどの、袖の汚れを防ぐために、考案された形で、反転に用いられることが多い。

・こいもん [鯉文]

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・こうきおり [高貴織]

「梨地」の絹織物の一種で、主として男子の着尺地に用いられる。単に「こうき」ともいう。

・こうけち [纐纈]

絞り染の古代名称。きょう纈(きょうけち)(板絞り染)、﨟纈(ろうけち)(蠟染)とともに三纈の一つ。布地の一部をつまんで、糸で強くくくったり、巻き締めたり、文様の輪郭を縫い取って糸を引き締めるなど、防染して染める。
三纈のうちできょう纈と﨟纈は平安中期以降、近世に復活するまでかなりすたれたが、纐纈だけは、その後も衣料や装飾品として染め続けられ、現代の絞り染へと引き継がれている。結繒(ゆいはた)、纈(ゆはた)ともいう。

・こうけんむすび [後見結び

女帯の結び方の一つ。日本舞踊の舞台で着流し姿のときの結び方。

・こうしじま [格子縞

縞柄の名。格子ともいう。建具の格子のように、竪縞と横縞とが一定間隔で直角に交差して、構成する縞模様。また、その織物のこと。洋装地のチェックと同じ。格子の大小や色彩の組み合わせ方によって、多くの格子が考えられ、また江戸時代以来、人気役者の好みや舞台衣装が、そのまま柄名となったものも多い。菊五郎格子、六弥太格子、高麗屋格子、三津五郎格子、市村格子、三枡格子、半四郎格子などがあり、粋なものとして役者の人気とともに愛された。

・こうしつおび [後室帯]

女帯の一種で、老婦人用の普通よりやや幅の狭い帯。鯨尺7寸くらい、織柄は地味な小柄で地色はくすんだねずみ・茶などである。本来は「丸帯」であるが、最近「袋帯」「名古屋帯」にも見られ、すべてこの名で呼ばれる。

・ごうしゅうじま [江州縞

織物の名称・
滋賀県産の江州木綿。特徴の縞柄がお洒落です。
夏は涼しく、冬は暖かい。肌触りが良く着心地がいい。使うほどに肌になじむ、木綿の風合。
着物はもちろん、肌触りがいいからシャツ・吸収性がいいからパジャマ・色が楽しいから小物・・・など使い方はいろいろです。

・こうしゅうはったん かいき [江州八端(甲斐絹)]

織物の名称・山梨県都留市
綾織組織の絹織物。経、緯糸ともに練絹糸を使う。
光沢がありやわらかく、すべりのよい織物。
甲州八端の始まりは、海貴と呼ばれる中国の絹織物である。十六、七世紀に中国から伝わったこのめずらしい平織が、絹織物のさかんだった甲斐の郡内(山梨県南都留郡、北都留郡)に入り、江戸時代に海貴をまねた郡内海貴が織られた。明治以降、郡内海貴には「甲斐絹」の字があてられた。
大正時代に八王子から八端綾織りの技法が導入され、甲斐絹独特の感触をもつ八端織りが誕生した。
無地海貴 経緯同色の糸で織ったもの。
霜降海貴 経を薄藍の糸で、緯を白の糸で織ったもの。
玉虫海貴 経を赤の糸で、緯を萌黄色または浅黄色の糸で織ったもの。
縞海貴  縞や格子紋様を織りだしたもの。
綾海貴  緯糸で牡丹唐草などを織りだしたもの。

・こうしょく [交織]

絹と木綿、絹と化学繊維などを混ぜて織るもの。違う種類の糸を経緯組み合わせて織ったもの。絹と人絹の交織など種類が多い。糸の段階で違う種類の繊維を混ぜることは「混紡」と言う。

・こうしょくおめし [交織御召]

経糸と緯糸との糸質を変えて織った御召。しかし本来の御召とは異なり、御召風の織物といったほうがよい。経糸にウールを使ったウール御召、人絹を使った人絹御召のような大衆製品が多いが、御召緯と紬糸の二種類の緯糸を用いた上代御召のようなものもある。

・ごうせいせんい[合成繊維]

化学繊維の一種。天然繊維に対して人造を意味する。石炭、石油、石灰石、天然ガスなどから科学的に合成してつくった繊維。略して合繊といっていたが、今ではその方が一般的になった。天然繊維に比べて安いことから、着物地としても、多様な柄付けで生産されている。

・ごうせいせんりょう[合成染料]

十九世紀中頃、イギリスのバーキソがコールタールから化学的に作り出した染料。日本で初めて輸入されたのは江戸の末期で、明治以後、急速に普及した。現在では、ほとんど大部分が合成染料で染められている。「人造染料」 「化学染料」ともいう。

・こうせいぞめ [更生染]

古くなって色があせたり、流行おくれになった染物を、無地あるいは模様染に染め直すこと。染め替え、染直しともいう。

・こうぞ [楮]

桑科の植物で、「かじのき」ともいう。樹皮の繊維で上古に布を織ったとされており、和紙の原料。

・こうだいじまきえ [高台寺蒔絵]

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・ごうてんじょうもん [格天井文]

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・コート[coat]

すべての衣服の上から重ねて着る戸外での衣服の総称。洋装用のいわゆるコートと和装用のコートがある 和装用として防寒コート・半コート・雨コートがある。雨ゴートは雨天に着用するコートで襦子織などに防水加工したものを使用。半コートは合着用で殆どが袷仕立で色々な材質が用いられ、夏用としては紗や絽で単仕立でお洒落用。防寒コートには保温に適した厚地の毛織物やビロード、ベルベットを使い、袖は元禄袖からドルマンスリーブまで多種多様のものがある。

・こうちぎ [小袿]

古服の名。平安時代、女房装束に用いられた。袿(うちぎ)同様に、肌着と表衣の間に着るもの。大袿に対して、下に着るためにひとまわり小さく仕立ててあるのでこの名がある。打ち掛けて着るもので、袖口は広い。下に打衣(うちぎぬ)と単を重ねて着る。

・こうばいおり [紅梅織]

経糸または緯糸の一方あるいは双方の中にその糸より太い糸を数本合せて引き揃えた糸を織り込んで、その部分だけ高く浮き出させる織り方をいう。布面に勾配(こうばい)が生じるのでこの名がある。経糸・緯糸双方に使って格子状となったものを「四つ紅梅」といい、夏の浴衣生地などに見られる。

・こうほねもん [河骨文]

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・こうや [紺屋]

染物屋のこと。紺屋(こんや)、染屋などともいい、古くは「こうかき」、「こんかき」ともいった。そもそもは、藍瓶を据えつけて、糸や布を紺に染める職業を意味し、紅染の紅屋、紫染の紫師などと区別する目的で用いられた名称である。しかし、近世以降の藍染の普及につれて、藍染が染物を代表するようになり、染物屋の別称となった。また、糸染を糸紺屋、布染を布紺屋と分けて呼ぶこともあった。
藍染めは全国で行われたため、各地に紺屋が集まる地域が生まれ、古い町には現在でも、紺屋町の名が残っている。

・こうりんこそで [光琳小袖]

江戸時代中期の画家l・尾形光琳(1658~1716)が、江戸深川の豪商、冬木家の妻女のために描いた秋草模様の小袖「白絖(しろぬめ)地秋草模様描小袖」のこと。別名「冬木小袖」ともいう。白い繻子織、絹布の地に、墨の淡彩で秋草を描き上げたもので、江戸の粋に通じるとともに、まさに小袖模様の逸品といえる。

・こうりんみずもん [光琳水文]

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・こうりんもんよう [光琳文様]

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・こうろ [紅露]

植物染料の一種で、沖縄地方に産する蔓草、土藷または藷榔ともいう。大島紬、宮古上布の茶絣はこれを用いる。

・こうろ [黄櫨]

植物染料の名。はじのき、はぜのき、やぶうるしともいい、高さ3mくらいの野生で、深黄色の染色に適する。

・こおび [児帯]

帯の一種。主に女児用で、大人用の「丸帯」の鯨1尺8寸幅に対し、1尺5寸、1尺3寸のものが多い。「尺五」「尺三」とも称する。「丸帯」と同様に二つ折りにして芯をいれ縫い仕立てする。華やかな色・模様のものが多く、現在では、七五三の祝い衣装に用いられる。

・こがら [小柄]

大柄・中柄に対し、柄の小さいものをいう。染物では、小紋と同様に使う場合もある。小紋は単色の定形文様など、ほとんどが白あげなのに対し、小柄は、小さい柄であっても、多色を用いる場合が多く、一般的には区別されている。

・こぎん [小巾・小衣]

刺子の一種。麻布、または藤布でつくられた、腰までの丈の単の仕事着のことをいう。「こぎん」は小衣のことと考えられており、東北地方から九州まで広く、この語またはその転訛した語が用いられている。

・こぎんざし [小巾刺し]

江戸時代の末期から明治中期にかけて、弘前市を中心とする津軽地方で、農民の間に発達したもので、元来は布地を丈夫にするために行われた刺子の一種であった。しかし、次第に美しい模様刺しへと発展していき、現在では、抽象風の線模様と素朴な民芸的美しさによって、帯地やハンドバッグなどに用いられている。

・ごくさめ [極鮫]

小紋のひとつ。鮫小紋のさらに細かいものを、極鮫という。針の穴くらいの模様が一面にならぶ。

・こくもち [石持ち・黒餅]

紋を後から入れられるように、丸い紋の形を白抜きにして、染め残したものをいう。留袖などに多く、買い求めてから自家の紋を描き入れることができる。紋所の名にも「こくもち」がある。餅にかたどった円紋で、石持と呼んだ。福岡・黒田氏の家紋。

・こくらおり [小倉織]

織物の名称・福岡県北九州市
経の綿糸一本に対して、緯の綿糸ニ・三本を平織りまたは綾織に織った、経畝(たてうね)組織の綿織物です。もとは福岡県小倉で生産されていたことからこの名がつきました。「小倉木綿」ともいいます。
耐久力のある生地で、袴地・帯地など用いられていましたが、近年は学生服や作業服などにも使われています。

・こざめおり [小鮫織]

絹織物の一種で、石川県大聖寺地方で産出した軽目の生斜子織。

・こし [越

織物用語で、緯糸を数える単位。本数のこと。一越縮緬とは、緯糸一越ずつ交互に右撚りと左撚りの糸を織りいれたものをいい、二越縮緬は二越しずつであるため、越数が少ない縮緬のほうがしぼが細かいということになる。

・こしあげ [腰揚げ]

子供用のキモノを腰の位置で縫い上げ、丈を調節すること。肩揚同様子供の成長に合わせて調節できる。また、可愛らしさを添える役目もある。

・こしいた [腰板]

袴の後腰に当たる台形の部分。明応~文亀(1492~1503)当時の武家の公服であった肩衣袴に台形の腰板が取り入れられた。肩衣袴が礼服化し、江戸時代に入るとさらに普及し、馬乗袴・野袴・裾細・軽衫にまで取り入れられる。

・こしおび [小鮫織]

「腰紐」「帯下」「下締」「下帯」などいろいろと呼ばれる。婦人が着付けの丈を、身長に応じて調節し、着物を引きずらないように引き上げるため、帯下3~4cmのところに締める長さ6尺くらいの帯または紐をいう。「羽二重」「縮緬」などの半幅を二つ折りにし芯をいれ縫い合わせたもの。「博多帯」のように織物のままのもの、あるいは簡単なくけ紐が用いられる。

・こしかず [越数]

① 「縮緬」の緯糸に左右交互に右撚り、左撚りの糸を用いるとき、それが一本おきであるか、日本おきであるかを示す言葉で、「一越縮緬」といえば一本おき、「三越縮緬」といえば三本おきで、「越数」が増えるにしたがって縮緬のシボ(しわ)が大きくなる。
② 「絽織物」で絽目となっていない部分の緯糸の数をいう。この部分が三本のものを「三越絽」、七本のものを「七越絽」渡渉するが、一般には「三本絽」「七本絽」と呼ばれることの方が多い。

・こしじがすり [越路絣]

越後(新潟)で製織された絹織物で、十字絣、井桁絣など60以上の小柄物が多かった。

・こしじはぶたえ [越路羽二重]

新潟県で産する壁羽二重。

・こしひも [腰紐]

きものを着るとき形を備え着くずれしないように、あるいは、御端折りをつくるために結ぶ、幅のせまい紐のこと。

・こしぶとん [腰布団

保温のために腰部に当てて用いる、紐の付いた布団のこと。冷えを防ぐために考えられたもの。また、帯結びの際に形を整えるため、腰のくぼみに当てる小さいふとんのこと。

・こしまき [腰巻]

近世の武家婦女用の礼服で、盛夏の頃着用したいもの。小袖仕立てのものが多い。キモノを腰に巻きつけたようになるのでこの名がついた。

・ごしょぐるまもん [御所車文]

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・ごしょぞめ [御所染め]

寛永の頃、女院の御所で染められ、官女など下女にまで下賜されたという。

・ごしょどきもんよう [御所解文様]

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小袖の染め模様の一種。公家生活の周辺にあるものを題材としたもの。小袖や打掛に、友禅に?(ぬ)いを加えて描かれた、御殿、館、欄干(らんかん)、御所車、几帳(きちょう)、冠、檜扇(ひおうぎ)などに四季の花卉(かき)や枝、山水を配した模様をいう。

・ごじる [豆汁・呉汁]

生大豆を水に漬けて膨らまし、少量の水を加えてすりつぶしたものを布でくるみ、絞り出した乳状の液体。豆汁には、大豆蛋白〈タンパク〉が含まれているので、熱を加えると凝固、沈殿する。この性質を応用し、引染や友禅の色挿しの地入れに用いる。

・ごせんひら [五泉平]

織物の名称・新潟県五泉市
植物染の絹袴地。色合いが深くなめらかで、しっかりとした光沢をもつ。黒、茶、灰色などに染め分ける。
五泉の絹織物の起源は、およそ二百五十年前に織られていた葛織という袴地にもとめられる。五泉平は、その葛織に改良を加えて天明年間(一七八一~一七八九)に完成されたものとも、また仙台平に独自の工夫をこらして完成されたものともいわれている。
五泉平の技法は以後、多くの織物におよび、天保年間(一八三一~一八四四)には竜門、斜子の白生地が、明治初期には絽、八ツ橋が、そして明治二〇年頃には羽二重が生産された。
現在、伝統的な五泉平を織っているのは、わずか一機業場だけである。

こそで[小袖]

袖口の広い装束(広袖)に対し、袖口の小さな窄〈ツツ〉袖になったキモノのこと。桃山以降、生活着として、表着に変化した。現在の長着の原形となるもの。

・こそでまく [小袖幕]

元禄時代の花見風俗の一つ。花見の折に、桜の樹から樹へと綱を張り、小袖をかけ連ねて、幕の代わりにしたもののこと。裕福な町人たちはそのたびに小袖を新調し、その幕の中では、緋毛氈を敷いて句や歌をつくり踊りに興じ、三味線をひいてたのしんだという。

・こそでもよう [小袖模様]

着物につける模様のこと。時代によって特徴がある。代表的なものとして片身替わり、慶長模様、寛文模様、元禄模様、裾模様などがあげられる。

・こだいえちごじょうふ [古代越後上布

重要無形文化財の越後上布は経、緯ともに手績みの苧麻(ちょま)を用いるが、古代越後上布は経糸はラミー(苧麻紡績糸)、緯糸は手績み糸を用いて高機で織ったもの。越後上布と同じ地域でつくられる。薄く軽やかな地風と精微な絣が特徴。

・こだいきれ [古代裂

現在残っている古代の染織裂。古裂のこと。正倉院裂や法隆寺裂、また広い意味では、名物裂に含まれるものもいう。

・こだいごしょく [古代五色]

きものの配色に用いられる色のことで、特に統一されているわけではないが、朱・利久(深緑)・紺(納戸)・紫・黄を指す場合が多い。また、原色ではなく、少し渋味のある色をいう場合が多い。

・こだいちりめん [古代縮緬

縮緬の一種。しぼ(縮みによる凹凸)の大きいもの。鬼しぼ縮緬、鬼縮緬ともいわれる。しぼが大きいので座布団、帯、風呂敷などに多く用いられる。二越縮緬のことで、型染や色無地、またはぼかし染などのきものに使う。この名は戦後に呼ぶようになった。

・こだいつむぎ [古代紬

塩沢町ではお召しである本塩沢だけでなく、真綿をもちいた塩沢紬も織られている。メーカーは本塩沢と同じ。古代紬は林宗平が自分の紬につけた名前。宗平(故人)・正機の父子は伝統工芸展の常連。同じような小千谷の紬では菱一のブランドである「地織紬」「六条ゆきやま紬」もある。

・こだち [小裁]

供用和服の裁ち方の名称。長着、ちゃんちゃんこ、襦袢などに応用。小裁の長着には一つ身裁(0~2才)・三つ身裁(3才くらい)がある。一つ身は後身頃が並幅一幅なのでこの名称がある。三つ身は、後身頃・前身頃・衽をそれぞれ背縫・脇縫・衽付で縫い合わせるのが特徴。身頃を身丈の三倍の用尺で裁つのでこの名称が生まれたともいう。

・こだゆうかのこ [小太夫鹿子]

貞享・元禄時代、歌舞伎役者の伊藤小太夫が江戸で鹿の子絞りを愛用、これが京、大阪にも流行し、江戸鹿子とも呼ばれた。

・ごたんだじま・かりえじま [五反田縞・狩江縞

織物の名称・愛媛県
五反田縞は愛媛県の宇和海に面した現在の八幡浜市で、また狩江縞は現在の明浜町、昔の狩江村一帯で農漁村の婦人の手間仕事として織られていたものですが、狩江縞と称するものは現在まったく製織されていない

江戸時代におこった五反田縞(じま)は絹綿の交織布で、明治期には大生産地になったが、昭和期になって衰退した。

・こつあげ [骨上げ]

模様の全体や一部分を糊の太細線の変化で表現する技法。線上げともいう。

 

・こてんもよう [古典模様]

奈良時代に外国から渡ってきた文様や、日本独特の文様で、各時代を経て現代へと受け継がれたきた伝統的な文様の総称。有職文様や吉祥文様などがあり、広く用いられている。

・ことじもん [琴柱文]

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・ことぶきもん [寿文]

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・こはくおり [琥珀織]

絹織物の一つ。経には諸撚りの本撚糸を、密に使って織った平織地。緯糸は比較的太い糸を使用し、緯畝を表したもの。女帯地、袴地、肩裏地に用いられる。薄地の琥珀織はタフタという。

・こはぜ [小鉤]

足袋・脚袢、袋物などの合わせ目を留めるのに用いる真鍮製の爪型金具。長円形を二つに割った形のもの。

・こはば[小幅]

「広幅」に対する語で、通常九寸~一尺(34cm~38cm)程度の幅の織物をいう。和服地は大部分がこれである。

・こはまちりめん [古浜縮緬]

絹織物の一つ。経糸は無撚、緯糸は左右強撚糸を2本ずつ交互に織り込んだ二越縮緬。しぼ立ちは普通の縮緬より高い。錦紗よりも粗いもの。

・ごばんじま [碁盤縞]

碁盤のように細かい格子状の縞柄の名称。

・ごふく [呉服]

織物の総称として、麻や木綿の織物を太物、絹織物の総称として反物、華南の呉の国伝来の織物を漢服(はやはとり)、この三つの意味で使われる。絹織物の総称として今日に至ったが、現在では和服=呉服となっている。

・こぶくろおび [小袋帯]

半幅の袋帯のこと。普段の帯幅は、鯨尺で八寸(約30センチ)であるが、半幅帯は四寸(約15センチ)である。

・こぶしぎぬ [小節絹]

「玉糸」で織った「裏絹地」で、衣面に多くのフシコブがあるものをいう。普通の「糸好絹」に比べて丈夫であり、関西地方で喜ばれ、関東地方ではあまり使用されない。

・コプトおり [コプト織]

エジプトのキリスト教美術の一つで、教徒であるコプト人によって、3世紀ごろから12~13世紀にわたって織られた。経糸に麻、緯糸にウールを用いた、素朴で色彩的なオリエント風の模様が特徴。

・こふりそで [小振袖]

振袖は女性の長着の袖の一種で、袖丈の長いものをいう。その袖丈の長さによって、大振袖、中振袖、小振袖に分けられる。大振袖は袖丈1メートル以上、中振袖は76センチ以上1メートルまで、小振袖は中振袖と普通の袖丈の訪問着の中間の袖丈で(75cmまで)ある。振袖は、女児と未婚女性の着る晴れ着であり、その代名詞となっている。

・ごぶらんおめし[ゴブラン御召]

ゴブラン織の模様や感じを取入れた御召。ゴブラン織とは十五世紀、フランスのゴブランによって初めて織られた多彩な美術織物で、わが国の綴織と同じ織技法を用い、手織りでつくられる。

・ごぶらんおり[ゴブラン織]

15世紀のころ、フランスのゴブランによってはじめられた多彩な手織の織物で、室内装飾用のタペストリーが主である。今日、フランスでは国の保護の下で製織されている。京都の西陣でも、同じような色彩豊かな帯が織り出され、ゴブランと呼ばれている。

・こふりそで[小振袖]

袖丈を、中振袖よりも短く、訪問着よりも長い85cmくらいにしたきもののこと。振袖は、男女児と未婚の女性の晴れ着とされているもの。その袖の長さによって大振袖、中振袖、小振袖に分けられる。小振袖は、若い女性が着る。訪問着よりも袖を長く華やかにしたもの。

・ごふん [胡粉]

〈はまぐり〉などの貝殻を砕いたものを原料に、精製した白色顔料。染色において、白色は、胡粉を使用することが多い。

・コーマ

綿織物の一つ。高度に精錬された木綿糸である、コーマ糸を用いて織った浴衣地のこと。コーマ生地といわれている。中形(浴衣のこと)の染下生地としては、岡木綿よりも上等品といえる。

・ごまいしゅす[五枚繻子・朱子]

経糸、緯糸ともに五本で一単位が構成され、綜絖(そうこう)(織物を織るときに用いる。織具の付属品の一種。経糸を上下に開きわけるもの。いいかえると緯糸を入れるために抒(ひ)の通りみちをあける道具である。古代では「綜」といい。地方によって「綾(よこ)」「綾(あや)取り」「遊び」 「掛糸(かけいと)」などと呼はれる。)を五枚用いて織った繻子織のこと。正式には五枚繻子縮緬と呼ぶ。光沢があるので、若向きの訪問着や色無地、振袖に適する。

・こまげた[駒下駄]

下駄の一種。差し歯にせず、桐、杉、椿などの木をくりぬいて鼻緒をすえた一本作りのもので、江戸時代より男女ともに用いられている。しかし現在は、接着剤の進歩と木材の節約から、歯をついだものが多い。

・こましおぜ [駒塩瀬]

塩瀬(しおぜ)は経緯とも生糸を用いて、平織に織り上げてから精練します。羽二重と異なるのは使用する緯糸が、通常の羽二重に比べてかなり太めのもので、このため織上がりでは、密な経糸が太い緯糸を包む込むような外観となり、博多織のように表面に畦が現れます。経糸に平糸を使用したものを平塩瀬、駒撚糸を使用したものを駒塩瀬といいます。

・こまどんすちりめん [駒緞子縮緬]

駒緞子(こまどんす)縮緬は、駒綸子縮緬と同じように、経糸に駒撚糸を用いていますが、駒綸子縮緬が通常4枚破れ斜紋の裏組織によって文様を織り出しているのに対して、駒緞子縮緬では5枚朱子の裏表組織によって綸子風の柄を表現しています。駒綸子縮緬に比べてやや地は厚くなりますが、柔らかく皺もよりにくいという特徴があります。

・こまもの [小間物]

化粧品や櫛など、こまごました日用品のこと。それらを販売する店を小間物屋といった。

・こまむじちりめん [駒無地縮緬]

紋意匠縮緬の無地場だけを取り出したものです。経糸に強撚糸を使い、緯糸には強撚糸の地緯と諸撚糸の絵緯の2種類を使い地緯を平織、絵緯を4枚斜紋または8枚朱子の緯二重組織等に織り上げます。緯糸が二重になるため地風に様々な変化を与える事が出来る反面、「サシ」等の織キズも生じやすくなり経緯糸の両素材には十分な注意が必要です。

・こまよりいと [駒撚糸]

撚りの強くかかった糸のこと。「駒御召」「駒絽」などを織るのに用いる糸。普通の御召糸より、上撚と下撚の差が小さいので、織物にしたときのしぼが目立たず、さらっとしている。

・こまりんずちりめん [駒綸子縮緬]

駒撚り糸で織った綸子である。繻子組織で地紋を織り出したもので、染下生地として用いる。

・こまろ [駒絽]

絽の場合綟り目と綟り目の間に織り込まれる組織は奇数越でなければなりません。偶数越にすると綟り目が崩れてしまい通気性を損なうとともに非常に外観が汚くなってしまいます。この綟り目の間の組織の緯糸本数によって「三越絽」「五越絽」七越絽」とよばれますが、越数が大きくなるほど全体に占める綟り目の比率が小さくなり、通気性も減少します。駒絽はしゃきっとした地風とさらっとした肌触りが特徴で、夏物として多く使われています。新潟県五泉市が主な産地です。用途は色無地や訪問着。

・こめおり [穀織]

※「穀」と言う字は本来「禾」でなく「系」ですが、第二水準にないため仮に使われます経糸を二本一組とし、もう一組と対になって、その間隔に粗密を生じながら織った織物。文様が粒を並べたように見えることから命名された。文様のないものだけを特別に「穀織」と呼んで穀紗と区別する場合もある。

・こめしゃ [穀紗]

無地の紗地に文を穀織の組織で織りだしたもの。夏の袍や直衣、狩衣などに用いられる。衣紋道山科流では「顕文紗文穀」と呼ぶ。

・こもちじま [子持ち縞]

縞柄の一つ。やや太い縞のそばに細い縞を配した縞柄。片子持ち縞(太、細の繰り返し)、両子持ち縞(細、太、細の繰り返し)、双子持ち縞(太、細、細の繰り返し)や子持ち大名(大名縞のそばに細い縞一筋)など、バラエティーに富んでいる。

・こもん [小紋]

小さい紋(文様つまり柄)の着物のことをいいます。一般的には型紙を使い、一定の幅で柄を繰り返し染めていきます。主におしゃれ着として、観劇やクラス会、またお稽古着としても着用でき、柄ゆきによっては、ちょっとしたお祝いやパーティーなどでも気軽に着ていくことができます。生地は綸子や縮緬を主に使いますが、時には紬地に染めたものも見受けられます。小紋には江戸小紋や京小紋を始め、様々な種類があります。

・こもんぱく [小紋箔]

顧問の型紙を置いて金、銀の箔置きをすること。主として、振袖などの一部分に用いる文様装飾で、繊細ながらの金、銀箔が、豪華で優美な効果を出す。

・こりんご [棠梨]

植物染料の一種。ずみともいい、バラ科に属する潅木。樹皮より黄色を採取する。

・コールてん [コール天]

コーデュロイのこと。ビロードに似た一種の畝織物。明治27年(1894)、東京浅草で製造に成功する。和装では、実用向きの冬足袋などに用いたが、現在ではほとんど見られなくなっている。

・ごろうまる [五郎丸]

麻布の一種で、越中(富山県)出町地方で産出、裃(かみしも)地として賞用された。

・ころもがえ [衣更・更衣]

日本の風土に即した行事で、平安時代から行われてきた。衣更は、衣服だけでなく家具調度品にいたるまで、季節に順応させるべく準備を整えることである。衣更は春からの夏への時と、夏から秋への時の二度行われる。六月一日と十月一日が目安だが実際の気温と季節感とを調節して行うようになってきている。

・こわたり [古渡]

名物裂において古渡というときには、その渡来した区分のひとつをいう。極古渡は十四世紀(足利義満のころ)までの渡来品、古渡は十五世紀(足利義政のころ)までの渡来品をいう。あとは中渡(なかわたり)、後渡(のちわたり)、近渡(ちかわたり)、新渡(しんわたり)、今渡(いまわたり)などと区分されている。

・こんがすり [紺絣]

紺の地に白い絣文様の表れた、木綿絣のこと。白絣に対する語。一般には、久留米絣、伊予絣、備後絣などがよく知られている。薩摩絣も同様であるが、高級なので紺薩摩という。

 

・さいし [釵

宮中女官の髪飾りの一種。①中国の隋・唐よりもたらされた二本足の簪(かんざし)。木、金、銀、銅などで作られ、2本を1組とする。古代の宝髻(ほうけい)や中古の蔽髪(へいはつ)にさして用いた。②近世、女房晴れ装束を着用する際、御垂髪(おすべらかし)の前髪に飾る鍍金(めっき)の平額(ひらびたい。中古の蔽髪)をさす。

・さいで [裂帛・裂楮

昔、布帛の切れ端のことを呼んだ。

・さいわいおり [幸織

織物の名称・
絹織物の一つ。組織は、博多織と同じだが、同じ杼口に緯糸一本を打ち込む代わりに、数本連続して並行に打ちこんだもの。 西陣で織られた博多織に似た光沢ある帯地。

・さかきじ [逆生地]

元来、追い裁ちにして一定方向を向くべき生地が、天地反対になること。又は反対になっている生地。

・さかいだんつう [境段通]

大阪府堺市で産出される綿製の手織文様敷物のこと。天保2(1831)年頃、堺の町人で糸物商「藤本荘左衛門」が鍋島緞通と中国製の敷物を模倣して織りだしたのが、堺緞通の始まりだといわれている。明治時代に織機(竪機)が改善されて大幅緞通が織りだされるようになり、明治30年頃には、製品の多くは外国への輸出用となった。第二次大戦後、手織緞通は機械織になり、現在は羽毛緯に羊毛を用いて織られている。

・さがにしき [佐賀錦]

織物の名称・佐賀県佐賀市
平織または綾織の、華やかな織物。金銀の箔紙や漆を塗った和紙をこまかく裁断したものを経糸に用い、緯糸には多彩な絹糸や金銀紙を用いる。
起源には諸説があり明らかではない。ある説によると、江戸時代に、京都から小城藩鍋島家に嫁いだ女性が、京都の紙遊び細工から網代組を織りだし、それが御殿女中の手芸として発達したのだとされる。また別の説では、鹿島鍋島藩の九代藩主夫人・柏岡が病床にあったとき、天井の網代組からヒントを得て、こよりで網代模様を織ったのが始まりとされる。
佐賀錦は、初めは和紙と和紙、あるいは和紙と木綿糸という組み合わせだったが、やがて改良されて現在の形式となった。「組錦」「御組錦」「鹿島錦」と呼ばれた時期もあった。
藩内で守られてきた技法は、明治維新の廃藩置県のために一時途絶えたが、佐賀出身の大隈重信夫人の尽力により復興され、現在に至っている。
  ※鍋島家 肥前藩の藩主。のちに、肥前近郊の小藩である小城藩、蓮池藩、
   鹿島藩も治めた。つまり肥前、小城、蓮池、鹿島のどの藩も鍋島家を藩主に
   もつ兄弟のような藩である。佐賀錦が鍋島家の所領のいずれかの藩で成立
   したことは確実であるが、それぞれの藩に佐賀錦の起源を物語る逸話があ
    るので、確定が難しい。
   肥前藩は江戸開幕時からの藩。小城藩は一六一四年に鍋島勝茂(のちの肥前藩主)の子、
   元茂が分封されたことに始まる。蓮池藩は一六三六年に鍋島直純が分封されたことに始まる。

・さきぞめ [先染め]

織物を織る前に原料糸を、精錬・染色してから織ること。あるいは、その織物のこと。

・さがらぬい [相良繍]

刺繍技法の1つ。布表面に結び玉を作り繍う方法。男物の縫紋や小鳥の目などに用いる。この技法を変化させたものも多い。相良刺繍ともいう。

・さきおり [裂織り]

古い織物を細く裂き、緯糸に使って製織した織物。厚手で丈夫なため、仕事着などに用いられた。貴重な国府の再利用の一手段であったが、味わいのある風合いや無作為に現れる色調のおもしろさが好まれ、今では趣味の織物として帯などに用いられる。

・さきぞめ [先染]

染織用語。布地に織る前、糸の状態で染めてから織ったもの。または、その織物のことをいう。後染織物の反対である。御召をはじめ、紬、上布、絣など、いわゆる織りのきものは「先染織物」である。先染めのものは丈夫で実用性に富んでいるところから、街着や普段着に広く用いられているが、礼装には用いない。しかし、近年は先染めの訪問着風の御召や紬織物があり、社交着に使うようになっている。

・さきねり [先練]

織物にする前の生糸の状態で、不純物であるセリシンなどを取り除く。精錬の作業をすることをいう。先練りの織物には紬やお召しなどがある。

・さきべら [先標]

後標が縦べらだけを先にして縫いながら幅べらを当たっていく方法であるのに対し、縦べら、幅べら両方全てを縫う前にへら付けしていく方法をいう。後標は関東式、先標は関西式と呼ばれることもある。どちらにも長所、短所があってどちらがよいともいえない。学校の家政科では先標方式をとっていることが多い。

・さきゆうぜんかこう [先友禅加工]

糸目糊置をして、地色を染める前に友禅加工する工程を指す。

・さくさんし [柞蚕糸]

柞蚕糸には、野蚕糸がもつ粗野な魅力と独特の色艶のほかに、ヤママユガ科のみに見られる多孔性繭糸(生糸は緻密性繭糸)としての特性があります。多孔性であるため、繊維の中に空気を取り込むことができ、保温・保湿性に優れていて夏は涼しく、冬あたたかい調温機能があるといわれています。

・さくさんつむぎ [柞蚕紬]

織物の名称。紬の一種。経緯ともに柞蚕糸を用いた織物。信州(長野県)や越後(新潟県)の見付地方で産したが、現在はほとんど生産されていない。

・さくしゅうがすり [作州絣]

岡山県津山市一帯で生産される絣の織物。紺木綿の絵絣で、絣の白糸がはっきりとしているのが特徴。鳥取県中部の倉吉の絵絣が始まりで、倉吉から津山へ嫁いだ女性が第二次世界大戦後に織ったものが作州絣と呼ばれるようにった明治以前は、自家用の木綿織物が織られる程度だった。明治中期になると、倉吉絣の技法をもとに絵絣の生産が始められたが、昭和になると衰退した。昭和26年に、織元である杉原博氏が地織絣の伝統を復興した。作州絣の名は、市場に出すためにそのときにつけられたものである。

・さくらもん[桜文]

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・ざぐりいと[座繰り糸]

繭から生糸をとる場合、機械を用いず手で糸を引き出し、座繰り機(糸を巻きつける道具)に巻き取る方法で作る糸のこと。機械製糸に比べて、野趣のある独特の織味となる。略して座繰りともいう。

・さげおび[下帯・提帯]

帯の一種。江戸時代の公家や武家の女性が夏用に用いた帯で、主に帷子(かたびら)の上に締めた。

・ささづま [笹褄]

着物の褄の角の細く尖っているもの。笹の葉のように尖っていることからこの名がある。

・ささひだ [笹襞]

袴のひだの形をいい、笹の葉の形をしているのでこの名あり。男袴では前、女袴では前後両方にとる。いずれも紐付け位置から相引きの上までのひだである。

・ささもん[笹文]

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・ささふねもん [笹船文]

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・ざざんざおり [颯々織]

織物の名称・静岡県浜松市
玉糸と紬糸が織りなすウールのような地風の絹織物。
平織と綾織があり、柄は、大柄な縞と格子が主体。厚手の手織紬で、紬織を現代感覚で織りだしたもの
古くから遠州木綿の産地だった浜松の織物産業も、大正末期の経済不況により衰えた。
ざざんざ織は昭和初期に、節のある絹の玉糸と真綿から手引、手織したユニークな織物が考案されたことに始まる。考案者は平松実氏で、平松家は代々、遠州木綿の織屋であった。
ざざんざの名は室町幕府の六代将軍・足利義教が狂言「茶壺」の、「浜松のおとはざざんざ」と謡った「颯々の松」から名づけられたといわれている。この故事からざざんざ織は、また、茶道の関係者に人気がある。ざざんざ織は、昭和の新伝承織物といえる。

・さじかっぷ [佐志葛布]

織物の名称・佐賀県唐津市
古来葛は衣食住万般にわたる有用植物として重宝がられたものである。木綿が普及したあとも,山間離島に葛布の紡織が残っているのも決して不思議なことではない。佐志は,佐賀県唐津市の農村地帯である。数年前までほ数人の姐が葛布を織っていたが,現在では技術の伝承者は一人だけである。 
葛の茎から採った繊維で織った名古屋帯です。葛布といえば、主な産地として静岡県掛川市が有名なのですが、当地の葛布はそのほとんどが経(たて)糸に絹を用いています。つまり原材料の約半分は絹ということになります。それとは対照的に、コチラ唐津で細々と、丁寧に織られたこの葛布はそのすべてが葛の繊維からできています。しかも織り、糸の染めまでコダワリを見せるこの作品、写真でうまく表現できていないのは残念ですが、あのゴツゴツした葛の茎からは想像を絶するしなやかさと光沢です。お目にかかることがあれば是非お手に取ってその温もりをお確かめ下さい。

・さしこ [刺子]

綿布を重ね合わせて、一面に一針抜きに細かく縫ったもの。衣類を出来るだけ長持ちさせる為に入念な繕刺が必要でありその技法を刺子という。使用の激しい衣類の補強としてあらかじめ新品のうちに刺し縫を施しておく方法。柔剣道着や消防服にみられる。民芸品として帯や着物に応用されている。また、刺子のような外観の刺子織というおりものもあり、風呂敷や座布団などに用いられている。

・さしこぎん [刺しこぎん]

刺しこぎんは青森県弘前市付近を中心に中、南、北の各津軽郡の農村で古くから行われた土地独特の風習に育った民芸品で、そのすぐれた刺繍技術は世界的にも認められている。半年は雪に埋もれて暮す主婦や娘たちは、耐久力と防寒のため野良着の胸と肩の部分を麻地に木綿糸をもって精巧な幾何学模様を刺し続けていた。それは質素ではあるが、不思議にも独特の風趣とパターンの華やかさを表しており、しかも生地は万遍なく補強するので強靭な労働着となった。その刺繍法【(小衣刺=こぎんざし)・織り糸をすくってできたもよう】を新しい材料により今日の用に生かそうとしてなったのが津軽こぎんといわれるいわゆる小物類だが、茶羽織、帯地、ハンドバッグなどがある。

・さしこばんてん [刺子半纏]

刺子を施した丈夫な半纏のことで、主に火消しや鳶職が用いた。

・さしぬい [刺し繍]

刺繍技法の1つ。模様の輪郭線上に針足を揃え、内側へ刺し込み、色の濃淡、糸の太さなどで変化をつけ、絵画的な花や鳥などを表わすのによく用いられる。

・さしぬき [指貫]

中古に用いた男性用の袴のこと。裾を紐で指し貫き、すぼめて着用したところからこの名がある。紐を膝の下ですぼめる場合は上くくり、かかとの上ですぼめる場合は下くくりといい、くくり緒の袴、奴袴(ぬばかま)などとも呼ぶ。主に綾絹や平絹で仕立てられた。

・さじもめん [佐治木綿]

丹波布のこと。明治の末頃まで地元では佐治木綿とか佐治紬・佐治縞、縞貫といわれてきたもので、 近くの畑からとれる綿を紡いで糸としハンノキやヤマモモの木の皮や栗の実の皮等の草木で染めそれを織ったものをいう。木綿の織物の緯糸に絹のつまみ糸を交織し、色目は藍、茶、緑の濃淡に白を含めた四色の見事な組み合わせによって織られた美しい縞織物です。明治末期には途絶えていたものを戦後になって「丹波布」と称して復元されるようになった

・さしぶせ [挿し伏せ]

ゴム糸目と、糊伏を合わせた加工方法の総称。

・さしふせゆうぜん [挿伏友禅]

「書染友禅」の一種。所要の模様を順次彩色していくことである。まず、青花で下絵を描き、そのまわりを糯糊(こめのり)で囲んで他の部分と混じらないようにし、その上に糊をかぶせて(伏糊=ふせのり)から織物全体に染料溶液を「引き染め」して地色染めし、最後に水洗いして糊を落す。

・さしわけちゅうがた [差し分け中形]

注染中形の一技法。中形(浴衣)は、普通、藍の一色染だが、模様を複数の色をつけて表現したいときに、部分的に色を差して別染することをいう。多色染の中形の染色方法。

・さだめこもん [定小紋]

江戸時代に各大名が、それぞれの藩専用の小紋柄を裃に染めて、登城するときに着用したためにこの名がある。裃小紋ともいう。

・さっかー [サッカー]

縬織(しじらおり)といって経糸の幾本づつかを長くしておいて、製織の際これをたるませ布面に凹凸を起こさせて特殊な柄合いを出すとともに、冷涼な感じを起こさせるもので、主として盛夏の婦人服地に用いられる。柄は格子や縞が多い。和服では夏季の浴衣地などに応用される。

・さつまがすり [薩摩絣]

織物の名称・宮崎県都城市/鹿児島県鹿児島市
薩摩(現在の鹿児島県西部)で織られた絣の木綿織物で、「琉球絣」を元にして織られています。藍染めの経緯絣で、紺地や白地の精緻な絣柄が特徴の最高級品で「紺薩摩」とも呼ばれます。
藩政時代、琉球は薩摩藩の統治下にあり、琉球の織物は薩摩を経由されて売り出されていたため薩摩の名で呼ばれていました。元禄年間(1736~1740)に鹿児島でも織られるようになり、戦後は宮崎県都城市を中心に織られています。
絣柄の、藍染木綿織物。高級木綿絣織物として知られる。紺地のものを紺薩摩、白地に紺絣を白薩摩という。
天文年間(一五三二~一五五五)に薩摩紺織という、無地や縞柄、簡単な絣柄などの藍染木綿が織られていた。
鹿児島産の薩摩絣が織られるようになったのは元文年間(一七三六~一七四一)のことである。それまで薩摩藩は、藩に属する琉球(沖縄)産の琉球絣を薩摩絣として販売していた。
第二次大戦後の薩摩絣は、大島紬調の絣柄である。

・さつまじょうふ [薩摩上布]

織物の名称・
宮古上布のことである。宮古上布と産地名でよばれるようになったのは第二次大戦後になってからである。それまでは藩政時代、琉球は薩摩の支配下にあり、琉球の織物は薩摩を経由したので、その名称がそのまま戦前まで続いていたのであった。

・さてん [サテン]

繻子織のこと。繻子の項参照。

・さなだ [真田]

幅の狭い織物、狭織(さなだ)のことで、綺(かむばた)ともいう。平打ちまたは袋打ちした扁平の組み紐。これを帯にしたものを「真田帯」、細幅織物を「真田織」という。

・さなだひも [真田紐]

紐の一種。組み台を使って、平打ちか袋打ちした、扁平な巾のせまい組み紐のこと。または、機械を使って織った巾のせまい織紐のことをいう。真田、真田編みともいう。桐製の道具箱によく用いる。

・さのちぢみ [佐野縮]

織物の名称・栃木県佐野市周辺
綿縮みとは綿縮(めんちぢみ)とは、経糸(たていと)に普通撚り(より)の綿糸、緯糸(よこいと)に強撚(きょうねん)の綿糸を用いて織り上げた後、のり抜き、精練(せいれん)して布面にしぼを出した、綿のちぢみ織りのことをいいます。綿縮には、岩国縮(山口県)や銚子縮(千葉県)、佐野縮(栃木県)、高島縮(滋賀県)、大垣縮(岐阜県)、徳丸縮(石川県)、相馬縮(福島県)などの種類があり、盛夏用の着尺地などに用いられます。

・さびいと [錆糸]

糸巻などの錆が付着した糸でこれを知らずに緯糸として織り込んだ場合、汚点が絣状に横方向に現われることがある。錆糸入りとして不用品である。

・さべりおり [山辺里織]

織物の名称。新潟県村上市山辺里(岩船地方)絹織物の一種。さわやかで、しゃっきりとした風合いの織物で、おもに男性用の絹袴地として用いられる。「山辺里平(さべりひら)」という。平織、綾織、絽織があり、紺地に茶、またはねずみ色の縦縞が多い。文化年間(1804~1818)から織られている。「村上平」ともいう。糸づかいは、本練と半練の二種類がある。また洋服の袖裏地などに用いられたので、のちに「サベリ」として裏地の通称となった。

・さまーうーるきじゃく [サマーウール着尺]

「ウール御召」の盛夏用のもので、薄地あるいは「ポーラー織」などで清涼感を持たせたものである。八王子および西陣で最も多く生産される。

さめこもん [鮫小紋]

小紋染の文様の1つ。鮫皮(さめがわ)のように、生地面に細かい白抜き状の点を染め出したものの代表。一見無地風にみえるが、裃(かみしも)に多く使われた。洋服地でシャークスキン(鮫肌)というのは鮫小紋の表面(織り方)にしたもの。

さやおりもの [紗綾織物]

絹織物の1つ。地が平組織で文様が経の四枚綾のもの。白生地の地紋にも見られる。糸づかいは綸子とほぼ同様だが、紗綾の方が薄い。

・さやがた [紗綾形]

さあやの略。卍形を種々に結合させた連続模様をいう。古典模様。雷文、稲妻形ともいう。「綸子」に良く似た「紗綾」という織物(紗綾形綸子)の図案によく利用されるためこの名が出た。

・さよみ [貲(布)]

奈良時代の布の1種で、麻を原料とした平織物。植物繊維製品としては最も上質とされている。糸は細く、太さも整い、薄くて軽い。肌触りも良い。さよみぬのともいう。

・さらさ [更紗]

南蛮から渡来した模様染めの綿布で、草花模様や幾何学模様を、総柄で捺染したものの総称。現在わが国では「友禅」「小紋」「中形」などの特殊の模様染めを除き、主として綿布に数色の暗色の多い配色で草花模様、幾何学模様を総柄で捺染したものを総称している。語源はポルトガル語のSaraca、インドの地名Surat などから出たといわれるように、桃山時代西欧人によって伝えられたものである。染法は種々あり、型紙で「摺込染」による「摺込更紗」、刷毛や筆で「描き染」にする「描き染更紗」、蝋を用いる「ロウケツ更紗」などである。絹布に染めたものを特に「絹更紗」と称する。現在では染法よりむしろその模様図案の感じをいう。和装では帯側、羽織裏などに、また風呂敷や布団側に多く見られる。
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・さらし [晒]

綿、麻の糸や織物を純白にする工程、およびその製品をいう。 化学薬品(晒粉)を用いて行うものと、天日晒といって自然の日光、空気、水によるものとがあるが、後者は現在ほとんど見られない。普通晒のほか、蛍光染料を用いた「蛍光晒」なども盛んである。浴衣地などはすべて晒した後染色する。

・さらしもめん [晒木綿]

漂白した木綿のこと。小幅の手織綿布で古くから知多晒が有名。肌着、幼児寝巻などに使われ、衛生材料としても使用

・さらせんもよう [サラセン模様]

模様の名称。サラセン帝国(7~8世紀アラビアのイスラム教国)の建築装飾などに多く使われている模様。代表的なものに唐草模様、幾何学模様がある。

・さりん [紗綸]

薄地の綸子のこと。俗に「しゃりん」ともいう。

・さわちどりもん [沢千鳥文]

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・さんがいまつもん [三階松文]

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・さんけち [三纈]

染色の名称。奈良時代の代表的な三種類の模様染のことをう。きょう纈(きょうけち)(現在の板絞り染)、纐纈(こうけち)(絞り染)、﨟纈(ろうけち)(蠟染)の三つの技法の総称である。現在、正倉院の染織品の中に見ることができる。

・さんげんしょく [三原色]

色混合で作り出せない、基本色となる色(赤、黄、青)、この三色を混合することによって、すべての色を作り出すことができる。

・さんげんそしき [三原組織]

「平織」「綾織」「繻子織」の三種の織り方は織物の組織の基本であり、他のすべてはこの組織からの変化あるいは組み合わせである。

・さんじゃく [三尺・三尺帯]

男帯の一つ。古くは三尺の手ぬぐいを用いたことからその名がある。また、子供用の兵児帯のことも三尺という。また、三尺手ぬぐい、三尺帯の略称。

・さんすいもん [山水文]

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さんせいせんりょう [酸性染料]

動物性繊維である絹や羊毛を染めるのに多く用いる染料。染料の構造上、酸性の性質を含むところから、こう呼ばれている。

・さんとめじま [棧留縞]

縞綿織物の一種。薄い木綿地に細かい縞を織り出したもので、徳川初期にインドのサントメ(Santome)からわが国に渡来したのでこの名がある。「唐棧縞(とうざんじま)」ともいう。
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・さんのひだ [三の襞]

袴のひだの名称の一つで男袴の前部の中心のひだの事。女袴、男袴ともひだの外側から一のひだ、二のひだ、三のひだとよぶ。

・さんぶひも [三分紐]

三分紐とは幅が三分(約9mm)の平組みの細いタイプの紐(帯締め)で、帯留めでおしゃれをするときに使うもの。結び目や紐の端は、結んでから後ろに回してお太鼓などの帯結びの中に処理し、見えないようにする。帯留の紐は、戦前には細い二分紐もあり、現在では幅1cm以上の通常の帯締めを用いる場合もあるが、この三分紐が一般的である。帯留との配色、調和を考えることが大切。

・さんぼくしなぬの [山北科布]

織物の名称・新潟県岩船郡山北町
科の木の樹皮繊維で織った布。染料による染色はせず、科の木本来の色のまま織りあげるので、黄褐色をしている。木綿、麻よりも古い織物。かたくゴワゴワしているが、しなやかで強くさらりとした感じがある。科布の歴史は古く、一千年以上も昔から日本各地で自家用として織られていた。しかし明治維新後、近代化が進むにつれて姿を消し、現在では二、三か所の山里でひっそりと織り続けられている。樹皮の糸である科糸は動力機械で織ることができないので、居座機で手織で織る。

・さんぼんろ [三本絽]

絽織および越数の項参照。

 

 

・じあい [地合]

織物の地風の具合をいう言葉。織物はその使用糸や織り方、加工などによって生地の外観や手触り、密度などがさまざまに変わってできる。その具合を示すもので「地合が良い」とか「地合が堅い」などと使われる。

・じあげ [地揚げ・地上げ]

紋織りのとき、綾文を織る場合に綜絖(そうこう)装置によって地糸を表面に浮き上がらせることを地揚げという。

・じいと [地糸]

織物の地を構成する糸。先染織物の地色となる、無地の糸のこと。模様を表すための絣糸(絣模様の場合)や縞糸(縞模様の場合)などに対する語。また、紋織物では、搦(から)み糸以外の糸をいう。経の地糸を地経(じたて)、緯の地糸を地経(じぬき)という。

・じいれ [地入]

染色上の用語。「下付(漬)け」「下引」ともいい、染色の準備工程の一種である。織物に布海苔、アラビアゴム液、豆汁などを刷毛引きして染液の浸透を助け、色相を鮮明にするために行う。また「灰汁漬け」をいう場合もある。

じいろ [地色]

模様や柄以外の部分の色。しごき染・引染などで染められた色。きものの地となる色。模様の部分は目色という。無地の場合は、地色とはいわず、色という。

・じえり [地襟]

着物の襟のこと。襟の上にさらに、共布を用いて掛ける衿を掛け襟といい、これに対して身頃に縫い付ける襟を地襟という。

・しおざわおめし [塩沢御召]

→ほんしおざわ参照。

・しおざわつむぎ [塩沢紬]

織物の名称・新潟県南魚沼市塩沢町
付近で生産されている御召風の紬のこと。新潟県の塩沢産地の織物の歴史は古く、奈良時代に織られた当地方の麻布(現在の越後上布)が奈良の正倉院に保存されています。この麻織物の技術技法を絹織物にとり入れた織物が塩沢紬で、江戸時代に織り始められました。

・しおぜ [塩瀬]

塩瀬羽二重の略で、厚地の羽二重のことである。経糸に細い生糸を使い、緯糸に濡らした太い生糸(ぬれ緯糸(ぬれぬきいと))を使って平織にした後精錬した生地。多く横畝(うね)がある。主として帯地に用いられるが、他に半衿、袱紗、羽織などにも用いられる。模様を織り出した紋塩瀬、合繊でも塩瀬風に仕上げたテトロン塩瀬などがある。

・しおぜはぶたえ [塩瀬羽二重]

普通羽二重は疋280~300匁(1050~1125g)を重目とするが、これよりさらに目方をつけ(330~400匁=1250~1400g)塩瀬風に織ったもの。昔は「着尺」「羽尺」にも使用されたが、最近は多く帯地として用いられ、「描き染」による「染名古屋帯」などに利用されている。産地は福井、石川(北陸地方)、新潟五泉が有名。練り上げ白生地で1疋単位目方で取引されるか、名古屋帯一本分(鯨尺4.5m)に裁断して取引される。

・じおり [地織]

地組織があって別の糸を織り込む場合、別糸に対して基本の布になる織地をいう。その場合の経糸、緯糸をそれぞれ地経(じたて)、地経(じぬき)ともいう。

・しかがずり [鹿絣]

越後地方で産出した絹織物。経緯の小柄で紺・黒・鉄などの地に黄色または白のやや粗い絣を織り出したもの。

・じがみもん [地紙文] 

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・しかもん [鹿紋] 

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・しきくさばなもん [四季草花文]

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・しきしつぎ [色紙継ぎ]

布地が弱ったときに、共布または表地になじむ同色の薄い布を裏にあて、表に針目が目立たないように一目落しまたは二目落しで刺し継ぎすること。

・しきしもん [色紙文]

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・しきのし [敷伸し]

和服をたたんで畳ござの間におき、その上に重しをして皺を伸ばし、衣服の形に整える方法の一種。アイロンが使われる以前は敷伸しや寝押しの方法が用いられた。現在でも繊維の種類や仕立てによって効果もあり、簡易なので行われている。

・しきふく [式服]

儀式に着用する衣服の総称。礼服、礼装に同じである。女性の場合、既婚者は留袖(裾模様、紋付)、未婚者は振袖、男性は紋付羽織、袴を着用する。

・しきもよう [四季模様]

模様の名称。四季の季節感を表す風物や、草木や花などを、一枚のきものの中に盛り込んだ模様の総称である。一つの季節にこだわることなく着用できる利点があり、広く用いられている。高価な振袖や留袖に多くみられる。

・しくんしもん [四君子文]

竹、梅、蘭、菊の四つを揃えた文様のこと。吉祥文様として広く用いられている。
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・しごき [扱き]

帯の一種。扱き帯の略称。並幅のまま縫わずに扱いて締めるのでこの名がある。花嫁衣裳、七五三の女児の祝い着に使用。男児の兵児帯のことを言うこともある。

・しごきぞめ [扱染]

引染・浸染などに対する語。友禅染などの時、文様の型糊を置いた後、地色を染めるために、色糊を扱きベラで布面全体に塗る。その後、挽粉をふり、乾燥させてから蒸熱する。

・しごく [扱く]

縫ったりくけたりした後で、糸と布均合いを良くするために、親指と人差し指で布をなでることを意味する和裁用語。いとこきともいう。

・しこんぞめん [紫根染]

染色法の一種。紫根(紫草ともいう)は。関東、東北、四国などの各地の山野に自生する多年草。その宿根(4、5年に生長したものが最も多量の色素を有している)を紫染に用いるところからこの名がある。
この紫根から染液を採り、あらかじめ灰汁で処理した布を浸し乾燥させる。これを何度も繰り返して紫色を得る。現在は、岩手県の南部紫根染が有名。

・ししゅう [刺繍]

刺繍は糸で模様を表現するので立体的で、とても豪華な印象になります。刺繍をする帯地としては、斜子(ななこ)織、繻子(しゅす)織、紋織、綴、金箔・銀箔の無地などを用い、手刺繍や機械刺繍の加工がなされます。技法では糸の光沢を活かした「すが縫」、糸に結び目を作り点によって模様を表現する「さがら縫い」が多く用いられています。中国の蘇州(そしゅう)刺繍なども有名です。

・しじら [縬・縬織]

織物の名称。布地の表面に、縦方向の縮みを表した縮織物。縮は張力の異なる二種の経糸を用いる場合、太さの異なる二種の経糸を用いる場合、二種の異なる組織を用いる場合などがある。主に放つようの着尺として用いるが、阿波縬(徳島県)が有名である。

・しじらかんとう [縬広東]

間道の名物裂。白地に黒茶の細い縦横格子の縞で地にシボのあるもの。

・じしろちゅうがた [地白中形]

中形の一種。地が白で模様の部分が藍染になった、中形染のことをいう。それに対し、模様が白いものは地染中形という。

・しずり [倭文布]

太古の織物の呼び名。志豆波多(しずはた)または志豆利(しずり)ともいい、志豆は筋の意味。

・しそう [紫草]

植物染料の一種で、紫根(しこん)と同じ。

・じぞめ [地染め]

染め物や紋織りなどの模様以外の部分を地といい、地の色(地色)を染めること、および染めたものをいう。

・じだいぎれ [時代裂]

現存している昔の裂のことをいう。正倉院裂、法隆寺裂灘度がある。古代裂、名物裂ともよぶ。また、室町時代までに中国から伝来した、貴重な染織品の断片の総称。現存する、古くてめずらしい裂のこと。

・したえ [下絵]

絵模様の下描きのことで、布地に染色や刺繍を施す前にその図案を、青花を用いて、細筆で下描きすること。または下描きしたものを言う。

・したえば [下絵羽]

⇒仮絵羽(かりえば)

・したぎ [下着]

上着に対する語で、上着の下に着る衣類の総称。長襦袢や肌襦袢などのことをさす。また、表着と同じ形に仕立てられ、表着の下に重ねて着るきもののこともいう。これは襲下着ともいう。かつては、礼装の留袖には白の下着を一枚重ねた。しかし現代では省略して、比翼仕立てといって、衿や袖口、振りや裾の見えるところだけを重ねたように見せる仕立てが主流である。

・したぞめ [下染]

2色以上の染料を重ねて染める時、先に染めることをいい、上掛〈ウワガ〉けに対する語。引き染で、濃い色を染める時、1度にその濃度で染色せずに、ある濃度で1度引染する。その後、目的の濃度に上げて引染する。その時の先に染めることをいう。

・したてかえ [仕立替]

もとの型から違った種類にリフォームする意味と単に仕立て直しの意味とがある。仕立替、仕立て直し上の注意及び工夫としては、①表裏の無い両面物なら裏返しをする。②袖口と袖付けの交換。③前後身頃を入れ替える。衽の天地を替える。④後身頃の帯下になるところから切って袖にする。⑤着物の膝や居敷が破れた場合は羽織に。⑥着物→羽織→コートのリフォームが可能だが、最近ではあまり見かけなくなった。

・したてや [仕立屋]

裁縫を業とする家、又はその人。洋裁に対し和裁の場合は和裁士という。仕立ては染物、織物の最終工程で「きものを生かすも殺すも仕立屋しだい」というふうに高価な着物の最終工程として重視されている。

・したまえ [下前]

和服の部分名称。右前身頃のことで、きものを着るとき下側になる身頃のことをいう。上前に対する語

・しだもん[羊歯文] 

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・しちごさん [七五三]

祝儀に用いる数で1・3・5・7・9の奇数をめでたいとしてその中の三つを取ったもの。数え年の3才、5才、7才の祝いなので七五三という。11月15日に氏神に参る。正装は和服。3才は髪置の祝。男児は熨斗目模様の着流し。女児は友禅縮緬の4ツ身の着物に錦の帯。五才は袴着の祝い。七五三のうち、男児だけの祝い。羽二重の紋付に羽織・袴・白足袋・畳表の草履。衣服の模様は熨斗目。七才は帯解の祝い。女児の祝い。今まで着ていた付紐のついた着物の付紐をとって腰帯(腰紐)を締める。仕立も四ツ身でなく本裁にして肩揚、腰揚をする。友禅縮緬で二枚襲の振袖に仕立てる。

・しちぶこーと [七分コート]

長コート、半コートの中間のすんぽうのものをいう。

・しちぶねり [七分練り]

生糸の精練法の一種で、絹繊維に付着するセリシン(膠質=にかわしつ)を70%前後除くもの。なお若干のセリシンが残っているため、出来上がりはやや堅い感じである。本練に要する精練剤の量を多少減じて行う。練減量は15~17%程度となる。

・しっかい [悉皆]

悉皆とは全部という意味で、染色、染め直し、シミ落し、洗張り、仕立てなど染織に関する一切を請け負い調製すること。また、その業者を悉皆屋という。必ずしも自分ですべて行うのではなく、各職先を回って段取りをつけて行う。

・しっかいぎょう [悉皆業]

誂悉皆屋と仕入れ悉皆屋と呼ばれる二種の業種に分かれている。悉皆業とは、京都に於いては模様染色の請負業とも言うべきものである。誂悉皆屋は、一般の個人や呉服店などの注文によって、その好みの模様染(無地染)を引き受け、仮絵羽、下絵師、糊置、染色、蒸し屋など、黒紋付に於いては、紋糊、紋洗い、のし、張り、上絵屋等の職人を使って製作し、工賃、手数料の一切を依頼者より支払いを受ける業のことである。素人悉皆ともいう。
また、仕入れ悉皆とは、問屋や商社の注文によって多量に製作をする業で、玄人悉皆ともいう。いわゆる悉皆とは、工賃手数料等一切という意味である。
また、時には洗い張りまたは、他の染物染め直し等を引き受けるこことも含まれる。

・しつけ [躾]

縫い目や折りや、きせを固定しておくための仮の押え縫をいい、その作業を「躾を掛ける」という。布地との均合上、絹物にはぞべ糸という甘撚の絹双糸を、銘仙・モスリン類にはガス躾糸を用いる。躾の主な目的は、①次にする作業をしやすくする。②袖口、裾、褄下等、着用の直前迄仕立上がりの状態を崩さずに保持する。③ぐし躾、かくし躾、かざり躾などの着用中も形崩れを防ぐ為に取り除かない躾もある。④躾の種類としては一目落し(拍子木しつけ)、二目落し、三目落し、縫いびつけ(ぐしびつけ)、かくしびつけなど。

・じっとく [地十徳]

古服の名。僧服の直綴(じきとつ)から転じた語。素袍(すおう)の両脇を縫いつけ、菊綴じ(とじ)をつけて腰から下にひだをとり、袖を広くしたもので、家紋を縫いつけたものもある。
鎌倉時代の末ごろにはじまり、室町時代には旅行着として広く用いられた。江戸時代には礼装として僧、医師、儒者などが用いるようになり、庶民は用いなくなった。黒無地の絽、紗などでつくられ、胸紐が付いており、竹はひざくらいで、羽織のように羽織って着た。現在の羽織の祖型ともいわれている。今日では、茶道の男子専門家が着用している。

・しっぽうつなぎもん [七宝繋文]

一個の輪に四個の輪を四すみに重ねた文様で、輪違い文ともいう。またこれを四方襷(たすき)とよんだり、十方(なまって七宝という)とした。数多くつないだものを七宝つなぎという。七宝とは仏典にでる七つの宝石のことで、これを模様化したもの。室町時代に中国から伝来したといわれる古典文様であるが、現在も帯地、小袖などに広く用いられる。

・じなおし [地直し]

仕立てにはいる前の大切な作業。とくに表地と裏地の縮み率に大差があるときは、縮み率の大きい反物に徹底した地のしが行なわれる。→じのし

・じなしもよう [地無模様]

模様の名称。桃山時代末期から作られ、慶長年間(1596~1615)に大流行した小袖模様のことである。地が見えないほど全体に刺繍、絞り、摺り箔を施したことからこの名がある。この小袖を地無小袖という

・しなぬの [榀布・科布]

「まだぬの」とも呼ばれる古布で、科木の樹皮から繊維をとって織ったもの。地風は固いが強靭でさらりとしており、かつては各地で織られて労働着とされていたが、現在では希少な織物とされる。和装では帯に使われる。

・じぬき [字抜き]

誂品に持ち主の名前をゴム糊で防染し、白く染め抜くことをいう。通常下前の衿先裏側に名前だけを入れる場合が多い。これに対して、仕入れ商品の反物には予め四角い白抜きの衿字抜きを施しておく。

・じぬき [地抜き]

色無地または模様物を黒に染め直す場合、先に染めてある色や模様の影響で、黒が悪くならないようにするために、染める前に色や模様をぬいておくことをいう。

・じのし [地伸し]

衣類の用布を裁断する前の処理の一つとして、布目を正しく整え、耳のつれを伸ばして平らにすること。

・しのぶぞめしぼり [忍染絞]

昔の絞り染めの一種。別名「箱絞り」といい、忍染器(縁付き盆のような器具)を使用して、簡単に布面に優美な漣模様を出したもの。

・じのめ [地の目]

 反物の経(たて)・緯(よこ)の糸の目のこと。

・しのん [シノン]

蛋白性繊維で東洋紡が開発した合繊和装素材。絹同様のしなやかな風合いと光沢で、優れた染色性が特徴で、留袖、染め大島、喪服、雨コートなどの表物から裏物として用途が広い。

・じばた [地機]

原始的な手織り機の一種。経糸を織手の腰に取り付け、張り具合を調節しながら織る。居座り機、下機ともいう。それに対し、枠に経糸を取り付けて織り手が腰をかけて織るものを高機という。

・じばり [地張]

型紙捺染の準備工程のひとつ。捺染板の両面に糯米糊を塗り(敷糊という)さらにその上に姫糊を薄く溶かして引き、繞染する布を張りつけることをいう。その両面、特に両耳をこっすってしわを伸ばし、布地を板面に密着させるため、桜樫などで作った拍木型の木片(地張木)を使用し、また布地を平均に広げるために横約12cm、縦約14cmの角を取った厚紙(地張紙)を用いて布面を摩擦する。布の表面に水を引き伸子(竹を丸く細く削ったもので織物の両耳に刺して幅を整えるもの=しんし)張りして生地のしわ伸ばしを行い、長さおよび幅をそろえることをいう。「水張り」ともいい、仕上げ後の生地の幅、長さをあらかじめ想定して行うもので、「紋付染」の地あつらえなどの準備工程である。

・しふ [紙布]

和紙を細く裁断して撚った糸で織り上げた布のこと。経緯ともに紙を用いたもの。緯糸だけに紙を用いて経糸は絹や麻、木綿糸のものもある。現在では希少性が尊ばれ、趣味的な着尺や帯地などに用いられる。

 ・じふう [地風]

布地がもっている風合い、味わいのこと。

・しふぉん・べるべっと [シフォン・ベルベット]

シフォンとは絹モスリンという言葉で、特にこれらをやわらかく仕上げたものを指す。シフォン・ベルベットはこのシフォンの感じを持った「ベルベット」。地は本絹糸で表面の毛羽糸に人絹糸を用い柔らかな地風をもつ。肩掛け、コートなどに使われ、新潟県十日町、京都西陣が主産地

・しぶがみ [渋紙]

和紙に柿渋を塗布し耐久性を高めた紙のことをいう。原紙の大きさは8丁判(54×90cm)で、薄手から厚手まで用途により様々な厚さがあり、10番、15番などと表され、数が大きくなるほど厚手になる。主に反物につける渋札や板場友禅の型紙に用いられる。渋札や、摺り友禅用型紙には薄手を、型友禅は型伏糊用には糊層が必要なため、厚手のものが用いられる。しかし、最近では、プラスチックシートや、写真型に代わってきている。

・しぶかわふとおり [渋川太織り]

織物の名称
群馬県渋川地方で産する平織物。縱糸に玉糸、横糸に熨斗(のし)糸などを使ったもの。

・しぶき [渋木]

渋木は、日本の南部に産する「楊梅(ようばい)」の樹皮を熱水溶出した煎汁のこと。「楊梅」は、「やまもも」とか「桃皮(ももかわ)」などとも称し、代表的な茶色系の植物染料である。信州紬、大島紬、秋田黄八丈などの植物染料として、古くから現在まで多く用いられている。渋木に含まれるタンニン、煎茶の「渋みの素」ともいわれ、自然界のきわめて多くの植物に存在する。その大部分が黄褐色から黒茶色系統の植物染料として用いられる。

・しぶふだ [渋札]

渋紙で作られた生地の端につける指図札のことをいう。染色時の熱や水分によって普通の紙ではすぐに破れるために和紙に柿の渋をつけて強くする。このしぶ札を使い染の種類、紋の種類、寸法等を書き示し、どこの商品化誰の注文かを区別する。
以前は墨書きが多かったが、最近では油性インクが用いられており、煮染(たきぞめ)の仕入れ商品では札が黒くなるために黄色などのインクで書く。

・しぼ[皺]

縮緬、御召、クレープ・デシン、錦紗などの強撚糸を用いた、織物の布面に表れた波状や粒状の皺のことで、そのしわの深さをしぼ立ちという。しぼは強撚糸の収縮を利用して、製織後にしぼ寄せをすることによってできるものであるが、左右の強撚糸(緯糸)を交互に規則正しく織り込むと両しぼ、左右のどちらかを織り込むと片しぼができる。普通、縮緬や御召は両しぼで、縮は片しぼである。

・しぼすれ[皺擦れ]

スレの一種。アタマズレともいう。生地にできている凹凸をシボというが、シボの山になる部分が水洗い時などにスレて起きる。一般的には簡単なスレなので、スレ直しで容易に直すことができる。

・しぼよせ [皺寄せ]

「シボ」というのは布面にあらわれる細かいシワで、これが御召の特故になっている。織り上がった布を湯につけると、緑糸の撚りが戻って、シワができる。この作業を「シボ寄せ」、あるいは「シボとり」という。 このシボによって御召の風合がきまるの で、丹念に行なわれる。

・しぼり [絞り]

染色技法の1つ。生地全面を均一に染めるのではなく、部分的に染めのこしを作る技法。染め残す部分をつまみ、糸でくくったり、針で縫ったり、強く圧迫したりして、染料液の中に浸して染める。染め上がってから、糸をほどくと、その部分が模様として表れる。

・しぼりゆかた [絞り浴衣]

絞り染で模様を表現した浴衣のこと。愛知県有松の有松鳴海絞りが有名で、藍染がほとんどである。

・しま [縞]

線で構成する模様の総称。二種以上の色糸を用いて織物の経、緯、経緯に筋を織り出したもので、竪縞、横縞、格子縞、斜め縞と大別される。日本では古く竪縞を倭文市(しずり)、横縞を綺(かんはた)とよんでいたが、室町時代末期から江戸時代にかけて、南洋諸島から渡来した、筋柄の木綿織物を珍重して、島布、島渡りなどといい、略して島と呼んだことからこの名がある。現在では染の縞模様も染縞、縞とよぶ。
近世から「しま」に縞の字をあてるようになったが、縞という字は、中国で白絹や練絹を示す語であり、その字をあてた経緯はさだかでない。
縞の種類は、太さや組み合わせによって千筋、万筋、棒縞、大名縞、子持ち縞、滝縞、よろけ縞などがある。また、」縞」が縞織物自体をさすこともある。産地名を冠したものが多く、上田縞、小倉縞などがある。

・しまいばかま [仕舞袴]

袴の一種で襠(まち)のある袴のことをいう。能楽に用いられ、笹ひだが深く襠が低いのが特徴。また流儀により、ひだ山を縫いとめることもある。

・しまおめし [縞御召]

縞柄を織り出した御召で、もっとも御召らしい御召である。その起源は江戸時代「柳条縞緬」として、関東の桐生にはじまるという。つまり徳川家斉の御召物とされて著名になったわけで、現雀の「御召」の源をなすものといってよい。男女の区別なく、また年齢を問わず、粋なきものとして愛されている。

・しまぬきもめん[縞貫木綿]

丹波布(佐治木綿)

・しまちりめん [柳条縮緬]

江戸時代の天和年間(一七八一~一六四二)頃から織られた縞模様を織り出した縮緬。この「縮緬」は天正年間(一五七三~一五九二)に中国の織工が和泉(大阪府)の堺へ渡来して技術を伝え、それ以来、国産されるようになった。「縞縮緬」とも書いた。

・しまばらづまもよう [島原褄模様]

柄の付け方からの名称。 画像と解説はこちらへ

・しまばらもめん [島原木綿]

織物の名称・長崎県
幻の反物と云われる「島原木綿」は有明の湯江川沿いでトンパタトンパタ音を響かせて織られておりました。
たて縞柄が特徴である「島原木綿」は生地が丈夫であることが知られ、国外まで輸出されていました。
江戸時代から太平洋戦争後までの女性の衣服は、この生地が主流だったと云われております。
昭和63年、貴重な技術と伝統を伝承するため「島原木綿保存会」により復興され、現在も織り続けられています。

・しみぬき [しみ抜き]

洗濯では落ちにくい汚れをベンジンや稀アンモニア等の薬品を使って除去すること。

・しめきり [締切り]

絣柄の名。締切り絣の略称。経糸を数色に染め分けて、段模様を表した絣。糸を染めるとき締め付けて防染することから、この名が付いた。鎌倉・室町時代から江戸時代にかけて、主に武家男性の小袖や能装束に用いられた。現代のきものや帯にも生かされている。

・しめばた [締機]

絣糸を作るとき、防染法として綿糸まで織締めるための織機。綿糸を経、絣糸となるべき束を緯として、絣模様にしたがって部分的に織締める。大島紬などはこの代表。

・じもん [地紋]

紋綸子・紋羽二重・紋縮緬などの、紋織物で織り出された模様のこと。地模様も同じ。
小葵のように織物全体に配置した細かい続き文様。二陪織物(ふたえおりもの)の場合はこの上に上紋が作られる。

・じもんおこし地紋起こし]

生地に織り込まれた模様を生かした染色加工の総称。彩色や刺繍、箔などを、地紋に施こし、立体感のある柄に表現する。着尺、コート、羽織などに見られる。

しゃ [紗]

盛夏用の透ける生地で、キモノやコート地の染下生地になる。空間(すき間)の多い組織をもつため通気性がよく、光線の当たり加減で美しい埜目〈モクメ〉が表れる。柄を織り出した紗を紋紗という。非常によく透ける。

・しゃあわせ [紗袷]

絽、もしくは紗の生地の上に薄手の紗を重ねて仕立てた二枚あわせの着物や羽織のこと。裏記事の模様が表の社を通して見えるために独特の趣がある。従来は袷と単の境となる時期に着用されたが、近年は拡大解釈され、単のきものに準じて考えられている。

・じゃかごもん [蛇籠文]

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・じゃかたらじま [ジャガタラ縞]

木綿縞織物の一つ。ジャガタラはジャカルタから渡来した縞織物のことをいう。広義には唐桟(とうざん)も含まれる。

・ジャカード

フランスのジョセフ・マリー・ジャカール(1752~1834)が1800年に発明した紋織装置。小孔をあけた厚紙、数百枚を綴り合わせ大型紡(紋紙)を機の上に掛け、その紋紙による経糸の操作によって、複雑な文様を織ることができる。このジャカードが発明されたため、従来(ドビー織機)に比べて紋織の織る能率が4倍もアップしたといわれる。
 わが国へは明治五、六年、初めて京都西陣へ伝えられた。その後、明治20年頃までに桐生、足利、福井、米沢などに普及していった。現在の紋織機のほとんどはこれによって作られる。

・しゃく [尺]

装束の反物の幅、1尺は約37.8cm(鯨尺)。

・しゃくに [尺二]

尺二幅の反物。装束用の反物は一尺二寸の幅の生地が使われることが多い。

・しゃむそう [紗無双]

広義では紗袷と同じで、紗または絽に紗を重ねて袷仕立てにしたきものや羽織をさすが、「無双」は表裏同じ生地で仕立てたものをいうので、厳密には紗と紗を重ねたものをさす。

・しゃもんおり [斜紋織]

綾織」の別称。

・しゃれもん [洒落紋]

紋所の一つであるが、家紋ではない。多くは女性の好みによって作った花などの装飾的な紋で、伊達紋ともいう。

・じゃわさらさ [ジャワ更紗]

更紗の一種。ジャワ島を中心として生産される、蠟防染による模様染。インドネシアではバティックと呼ばれているが、バティックは、現在では蠟防染による更紗を指す、国際的な共通語である。溶解した蠟液を、チャンチンという銅製の道具にすくい、蠟液を出しながら布面に模様を描き防染する方法。
模様は、主として植物や動物、幾何学模様が多いが、中部地方ではヒンズー教、北部では中国、イスラム、ヨーロッパ文化の影響が濃く出ている。色彩も中部では青と茶色系統、北部では多彩色のものが多い。染料はかつての植物染料に代わり、化学染料が用いられている。

・しゅ [朱]

色の名前。天然には辰砂として産する朱色顔料であり、朱墨・朱肉・朱漆など様々の染色があり、古代朱は鎧兜など武具の紐に見られる。洗朱(あらいしゅ)は朱の薄い色であり、珊瑚朱は珊瑚から来た色名である。 朱色のページへ

・じゅうにしもん [十二支文]

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・じゅうさんまいり [十三参り]

儀式の名。京都で陰暦三月十三日(現在は四月十三日)に、十三歳の少年、少女が盛装して、福徳、知恵を授かるために嵯峨法輪寺の虚空蔵菩薩へ参詣する儀式のこと。これまで四つ身仕立てであったきものを、このときから本裁ちの振袖などを着せて参詣する。近年は全国に見られる。

・じゅうじがすり [十字絣]

絣柄の名。経緯の絣糸を交差させて、十の字形を表したもので、十の字絣とも呼ばれる。絣柄の基本的なもので、小絣、大絣まであり、木綿絣、絹織物、上布類に広く用いられている。

・じゅうにひとえ [十二単]

平安、鎌倉時代にかけての、宮中における女性の盛装で十二の御衣(おんぞ)ともいう。そもそも十二単は俗称で正式には、女房晴装束、唐衣裳姿(からぎぬもすがた)という。構成は唐衣(からぎぬ)、裳(も)、袿(うちぎ)、単で檜扇(ひおうぎ)、たとうなどを持つ。十二単といっても十枚、十五枚のものもあった。
後世、袿を五領(装束などは領と数える)重ねる五衣(いつつぎぬ)が一般的になっても、語だけが残り、江戸時代以降は、主に五衣に唐衣を着た晴装束を指すようになった。

・じゅしかこう [樹脂加工]

織物仕上げ法の一つで、合成樹脂液を布面に浸けこませて「防縮性」「弾力性」「防しわ性」「湿り気に対する強度」などを増加させる。

・しゅすおり [繻子織]

朱子織とも書く。織物の三原組織(三つの基本的な織り方)のひとつで各種の変化応用がある。経糸と緯糸の組織点が一定の間隔をあけて配置されている織物で素材はさまざま。やわらかく肌触りが良いが、糸が長く浮くので摩擦に弱く擦り切れやすい。 ビロードのように滑らかで光沢がある。綸子・緞子などがこれである。裏地などすべりを良くする織物はすべてこれによる。

・しゅちん [朱珍・繻珍]

繻子組織の地に多色の緯糸で文様を織り出した絹織物。中国にならって室町時代末ごろから織られ、幕末から明治時代にはもっぱら打掛や女帯に用いられた。現在では繻珍の帯は少ない。

・しゅっさいおり [出西織]

織物の名称・島根県
戦後、簸川郡斐川町出西で始まった織り活動は、地名に因んで出西織と名付けられた。出雲地方に新風を吹き込んだ民芸織物。工房を主宰する多々納桂子氏(昭和5年生れ)は、陶芸をめざしていた夫君・弘光氏の勧めで、昭和29年4月に倉敷民芸館付属工芸研究所の2期生として入所。外村吉之介館長から織物の精神性と手織り仕事の薫陶を受け、1年の修了で帰郷した。同研究所の同期生の井上佐登子氏と出西手織会を結成したが、新居を工房に綿・絹・毛の繊維素材で、着尺地・帯地・洋服地など現代の装いに必要な織物の制作をめざした。
 昭和48年1月から清冽な藍色の絞染で有名な片野元彦氏(昭和50年逝去)の助言のもと、工房に藍染場を設け灰汁発酵建てによる藍染を手がける。藍染にこだわる中から、すがすがしい絣織を主にした作品が産まれた。

じゅばん [襦袢]

和服用の肌着。元来は丈の短い半襦袢のことを指す。のちに絹製の長襦袢ができた。長襦袢は着物との間に着るもので、半襦袢と共に、単仕立てと袷〈アワセ〉仕立ての物がある。肌襦袢は四季を通じて単衣仕立。襦袢の語源はポルトガル語の gibao 。長襦袢は贅沢品で羽二重、綸子、絖などに絞染、墨絵、刺繍などをした豪華な物も作られた。そのため本来の肌着の役目を失って装飾化したため、肌襦袢を生み出した。

・しゅりおり [首里織・首里紬]

織物の名称・沖縄県/那覇市、中頭郡西原町、島尻郡南風原町
14~15世紀の琉球王国は、東南アジアや中国と盛んに交易を行い、その交流により織の技術を学びました。その後幾百年の年月を積み重ね、沖縄の気候風土に育まれた、様々な個性を持つ琉球織物が生み出されました。
その中でも、首里王府の城下町として栄えた首里では、王府の貴族、士族用に色・柄ともに究極まで追求された、格調の高い、悠々として麗美な織物が織り継がれ、現在に至っています。

・しゅりてじま [首里手縞

織物の名称・沖縄県那覇市首里当之蔵
格子縞に琉球絣を配した絹織物。
一反に五~七色の糸と、紅白あるいは紺白の二色をより合わせた糸(ムディー)を経緯に織り込む。紅白のムディーのある手縞は祝着用、紺白のものは日常用あるいは法事用として用いられた。
部分の色によって白玉(絣部分を白抜きしたもの)、黒玉(白地に色絣のもの)、色玉(色地に色彩絣のもの)の三種類がある。また、特殊なものとして藍の生葉染手縞もある(首里生藍手縞)。
十五世紀に尚氏が沖縄全島を統一すると、首里が琉球王朝の首都となり沖縄染色の中心地となった。
琉球王朝は中国、朝鮮、日本を始め、シャムやジャワなどの南方諸国ともさかんに交易を行ったので、王候貴族などの衣装には外国文化の影響が色濃く現れた。そうした輸入文化は、やがて沖縄独自の文化と融合して新しい染織文化を生みだしていった。

・しゅりなまあいそめてじま [首里生藍染手縞

織物の名称・沖縄県那覇市首里
原始的な染色法で糸を染めた絹織物。琉球藍を発酵させずに生葉で糸を染める。
絣入り格子柄を絽や紗に織る。
起源は明らかではないが、首里に古くから伝わる染色法である。
藍の発酵建てが行われるようになったのが奈良時代の頃とされるので、それ以前の技法が現在でも活かされていることになる。

・しゅりはなおり [首里花織]

織物の名称・沖縄県/那覇市、中頭郡西原町、島尻郡南風原町
花織は沖縄で古来から伝わる織物で、500年ほど前に中国や東南アジアから伝わってきたとも言われていますが、あまりにも古すぎてその起源は定かではありません。
絹糸を琉球藍・福木・モモカワ・サルトリイバラ・シャリンバイ等の天然染料で染め、刺繍のように絹糸を浮かせて織り上げる独特の織り方で織り上げています。
特にこの首里花織は琉球王朝の晴れ着として使われていました。
読谷山の花織の様に真綿風合いではなく、サラッとした風合いで裏糸も出ていません。
平織綜絖によって織り出される紋織の一種で、片面は経糸が浮き、片面は緯糸が浮織になっておりますが、両面、好みによって、どちらでも使用できる合理的な紋織です。

・しゅりはな [首里花倉織]

織物の名称・沖縄県/那覇市、
花織と絽織、紗織などを市松模様に織る紋織で、意図は半練の絹を使用した夏着です。沖縄ではこういう薄ものの布のことをトンボの羽のような美しい布と表現されております。

・しゅりみんさー [首里ミンサー]

織物の名称・沖縄県那覇市首里
首里ミンサーは、畝織と両面浮花織を併用して織られている。

・しゅりろーとんおり [首里道屯織]

織物の名称・沖縄県/那覇市首里汀良町
花織と同様この道屯織も中国から伝えられたといわれている紋織の一種で、両面とも経浮織になっております。昔は着尺ものでしたが、現在ではその技法は帯類に多く生かされているようです。
経糸を浮かせて織る紋織の一種。絹物と綿物がある。
経糸に二色の色糸を用いる。裏表とも経糸のみが浮く、両面使える織物。純植物染料で染めた糸を高機で織り、独特の砧打ちの技法で仕上げる。
一六五九年に中国から紋織の技法が伝えられて以来、長い時間をかけて沖縄独自の織物となり、宮廷の衣装や王府の官服として用いられた。

しゅろ [棕櫚]

ヤシ科の常緑高木。樹皮は強靭(きょうじん)で水や湿気に強いことから、縄・刷毛・帯・敷物などに用いられている。

・じゅんれいそう [準礼装]

正式礼装に準ずる服装のこと。染め抜きの家紋をつけた訪問着や色無地がこれにあたる。
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・しょいあげ [背負揚げ]

和装小物の一つ。通常、帯揚げという。結んだ帯の形を整え、結び目が下がらないようにするための布。薄地の縮緬、綸子、錦紗など、夏は絽や紗などを用いる。絞り染、ぼかし染、無地などがあるが、着物の色や帯、帯締めなどとのコーディネートを考えて用いることが大切である。礼装用として、慶事には白無地、喪服には黒無地か白無地を用いる。振袖には総絞りのものを用いることが多い。

・しょうあいぞめ・おうみもめん [正藍染・近江木綿

織物の名称・滋賀県
正藍染は、昔、阿波特産の葉藍を原料とした紺染であったが、その後四国の葉藍(はあい)を当地で栽培、その染め上がりは従来のものとは異なり、光沢および堅牢さに独特の味を発揮し、名声は全国に及んだ。近江木綿は、染織した糸を手織ったものである。最盛期の大正年間には各農家で織られていたが、現在では一軒だけになった。現在も藍の栽培から発酵、染色、織りまで昔の技法が守り続けられている。ハンカチなどの藍染体験も行われている。

・しょうあいぶしゅうこんおり [成藍武州紺織

織物の名称・埼玉県羽生市
経、緯糸ともに正藍で染める紺織物を指します。経糸には紅殻(顔料の一種)用いることもあり武州青縞ともいわれます。
古くから木綿と藍の栽培がさかんな地域で、天明年間頃から生産されていました。当時は、紺屋が糸をかって賃機にだして織られていましたが、現在では藍染めから製織までの一貫生産がおこなわれています。また、近代化により、藍瓶はタンクに代わり、正藍は割建て(植物と、化学藍の混合)にかわってしまいました。

・しょうけん [正絹]

混じりけのない絹糸、またはその絹糸で織った織物。本絹ともいう。人絹や絹との交織に対する語。

・しょうじょうひ [猩々緋]

色の名前。江戸時代に現れたい露命で能の猩猩等を連想する。また羅紗の陣羽織に用いる。
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・しょうそういんもんよう [正倉院文様]

奈良・東大寺正倉院の宝物に、多くみられる文様の総称。天平時代の文様が最も多いが、飛鳥、白鳳時代の文様も含まれる。正倉院はシルクロードの終着駅ともいわれ、ローマ、ペルシア、インド、西域、中国など西方諸国の影響を受けた文様が多く伝えられている。
文様は多種多様で、大別すると、動物文様(鳳凰、花喰鳥、くじゃく、おうむ、おしどり、鶴、鴨、獅子、虎、羊、象、鹿、馬、竜、きりん、うさぎ、亀)、植物文様(唐草、唐花、牡丹、ぶどう、宝相華(ほうそうげ)、蓮)、幾何模様(連珠、円文、亀甲、石畳、菱形)、自然現象(雲、月、日、星、海、山)などがある。

・しょうぞく [装束]

平安時代の公家の正装から、狩衣などの略装までの総称。古くは「そうぞく」といい、儀式や行事の施設を整備することを指し、季節によって変える調度品のことをいったが、その後、服装を整える意として用いられるようになった。
男性の装束は衣冠、束帯、布袴(ほうこ)、直衣(のうし)、狩衣などがあり、女性の女房装束、子供用の童装束などがある。

・じょうだいおめし [上代御召]

織物の名称
交織の特徴を生かした高級織物。縫糸に御召経と紬糸の二種を用い、紬風の素朴な地風を出している。紋織と紡織とがあり、色彩も柄も多様ながら、上品な街着に適している。
交織といえば、すぐ粗悪品と思いがちだが、これは素材によっては、すばらしい御召が出来るというよい見本だ。

・しょうちくばいもん [松竹梅文]

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・しょうは [紹紦]

名物裂の一つ。千利休の弟子、里村紹紦が所持していたところから、この名があるという。経、緯ともに強撚糸を用いて、細かい横の杉綾文や山形文状の地紋を出し、幾何学模様のほかに、花や唐子が遊んでいる様子を文様化したものもある。現代では帯地にも作られている。

・しょうぶ[尚武

米沢で産出した軽めの高級絹着尺で、経緯とも先染本絹撚糸を使った綾組織のもの。

・しょうぶもん [菖蒲文]

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じょうふ[上

上等な布の意。上質な麻糸を平織にし、薄手で軽い。明治以降は、原糸の品種にかかわらず、上布に似た薄手で、ややかたい風合の夏物着尺地を広く上布と称している。上質な絹を上布と呼ぶこともある。

・しょうへきが [障壁画]

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・じょうもん [定紋]

それぞれの家によって決められている、紋のこと。表紋ともいう。

じょく[褥]

中国でいうしとね(すわったり寝たりする時、下に敷く物)。敷物、ふとんなどを指す。

・しょくせい [織成]

平織組織の紋織で、綴織の一種。本来の綴織は緯畝の平織で、地を表す地緯糸を用いず色緯糸を織り返して織るためハツリ孔を生じるが、織成は地緯糸と文様を表す色緯糸の二種の緯糸を用いて交互に織るため、緯畝やハツリ孔が見られない。正倉院裂にも見られる技法。

・しょくぶつせんい [植物繊維]

天然繊維の一種。植物から採る繊維の一つで、長い管状をしている。種子毛から採るもの(木綿など)、茎からとるもの(亜麻、苧麻(ちょま)、芭蕉など)、葉柄から採るもの(マニラ麻など)がある。

・しょくぶつせんりょう [植物染料]

天然染料の一種。植物の根、樹皮、木質部、花弁、実、葉、茎などから取れる染料の総称。主な材料には藍、茜(あかね)、紅花、蘇芳(すおう)、紫、福木(ふくぎ)、くちなし、はまなす、ログウッド、うこん、丹殻(たんがら)、刈安(かりやす)、やまもも、きはだなどがある。これらは五千年も前から用いられており、日本でも人造染料が発達する明治14年頃まで用いられた。現在では、趣味的に使われることが多い。植物染料による染色を「草木染」と呼んでいる。

じょーぜっと・くれーぷ[ジョーゼット・クレープ

薄地の絹縮緬で、普通は広幅生地とし婦人用ドレス、カーテンなどに用いる。和装では春のショールあるいはその裏地に使用する。

・しょっこうにしき [蜀江錦]

錦の一種。かつて中国の蜀(現在の四川省。蜀江は、現在の同省成都付近を流れる揚子江上流のこと)でつくられた織物のことを蜀江錦といい、日本には天平年間に輸入された。現在も法隆寺の遺品の中に見られる。
その後も蜀江錦は継続して作られたが、中世になると模様は連続した幾何模様が多くなり、八角形と四角形を組み合わせた形がその典型となる。それが日本に渡り、名物裂として茶道の世界などで珍重され、後に国内でもその模様を模した織物をつくるようになった。蜀江錦の模様を蜀江模様という。現在では一般的には名物裂の蜀江錦が知られており、蜀江模様といえば八角形と四角形を組み合わせたものを指す。蜀江模様は帯地などによく用いられる。

・しらさぎもん [白鷺文]

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・しらたかおめし白鷹御召

山形県西置賜郡白鷹町・織物の名称
山形県白鷹町で織られる御召織物です。農家の副業として昭和の初めに作られるようになったもので、手織りの高級品です。経糸に生糸、緯糸は地糸に御召糸、絣糸に生糸を用いて、二越しに打ち込んだ小絣です。この地方にある琉球絣に似た、「米沢紬」の風合いを基礎にしています

しらはり白張

毛加工染色の糊張法の一つ。素張白張りと吟出白張りの二方法がある。白絹を白のまま使用する場合の張り方で、多く法衣、裏地絹などに用いられる。素張りの白張りは、精白した米粉の糊に布海苔汁を加えたものを刷毛引きし、糊付けして陰干しの上、湿気を与えて槌打ちする。吟出白張りは水に晒布海苔および晒膠(にかわ)の少量を加えた溶液に葛粉を入れてよく溶かし、この泥状の汁に絹を浸して絞り出し、台上でもみながら平に伸ばして伸子張りを行い乾燥するもので、もみ込み作業は熟練を要する。

 

・しーるおりシール織

二重織で毛皮のような長い毛羽を持った織物。

・しるくうーるシルクウール

交織織物の名。絹と毛の交織物のこと。経糸に絹糸、緯に毛糸を用いることが多い。毛の丈夫さと防皺性と、絹の柔軟さと光沢を持った単の着尺地として、普段着や街着に適している。無地、縞、絣柄、紋柄がある。

・しるくぽーらーシルクポーラー

絹を使って本来は毛織物である「ポーラー」織物に似せたもの。夏季の着尺として人気がある。

・しるけっとかこうシルケット加工

綿糸を苛性ソーダで処理して絹のような光沢をつける方法で夏季の「綿上布」や「絞り浴衣」の生地にはこの糸を用いるものが多い。

・しるしばんてん [印半纏]

半纏の一つ。紺や茶色の木綿で、衿や背に家紋や屋号を染め出したもの。江戸時代、火消し、大工、左官、鳶職などが用いた。主家から毎年、お仕着せとして出入り職人に与えられた。現在、出初式や一部の職人に残っている。

・しるっくシルック

東レの絹調ポリエステル繊維。絹の美しさとポリエステルの扱い易さを併せ持った新合繊。洗えるという大きな利点があるため神職用普段使いの八藤紋指袴や、白衣(白小袖)などがある。

・しるぱーる [シルパール]

帝人開発のポリエステル繊維の異形断面糸。和装品に適合する素材で、一越、縮緬、駒綸子、羽二重などに用いられる。

・しろあがり [白上がり]

白揚げともいう。地に文様を白く抜くこと。白く残した模様自体をいうこともある。また、模様の部分を白くぬいて地色を染め、後で模様を描くこと。柔らかな感じが特色である。

・しろいしかみこ [白石紙子]

宮城県白石市の織物の名称
和紙製の衣服で紙衣ともいわれ、おもに防寒用として用いられました。
紙子の発祥には、宗教的な色合いが濃いといわれています。修行中の仏僧にとって、紙子は都合のよいものだった。その理由としては、麻布は風を通すが紙子は風を通さないので火の気のない寺院でもあたたかいこと、絹布のように蚕を殺さずにすむこと、女人の手をわずらわさずにつくれるため戒律にかなっていることなどがあげられます。僧侶たちは反古紙を袈裟に着用していた。この伝統は、いまも奈良東大寺二月堂の御水取りの際に垣間見ることができます。
紙子は、僧侶の防寒着や武士の夜陣の際の防寒着として発達し、江戸時代には一般庶民の防寒着や布団の表地として使用されて日本各地で生産されていましたが、現在は白石紙子だけが生産されてます。

・しろいししふ [白石紙布]

宮城県白石市・織物の名称
強い紙を細長く切り、撚りをかけてこより状にしたものを、糸として使用した織物です。宮城県白石市が産地であることから「白石紙布」と呼ばれます。経緯とも紙糸を使って織ったものと、経糸に絹糸や綿糸を用いて緯糸に紙糸を使ったものがあります。出来上がりは軽く、夏の着物地・帯地のほか、芯地や裃・装飾雑貨などにも用いられます。

・しろえりもんつき [白衿紋付]

正装を表す言葉で、紋付の裾模様の表着に白の下着を重ねてきることをいう。現在では受勲や宮中参内などの装いとして、白の比翼襟に白半衿、留袖や訪問着を着て、格調のある袋帯を締める。

・しろきじ [白生地]

染色加工をしない、白地のままの織物。

・しろこがた [白子型]

白子型紙の略称。「いせかたがみ」参照。

・しろつむぎ [白紬]

白地の紬。染下生地として用いられる。

しろむく [白無垢]

汚れのない白衣という意。古代には、麻織物を灰汁などでよく晒〈サラ〉し、神祭りの浄衣に用いた。=祭服。現在では、婚礼の式の時の衣裳を指す。

・しろむじ[白無地]

白生地に同じ。色無地に対する語。

・しん [芯]

衿芯、裾芯、帯芯などがあげられるが、その部分又は商品の薄さを補い、張りを与えるために入れるもの。材料として金巾、晒、モスリン、新モス、ガーゼ、真綿、もめん綿、帯芯などがあって部分により適当なものを選ぶとよい。

しんぎ[芯

反物を巻く時、芯に用いる棒。

・じんけん [人絹]

絹に似せてつくった合成繊維(人造絹糸)。主として木材パルプを原料としたレーヨンのこと。吸湿・吸水性にすぐれ、いろいろな染料によく染まり深みのある美しい色が得られる。ただし水濡れで縮やすくシワも出て、シミもつきやすい欠点がある。Rayonはフランス語で「光沢」を意味する。

・じんけんおめし [人絹御召]

人絹とは人造絹糸の略で、化学紡維を含めていうこともある。人絹御召は凝糸に人絹を使ったもの。第一次大戦後の不況に対応して、桐生などでコストを下げるために盛んに作られた。交織御召の一種で、安さ価だが、縮みが激しい。

・しんこいしまる [新小石丸]

皇居御養蚕所で飼育している日本古来の純粋種「小石丸」を改良した品種です。繭は、日本種特有の「俵型」をしており、生糸は節が少なく繊度ムラが無い為、主に高級呉服用として好まれています。

・しんし [伸子]

竹ひごの両端に真鍮の針を埋め、両端をそれぞれ織物の耳(横端)に留めて、布巾を一定に保つために用いる用具。布の性質に合わせて、その種類(木綿用、絹用など)も多い。加工着尺や絵羽模様などのように、張って染色を施すものには欠かせない用具である。蠟描き、色差し、引き染め、刷毛引きなどの染色に用いる。戦前は一般家庭での洗張りのときに用いられていた。

・しんしゅうつむぎ [信州紬(飯田紬・上田紬)]

織物の名称・長野県/長野市、松本市、上田市、岡谷市、飯田市、駒ヶ根市他
信州紬の始まりは、奈良時代に織られていた「あしぎぬ」まで遡ります。江戸時代初期には、信州の各藩が競って奨励したことから、養蚕が盛んになり、信州全域が紬の織物産地として栄え、毎年京都へ大量の紬が送られていました。
しかしその後紬織物の生産は下火になり、昭和の中頃までは、技術保存の名のもとに、わずかに続けられていたにすぎませんでした。戦後、県や市町村が紬織物の復興に力を入れたため、県下全域で生産が活発になり、高級な反物として、信州紬の名声も次第に高まりました

・しんせん [浸染]

染色法の一つ。染料、または染料と薬品とを溶解した液の中に、糸や布を浸して染める染色法。糸や布の種類によって冷浴、温浴、煮沸浴などの処理法がある。一般に無地染に用いられるが、絞り、蠟纈などの染色にも用いられる。捺染、引き染、描染などに対する語。

・じんばおり [陣羽織]

羽織の一つ。室町時代から江戸時代に、武士が用いた羽織。防寒、防雨のために陣中で鎧、具足の上に着用したのでこの名がある。具足羽織、陣胴服ともいう。
袖のないものがほとんどで、実用的なものの他に、装飾をかねたものもある。布地には絹、羅、紗、ビロードなどが用いられ、刺繍や摺箔を施したものもある。室町時代に渡来した、スペイン人やポルトガル人の服装を、燃したものと伝えられている。江戸時代に入ると、野外における武士の儀礼服として用いられた。

・しんばしいろ [新橋色]

紫などの濃い色が好まれたという。ライトブルー系。 新橋色のページへ

・じんべい [甚平 甚兵衛]

和服の一種。盛夏に男性が家庭で着る着物。多くは麻で作り、着丈は羽織より長く、膝が隠れるほどで、袖は筒袖、帯は用いずにつけひもを結び合わせて着る。袖付けやわき縫いは糸でかがって仕立てる。江戸時代の甚兵衛羽織から出たといわれている。関西地方で起こる。

・しんもす [新モス]

綿モスリンのこと。毛織モスリンの代用品として織られた、薄地の二幅平織綿布。主に裏地、裏衿などに用いられる。

 

 

・すあわせ [素袷]

着物の着方の一つ。長襦袢を着ないで、肌着の上に粋に袷を着ることをいう。

・ずあん [図案]

模様、色彩、配置などの案を図の上に表したもの。いわゆるデザインであるが、着物の業界では昔ながらの「図案」の語を用い、図案を表す人を図案家という。

・すいかん [水干]

昔の庶民の服装で、紗、精好(せいごう)、練平絹などが用いられた。

・すいせんかもん [水仙花文]

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・すいしゃ [粋紗]

絹織物の一つ。紗とはいっても、平織りの絹織物である。玉糸の撚り糸を用いた薄地で、紬の風合いを持つ夏用の先染着尺地。

・すいと [素糸]

織物を製造する際に絹糸一本をそのまま使用するものをいう

・すいり [素入]

筬(織機の経糸を通す装置)の目(羽という)一つに素糸一本を通すことをいい、これによってできるものはあまり糸を多く使わない値頃品の織物である。

・すおう [蘇芳]

植物染料の一つ。東インド原産のマメ科の小潅木で、日本、フィリピン、ブラジルなどで栽培される。木質部に赤色色素を含み、錫塩やみょうばんなどの媒染剤で赤に、クロム塩剤で海老茶色に、鉄塩類で褐色に染色される。日本には上代から大量に輸入され、単独で、あるいは他の色と交染して用いられた。平安朝文学にもよく登場する色名である。
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・すおう [素襖]

直垂から派生して形成された男性の衣服で、麻地に家紋を染め出した上衣と袴からなる。胸紐や菊綴じは革で、腰紐は共裂で作る。室町時代は下級武士の平常服であったが、江戸時代には武士の礼服となった。

・すがいと [菅糸]

練る前の、生糸一本のままの状態の糸のこと。生糸の桛(かせ)糸に対する方言。

・すがき [素描]

無線友禅ともいう。染料液を含ませた筆や刷毛で生地に直接、絵画のように自由に多彩な色で描き染めた友禅。挿友禅(本友禅)のように糸目がないのでこの名がある。

・すかしおり [透し織]

生地が透けるように薄く絡み織りで織った絹織物の総称。「絽」「紗」およびこれらの織り方が混合した織物で、夏季用の帯地、着尺地などに多く用いられる。

・すがぬい [菅繍]

刺繍技法の1つ。布地の緯の目に沿って糸を渡し、これを細糸で留める技法。

・すぎあやおり [杉綾織]

織物組織の名。綾織の変化で、織りあがった布面に綾が山形に連なる様子から、この名がある。

・すきもんしゃ [透文紗]

平織地に紗で文を作る、つまり文様部分が地よりも薄く、文様が透けて見える紗。下に着る衣の色で文様が浮かび上がる。衣紋道高倉流ではこれを「顕文紗」と呼ぶらしくややこしい。

・すきや [透綾

織物の名称で「すきあや(透き綾)」の転。薄地の絹織物のこと。新潟県十日町地方に産した夏季用着尺であったが今はあまり見られない。元は、縦糸に絹糸、横糸に苧麻(ちょま)糸を織り込んだが、今は縦横ともに生糸を用い、また、配色のために半練り糸や練り糸をも混用する。 非常に薄く、さらりと肌ざわりがよい。糸や織り方によって平透綾(ひらすきや)・壁透綾・絽透綾(ろすきや)・通風透綾・縮緬透綾・より透綾・透綾明石・透綾経綸などの種類がある。
 「越後透綾」,「絹上布」とも呼ぶ。江戸末期の文政年間(1818~1830)、京都西陣の宮本某が越後国(現:新潟県)十日町で創製下とされる。

・すくい

すくいは、木製の舟形をした織機用具の杼(ひ)に緯(よこ)糸を通して、経糸をすくいながら下絵の模様に織っていく技法で、綴織に近いものです。とても細かな作業で、根気がいる仕事だそうです。表と裏はありますが、両面使うことができます。多くのすくいの帯は紬糸で織られた、しゃれ帯です。

・すくいぐけ

縫う時と同じ手つきでくける縫いぐけに対して、すくうようにくけるくけ方。縫いぐけより技術的に劣る、初心者向のくけ方である。

・すくいどめ [抄い留め]

縫い終りでごく小さく一針布を抄い、玉留め(針先に3~4回糸を巻き引き抜き、糸にしっかり撚りをかけること)すること。

・すくりーんなっせん [スクリーン捺染]

手加工捺染法の一種。枠に紗布を張り防水性の皮膜で模様を作り、これを捺染する布の上において、その上から色糊をゴムへらで捺染する。従来の型紙捺染法よりも少量の色糊でかつ模様も複雑、精巧なものが得られるのに加えて捜査や設備も簡単に済む利点があり、近来は広く用いられている。

・すじ [筋]

細長く線が通ったもの。転じて縞の意があり、千筋、万筋は代表的なものである。

・すすきもん [薄文]

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・すずし [生絹]

経緯とも生糸で織った布。これを「後染織物」とも呼ぶこともあるが、正確な呼称ではない。精錬した布は「練絹(ねりぎぬ)」。 精錬していない生糸で織った生絹は、堅く張りのある風合いをもち、紗のように薄く、かつ軽いのが特徴。様相の素材でいうならオーガンジーです。主に仏前の生じ張りなどに用いられていた生絹ですが、最近はこれらの特徴を生かし、夏用のきもの地やスカーフなどが作られています。精錬した柔らかな風合いとはまた一味異なる、張りのある爽やかな質感に人気があります。

・すずめもん [雀文]

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・すずはく [錫箔]

錫でできた箔のこと。金銀箔と同じようとで用いられる。その製造法は同じだが、量目は金、銀箔に比べて15%以上重い。

・すそ [裾]

衣服の下の縁で、着装すると、ひざや足首に接する部分。また、衣服自体の裾と、着装姿の裾とがある。

・すそあげ [裾揚げ]

蹴出し(けだし)のこと。

・すそあわせ [裾合わせ]

和裁用語。和裁の部分縫いの一つで、袷や綿入れの仕立てのときに、表と裏の丈を合わせて裾を縫うことをいう。

・すそご [裾濃]

ぼかし染めで、裾に行くにつれて濃くなる染め方。子ども服としての水干袴などに見られる。

・すそしん [裾芯]

裾のふきにふくらみを持たせる為に入れる芯。布芯、真綿芯等がある。羽織等の裾輪をしっかりさせる為に裾に入れる芯をいうこともある。

・すそさばき [裾捌き]

きものの裾が、歩くときに乱れたりからんだりしないような足のこなし。また、歩いているときの裾の布のまつわり具合を「裾さばきがよい(わるい)」などと表現する。

・すそとじ [裾綴]

和裁用語。和服長着の衿、綿入れの裾袘(すそふき)が崩れないように、表裾の折山から0.5cmほど入ったところを表と裏を綴じ合わせること。普通一方の袘目(ふきめ)より他方の衽(おくみ)縫い目まで表裏ともにきわめて小さい針目で裏には表の一つおきに出すように綴じる。

・すそふき [裾袘]

(ふき)のこと。

・すそまわし [裾回し]

袷の長着の裏地で「八掛」ともいう。「八掛」とは衽・前身頃・後身頃の裾と衿先の裏の、左右二枚ずつをいう。のちに袖口にも同じ生地を用いるようになり現在にいたる。裾回し以外の裏は胴裏。生地は表地が絹物の場合は羽二重、錦紗など、普段着には富士絹、メリンス、人絹、化繊などをつける。

・すそもよう [裾模様]

婦人の小袖の模様配置、及びその模様配置をもつ礼服。18世紀になってから裾だけに模様のある小袖ができた。江戸末期には京・大阪・江戸とも婦人の礼服は黒定紋付か裾模様となる。
柄のつけ方からの名称 画像と解説はこちら

・すそよけ [裾除け]

蹴出しのこと。明治以降に出来た名称と考えられる。肌に腰巻をつけて、その上にさらに巻いて用いた物。多くは縮緬を用いた。色は、白・緋・桃色・水色等が有り、模様を染めた物もある。

・すそわた [裾綿]

和裁用語。袷長着の「裾ふき」の形を整え裾綿をふっくらさせるため、ふきの部分にのみ含ませる綿をいい「ふくみ綿」ともいう。

・すてーぷるふぁいばー [ステーフルファイバー]

略して「スフ」ともいう。「人造絹糸」と同じものであるが、人絹糸が生糸のように一条の長い連続糸となっているのに対し、これを一度切断し綿状としたものを紡績機械によって糸としたものである。人絹糸が生糸の代用とされるのに対し綿糸、麻糸などの紡績糸の代用として用いられたが、最近は人絹糸同様、品質は向上し独特の製品をつくるまでになった。

・すてむじ [捨無地]

紋織帯地などにおいて「界切り」から端の無地の部分をいう。

・すてんしるぞめ [ステンシル染]

手加工捺染法の中の「型紙捺染」の変型で、型紙を使わず木製あるいは鋼製の板に模様を彫りぬき、これを生地にあてて刷毛で染液をすり込むもの。

・すなご [砂子]

金銀箔の粉末。金箔や銀箔の粉末を、接着剤を用いて布地に細かくまきつけ、模様を表す。漆の蒔絵や日本画などの手法を、染織品に応用したものである。立体感があり、まきぼかしもできるので、箔置きや、揉み箔とは違った効果があり、花嫁衣裳や振袖、留袖などの豪華な柄ゆきのものに多く用いられる。金箔の粉末を金砂子、銀箔の粉末を銀砂子という。

・すなごはく [砂子箔]

本金や銀箔の粉末を塗布したもの。

・すぬい [素繍]

地色を引染またh、浸染で無地染やぼかし染にしたものに、刺繍で模様を表現したものをいう。

・すはまもん [洲浜文]

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・すばり [素張]

生地に淡い糊を施してしわ、縮みを伸ばし幅を一定にそろえるためにする作業のことをいう。色染の前工程として行われる。布海苔または澱粉粉に桃仁の絞り汁、グリセリンなどを適宜に加え煮溶かした糊を濾して、濃度を加減しながら刷毛で引き、乾燥後槌で打ってやわらかくする。

・すみうち [墨打]

身丈(みたけ)、袖丈(そでたけ)、等の寸法をはかって生地に墨で印をつけることをいう。

・すみがき [墨描き]

本来は日本画の技法の1つで、墨一色で描いたものを指す。辻が花染など、墨の描線を効果的に用いたものがある。古くから小袖染色の技法に用いられている。

・すみながし [墨流し]

模様染めの一種。水面に墨汁を落とし、棒でかきまわたり、吹き乱したりして、複雑な曲線の模様をつくり、その上に布を置いて模様を写し取って仕上げる。浮かし染ともいう。現在では黒だけでなく樹脂染料を用いて着尺、帯揚げ、半衿、胴裏などに用いられている。

・すみながし [墨流し]

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・すみのくらぎれ [角倉切]

金襴の名物裂。日本で製織との説もあるが、京都の旧家角倉家の所蔵品。ビロード地に金で花、兎、作り土をあしらったもの。 角倉金襴のページへ

・すりえ [摺絵]

型染の1つで、型を用いて模様を布に染め付ける技法。木製の凸型を用い、染料や顔料を布地に摺り描いたもの。

・すりぎぬ [摺衣]

草木花鳥などの形をすり染めた衣の総称。すりごろもともいう。信夫摺、小松摺、紫の根摺、萩の花摺、黄土(はに)摺、山藍摺、榛摺(はりずり)など。

・すりこみかすり [摺込み絣]

主として白絣に用いる。解絣(ほぐしがすり)。解し織を参照。

・すりこみぞめ [摺込み染]

摺り染めともいう。布の上に模様を彫った型紙を置き、丸刷毛に染料を含ませて、上から色を摺りこむようにして染める方法。ぼかしに染めることを、摺りぼかしという。

・すりこみもん [摺込み紋]

はじめに地に伏せ糊を置き、染料を刷毛につけ、模様の部分を型紙の上から摺り込むようにして染めた紋のこと。非常に繊細な線の表現やぼかしなども自由にでき、手挿し紋ともよぶ。

・すりはがし [摺りはがし]

金彩技法の1つ。模様などの上に箔を貼り、刷毛などですり、適度にはがして、下の模様などを透かせて見せる技法。

・すりはく [摺り箔]

布地に金箔や銀箔を、接着剤を用いて付着させること。まず、布地に糊を置き、乾かないうちに箔をのせ、綿や柔らかい刷毛で余分なものを落とす。箔押し、箔置きとも言う。古くから行われた文様装飾法。この技法は、室町時代の辻が花染や、能装束に用いられた手法で、現在では友禅染に用いられ、豪華な効果を出している。

・すりびった [摺疋田]

江戸時代の小袖によく見られる染色法の一つ。絞り染の疋田の形を型紙に彫り、これを布地にあて、染料をつけた刷毛で摺り込みながら模様を表す技法。きもの全体ではなく、模様の空間を埋める場合など、部分的に用いられることが多い。現代でも絞りとは異なった、軽快な感じが好まれる。

・すれ [摺れ]

繊維故障の1例。摩擦によって生ずる。布表面の光沢が部分的に異なる現象。

・すんぽう [寸法]

和裁用語としては、墨打ち寸法、注文寸法、裁ち切り寸法、へら付け寸法、仕上がり寸法がある。

 

・せいおうぼ[西王母]

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・せいがいは [青海波]

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・せいかぱれす [精華パレス]

八掛や比翼、胴裏等の裏地には、昭和30年代までは、ほとんどが錦紗縮緬やパレス縮緬が用いられてきました。しかしこれらの強撚糸を用いた縮緬地では宿命的に、水分や湿気に出合うと縮むという欠点があります。このため昭和30年代後半から緯糸に壁撚糸やダブル壁撚糸を用いてその変形した糸の形で独特の「しぼ」を低く形成した精華縮緬が用いられるようになりました。精華パレスではさらに「しぼ」を押さえ滑らかな地風に仕上げています。新潟県五泉市が主な産地。多くは八掛地として使われる。

・せいけい [整経]

機にかける前に、経糸(たていと)を一定の長さと本数に分ける作業。

・せいごう [精好]

近世初頭には丹後精好として丹後(京都)の特産であった絹織物の精好織のこと。地合が緻密で硬く、厚地。また伊達(仙台)藩の精好仙台平は、男物の縞袴地(精好平)として有名。無地精好は現在では京都、福井で産し、神官の服、女官の緋袴などにする。

・せいごうごつき [精好五付]

精好の厚みを重さで表したもの。尺(一尺二寸)幅の1尺あたりの目方が18.75gであるものを五付、22.5gであるものを六付と呼ぶ。

・せいそう [正装]

法的、または社会的に規制された正式の装いのこと。正式礼装の略。

・せいそう [盛装]

美しく着飾った、華やかな装いのこと。

・セイラスじま [セイラス縞]

江戸時代の初期、オランダ人によって舶来した絹の縞織物。

・せいれん [精錬]

動植物繊維の中の雑物を取り除き、繊維としての機能をもたせること。色染をよくするための準備工程として、漂白も同時に行う事が多く、昔は灰汁を使ったが、現在は苛性ソーダや石灰、ソーダ灰を用いて煮沸する。布に織る前の糸を精練する事を「先練」といい、布に織った後で精練する事を「後練」といい、一般的な白生地のことをいう。

・せきだし [堰出し]

防染方法の1つ。模様のまわりを幅広く防染し、染上がりの時、輪郭線は消えて無線となる。蝋〈ロウ〉堰出し、糊堰出し等がある。

・せっかもん [雪花文]

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・せっかしぼり [雪花絞]

絞染の一種で「板締絞」とも「畳絞」ともいう。普通の絞のように「絞ジワ」ができないもので、次のような方法がある。
①幾何絞り=布地を四つまたは六つ折にして正三角形や二等辺三角形、麻の羽型などに正しく畳み、これに両面から適当な板をあて固く締め付けて染色するもので、たたみ方および板締めの型によっていろいろな模様ができる。
②締め木絞り=幾何的にたたまず、任意な形に折り棒を利用して染める。
③縫絞り=たたんだ布を縫い絞り(糸で部分的に縫って引き締める)にする。
④共絞り=最も簡単な方法で、布にできるだけ細かいひだが外に出るように布を結び堅く引いておいて染色するもの。

・せぬい [背縫]

裁縫用語。衣服の「後身頃」左右腋(わき)を縫い合わせることをいい、通常その縫い目線をも背縫いという。

・せぶせ [背伏せ]

紗・絽・薄御召・上布など表から透けて見えるので居敷当をつけず、背縫いがへばるのを防ぐために背伏せにする。背縫代全部に通して背伏せ布をつけて縫い合せ、表にだけきせをかけ、背伏布にはきせをかけずに縫代をくるんでくける。背伏布は、共地又は同色の薄手絹地を、幅2cmに裁って用いる。薄地でなくても白地で肩当や居敷当が目立つものは背伏せにする。

・せーみかこう [セーミ加工]

織物仕上げ法の一種で、一般に「銘仙」「富士絹」などの平織りの絹織物に「縮緬」のような「シボ」を出す仕上げ法を言う。綿製の原型布と重ね合わせて金属製の円筒に巻き取り、蒸気を通して原型布の収縮しようとする力を利用してシボを移すものである。また型ロールを用い縮状を出す方法も有る。この加工をした銘仙をセーミ銘仙或は御召銘仙と呼ぶ。

・せもん [背紋]

家紋のつけ位置による名。背縫いの上部、衿肩明きの裁ち切ったところから7cmほど下につける家紋のこと。一ツ紋といえば、背紋だけのことである。

・せもり [背守]

産着や宮参り等の一ツ身で、背紋の入ってないものにつける背飾りのことで地方によって種々の形がある。現在では省略される場合もある。

・せやふじぬの [世屋藤布]

織物の名称・京都府宮津市
藤蔓の繊維を手機で織った素朴な布。麻織物に似ているが、麻より繊維が太く、目が粗い。
万葉時代から織られているという古代織物。
明治時代までは各地で織られていたが、現在は当地のほか、山形県の山村など数か所で織られているだけである。

・セル

ウールの先染め和服地。縞や格子、霜降りの柄が多く、その感触が柔らかいことから、戦前までは男女ともに着尺、羽織、袴地などに広く愛用されていた。春先や秋口の季節の変り目に着るいわば合着で、「セルの頃」という季節語さえあったほどだ。毛織物の「セルジス」「サージ」から日本語に転化した言葉。

・せんこう [鮮紅]

染色の名。赤色に黄味を有した、特に鮮やかな緋色で、緋色木綿のことを鮮紅ともいう。

・せんざいみどり [千歳緑]

染色の名。深濃緑のことで、千歳(ちとせ)の松の緑の意味。 千歳緑のページへ

・せんしょくほせい [染色補正]

単に補正、地直しともいう。染色加工中に発生した汚れや、余分に付着した色素などの故障を衣裳から取り除くこと。または、その方法。洗い張り・生洗いは、衣裳全体が汚れている場合に行う方法。

・せんすじ [千筋]

縞柄の名称。筋は縞意があり、非常に細かい縞柄のこと。織物のほか、江戸小紋にもある。

・せんだいひら [仙台平]

織物の名称絹袴地の一種。仙台から産出されたことからこの名がある。男物袴地の総称として使われることもあり、糸の精練技術や植物染料による糸染、生地の締りをよくするための打ち込みの強さなどに特徴がある。
仙台伊達藩主が、西陣の織工の小松弥右衛門を招いて織られるようになり、幕府や諸大名への贈答品などに用いたのが始まりです。なかでも精巧な袴地が諸侯に好まれて全国的に広まるようになった。

・ぜんつう [全通]

帯の通し柄をいい、帯のたれ端からたれ端まで、全体に柄が付けられている。これに対する語として「六通」「太鼓柄」などがある。

・せんど [繊度]→糸の番手

生糸・人絹糸の太さをいう。「デニール」で表す。重さと長さの相関関係により示され、恒重式と恒長式とがある。前者は主として「紡績糸」(綿糸・麻糸・毛糸など)に用いられ、後者は「生糸・人絹糸」「合繊長繊維糸」に使用される。

・ぜんまいはくちょうおり [薇白鳥織]

織物の名称・秋田県
よこ糸に入っている薇綿(ぜんまいわた)・白鳥の羽根綿などが、処々に白く綿毛を含んでふんわりと横に流れる。民話の「鶴の恩返し」の中で鶴の羽で織られた布は豪華なものだったというが、これは素朴な温かみのある織物といったほうがよい。秋田県岩城町亀田で、山野に自生するぜんまいの頭部の繊維(薇綿)・白鳥の羽根綿・綿花を合わせた混合糸を用いて織り出している。 昭和初期に途絶えています。

・せんめんもん [扇面文]

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・せんやぞめ [千弥染]

宝永の頃、歌舞伎役者の中村千弥が着用した染絞衣装で、紫色の纐纈をいう。

・せんりょう [染料]

合成染料の中で主としてきものに用いられるのは、直接染料と酸性染料である。これらは染めるのが容易であるばかりでなく、脱色も容易なため、染かえなどにも適している。植物染料では藍をはじめ、種々の植物染料が用いられる。

 

 

・そありおん [ソアリオン]

鐘紡のポリエステル系異形断面糸の和装用素材。付下げ、羽尺などの表地のほか、八掛、胴裏、長襦袢と用途は広い。

・そううら [総裏]

総裏仕立ともいう。衣服全体に裏をつける仕立。総裏は、芯や縫代を隠して裏側をしまつするとともに、補強の役目をする。形崩れを防ぎ、表地を保護し、保温にも役立ち、すべりをよくする。和服の場合これを袷仕立てという。

・そうかくもん [双鶴文]

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・そうがすり [総絣]

経緯糸に地糸を使わず、絣糸のみで絣柄を表したもので、緯だけのものは緯総(よこそう)という。

・そうがら [総柄]

生地全体に模様をおり、または染め出されている柄付けのこと。
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・ぞうがんもよう [象嵌模様]

模様の一種。古代によく用いられた模様で、白を細く切ってはったり、絵の具で細く隈取ったりして模様を表した。

・そうくんぎれ [宗薫切]

緞子の名物裂で、今井宗薫の家伝来のもの。花色に薄い黄白の紋で、3cmくらいの輪違いの中に宝尽くしを配したもの。 宗薫緞子のページへ

・そうこう [草稿]

紙に描いた草案、図柄などをいう。

・そうこう [綜絖]

織具の付属品の一種。経糸を上下に開きわけるもの。いいかえると緯糸を入れるために抒(ひ)の通りみちをあける道具である。古代では「綜」といい。地方によって「綾(よこ)」「綾(あや)取り」「遊び」 「掛糸(かけいと)」などと呼はれる。

・そうし [繰糸]

繭から糸を引いて生糸にする作業をいう。繭を煮てその正しい糸口を求めて、これを何本か集めて抱き合わせ、一筋の生糸とする。昔は、すべて手作業であったが次第に機械化され、現在は自動繰糸機が用いられている。これは糸の繊度(太さ)を一定に保つ感知機が自動的に働き、糸が細くなると、つなぐべき繭が自然に飛び出してくるので、ほとんど人手を要しない。機械による機械製糸に対し、手加工により繰糸した糸を「座繰糸」といい、品質は機械に比べてむらがあり劣っているが、むしろこれが特徴になって価格は高く、手織り織物に多く利用される。

・そうしぼり [総絞り]

着物、羽織、帯、帯揚げなどの一面に絞りだけで模様を表現した物。

・そうしもん [冊子文]

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・そうたけ [総丈]

裁断前の反物や布地、あるいは衣服の全長をいう。和裁の場合、反物を裁つ前に必ず総丈を計り、その総丈を基本にして断ち切り寸法を決めていく。

・そうづけ [総付け]

「総模様」「総柄」ともいう。着物全体に模様を配したものをいう。総模様(総付け)に対するものとして、「飛び模様」「裾模様」がある。
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・ぞうり [草履]

和装はきものの一種で、厚みのある台の底は歯がなく平らで、鼻緒がすげられている。原型は藁の草履であったが、江戸時代に発達し、さらに明治以降改良されて、現代では礼装から普段まで履ける種類がそろい、和装履物の主流となっている。

・ぞうりょう [増量]

薬剤その他で織物などの重量を増すことである。単に目方を増やす以外に、糸をあまり多く使わない織物の手触りや外観をよく見せ、また縮緬などの織り方のものは縮みを防ぐ効果がある。ただし過度に行うと生地を傷めることになり、またカビや変色などの原因ともなるので注意しなければならない。方法としては、①薬品を繊維に吸収固着させるタンニンあるいは錫増量(繊維と化学薬品との親和性を利用するもの、水洗いや摩擦に落ちない、主として絹に応用される)②薬品を単に固着させるだけのもの、砂糖、塩化バリウムなどの濃溶液を用いる(水洗いをすると落ちるこれも絹に使われる)③糊製の物質、澱粉、布海苔、膠草と粘土、陶土、石膏、生葛粉、片栗粉などの混合物を塗りつける(水洗い、摩擦で落ちる=綿に使用されることが多い)方法などがある。また、生糸や練絹を染め上げる際、あわせて増量を行うことを「増量染」という。

・そくぬい [束縫]

元来表生地と裏生地を別々に縫って綴を入れるところを、表裏一緒に束にして縫う事。表2枚、裏2枚を束ねて縫う場合が多いので四ツ縫いともいう。

・そだいぎぬ [曽代絹]

絹織物の一種。岐阜県武儀郡地方の良質の生糸で織り出したもので、その後、石川・小松地方で精練染色して裏地用として製織。

・そで [袖]

元来は「外手」であり、衣服の袖口部分をさしたが、着物の腕を覆う箇所の全部を意味するようになった。古代の日本の衣服は筒袖であった。中国文化が入るとそれをまねて袖が広くなった。平安中期以後、唐ふうの朝服の国風化がなされ、広袖の装束類が公家の服装となった。このため袖には2つの文化を生じ、日本古来の小袖と装束系統の広袖に分かれる。平安末期には小袖も筒袖ではなく丸みを帯びる。鎌倉時代には脇明小袖。室町以降、脇明は元服前の子供の衣服に用いられる。江戸初期に振袖・なぎ袖が現れる。装束類の広袖は、奥袖にさらに一幅又は半幅の鰭袖を縫い足して指先を覆うほど幅広く仕立てる。庶民の衣服としては丹前、長襦袢、一ツ身等は広袖に仕立てる。農民、漁民は労働着が衣服で、働きやすいものが工夫される(筒袖、鉄砲袖、巻袖、ジン袖など。

・そでぐちした [袖口下]

袖口の留の下から袖丸までをいう。略して口下ともいう。袖口下に凸凹が出たり、ねじれたりせず、真直ぐになっている事が大切。

・そでぐちぬの [袖口布・袖口切]

袖口の裏としてつける小布。表布が手首に当たって汚れるのを防ぐ目的と袖口のきれいさを誇張する目的がある。袷きもののの場合は八掛布、羽織、コートの場合は前落し共布、単着物の場合は共布、男物着物の場合は共布又は四日町等の別布を使用。普通は回し掛けをしてつける。

・そでした [袖下]

→そでぐちした

・そでたけ [袖丈]

きものの部分名称。袖の長さのことで、袖山から袖下までの長さをいう。年齢や着物の種類によって、その長さは様々である。一般的な着物の場合、身長の3分の1の袖丈がバランスがよいとされる。鯨尺1尺3寸(約49cm)が最も一般的で多い長さ。

・そでだだみ [袖畳]

略式の和服の畳み方。本仕立てした着物にはほとんど使わないが、仮絵羽状態のものはほとんどが袖畳。背を中心に内表に2つに折り、両袖を合わせ、身頃の上へ折り返し、裾と肩山を合わせ半分に折り、さらに半分に折る。

・そでつけ [袖付]

袖を身頃に縫い付けること。あるいは、袖と身頃が接続する部分のことを言う。袖付きともいい、袖付き衣は、袖のある衣服の意。

・そでなしばおり [袖無し羽織]

袖をつけないもので俗に「ちゃんちゃんこ」と呼ばれている。現在はマチを入れ、衿を折り、胸元に共紐をつけて用いる。綿入れや、袷仕立てにして、老人や幼児の防寒用として用いられている。

・そでもん [袖紋]

左右の外袖に付ける紋のこと。紋の付け方には一つ紋、三つ紋、五つ紋があるが、三つ紋と五つ紋のとき、袖紋が付く。一つ紋は背紋のみ、三つ紋の場合、背紋と袖紋をつけて三つになる。五つ紋の場合、背紋と袖紋と抱き紋をつけて五つとなる。

・そでやま [袖山]

着物の部分の名称。袖の一番上の部分、つまり、袖の前部と後部の折り目の所(山)をいう。

・そとそでん [外袖]

袖の、袖山より背側の部分をいう。それに対し、袖山より前側は内袖という。袖紋は左右の外袖に付ける。また、現代の訪問着や付け下げでは、胸と裾のほか、左の内袖、右の外袖に柄を付けることが多い。

・ぞべ・ぞべ糸 [ぞべ糸]

片撚りした絹しつけ糸(ぞべ糸)のこと。白練の2本撚りである。しつけ用、ぐししつけ用に使用。

・そめおび [染帯]

帯の一種。先染めの帯に対して、後染の帯のことをいう。染帯の生地としては塩瀬羽二重や縮緬が多く、夏用として紗や絽もある。

・そめかえ [染替]

着古して色が退色したもの、好みや年齢に合わなくなったものを、再利用するために、別の色や柄に染め替えること。染め直しと同じ。

・そめがすり [染絣]

絣模様の一種。捺染を施して、織絣のように仕上げたもの。直接捺染したものや、防染したもの、または抜き染して絣柄を表したものなどがある。織絣に比べて工程が簡単なため安価である。

・そめきじ [染生地]

染色を施す前の染下生地、白生地のことをいう。主に縮緬類、紋綸子、白紬、白お召、絽、紗、岡木綿、綿縮などである。

・そめきじゃく [着尺地]

織った後に色や模様を染めた(後染のもの)着尺地のこと。染めた糸を用いて柄を織り出す、織着尺に対する語。

・そめこもん [染小紋]

小紋はもともと型染であるが、織物の小紋が製作されるようになったので、それと区別するために生まれた言葉。

・そめぬきもん・そめもん [染め抜き紋]

紋の表し方の一つ。最も格式の高い正式な紋。地色に紋を白く抜いたものである。礼服だけでなく幔幕やのぼりなどにも用いられる。

・そめわけしぼり [染め分け絞り]

絞り染め技法のひとつ。2,3種類の色を入れて染められたもの。産地の名で呼ばれる有松鳴海絞、京絞りなどには染め分け絞りがある。

・そもうし [梳毛糸]

梳毛紡績機によって作られた毛糸をいう。普通ウーステッドと呼ばれる毛織生地は、この糸を使用する。ラシャ、毛布などの糸である。「紡毛糸」に対し、糸になる前の原料の毛は梳(と)きそろえられているから、品質が均整であり細い糸ができる。和装用の「ウール」あるいは「モスリン」「セル」などはすべてこの糸を使用している。

・そろばんしぼり [算盤絞り]

絞り染の一種。算盤の珠を並べたような模様の絞り染め。主に、木綿などに多く染められている。

・そらびきばた [空引機]

紋織に使用した織機の一種。高機に「空引」という装置をつけたもので、紋紙を使う紋織機が出現するまで使われた。 織物を織るのに必要な最小限度の道具といえば、経糸(たていと)を張っておく装置、緯糸(よこいと)を通すためのロを開く綜絖(そうこう)、さらに経糸の間に緯糸を通したり、緑糸を平行に固く経糸の間に打ち込んだりするための抒(ひ)や筬(おさ)などだが、紋織にはきらに多くの綜絖が必要になってくる。
 また、多くの綜絖を操作するために、高機の上部に鳥居状の構造のものを取り付け、これに大通糸をつるしてある。この紋織の装置を「空引」(花楼装置ともいう)といい、その機を「空引機」と呼んでいる。大通糸を操作して経糸を開口させ、緑糸を通して模様を織り出していくわけだが、操作が複雑なため、一人では操作することができず、一~二人の補助者が必要になる。

 

・たいこ [太鼓]

帯を締めた時、背の方来る部分で、太鼓の胴のように丸く結んだ所をいう。

・たいこうしょく [褪紅色]

色の名前。紅の色を洗い、褪せた色で、明治末期から大正の初期に流行した色。紅よりも朱ががっている。

・たいしかんどう [太子間道]

名物裂の一種。法隆寺に伝えられている色彩豊かな絣織物で、上代の織物として有名である。間道とは一般的に縞のことをいうが、この太子間道は絣柄で縞を表しているのが特徴である。広東錦とも呼ばれている。経糸によって絣柄を表すものである。 太子間道のページへ

・だいしょうじぎぬ [大聖寺絹]

加賀(石川県)大聖寺地方で産した経目の生絹で、中六ともいう。

・だいとうぎれ [大燈切]

金襴の名物裂。大燈国師の袈裟の裂からこの名がある。地色赤鳶に金で唐草を配したもの。
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・だいまるもんしゃ [大丸紋紗]

兵庫県出石(いずし)地方で織り出される「紋紗」および「綸子」を特に大丸と称して、京都丹後地方のものと区別する。

・だいみょうじま [大名縞]

縞柄の名称。細かい竪縞で、縞糸一本に対して地糸三本の単純な縞が多いが、これを四つ目大名と呼ぶ。江戸中期に大流行した。縞糸に赤を用いたものを赤大名ともいう。地方により縞糸と地糸の割合に多少の違いがある。大名筋とも呼ばれている。

・だいみょうだたみ [大名畳み]

本畳みに対する言葉で、主として留袖、振袖、中振袖、子供物、丹前などに多く用いるたたみ方。夜着だたみともいう。裾を右にすえ、背は折らずに中央にすえて右脇、左脇の順に折り、衿の天は中側へ折り込み、両袖を内側に折り身丈を2等分又は3等分して折るたたみ方。

・だいもん [大紋]

中古服装の一つ。大きな紋が五つついているところからこの名がある。素襖(すおう)(直垂(ひたたれ)の略服)に似ているが、胸紐に組紐を使っているなど、多少の相違点がある。室町時代にはじまり、江戸時代には武士の礼服とされた。

・たかさきぎぬ [高崎絹

群馬県高崎地方に産する「裏絹」の総称。経緯糸とも生糸を用いた「糸好絹」から、「玉糸」や「副蚕糸」を使った「玉絹」や「散好絹」(ちりよしぎぬ=玉絹の高級品)「小節絹」など種類は多い。

・たかしまちぢみ [高島縮

織物の名称・
滋賀県高島郡地方(現在の高島市)でつくられた綿。綿縮は強撚糸(ねんし)の綿糸で織られたもの で、夏季の衣服地として適当な生地(きじ)であり、木綿栽培を基礎に発達した。この地方での発生時期は不明であるが、幕末の文久(ぶんきゅう)・元治(げんじ)(1861~65)のころまでは手紡糸(てぼうし)でつくったが、明治以後に木綿紺地に絹糸を交織して「糸入り」としたものや、また小紋を織り出したといわれ、海外にも輸出された。現在では、綿縮織物が高島クレープとして生産されている。

綿織物の産地・高島は19世紀頃から和服用に高島ちぢみが織られ、大正末期に綿クレープが爆発的な人気を得た。
様々な商品開発がされ、一部の商品は海外の博覧会で入賞するものもあった。(従来の糸染めの縮から白縮みが主流になった。零細規模から工業生産へ)全国的に「高島縮(たかしまちぢみ)」が知られるようになったのはこの頃である。
高島クレープの特徴はシボの入り方がランダム・直線・波シボ etc ・・・・と多彩なこと。それは高島が織物だけではなく、撚糸の産地でもあるからこそなせる技術である。

・たがそで [誰が袖]

模様の名称。名の由来は「色よりも香こそあわれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」(古今集)によるとされているが、江戸時代に模様や色彩の美しいきものを、衣桁に掛けた様子を屏風に描くことが流行した。この屏風を誰が袖屏風と呼び、模様そのものを誰が袖といった。衣桁に掛けた小袖だけでなく、袖だけを描いたものも誰が袖模様という。きものにも優美な模様としてよく用いられている。

・たがそでもん [誰が袖文]

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・たかなみおり [高浪織

龍村平蔵氏が新技法の探求に「気狂い龍」と呼ばれるほど没頭し、30代で高浪織、纐纈織など多くの織を生み出した。かの芥川龍之介氏も、龍村平蔵氏の帯について、大賞賛したと伝えられている。
龍村美術織物、龍村織物、龍村光峯の現在の3つの「たつむら」はすべて、染色工芸に対する功績により美術院恩賜賞を受けた、初代龍村平蔵の創業に始まる。村平蔵が考案し、実用新案を取得したものに纐纈織がある。これは、絞りに見えるように皺を織物で表現したもの。つまり絞りを染める過程で生じる皺に積極的な芸術性を認めてわざわざ織りという別の表現でつくったものである。これに対して模倣品を安く売る者が現われ、裁判で争うことになったのですが、そのとき模倣者は近世以前の古裂を証拠として提出し、平蔵が発明したとされるものは昔から西陣では周知のものであり、実用新案は無効であると訴えました。すなわち、絞りの名残の皺は芸術であるという感性は近世以前からあったということになります。纐纈織は、昭和になって渡文がを商品化して(ふくれ織とも呼ばれた)大ヒットし、現在も継続して販売しています。なお、龍村では、「纐纈織」、「高浪織」という名前で現在も販売しています。

・たかぬい [高縫]

日本刺繍法の一つ。模様を直接に縫わず木綿糸で下縫いするか、紙ひねりや綿を芯にしてその上を縫って模様高くを浮き出させる方法。「肉入縫(にくいりぬい)」ともいう。

・たかばた [高磯]

居坐機より織手のすわる位置の高い手織機。居坐機と異なり、経糸が機に固定されているため、体を前後に動かして糸の張りを調節する必要がなくなった。したがって、地合が均一したものが織られるようになり、能率も高くなった。

・たかやまけんぽうぞめこもん [高山憲法染小紋]

岐阜県高山市で産出される小紋染の一種で、「松煙墨」を用いた黒染である。江戸時代の明暦(1655~1658)の頃に、京都の剣法師範・吉岡憲房が染めた黒茶色の染のことを「憲房染」、または「吉岡染」といった。高山憲法染小紋がいつ誰によって高山に伝えられたのかは定かではない。

・たからづくしもん [宝尽くし文]

吉祥文様の一つ。中国で雑宝とよばれる珠、銭、磬(けい)、祥雲、方勝、犀角杯、書、画、紅葉、艾薬、蕉葉(しょうよう)、鼎(てい)、霊芝(れいし)、元宝、錠などを散らした文様。 文様名 →紋様のページへ

・たきじま [滝縞]

縞柄の名称で竪縞の一種。太い縞から順々に細くなるように縞が並んだ竪縞の模様で、これを片滝縞という。これに対して、太い縞を中心にして、左右それぞれ細い島が並んだものを両滝縞という。

・たきぞめ [炊き染・煮染]

つけ染・浸染〈シンセン〉とも呼ぶ。染料液を入れた容器に、布や糸を浸して染める方法。絞り染めや無地染に用いられる。

・だきはば [抱幅]

和服の部分名称の1つ。前身頃の胸位置での幅を指す。女物の場合、身八つ口から剣先の位置までを指す。抱幅=胸幅(左脇下から右脇下まで)× または、抱幅=胸囲× +3~4センチで、求める寸法が割り出される。

・たきもん [滝文) 

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・だきもん [抱紋]

左右の胸の位置に付ける紋。本裁のきものでは、男女とも反物の中央、肩山から4寸(約15cm)下った位置につける。一ツ身のきものでは肩山から2寸8分(約10cm)、四ツ身のきものでは、3寸5分(約13cm)下ったところ。羽織の紋下りも、きものの場合と同じだが、反物の中央ではなく衿にかくれないように、紋ひとつぶん脇のほうへずらす。

・たきやまつむぎ [滝山紬]

織物の名称
現在の八王子にあたる地域では、室町期から桑が植樹され,桑の取引,それに関連した絹織物の生産が古くから行われてきた.桃山時代には滝山城下で滝山紬などが生産,取引され,また八王子城下の八日市では一文字桑の取引が行われ,一文字桑は八日市の別称とも言われた.降って江戸期に周辺地域で生産される蚕によって絹織物の主要生産地となり,桐生,足利,秩父などと並び関東地方における織物の産地として脚光を浴びた。
※男物については、滝山紬、横山縞紬、上田縞、八王子平(袴地)などが、江戸時代から既に名産品として知られていました。

・たけかぶり [丈かぶり]

袷着物等の表か裏の一方が裾に垂れてかぶってみえる現象。袋が入るともいう。着用後の手入れの悪さや地直しが不十分な為におこる場合が多い。冬季に堀コタツに足をいれてもなりやすいので注意が必要。直し方は胴接ぎの出し入れで直るが、ひどい場合はトジ直しする必要がある。

・たけとみぐんぼう [竹富グンボウ]

織物の名称
グンボウとは混紡の意味。麻と絹、木綿と絹などいろいろな混紡があるが、一番価値があるのはもちろん写真にある芭蕉布と絹の混紡だ。拡大写真では、混紡の様子がよく分かる。

・たけとみみんさー 竹富みんさー

織物の名称
幅およそ八・五センチ、長さ約二三〇センチの細帯(ミンサー)で、真田紐に似た経畝織の木綿織物。藍染の紺地の両耳にはムカデ模様と呼ばれる段々縞が織りだされ、その中に五つ玉と四つ玉の絣が交互に織り込まれている。

・たけもん [竹文]

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・たしぬの [足し布]

布の足りない時に補足する共布、又は別布をさす和裁用語

・たじまちりめん [但馬縮緬]

「但馬縮緬」はその発祥の歴史は古く、絹織物に欠くことができない。湿度も高く日本海に注ぐ清流、円山川(朝来川)の上流地域で水も豊かに自然条件に恵まれて約200年ほど前から織り出されたといわれる。その後は次第に出石町を中心に農家の副業として広く行われ、全国にその名を知られるようになった。「但馬縮緬」は独特の撚糸機で強い撚糸を掛けた糸で生産され、優美で豪華な趣を持っている。また、シボがあるので肌触りもよく、しわが寄らず染め上がりが美しいのも特徴で、耐久力もあり、染直しにも向く。特に最近は緞子縮緬、紋意匠縮緬など高級品の生産が盛んに行われるようになった。

・たすきもん [襷文]

模様の名称。有職文様の一つ。たすきがけの斜めに打ち違った線を、模様化したものである。斜格子ともいう。三重線を交差させたものは三重だすきという。

・たたえおり [湛織]

阿波しじらの古名。徳島地方の方言で経糸を引き揃えることを「たたえ」という。

・たたきがすり [叩き絣]

染色の方法の一つ。原糸に木型を使って局部的に染色をたたきつけ、または摺りこんで染め出した絣糸。

・たちあわせ [断ち合わせ]

反物を裁断する場合に、柄や地紋を反物から着物へ美しく縫い上げるために、柄や地紋を合わせながら裁断していくこと。一番重要で難しい仕立ての工程のことである。また、反物の生地に何箇所か故障がある場合に、その部分が、着物の裏や見えにくい所になるようにしたりして、うまく都合をつけること。

・たちきりすんぽう [裁切寸法]

生地を裁つ場合に必要な寸法。仕上がり寸法+縫代分+縫込分+ゆるみ分=裁切寸法。

・たちばなもん [橘文]

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・だっくぼうせん [ダック紡染]

ダックとは、フッソ系の防染剤のことで、フッソ樹脂の発水性を利用して防染剤に用いることをいう。ダック利用により、伏糊せずに、直接引染ができるため、昭和50年頃から使用されている。着色防染として主に、スクリーン捺染や一部の型・手描友禅に使用されている。
ダックだけか染料を混ぜたものを筆描きし、蒸勢固着させる。伏せ糊を使用することなく直接引き染初めすることができるが、必ず生地の裏面から引き染めする必要がある。そのために染料がよく浸透する生地でなければならない。

・たっつけばかま [栽着袴

男物の袴の一種。膝から下の部分が細くなっており、その上下に付いた紐を結んで着用する。歩きやすく実用的な袴で、武士から庶民にまで広がり、江戸時代には旅装などに用いられた。伊賀袴ともいう。

・たつたがわもん [竜田川文]

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・たづなしぼり [手綱絞り]

絞り染の一種。斜めの太い縞柄を表したもの。絞り方は種々あるが、普通は布に一定の間隔をおいて、平縫い引き締めをして、一段おきに柳絞り(布地に柳のような柔らかい線の模様をそめだしたもの)をかけたものが、最も一般的である。寛永18年(1641)尾張の国主徳川光友が、入国の際、領内の有松から献上された、馬のくつわにつける手綱が、この絞柄だったので、こう呼ばれたといわれている。手綱染、だんだら染ともいう

・たていと、ぬきいと [経糸、緯糸]

織物を構成する糸の方向。経糸=縦糸、緯糸=横糸。
経糸とは織物の長さの方向の糸で、織機にあらかじめ張り渡たしておく。そこへ経糸と直角に緯糸を組合せ(緯打ちともいう)、これを繰り返して布を織っていくわけである。

・たてえり [立衿]

被布・コート・長襦袢等の前身頃に続く縦に長い布のことで、被布やコートは一幅使い、長襦袢は半幅使いが一般的。

・だてえり [伊達衿]

長着の衿に、下衿を重ねて、衿元だけ重着〈カサネギ〉しているように見せるもの。近年では、重厚さや華やかさを添える小物として用いられている。訪問着・色無地・小紋などの晴れ着に用いる。

・たてがすり [経絣]

模様を描いた経糸(たていと)を別の糸でくくって染め上げ、機にかける技法です。緯糸(よこいと)は無地です。

・たてばやしおりもの [館林織物]

館林では鎌倉時代に鶉織(うずらおり)という織物を産出したと伝えられている。下って宝暦の頃には結城縞を織るようになり、さらに享和年間には清呉織という袴地を製織し江戸でこれが好評を得て、以後館林は織物の産地として出発した。その後、戈格子という糸入格子縞を産し、また初めて安政の頃には経の散らし絣を織り、これは菅糸(精練しない生糸一本のままのもの)のまま括(くく)り、染色して経糸に使用するもので、邑楽郡中野村を中心に発達したので「中野絣」と呼ばれ、こうした関係で当時の館林町を中心とした結城木綿を「館林絣」というようになった。そして明治初年には中野絣が木綿の白絣に改められ非常な需要があり、大和地方の白絣とその地位を争ったほどのもの。館林は大島小絣、茶絣および太織などの絹織物も産出した。現在はこれらの伝統が基盤となって絹紡紬糸と化繊で作られた館林紬が創案され、大衆着として生産された。

・だてじめ [伊達締め]

きものを着るときに着くずれを防ぐために、長襦袢などの上に締めるもの。胴に巻いた後、端は結ばずにはさむことから、「伊達巻」とも呼ばれる。

・たてづま [竪褄・立て褄]

着物の部分の名称。長着の褄下のことをいう。衿先より褄先までの間のこと。

・だてまき [伊達巻]

伊達締めに同じ。

・だてもん [伊達紋]

紋所の一つで、しゃれ紋のこと。家紋や定紋と異なって、約束ごとのないのが特徴である。花、鳥、文字などを文様化して、定紋の位置につけて用いるが、多彩なことが特色である。

・だてもん [伊達文]

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・たてやまとうざん 館山唐棧

織物の名称・千葉県館山市
細手の木綿糸を天然の草木で染めた縞柄模様の織物です。砧打ちをするので絹織物のような風合いと光沢をもっているます。インドのセント・トーマスから輸入されたので初めはサントメ(棧留)といわれましたたが、いつしか唐棧留と呼ぶようになりました。
江戸中期には江戸を中心として、国産の木綿を用いた異国ふうの木綿織物が愛好されました。これらの織物は階級、男女の別なく愛好され、各地で生産されたましたが、なかでも川越唐棧は有名。
館山の唐棧は、唐棧織の技法を学んだ斎藤茂助が明治23年に館山市に移住し唐棧一筋に生きてから有名になりました。

・たてよこがすり [経緯絣]

経糸(たていと)、緯糸(よこいと)の両方を別の糸でくくって染め上げ、模様を合わせながら織り上げる絣(かすり)の技法です。

・たてろ [竪絽]

絽織の一種。横絽に対する名称であるが、横絽の組織を竪に使った織物。経糸数本を平織りし、次の二本の経糸をからみ合わせて経糸の方向に絽目を表したもの。

・たてわくもん [立涌文]

文様の一つ。相対する2本の曲線の中央がふくれ、両端がすぼまった形を縦に並べたもの。親王や関白の袍(ほう)・指貫(さしぬき)・袿(うちき)などの織り文に用いる。中に描く文様によって、雲立涌・笹立涌・松立涌などの種類がある。たてわき。たちわき。
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・たとうし [畳紙]

和服などを包むために和紙などで作られた包装紙のこと。畳んだ衣服を、たんすや衣裳箱に仕舞う場合、これに包んだ後に収納する。

・たぴ [足袋]

足を覆い包む和装小物。靴下のようなもの。

・たふおり [太布織

織物の名称・徳島県那賀郡木頭村
太布織は全国でも木頭村にだけに伝わる伝統の技です。
太布の原料となるのは、クワ科の楮(コウゾ)で、酷寒の季節に若い枝を切り取ることから作業は始まります。その後、蒸す・樹皮を剥ぐ・哂す・たたく・裂くなど、幾多の工程を経て糸をつむぎ、独特の地機で織り上げます。
古代布として全国で製造されていましたが、現在全国でその技法が伝承されているのは那賀町(木頭)のみです。太布織は独特の技法や素朴さ、その風合いなどで有名で、古くから衣類(明治末まで着用)や日用品(畳表のへり、布団,袋など)に使われるとともに重要な換金産物でした。しかし、綿製品などの台頭と同時に昭和に入ると生産されなくなりました。太布織はすべて手作業で大量生産できないため、生産量は限られています。
1970年(昭和45)に岡田ヲチヨ氏(1983他界)が県無形文化財技術保持者に指定され、その後旧木頭村内で「阿波太布製造技法保存伝承会」が発足し、その会も1984年(昭和59)に改めて指定を受けています。現在伝承会は毎週1日以上屋内外の作業を行なっていますが、原料の確保が難しいことと後継者不足が問題となっています。
その昔は、衣類や袋に利用されていましたが、最近では手提げ、ブローチ、テーブルクロスなどの製品をすべて手作業で仕上げています。

・たまいと [玉糸]

二匹以上の蚕が一緒になって一つの繭を作ったものを玉繭というが、この玉繭からとった節の多い糸のことをいう。紬などを織るのに用いられる。節糸ともいう。

・たまおり[多摩織]

織物の名称・東京都/八王子市、あきる野市 
現在の八王子にあたる地域では、平安時代末頃から絹が織られており、滝山紬や横山紬といった織物がありました。室町時代後期、多摩川のほとりにやってきた北条氏が、領民の産業として奨励したことで産地として形が整いました。明治以降は文明開化によって技術が急速に発展し、さらに独自に技術を開発したことで、今日の多摩織の基盤が築かれました。

・たまがわおり [玉川織]

東京都青梅付近で織られた織物。経(たていと)に錦糸、緯(よこいと)に玉糸または絹綿混紡糸を用いた紬(つむぎ)風のもの。明治末期に盛んに織られた。玉川紬。

・たまぎぬ [玉絹]

「玉糸」を使用して織り上げた裏絹。経緯に玉糸使用のものと、経糸に生糸を使用したものとがある。また、経糸に磨き玉糸(玉糸を磨いたもの、節が少なくなる)を用いたものを特に「散好絹」といい、これに反し、太くて節の多い玉糸を使用したものを「小節絹」(こぶしぎぬ、あるいは単に節絹)という。埼玉県秩父地方、群馬県甘楽川流域に産する。以前は福島県川俣地方にも産し、特に軽目のもので有名だったが、現在はあまり見ない。

たままゆ [玉繭]

同好繭ともいい、二匹以上の蚕が、一緒になって一つの繭を作ったもの。これから取った糸が「玉糸」である。

・たまむしおり [玉虫織]

綾織物の一種。経糸と緯糸に、それぞれ色の異なった糸を用い、光線のかげんで光って複雑な色に見える織物の総称。色の表れ方が玉虫の羽に似ているところから、この名がある。

・たまゆうき [多摩結城]

織物の名称・
八王子で生産される紋お召し。 高いしぼ立ちに独特の風合いのある渋さと豪華さをもった高級絹織物。
八王子の織物の歴史は古く、およそ三百五十年前の文献に八王子市の織物として滝山紬、横山紬、紬島の名が見られる。また、江戸時代後期には、関東屈指の織物産地として発展した。 当初、八王子の織物はすべて男物だったが、大正時代に男の外出着として洋服が普及し和服の需要が減ったため、女物着尺地の開発に努め、昭和元年には全国で初めてジャガードの紋職機による絹セルお召しがつくられた。多摩結城の開発に成功したのは昭和四年 で、これにより女物着尺地中心の織物産業地となり、現在に至っている。 昭和三十年代にウールと絹の交織ウールお召しがブームとなったが、近年は、正絹お召しとしての多摩結城が見直されている。

・たもと [袂]

和服の部分名称。和服の袖口の下方にある袋状の部分のことをいう。袖形(そでなり)ともいった。男女、年齢、きものの種類などによって、その形と大きさに違いがある。たとえば、袂の長いきものといえば、振袖のことをいう。

・たもともん [袂紋]

紋織物で二釜以上の文様が全部入らず、半端になった部分をいう。普通は全幅の中に三釜なり、四釜なりの柄がきっちり入るのが多いが、柄の都合で入らないとき、半端の部分を二分の一に分けて左右におく場合とがある

・だらり [垂らり]

女帯の結び方の一種。お太鼓結びの輪の端と掛けを折り込まずに、そのまま垂下げた形をいう。芸妓児の正式な結び方で、垂らり結びとも呼ばれている。また現在は、京都の舞妓の帯結びをいう。

・たれ [垂れ]

女帯の部分名称。お太鼓にするほうの丈の部分のことをいう。反対側の端を「て」という。また、お太鼓結びなどの下端から10センチぐらいの部分をいう。

・だん [緂]

白と色のだんだら染め。狩衣の袖括りの紐や、束帯帯剣時の平緒などに見られる。

・だんがわり [段替わり]

柄の付け方から名づけられた名称。
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・たんごちりめん [丹後縮緬]

京都府丹後地方で織られる縮緬の総称。丹後地方は、古くから織物の産地として有名であるが、縮緬は江戸時代の享保(1716~36)のはじめ頃、峰山町の絹屋佐平が、京都の西陣で学び、織りはじめたのが最初と伝えられている。丹後の縮緬は、他産地に比べて、シボ立ちが小さいのが特徴。友禅や小紋などの染下生地として適しているところから、白生地の小幅縮緬としては最も有名。主なものに一越縮緬、紋意匠縮緬、絽縮緬などがある。

・たんざくぬの [短冊布]

えもん抜きの別名。きものの衿を胸で合わせる部分や、衿の首の後ろで抜く部分をいう。

・たんざくもん [短冊文]

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・だんせんもん [団扇文]

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・たんぜん [丹前]

衣類の一種。普段着に綿を入れたもので、冬の間の防寒用として広く愛用されている。仕立ては夜具とほとんど同じで広袖である。表地には縮緬、紬、銘仙、縞木綿などが用いられ、柄は大きくて派手なものが好まれていたが、現在は格子や縞柄が多い。江戸時代の銭湯は、庶民の社交や娯楽場を兼ねていたが、神田の堀丹後の守の屋敷の前に会った先頭に美しい湯女がいて、この湯女を目当てに集まった男たちの装いから、丹前の名称が出たと伝えられている。

・だんつう [段通]

紋織物の一種で、古い歴史を持った緞子織物。地の組織は厚く、光沢があるのが特徴。一重緞子、二重緞子の二種類があり、二重緞子は二色以上の絵緯を使って文様を出す。

・たんばふ [丹波布(縞貫木綿・佐治木綿)

手紡ぎ、手機による木綿織物。手紡ぎの木綿糸が用いられるが、緯糸のところどころに屑繭から手紡ぎした「つまみ糸」が混ぜられる。植物染をするが、色は藍、茶、緑の三色のみ。この三色の濃淡で縞柄や格子柄を表す。ほかの木綿織物とは違う、ざっくりとした風合いと美しさがある。江戸時代末期から明治中期にかけて、縞貫木綿、あるいは佐治木綿と呼ばれてさかんに織られていたが、大正年間には途絶えた。昭和初期に民芸家の柳宗悦氏が京都の朝市で佐治木綿を発見し、丹波布と名づけた。昭和29年に柳宗悦、上村六郎氏を始めとする地元保存会の努力により復元され、現在もその技術は保存されている。

・だんぼかし [段ぼかし]

ぼかし染の項参照。

・たんぽぽもん [蒲公英文]

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・だんまる [ダンマル]

ダンマルとは、マレー語で樹脂・ヤニなどを意味するダマールが日本語化したもので、石油系洗剤で溶ける。ダンマル液は、ダンマルを揮発油で溶いたもので、染色に用いると、ローケツ染に似た効果が得られるので、一般的に、ローケツ染と同様に考えられている。(液描き)

・たんもの [反物]

和服地の総称。一反は、並幅36センチ、長さ11~16メートルの生地を指す。三丈物は、約12メートル、四丈物は約16メートル。

 

 

・ち [乳]

羽織や旗、幟(のぼり)などの縁に、紐や綱、竿などを通すためにつけてある小さい輪のことをいう。その形が乳首に似ていることから、付けられた名である。
男女で付け方が異なる。作り方は①バイヤスにしてまつる。②バイヤスにしてループ返しでひっくり返す③くける の三つの方法がある。「ちち」又は略して「ち」という。

・ちぇにー [チェニー]

正式には「チェニー壁羽二重」。緯糸に「壁糸」(細い糸を芯にしてその上に太い糸をからませて粗壁のような感じに仕上げる)を使って普通の平織羽二重よりやや「縮緬」風に近い感じで織り上げたもの。無地と紋織の二種類がある。紋織を紋チェニーという。無地染または「友禅染」にしてコート裏、羽織裏などに多く使用される。産地は石川県、富山県(北陸地方)が朱である。

・ちからぬの [力布]

衣服の縫い目や裁目などで補強を必要とする箇所に適切な方法で付ける布のこと。単仕立の長着や羽織などの衿肩明きは、縫代が少なくほつれやすいため、ハート形、櫛形、斜布などの形の布をもう一枚縫付ける。

・ちぐさおび [ちぐさ帯]

京都西陣で製織される。錦糸を原料とした帯地で無地・縞・献上柄が多い。

・ちぐさ [千草]

稲の一種で淡緑色の花をつける。この色を採って千草色と称し、この色に染色した木綿を千草木綿という。

・ちきり [?]

織機の部品の一種。経糸を巻く円筒形の棒である。

・ちさがり [乳下がり]

和装用語。肩山から羽織の紐をつける乳の位置までの長さをいう。

・ちたもめん [知多木綿]

織物の名称・愛知県知多市亀崎大野
並巾白木綿。晒地、紅下地、絞浴衣地、捺染浴衣地などがある。
晒地は「知多晒」と呼ばれ、手拭い地などに用いられる。

 

・ちちぶきぬ [秩父

埼玉県秩父地方で産する「生絹」(きぎぬ)をいう。精錬染色して「裏絹」に用いる。

・ちちぶめいせん [秩父]

織物の名称・埼玉県秩父市
銘仙織物の草分け的存在の織物で染色堅牢、地質強靭な実用的な絹織物です。「鬼秩父」の異名もあります。「絣製造装置」による解織です

・ちぢみおり [縮織]

絹、麻、木綿、その他、布面を縮ませた織物である。この縮んだ名称を<しぼ><!--じ-->という。緯糸に強撚糸(きょうねんし)の左、右を交互に織り込んだ縮緬の両しぼ。楊柳(ようりゅう)縮緬や、楊柳クレープの片しぼ。経(たて)糸に太い糸と細い糸を使ったり、経糸の張力の相違いよって経皺(たてじわ)を出した?織などがある。

・ちぢらおり [千々良織]

絹糸と綿織とがあるが、昔は経糸に絹、緯糸に綿糸を使い、経糸の太い糸と細い糸との張力の相違で織物の表面に凹凸をつけたもの。絹製は徳島が主産地だった。

・ちどりごうし [千鳥格子]

斜めの格子模様のこと。千鳥の足跡からとも、鶴がたくさん並ぶ様に見えるので「千鳥」と称されたとも言われる。

・ちどりもん [千鳥文] 

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・ぢなおし [地直し]

布地の染むらや織むらを直すことをいう。

・ちゃう [茶宇]

インドの舶来品チャウルを模した薄地の琥珀織絹織物。茶宇留の略で、椒花緞とも書く。天和年間、ポルトガル人が伝え、京都で製織され、柳條茶宇(しまちゃう)紋茶宇として袴地用として愛用され、徳川時代では高雅なものとして仙台平より歓迎されたという。

・ちゃぞめ [茶染]

茶色系統の色染の総称。江戸時代に京都では、茶染め専門の仕事をする人を茶染師といった。化学染料が出現するまでは、植物染料の染色として、藍染とともに多く用いられていたのが茶染である。紅染、黒染とは分業になっていた。禁裡や幕府の御用を務めたところから、茶染屋は御用染師を指すようになった。また、紅、黒以外の全色を染めるようになったため、茶染のことを諸色染ともいった。

・ちゃばおり [茶羽織]

腰辺りまでの丈の短い羽織。脇に襠をいれず、羽織紐を使わずに共布で縫った紐をつける。前下がりのないものもある。丈が短いため、正座しても裾が皺にならないので茶人に愛用された。一反で2枚の茶羽織を仕立てる事が出来る。戦後の物資不足から用尺が少なくてすむ羽織として家庭着に着られた。丈は身長の2分の1から2~3cm引いたぐらい。袖丈は羽織丈の2分の1に8cmほど加えた寸法。半径15cmほどの大き目の丸みをつけた元禄袖。身八ツ口止りで後幅を1cm広くし、裾口で長着と同寸にする。以上のように縫製すると格好がよい。

・ちゃやそめ [茶屋染]

江戸時代につくられた染物の一種。江戸前期頃から行われ、白や薄色の麻地に、主に合い初めで模様を表したものと考えられている。京都の呉服商、茶屋四郎次郎が始めたのでこの名があるという節もあるが、明らかではない。

・ちゃやつじ [茶屋辻]

江戸時代に作られた麻の着物の一種。茶屋染した辻という意味で、辻とは帷子(かたびら)(麻の単の着物)のこと。麻地に主に藍で、薄卵色を併用して全体に精緻な風景模様を表したもの。中流武家の女性が用いたといわれる。こうした特微や茶屋辻の名称は江戸時代後期に定着したと見られる。茶屋辻に表された模様を茶屋辻模様といい、現在も主に訪問着などに用いられる。
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・ちゃんちゃんこ

羽織の一種。袖なし羽織で、主に子供や老人に用いられている。袷や綿入れにして、家庭着や防寒着として着用されている。

・ちゅうがた [中形]

浴衣のこと。本来は小紋、中形、大紋というように、模様の大小を表す語であったが、江戸時代になって一般庶民の間に銭湯が普及するにつれ、湯上りに中形模様の木綿の着物(浴衣)を着る人が多くなり、浴衣の代名詞として中形の名が通用するようになった。その染色方法によって長板本染中形、注染中形、捺染中形、部分的に色を挿しいれた挿し分け中形などがある。

・ちゅうがら [中柄]

大柄と小柄の間。中間の柄のことで、模様の形態の1つ。柄の大きさは、主観的要素により、多少は異なるが、着用の年齢により、区別することが多い。一般に大柄は若向き、小柄は年配向き、中柄はその間の層向きとすることが多い。

・ちゅうけいもん [中啓文]

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・ちゅうしょうもよう [抽象模様]

模様の名称。具象に対する語で、抽象形の模様の総称。抽象芸術は、第二次世界大戦後に出現した、新しい芸術運動であり、幾何学的要素が多い模様である。

・ちゅうせん [注染]

生地をたたみながら型付し、染台にのせて、上から染液を注いだ後、下から吸引して一気にしみ通らせるそめ方。中形染や手ぬぐい染めに多く用いられている。注込染(つぎこみぞめ)のこと。

・ちゅうせんちゅうがた [注染中形]

注染で染めた中形(浴衣)のこと。折付中形、折付注染中形、手ぬぐい中形、阪中とも呼ばれている。

・ちゅうだち [中裁]

裁縫用語。小裁、本裁に対する語で、四つ身裁、前衿裁をいう。

・ちゅうばおり [中羽織]

長羽織より丈が短い、標準的な丈の女羽織のこと。中羽織用の羽尺地が販売されている。

・ちゅうぶりそで [中振袖]

鯨尺2尺~2尺7寸までの袖丈の振袖。大振袖と小振袖の中間の長着。未婚女性の晴着。礼服としては略式のもの。紋付でなくてよい。丸帯又は袋帯をしめる。

・ちゅうぼうし [紬紡糸]

紡績工程中に生じたくず糸を原料にして紡績した太糸をいう。

・ちゅうやおび [昼夜帯]

丸帯や本袋帯は両面が1枚の同じ裂で出来たものに対して、表裏に違った裂地を縫い合わせて作った袷帯のこと。鯨帯又は腹合せ帯ともいう。広く用いられたのは江戸時代中期から後期にかけて。一方に黒の襦子やビロード、他方に白襦子などを用いたのでこのように名づけられたといわれる。必ず白と黒とは限らない。

・ちょう [丁]

緯糸を通す杼(ひ)の数の単位。一本なら一丁織、二本使えば二丁織。丁数が多くなると、経糸1本あたりの緯糸の数が増えるので、複雑な色合いになる。

・ちょうしちぢみ [調子縮]

織物の名称・千葉県銚子市
丈夫で、さらりとした肌ざわりの綿縮です。先染の縞柄が特徴で緯糸は、ふつうの五倍くらいの強さによられています。
綿縮は、綿の栽培がさかんになった江戸中期から明治にかけて各地で生産されました。銚子縮は、漁網用の綿糸から生まれた波崎縞が広まったものです。
その後、衰退しましたが、昭和二七年頃、常世田真次郎氏が復元し、現在は常世田商店のみで生産されています。

・ちょうじゅうぎが [鳥獣戯画]

鳥(とり)と獣(けもの)の戯(たわむれ)を描いた絵のこと。京都高山寺に伝わる戯画絵巻4巻がある。

・ちょうもん [蝶文] 

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・ちょくせつせんりょう [直接染料]

化学染料の1種。絹や木綿等の生地を、薬剤を用いずに直接染めることのできる染料。

・ちよだおめし [千代田御召]

伊勢崎で昭和8年頃生産された絹・人絹・交織の「絣御召」風の「セーミ加工」による銘仙。一時非常に流行したが現在では作られていないと思われる。

・ちよだもよう [千代田模様]

別名「島原模様」。「江戸褄」は裾模様だけなのに対し、一層派手な模様で胸より肩に、また衽柄をつけたもの。昔大名の姫君などが着用し、また産着として用いられた。現在では一部地方を除いてはあまり見られない。

・ちょっかくばり [直角針]

運針技術の1つ。布面に対して直角に縫針が入る、理想的な手縫の方法。左右の手の角度が直角にならないと直角針にならず、ながれ針といわれる縫い目やくけ目になる。

・ちょまいと [苧麻糸]

苧麻(ラミー)から作られた織糸で、日本在来の麻織物の多くは、これが用いられている。→からむし

・ちりがすり [塵絣・散絣]

乱絣ともいい、一定の形状、模様など作らずに、無造作に絣糸を経緯に配列して製織するもの。

・ちりめん [縮緬]

代表的な絹織物の1種。一般的には白生地として染下生地に用いられている。緯糸に縮緬緯といわれる強撚糸を用いて、これを右撚りと左撚りの交互に織り込み、製織後に温湯の中で揉みながら糊を抜くと、撚りが戻ろうとする力が発生し、右撚りの糸は左、左撚りの糸は右にわかれて表面に「しぼ」とよばれるしわが現れる。このしぼを自在に織り分け、さまざまな名称、用途に分かれる。一越縮緬、二越縮緬、三越縮緬、うずら縮緬、片シボ、紋意匠縮緬、絽縮緬、等などが挙げられる

・ちりめんゆかた [縮緬浴衣]

シボ立ちのある縮緬地を用いた、粋で贅沢な浴衣地のこと。一般には用いられないが、舞台衣装や祭りの衣装に作ることがある。

・ちりめんごろ [縮緬呉呂]

強撚のソ毛糸(呉呂)を使って縮緬のようなシボを出したもので、モスリンの旧名。

・ちりよしぎぬ [散好絹]

玉絹の中でも極上のもので、俗に磨きといわれるもの。本絹糸を経糸とし、玉糸の精選された磨き糸を緯糸とし平織した絹織物。埼玉県の小川、寄居が特産。

・ちんがすり [珍絣]

銘仙絣の中で、大柄の複雑で変わった経緯絣をいう。

 

 

・つい [対]

二つで一組になることをいう。きものと羽織が同じ布地で仕立てられたものや、二人の人が同じものを着る場合にいう。

・ついたけ [対丈]

長着をはしょることも、腰揚も褄もとらずに着たときの床面までの身丈のこと。男物長着や丹前は対丈に仕立てる。長襦袢の身丈は対丈であるが、長着丈より5~7cm控えて仕立る。

・つがるこぎん

織物の名称
津軽こぎん刺しとは青森県津軽地方に伝わる伝統的な刺し子です。 紺色に染めた麻布に、白い木綿糸で多様な幾何模様を刺縫いしたもので木綿糸による刺縫いは、衣服の補強と保温もかねています。藍と白の生むコントラスト、端正な模様の美しさは現代の人々の目を引きつけます。

・つきぼり [突き彫り]

江戸小紋などの型染めで使う型紙を彫刻するときの一技法。小刀で垂直に突くように型紙を彫る。複雑な絵模様を彫るのに適した技法である。

・つくりおび  [作り帯]

結ばずに最初から帯の形に作られている帯。

・つぎ [継ぎ]

布の薄くなった個所や破れに、別の小切れを裏に当ててつくろうこと、または、その小切れ(当て布ともいう)をいう。色紙つぎ、穴つぎなどの方法がある。また全く違った当て布を表から当ててつぎをし(かぶせつぎという)、つくろいをかねた一種の装飾に用いることもある。

・つきぐさ [鴨頭草・鴨跖草]

植物染料のひとつで、つゆぐさ、うつしばな、ほたるぐさともいう。花は藍色。この汁を搾って布地に摺り込んだが、褪せやすいので実用に向かなかったようだ。

・つぎこみぞめ [注込染]

略して「注染」(ちゅうせん)ともいう。手加工染色法のひとつ。普通の「型紙」とは反対に、染色しようとする模様以外のところを彫りぬいた型紙を用い、精米粉・米糠・食塩などで作った「防染糊」を生地につけるか、あるいは板締などの器具で締めた織物の上に糊ののせ、金網または格子になった台の上で模様の部分に染料液を注ぎ込んで染色する方法で、最近では台に圧搾空気を噴出する装置をつけ、これで染料を浸透させる。その都度防染糊をつける手間を省くため、布を型紙一枚の長さに交互に折りたたんで、一度に大量に簡単に染めることができる(浜松地方では最高12反を一時に染める。東京では通常2反)。染色後水洗いして糊を落とし、天日乾燥を行って仕上げる。手拭染、中形ゆかた染、小旗などの染に応用される。普通一色染が多いが、特殊染により、多色染もできる。

・つくばつむぎ [筑波紬]

豊田紬と同義。

・つけおび [付帯 附帯]

室町時代末から江戸時代にかけて、大名以上の武女性が用いた帯の一種。春夏の間、打掛下に締める帯。現在、付帯といっているのは、軽装帯のこと。

・つけさげ [付下げ 附下げ]

略式の訪問着。絵羽模様は縫い目で模様が切れないよう、着物の形に仮縫いして、下絵を描いてからほどいて染める これに対して付下げはこの手順を省き、模様が逆さにならないよう考慮して模様の位置を決め、下絵を描き、長い反物のまま染める。袖、身頃、衽、衿などの裁ち目になる位置に合印がつけてあるからそれにしたがって裁つ。

・つけさげこもん [付下げ小紋]

地あき(無地の部分)が多く、ごく少ない柄を付けたもの。小紋に近い感覚のきものを「附下小紋」と呼びます。

・つけひも [付紐]

子供用の長着(一つ身、三つ身)の両前衿付けのところに、前がはだけないように縫い付ける紐のこと。素材はメリンスや縮緬、木綿などである。

・つけひよく [付け比翼]

比翼仕立てを簡略化したもの。留袖などの礼装の、2枚重ねの下着のまわりの部分だけをつくり、上着の裏に縫いつけ、見た目は2枚重ねのようにしたもの。現在の留袖はほとんどがこの方法を用いている。

・つじがはな [辻が花]

室町時代から桃山時代にかけての一時期に現れた、絞り染めと蒔絵を主とした多彩で美しい染物。秀吉や家康の遺品の中に辻が花染の羽織が見られる。辻が花の由来については不明な点が多く、定説はない。
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・つたもん [蔦文] 

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・つちぐるまもん [槌車文]

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・つつがき [筒描き]

糊置き法の一つ。糊を防染剤とする染色法で、円錐の渋紙や布の筒に防染糊を入れ、筒先から糊を絞り出しながら布面に模様を描く方法。筒引きともいう。

・つつそで [筒袖]

和服の袖型の一つ。袂部分のない短い筒状の袖のこと。つつっぽ袖、削袖ともいう。主として男児用の一つ身、三つ身、男物の普段着などに用いられる。また、作業者用の袖。

・つつびき [筒引

渋紙で作った円錐形の筒に色糊を入れて、指で絞りながら、織物に糊おき染色する方法。型紙で糊をつける方法に比べてより自由な細かい模様を作ることができる。

・つづみもん [鼓文]

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・つづれおり [綴織]

横糸だけで文様を表現するのがつづれ織です。
つづれ織というのは織物において、「 横糸をだぶつかせ、縦糸が見えないように打ち込みを多くした織り方 」で平織りの一種です。日本の西陣の爪掻本綴織(つめかきほんつづれおり)は織機の大きさ、種類、形、糸の太さ、種類(正絹)、打ち込み数、道具まで規制された逸品なのです。
爪掻本つづれ織とは、手の爪をギザギザにカットして横糸を爪で織りこんでいく技法です。西陣織のなかでも高度な技術が必要とされ、縦糸の上に横糸で絵を書くように仕上げるので、平面的でなく立体的な作品も作ることが可能です。
反面、大変手間のかかる作業ですから、一日かけて数センチしか織れないということもよくあることです。

・つづれにし [綴錦

織物の名称・滋賀県
別名爪織りと呼ばれ、文字どおり、ミシン糸のような太さの糸を、一本一本下絵に合わせて、小さなヤスリで鋸状に整えた爪の先で掻き寄せて織っていく。そのため、多くの時間と高度な技術を要し、織りあがった作品は素晴らしく、耐久性にも富んでいる。また、一点一点手作りのため、小さなものは名刺入れから、大きなものは幅数mの緞帳まで製織できる。

・つのかくし [角隠し]

被り物の一種。江戸時代より、婦人のかぶりものとして用いられた。浄土真宗(一向宗)の門徒の婦人が、報恩講(ほうおんこう)参詣のときにかぶった、黒い布地で作られたものは、一向帽子ともいわれていた。明治以降、高島田の上に付け結婚式に用いられているのは、表に白の生絹、裏に紅絹(もみ)をつけている。角帽子とも言われている。

・つのだし [角だし]

帯結びの一種。帯枕を使わず手、という太鼓の中で横に渡してある部分がやや多く出ているのでこの名がある。別名、銀座結びとも言う。

・つばきもん [椿文] 

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・つばめもん [燕文]

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・つぼそうぞく・つぼしょうぞく [壺装束] 

王朝時代の婦人の装いの一つ。衣服の裾をつぼ折るという意味があり、中流以上の婦人が、徒歩で外出するときにした装いをいう。裾をはしょって腰で結び、市女笠をかぶる。市女笠の前側には、虫垂れという薄い布をたらすこともある。

・つぼたれ [壺垂れ]

模様の名称。壺垂れ模様のこと。陶器で釉(くすり)掛けをしたとき、釉薬が自然に流れ、垂れてできた様子を模した模様のことをいう。

・つま [褄]

長着の衽の衿付止りから裾までの間をいう。立衿・褄下・衿下ともいう。褄先とは立褄と裾の出合う終わりの角のこと。袷長着を仕立てるとき、裾のふきの褄先はまるく縫うが、これを「褄をあげる」という。単衣長着の褄先は、上物は額縁仕立てにする。

・つまおめし [褄御召]

縫取り紋御召の一種で、江戸褄御召ともいう。

・つまかわ [爪皮]

爪掛けともいい、履物の付属品をさす。雨や雪の際に防汚、防寒などのために下駄などのつま先部分を覆うもの。皮を原料にしたことによる名称だが、現在ではビニールコーティングした布地で形作り、端に付いたゴムをそこの歯に引っ掛けて用いる。

・つまさき [褄先] →褄

・つました [褄下] →褄

・つまみぬい [摘み縫い]

和裁用語。布を裁断せずに摘み合せて縫う方法。四つ身の衽(おくみ)や、広幅物を使用した場合の背縫いなどに用いる。

・つまもよう 褄模様]

和服の模様配置の一種。おもに褄に置かれた模様をいう。宝暦(1751~63)のころにすでに考案されていたが、流行するのは明和・安永(1764~80)のころからで、はじめ江戸褄が、少しおくれて島原褄が流行した。前者は江戸城の御殿女中からひろめられたといわれる本来の褄模様で、後者は、京都島原の遊女の間から行なわれたもので、衿にまで大きく模様が置かれている。今日では、江戸褄後掛(がか)りといって、後ろ裾にまで及ぶ、従来の江戸褄と区別して大江戸褄という。

・つむぎ [紬]

真綿を手でつむいだ糸を経、緯糸に用い、手機〈テバタ〉で、絣〈カスリ〉、縞、などに織り上げた織物のことをいう。

 

・つむぎいと [紬糸]

玉繭(二匹の蚕がつくった繭)や、屑(くず)繭を精錬し、真綿の状態にして、手で引き出して連続した糸とし、撚(よ)りをかけて巻き取ってつくらえる。生糸(きいと)に比べ、太さが不均一なので、織物にしたとき、独特な布味がみられる。手数がかかった高級品である。

・つむぎはっかけ [紬八掛]

錦紗の八掛は、その縮緬風の織り方から湿気にあうと収縮する。このため表地が「御召」や「縮緬」の場合は差し支えないが、表地が「大島」や「銘仙」のような、平織で縮まないものにつけると、裏だけ縮んで仕立てが崩れることが多い。そこでこれらにつけるため平織の八掛地が用いられる。これを紬八掛という。

・つやけしいと [艶消糸]

人絹糸、スフの強い光沢、いわゆる人絹らしい光を消した糸。ダル糸とも称する。

・つゆしばもん [露芝文]

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・つるおかかんとう [鶴岡間道]

間道の名物裂。鎌倉の鶴岡八幡宮の神宝で、赤地と薄青茶の縞、黒色の緯糸の斜子(ななこ)地に薄茶色の横縞を織り込んだもの。

・つるかめもん [鶴亀文]

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・つるもん [鶴文]

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・つるびしもん [鶴菱文]

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・て

帯の一端を表す部分名称。帯を結ぶ際には、手を半幅に織り、適度な長さをとってから身体に巻いて結ぶ。余った部分を帯結びの装飾や補助に使ったり、帯結びの中に収めたりする。名古屋帯では「て」の部分をあらかじめ半幅に仕立てられているものが多い。「て」の端をて先という。

・ており [手織]

動力に頼らず手と足の力を使い織る事。また織られた布。手織の織機は居坐機と高機に代表される。

・てがきぞめ [手描染]

筆や刷毛を用いて、染料で直接布地に絵模様を描いて染めつける方法。

・てがきゆうぜん [手描友禅]

友禅染の一種。型染の友禅に対して、手描き染の友禅のことをいう。

・てざし [手挿し]

手で彩色すること。様々な筆と刷毛を使って糸目防染された絵模様部分に色を挿していくこと。型の糊糸目に手で彩色したものを特にこう呼ぶことがある。挿し友禅ともいう。

・テーチギ

大島紬の泥染めをする際用いる植物。テーチギ(車輪梅)の枝を煮出した液で糸を染め、鉄分の多い泥に浸して揉み込む作業を何度も繰り返し行う。

・てっせんかもん [鉄線花文]

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・てっぽうそで [鉄砲袖]

袖の型の一種で、筒袖の袖付下に方型のひうち布を入れた袖。形が鉄砲に似るのでこの名あり。明治以後用いられた袖型。

・てつこん [鉄紺]

鉄色がかった紺色、わずかに緑味の暗い青色に用いられる。紺色は濃い藍染の通称で、藍染はマムシ除けになるとも信じられていたので、近代まで日本の農村や都市にも最も普及していた色の一つである。そこで紺色も色味によって細かく区別され、緑味の紺は鉄紺という。また紺鉄という色名もある。

・てっぽうそでん [鉄砲袖]

袖の形の名称。主に男児の着物に用いられる。筒袖に近い形で袖口がとくにせまいもの。

・てつむぎいと [手紡ぎ糸]

真綿から手で糸を引き出しながら紡いだ糸のこと。この糸で作った紬の代表的なものに、勇気紬がある。

・テトロン

帝人と東レが開発したポリエステル繊維。武道の袴によく用いられる。

・てぬぐいちゅうがた [手拭中形]

→ちゅうせんちゅうがた

・てのし [手のし]

手作業でゆのしをすること。機械ゆのしにかからない、規格外の生地をゆのしする時や、絞り染・刺繍などの加工特性が、機械ゆのしによって損なわれる場合などに行う。また、仕立て上がったキモノにゆのしをする場合に行う。

・てばさみ [手挟]

糸を切ったり、細かい所に使うハサミ。糸切り鋏。

・てばた [手機]

経(たて)糸を上下に開く綜絖(そうこう)の操作を足で行ない、緯(ぬき)を杼(ひ)で通して打ち込む操作を手でする織機のこと。機械ではなく人の手足で動かす織機。練薄のような繊細な織物に文を織り出すには手機でないと出来ないことも多い。

・でふき [出ふき]

毛抜き合わせやひかえ処理に対して、袷衣や綿入れ等の袖たて)糸を上下に開く綜絖(そうこう)の操作を足で行ない、緯(ぬき)を杼(ひ)で通して打ち込む操作を手でする織機のこと。口、裾の裏地を表より出して仕立てる部分の和裁用語。単にふきともいう。

・デニール

生糸や化繊の糸の太さを表す単位。長さ450mで重量0.05gの糸の太さが1デニール。デニール数の大きい物ほど太い糸となる。

・でわもめん [出羽木綿]

織物の名称・山形県
江戸時代、農家や庶民の日常着として発展したのが今も脈々と山形県山辺町(渡豊工房ほか)で生産されています。
少し厚手の生地が特徴です。普通は単仕立てにしますが、真冬以外オールシーズン着れるので、普段着の着物としてはもってこいの素材です。また、非常に着易く、着込むほど、洗濯するごとに味が出るのも良いところ。木綿なので洗濯機で丸洗いも可能ですから、心置きなく着ることができます。

・てんさん [天蚕]

野生の蚕の総称。クヌギや栗、ナラ、カシなどの木の葉を食べて大型の繭をつくるのが特徴である。この繭から紡いだ糸のことを天蚕糸、野蚕糸という。紬織物や縫い取り部分に少し加えたりして使われる。

・でんさんほう [伝産法]

「伝統的工芸品産業と復興に関する法律」の略称。昭和49年に制定され、17の条文から成る。京都では、西陣織、京くみひも、京友禅、京小紋、京鹿の子紋、京黒紋付染、京繍がこれに当たる。
〔制定の目的〕伝統的工芸品が国民生活に豊かさと潤いを与える上で不可欠のものとみなし、作業環境や後継者問題、原材料確保などの基盤を確立し、産業としての振興をはかること。
〔指定の用件〕イ.主として日常生活の用に供される工芸品であること。ロ.製造過程の主要部分が手工業的であること。ハ.伝統的技術または技法で製造されるもの。(100年程の歴史のあること)ニ.伝統的に使用されてきた原材料によるものであること。ホ.一定地域で生産形成されているもの。これらの指定は、伝統的工芸品産業審議会で審議され、通産大臣が行う。指定された工芸品には、検査の後「伝産証紙」を張付することができる。

・てんじくもめん [天竺木綿]

略して天竺ともいう。JIS繊維用語には「タテ、ヨコ糸に20番手級の生綿糸を使用し、タテ、ヨコ密度をほぼ同数の平織物」とある。密度は1インチ当り60本×60本が標準。元インド地方より輸入したのでこの名あり。金巾に比べ糸の太さが約2倍。

・てんねんせんい [天然繊維]

化学繊維などの人口繊維に対し自然界に産する植物(綿、麻、楮など)、動物(羊毛、繭など)、鉱物(石綿)からさ異種された繊維の総称である。

・てんねんせんりょう [天然染料]

動・植物や鉱物から得られる染料で、繊維の着色剤などに用いる。

 

・といでじま [戸出縞

織物の名称・
越中(富山県)戸出町地方で織られた木綿縞織物や木綿の交織縞織物。戸出は布商売で成功した町で、元々集約地だったのだが明和年間に木綿の縞織物を織り始めた。

・どううら [胴裏]

キモノの袷〈アワセ〉で、裾回しを除いた部分につける布。紅絹〈コウショク〉・羽二重・モスリン・人絹〈ジンケン〉などを用いる。

・とうきょうこもん [東京小紋]

小紋の一種。東京で染められている型染め小紋のこと。当然江戸小紋も含まれているが、ここでは京都の型友禅に対して東京の現代的な型染め小紋の意味が強い。しかし、これらはきもの業界だけの通用語で、一般商品としての区別は明確でない。

・どうぐほり [道具彫]

 型染め用の型紙彫刻の技術の一つ。伊勢型に用いられる基礎技術で、それぞれの模様に合わせて彫るために、都合よく考案された刃物の一つ一つを道具といい、これらの道具を使って模様を彫ることを道具彫という。

・とうざん [唐桟]

綿織物の一つで唐桟縞の略。色彩的な木綿嶋(縞)の古称で、ほかに桟留縞とも奥縞ともいう。紺、茶、赤、黄などの縞柄。桃山時代から江戸時代の初期にオランダ船によって、わが国にもたらされたもので、渡来の年代によって古渡り唐桟、中渡り唐桟、新渡り唐桟と呼ばれている。唐は舶来品を意味し、桟留はポルトガル語で西インド東岸のセント・トーマスという地名によるものといわれている。江戸時代から国内でも似たものを作るようになり、唐桟の名が残った。現在は、おしゃれな趣味のきものとして広く用いられている。

・どうちゅうぎ [道中着]

道中とは旅路をいうので、本来は旅装束のことだが、現在では、きもののように衿を打ち合わせて着る型のコートをさす。

どうぬき [胴抜き]

長襦袢や下着等の表布を節約する仕立方の工夫をいう和裁用語。袖、裾まわり、衽、衿等や着用時に見える部分だけに表布を使い、見えない胴回りには表布を抜いて変わりに柔らかくて軽い別布を使用するのでこの名あり。 胴裏抜き(釣胴)仕立と混同されよく使われている。

・とうしうら [通し裏]

袷、綿入の長着の裏地を全部同じ生地を用いる場合、通し裏という。男物の長着、丹前、花嫁の打掛に用いられる。もともと袷の裏は通し裏であった。表地との配色の多様化、裾裏地の重さ、経済上の工夫から胴裏と裾回しを別布にするようになった。裾の痛みが激しいので、通し裏は肩で10cm前後縫込んでおき、仕立て直しのとき繰出せるように仕立てる。表布の腰揚と重なるので腰揚にしない。

・どうふく [胴服]

衣服の上にはおって着る腰までの短い上着。胴衣とも書く。動服から変形し、羽織の原形でもある。室町時代末期から江戸時代初期にかけて武将が用いていた。

・とおかまちあかしちぢみ [十日町明石ちぢみ]

織物の名称・新潟県十日町市
19世紀の終わり頃、京都の西陣の夏用の反物の見本を持ち帰り、もともとあった十日町透綾(とおかまちすきや)という織物の技術に応用して、新商品の試作研究が行われました。この時以来、緯糸の強撚(きょうねん)と整理法の技術研究が熱心に進められ、すでに十日町で織られていた撚透綾(よりすきや)を改良して、緯糸に強撚糸を使用した新地風(じふう)「透綾ちりめん」の試作に成功し、明治中頃から「明石ちぢみ」と名付けられ市場に送り出されました。

・とおかまちがすり [十日町絣]

織物の名称・新潟県十日町市、中魚沼郡津南町
越後縮の絣技術が定着したのは、18世紀前半であるというのが定説になっています。絹織物に応用されるようになったのは、19世紀後半の経絣織が成功してからです。明治初期には緯絣も織られるようになりました。この時期絣技術の進歩はめざましいものがあり、「突絣(つきかすり)」の技法も作り出されています。くびり糸には、当初、油紙、苧麻糸(ちょまいと)、笹の葉等が用いられていましたが、大正時代に入って綿糸、平ゴムがこれに変わりました

・とおかまちつむぎ [十日町紬]

織物の名称・潟県の十日町
新潟県の十日町で織られる紬の総称です。長い歴史のある十日町絣のほか、新商品の開発なども盛んに行われ、電動織機を使った手頃でファッショナブルな紬も数多く生産されています。
伝統工芸品の十日町絣は、つき棒を使って絣糸を染めるのが特徴で、独特の絣柄が生まれます。

・とおしうら [通し裏]

和裁用語。裏布の裁ち方の一つ。男物の袷や丹前などに用いられる方法で、総裏ともいう。肩から裾まで胴はぎをせずに、同じ布を通して用いる。特殊なものとして、花嫁の打ち掛けにも、通し裏が使われている。

・とおしがら [通し柄]

帯の柄付の一種。丸帯や袋帯などの帯地全体に、模様をつけることをいう。全通とも言われている。帯の六通柄やお太鼓柄に対しての語。

・とおやまもん [遠山文]

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 ・とくさもん [木賊文]

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・とさめんつむぎ [土佐綿紬]

織物の名称・高知県香美郡香我美町
やさしい感じの縞柄で、素朴な肌触りの織物。かつては赤岡縞、岸本縞とも呼ばれた。
土佐藩の奨励により、文化年間(一八〇四~一八一八)の頃から綿花の栽培がさかんになり、赤岡縞、岸本縞が織られるようになった。
明治、大正時代を通しては普段着、野良着としての需要をもっていたが、現在は衣料としての需要はほとんどない。
土佐綿紬は、赤岡縞の伝統を残す民芸品として存在している。

・とじいと [綴糸]

刺繍糸をとじつける糸。

・とちおつむぎ [栃尾紬

 織物の名称・新潟県長岡市栃尾
栃尾紬は、製糸に出来ない玉繭を真綿にし、それを紬いで織ったものですが、長年に渡り改良を積み重ね、糸織りを主としながら玉糸や節糸を用いるなどの工夫がこらされた絹織物です。一見すると、綿織物のようですが、絹特有の光沢があり、しぶく目立たないために、凝った趣向とすぐれた品質が評判となり、主として江戸の町人の伊達者間で賞用されました。
栃尾郷では、農家の副業として、殆ど全域にわたって生産されていました。例えば、田之口の黄縞(きじま)未納、森上の無地(むじ)、荷頃の干筋(せんすじ)、中野俣の鼠縞(ねずみじま)、一之貝の絣(かすり)、赤谷の大柄(おおがら)、栗山沢の黒地(くろじ)、黄格子(きごうし)、黄八丈(きはちじょう)などです。
そして、縞物にしても、万筋(まんすじ)、千筋(せんすじ)、小立(こだつ)、中立(なかだつ)、大立(おおだつ)、大明、滝縞(たきじま)などがあり、それが色や縞柄で、いろいろな名称がありました。他に横切(よこぎり)、此手(このて)、壱崩(いちくずし)、見甚、絣(かすり)、利久(りきゅう)、綾(あや)といった具合です。

・とっこもよう [独鈷模様]

織り模様の名。独鈷は密教で用いる道具の一つで、この独鈷を嘉禄(1225~27)のころに、博多で織物の模様として、織り出したのがはじめといわれている。現在でも博多帯といえば、独鈷を縞状に連ねた模様をいうようになっている。

・どてら [褞袍]

衣服の名。防寒用に用いられる広袖の綿入れの長着。丹前と同じものであるが、どでらは関東風の呼び方である。地方によっては、寝具として使われているところもある。

・とびもよう [飛び模様]

柄のつけ方からの名称 画像と解説はこちらへ

・とめがら [留柄]

 「御留柄」ともいう。ある特定の文様を独占して、他人の使用を許さない柄のこと。江戸時代(一六〇三~一八六七)、将軍家をはじめ、各地の大名はそれぞれ占有した小紋柄を持っていた。

・とめそで [留袖]

元来、女物着物の普通の袖を元禄袖や振袖に対して留袖という。袖丈が鯨尺1尺3寸~1尺6寸5分くらいで袖先の丸みが5分丸の袖。現在の女物の袖はほとんどが留袖。江戸褄と同義語に使用。白衿黒紋付がこれに当る。紋は五ツ紋が正式、略式は三ツ紋。留袖の地色は黒が原則で、これを黒留袖という。既婚女性が色留袖を着るのは略式。宮中に限り黒地を用いず、色留袖を正装とする。白羽二重の下着を重ねて、丸帯を締める。長襦袢、半衿、帯揚、帯〆などはすべて白を用いる。

・ともえり [共衿]

長着の地衿の上にかける共地の衿のこと。衿は首筋にあたり汚れやすく痛みやすいので、防ぐ為にかける。衿肩明きを中心に4~10cmほど下まで掛ける。共衿丈の先は4mmのきせを掛けて地衿が見えないよう細かく絎ける。共衿の内側は地衿の巾に絎けつける。

・ともきれ [共布]

色、柄、質とも同じ布のこと。

・ともずそじたて [共裾仕立て]

和裁用語。和服の仕立て方の一つ。表地を裏に引き返して、裾回しにした仕立て方のこと。共裾長着ともいう。礼装、長襦袢、子供の七歳の祝い着などに用いる。

・とよだつむぎ(とやだちぢみ) [豊田紬・豊田縮]

明治24年(1891年)、秋場によって考案された豊田紬は、経糸に玉繭からとる絹玉糸、緯糸は左右強撚を施した綿糸(八丁撚糸)を交互に織るという独特の製法により、その上がりは縮みの風合いが新鮮である。結城紬(ゆうきつむぎ)に似せた夏の着尺地として、明治の末頃に作り出されました。石下紬(いしげつむぎ)とも呼ばれています。
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・どろあい [泥藍]

植物染料の一種。沖縄などに産する琉球藍(山藍)を、屋外に彫った水槽に浸して、太陽熱で自然発酵させた後、石灰を加えてかき混ぜ、上澄みの液を捨てて下にたまった泥上の青藍の沈殿物のことをいう。この染料につけ込んで染色すると、くすんだ青色になる。

・どろぞめ [泥染]

主に、大島紬の褐色を染める方法を指す。鹿児島・沖縄地方の海浜に自生する車輪梅〈シャリンバイ〉という植物の幹被には、褐色色素とタンニンが含まれている。これを染色液に用いて、絹を染めると赤茶色に染まる。大島紬の褐黒色は、この煎汁で煮染した後、鉄分を多く含む泥(泥土液)に浸して得る。

・ドロンワーク

布地の経糸、または緯糸を抜いてレース風にかがる手法。

・どんす [緞子]

中国宋代に始まった精妙な織物。一般には地を経(たて)の五枚繻子(じゅす。経緯が表面に出る比が四対一、つまり交差点が四方桂馬に飛ぶ組織)とし、その裏組織の緯(よこ)五枚繻子で文様をあらわすものをいう。しかし名物裂(ぎれ)では組織にとらわれず、この特徴をもつ裂をすべて緞子と総称する。

・とんび [鳶]

男物の和装コートの一種。鳶がっぱともいう。袖なしの膝丈ぐらいのコートにケープが付いており、その形が鳶に似ているところからかの名がある。洋服のインバネスをまねて作られたもので、明治の初期に流行した。素材は羅紗が最も多く、長着と対丈のものを二重まわしと呼んでいる。

・とんびゃん、とんばん [桐板]

織物の名称・沖縄県那覇市
かつて沖縄の那覇で生産されていた清楚で気品のある「幻の高級織物」。
芭蕉布より歴史が古く、竜舌蘭(りゅうぜつらん)の一種から採った原糸で織ったとされているが、戦争で途絶え消滅してしまった。白地の絣または縞柄があった。

・とんぼがすり [蜻蛉絣]

絣柄の名。とんぼの姿を絣模様で現したもの。一般には小さいとんぼを、布地全体に詰めたものが多い。

・とんぼもん [蜻蛉文] 

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・ながいたぞめ [長板染め]

長板染めとは江戸中期から伝わる手染めの技術で、長板と呼ばれる6m50cm程のもみの一枚板に生地を張り付け、精緻に掘られた型で糊置きをし、正藍で染めていくという、手の込んだ作業から産まれる着物。

・ながいたちゅうがた [長板中形]

中形(浴衣)の一種。長板本染中形の略称。木綿の藍染中形で、江戸中形ともいう。浴衣の模様染めの技法で、地色を藍にして模様を白く染め抜いたものと、白地に藍で模様を表したものとがある。藍の一色染が特色。明治の末期に能率のよい折付け中形(注染中形)が出現して、急速に普及したため、新しい中形と本来の伝統ある中形を区別するために、長板本染中形とよぶようになった。長板とは、樅(もみ)材で作られた、長さ約6m36cm、幅34cmの捺染板のことで、この板の両面に中形一反分の木綿生地を張り伸ばして、防染の型付けを行うためにこの名がある。両面に糊置きして浸染するため、裏表ともくっきりと染め上がる。製作に熟練を要する。高級浴衣である。

・ながいつむぎ [長井紬]

織物の名称・
米沢藩の上杉鷹山が奨励した殖産振興によって興った米沢地方の織物の一つ、長井紬。結城紬の製法を取り入れ、絣に工夫を凝らした絣紬。努力によって、品質を高めていった長井の人々の手法。古くは米沢に近いこともあって、米琉(米沢紬)の名で売り出されていたが、明治からはその名も「長井紬」として商品化され、独特の糸遣いで独自の風合を産み出している。

・ながぎ [長着]

キモノと見なした場合は、広く和服全般をさすが、仕立て業者の間では、長着を長物、羽織やコートなどの丈の短いものを半物と呼び区別している。

・ながさきにしき [長崎錦

織物の名称
丸帯や袋帯などの格の高い帯に用いられる金銀糸を使ってとても豪華なものです。

・ながしぞめ [流し染]

水面に染料を流し、これを棒でかきまわしたり、風を送ったりすると水面の染料が動き、曲線が現れる。この上に布を静かに置いて曲線を写し取る染色技法。墨流し染めなど。

・ながじゅばん [長襦袢]

長着と肌襦袢の間に着る衣服。身丈は対丈、袖は広袖、袖丈は長着に合わせてそろえ、半衿をかけて着る。礼装用には白無地。夏物には絽、麻、レース地、等。季節によって袷仕立て、単仕立、無双仕立がある。仕立て方には本襦袢仕立、別衿仕立、関西仕立、胴裏抜仕立、摘み衿仕立、中奥仕立、二部式仕立などがある。本襦袢仕立が基本的なもので、一反を用いて無双袖無垢とし、衿は通しの撥衿。関西仕立は衿を広衿に仕立てたもので、裾周りが広く着やすい。

・なかとじ[中綴]

和裁用語。和服の袷・綿入などの表地と裏地の離れるのを防ぐため、脇縫い・背縫い・衽付の縫い目を内側で綴じ合わせること。

・なかのがすり [中野絣]

織物の名称・群馬県邑楽郡、館林市
板締め染色の手織白絣。男物の夏の着尺地。
幕末に木綿紺絣が織られ、明治の末には白絣が織られるようになった。

・ながばおり [長羽織]

丈の長い羽織。中羽織に対する、本羽織の意に用いることもある。

・ながはまちりめん 長浜縮緬

琵琶(びわ)湖の東、滋賀県長浜市を中心に生産される縮緬の総称。浜縮緬ともいう。とくに後染め用白生地として最も需要の多い*一越縮緬が名高く、生糸(きいと)による高級品をつくっている。

・なかみみ 中耳

広幅織機を使用して小幅織物を織る際、普通二つ以上並べて織るが、これは織り上げの後に切断して二反とする。この時切断した部分がほつれないように「耳」をつけておく。方法としては、切断予定箇所の端の緯糸を一部紗織にするか、または経糸2本を緯糸1本ごとに撚る方法がある。広幅織機による製織は小幅織機に比べて能率が高いため、量産を必要とするもの、また減価を切り下げるためにこの中耳を利用する2反掛け、3反掛けの方法が行われることが多い。普通耳の織物と比べて、中耳は耳の外側に切断した部分の糸が若干残って見えるので、注意すれば判別は難しくない

・なごやおび [名古屋帯]

外出用の女帯の一種で一般的に幅広く用いられています。模様の付け方によって、お太鼓柄、六通柄、四通柄、全通柄、に分けることができます。お太鼓になる部分を並幅(八寸~八寸四分ほど)とし、手掛け(垂れ)胴回りの部分を半巾に仕立てたもの。大正時代に名古屋にて考案されたのでこの名あり。名護屋帯とは別物。

・なごやおび [名護屋帯]

組紐の帯で丸打ちと平打ちがある。丸州名護屋(佐賀県)に朝鮮の韓組(からぐみ)の技術が伝えられてこの帯が出来た。長さ1丈2尺、総の長さは八寸。色は男女とも赤が多い。形態が縄に似ているので縄帯ともいう。江戸初期の風俗画に多く見かける。 名古屋帯とは別物。

・なしじおり [梨地織]

格子に似た織り方で、布面に梨の果実の表皮に似た外観を表わしたもの。表面に砂粒を一面にまき散らしたような、ちょうど「縮緬」の細かい「しぼ」風の外観を表した織物。「砂子地」ともいう。サラリとした感触があるので、夏の着尺地や半襟地、また帯地などによく使用される。

・なすもん [茄子文]

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・なせん [捺染]

なっせんとも発音する。単色または多色を用いて、布地に模様効果を発揮する染色法のうち、一般には浸染によらないもの。使用機器により手捺染(手描き染や型紙捺染など)と機械捺染(ローラー捺染、自動スクリーン捺染など)に分類される。和装関係では機械捺染(ローラー捺染)の意としてよく使用される。

・なせんいた [捺染板]

「小紋染」「友禅染」などの手加工捺染に使用する器具。「型板」とも「張板」ともいう。普通狂いが少なく水を吸収しやすく、しかも早く乾燥する樅(もみ)等で作った長さ3間2尺(6メートル)幅1尺3寸~1尺5寸(40~45cm、広幅生地を染色する場合はこの倍)、厚さ7~8分(2.1~2.4cm)くらいの板で両端に狂いを防ぐために横に幅1.5~2寸(4.5~6cm)位の端木をはめ込み、この一方は布を裏面に折り返すために次第に薄く削り、刃形(剣先)とする。これを鳥と称する丁子型の台の上に乗せて、まず表面を捺染し、ついで裏返して別面を捺染する。この板が何面あるかで染色能力を表示することができる。

・なせんがすり [捺染絣]

各種の道具または機械を用い糸束に捺染する方法をいう。

・なつおおしま [夏大島]

糸の撚りを強くして、薄地に仕上げた夏用の大島紬のこと。時代の多様化によって作られたものといえる。肌触りのよさが特色である。

・なつおび [夏帯]

主に夏に使用する帯で、生地は絽、紗、博多単衣などがある。

・なつおめし [夏御召]

明石、すきや、上布、ポーラなど盛夏に着る「御召」の総称。紗織のもが多い。

・なつしおざわ [夏塩沢]

絹織物の一種。新潟県南魚沼市(旧塩沢町・六日町)地方で織られている。駒撚糸という強撚糸を使用し、薄地でシャリ感がある盛夏用の着尺である。

・なつばおり [夏羽織]

羽織の一種。夏に着る単の羽織のこと。五月の単の時期から、盛夏にかけて着る羽織で、絽、紗、透綾(すきや)などの透けて通気性のある生地を用いる。単羽織ともいう。

・なつばかま [夏袴]

夏の礼服用袴としては「絽織」「紗織」「壁織」などが用いられているが、最近では絽織がほとんどである。

・なつめやし [棗椰子]

ヤシ科の常緑高木で、インド西部・メソポタミア地方の原産。

・なでしこもん [撫子文]

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 ・ななこおり [斜子織り]

経緯とも二本以上の糸をそろえて織るため、織り目が方形で魚卵のように打ち違いに粒だって見えるための名称。厚地で主に帯に用いる。畳織り、バスケット織りともいう。「七々子」「魚々子」とも書く。

・ななすんもよう [七寸模様]

裾模様の一種。模様の位置によるよび名。裾から七寸(約21cm)ぐらいの位置に置かれた模様。

・ななつぎれゆうぜん [七布友禅]

「柄友禅」(本友禅)の一呼称で、織物を袖・衽・衿・身頃四つ切れの七つに裁断し、仮仕立てして友禅染を行うもので反物のまま行われる「反物友禅」に対する言葉。訪問着、留袖、絵羽友禅などはすべてこれである。

・なまつむぎ [生紬]

生紬とは、生糸の精練を途中段階で終わらせて、セリシンという成分を残した糸で織られた紬織物
ざっくりした風合いで夏に涼しく、冬に暖かい。

・なみはば [並幅]

 和服や寝具の反物の普通幅を意味し、小幅ともいう。通常36センチぐらいが普通である。

・なみもん [波文]

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・ならぎれ [奈良裂

金襴の名物裂。地色が繻子地のように見えるもの。模様は太鼓の和違いの間に剣先があって、剣太鼓ともいう。また萌黄色地に紋金糸で亀甲と花とを大紋に配したものもある。

・ならざらし [奈良晒]

織物の名称・奈良県奈良市
麻の白生地(生平)を天日で晒し、自然漂白をする。
昔、晒布のことを曝布といった。曝布の歴史は古く、奈良時代にはすでにあったという。 
奈良地方で奈良曝が生産されるようになったのは江戸時代初期の慶長年間(一五九六~一六一五)のことである。寛永年間(一六二四~一六四四)の頃から、幕府の御用晒として、また礼服として需要が伸びた。
奈良晒の原料は苧麻だが、青苧は会津、越後から、生平は近江、伊賀から買って、奈良で晒して奈良晒として諸国に送った。現在では、糸は苧麻の手紡ぎ糸からラミー糸に変わり、生産量も少なくなっている。

・なりひらごうし [業平格子

格子縞の一種で、三筋格子が斜めに交差し、その中にもうひとつ十字の菱形をいれたもの。業平菱ともいう。

・なるみしぼり [鳴海絞

 絞染木綿の一種。愛知県有松および鳴海付近で生産される絞り織物。有松絞と同種のものである。主として夏季浴衣地に使用される。

・なんぐり [難ぐり]

染難、織難が発生していないか検品すること。加工の各段階で反物を巻きながら、難点を見つけるだけでなく、それらの原因になる要素はないかもチェックする。早期発見により、的確な処理で、未然に防ぐことができる。

・なんてんもん [南天文]

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・なんどいろ [納戸色]

色の名前。納戸とは、衣服の調度品を納めるための部屋で、その部屋の役人がよく着ていた着衣の色という説がある。婦人がこの色を用いるのは、多く花柳界の人達などが好んだという。青藍色。

・なんぶ [南部]

盛岡付近の旧名称で、ここで生産された南部縮緬、南部紬の略称。明治の中頃まで盛んに生産された。

・なんぶいと [南部糸]

岩手、青森の旧称南部地方で産出した生糸で、主に琴糸や三味線糸に多用されたもの。

・なんぶさきおり [南部裂織]

織物の名称。江戸中期に、いたんだ布の再生を南部藩が奨励したことから、経糸に丈夫な麻糸、緯糸に丹念に細かく裂いて紐状にしたボロ布を用いて織ったのが始まりです。今日は経糸に木綿糸を使いカラフルなものが多い。

・にかわ[膠]

動物の皮・骨・腱などを水で煮て得た液をさらに煮つめ、干し固めたものがゼラチン。水で煮ると溶け、粘着性のある液になり、冷えると凝固する。この性質を利用し、顔料などを生地に固着させるのに使用する。

・にしき [錦

色糸を用い、文様を織り出した絹紋織物の総称。綾錦ともいい、織物の中で、豪華で美麗なものを指す。中国の秦時代に創始されたという。日本では、正倉院・法隆寺などの遺品に見られる。古くは京都で生産され、江戸時代中期以降、加賀(石川県)・越前(福井県)・丹後(京都府北部)・郡内(山梨県)・仙台(宮城県)などでも生産されている。

・にしじんおり [西陣織]

織物の名称・京都府/京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、長岡京市他
京都市中心部の北西部、西陣地域で生産される織物の総称。西陣は日本を代表する織物の産地。西陣織の名は、応仁の乱で西軍が本陣とした場所に乱の後、織職人が集まって織物をしたことに由来する。西陣で織られる織物は綴、錦、唐織、緞子、金襴、御召、紬など袋帯、名古屋帯、着尺、法衣、幕など様々です。  

・にしじんじょうだいつむぎ [西陣

織物の名称
上代紬は、京都市西陣で生産される着尺地。西陣織のひとつ。

・にじゅうおり [二重織]

二陪織物のように見える織り技法。一重織物を上下に二枚重ね合わせて同時に織り出してひとつに絡ませて織り上げたもの。

・にじゅうだいこ [二重太鼓]

帯のお太鼓結びでお太鼓の部分が二重になるように結ぶ帯結びの方法。普通のお太鼓より重厚で格調深い。主に礼装用に締める。

・にじゅうぬい [二重縫]

裁縫用語。二度縫いともいい、合せ縫いをしたものを縫い目が開かないようにさらに縫い代の端を縫い合わせることで、単衣長着の背縫いなどに用いられる。

・にじゅうまわし [二重回し]

男子の和装用外套。生地は主に毛織物が用いられる。マント風で、肩の部分が二重になっているのでこの名がある。

・にたやまぎぬ [仁田山絹]

織物の名称・群馬県仁田山桐生市
太織絹の一種。その歴史は古く、上州(群馬県)仁田山(桐生市)で製織された物で、創製は和銅(七〇八~七一四)以前と伝えられる。群馬県は絹織物の産地として古くから発達していて、西上州の日野絹や桐生の仁田山絹などの名前が知られていました。
桐生地域も大間々を中心とする周辺地域から集まる豊富な絹糸を使い、同様に江戸時代には有数の織物産地として発展していて、今日に続く長い歴史を刻んでいます。慶長5年(1600)、関が原の戦いに出陣する家康の要請で、桐生領54か村から旗絹(はたぎぬ)2410疋(ひき)を献上(けんじょう)し、それ以降幕府の保護を受け発展して行ったと伝えられています。

・にどぞめ [二度染]

染色法の一つ。同色系で二度染めて、濃淡を表すことをいう。また、深みのある色にするため、二度染めることをいう場合もある。

・にのじがすり [二の字絣]

緯糸だけに「絣糸」を使用し、二の字型を全幅50から70通しに規則的に配列した絣柄をいう。別名やね絣。

・にほんししゅう [日本刺繍]

刺繍は、針を使って糸で布地を装飾すること。古くはインドに起源を持ち、仏教の伝来とともに中国を経て、日本に伝えられた。それが日本で発達したもので、桃山時代には服飾関係に多く用いられるようになった。その技法には、平繍、相良繍、菅繍、けし繍、割繍、刺し繍などがある。

・にぶしき [二部式]

本来はひと続きのきものや帯、長襦袢を、便利のために二つに分けて仕立てたもの。帯が二部式になっているものをつけ帯という。きものや長襦袢は上半身に羽織るものと腰に巻くもの、帯は胴の部分とお太鼓の部分に分ける。

・にぶしきコート [二部式コート]

上とし下つまりツーピース式になっているコート。下(スカート)になっている部分をとると上が道行コートになる。雨コートによく見られる。

・にまいがさね [二枚重ね]

和服の着方の一つ。女性の盛装に重厚さと色彩の効果を目的として、長着を二枚重ねて着ること。明治の中ごろには、三枚重ねが流行したこともある。

・にょうぼうしょうぞく [女房装束]

平安時代に、宮中に仕えた女性の衣服。晴れの装束の十二単と日常に着る小袿(こうちぎ)がある。

・にんぎょう [人形]

男物着物又は男物襦袢の袖の袖底から袖付留までの間をいう。女物の振りに当たる部分であるが、男物は開けずに縫い合わせて仕立てる。

・にんぎょうじたて [人形仕立て]

人形の衣装の仕立て方。着物を重ねた仕立て方で、比翼仕立てのことをいう。

・ぬいあけ [縫揚げ]

和裁用語。「一つ身」「三つ身」「四つ身」などの子供用の着物の背丈、裄丈を体に合せて摘み縫いすること。単に「揚げ」ともいう。

・ぬいぐけ [縫いぐけ]

2枚の布のくけ代を内側に合わせ、折り山から1~2ミリ内側を5ミリぐらいの針目で、糸がながれないように布をすくったもの。着物の衿、褄下、羽織の衿等をくけるときに使う技法 。

・ぬいこみ[縫込み]

衣服の縫製に際して布の余りを裁切らず、縫込んでおくこと。又、縫い込んだ部分。仕立直しの時に利用できるので便利。衿先や衿付けの縫込みは、衿を整える芯の働きも兼ねる和服独特の処理をする。

・ぬいじつけ [縫い躾]

縮緬(ちりめん)など、布自体の重さのために縫い目の*きせがとれるのを防ぐため、袖口合せ、共衿のつけぎわ、袖合せ、内揚げに*ぞべ糸4~5ミリ間隔に、小針を表に出しておさえの躾をかける。これを縫い躾、またはなまって縫いびつけといい、着用時もとらない躾である。

・ぬいしぼり [縫い絞り]

絞り染の一種。布を縫い、縫い糸を引き締めて染色する方法。縫い締め絞りともいう。平縫い引き締め絞り、巻き上げ絞り、摘まみ縫い絞りなどがある。

・ぬいじめ [縫い締め]

紋染の1つ。文様の部分を縫った糸を引き締めて染める方法。文様の輪郭だけを縫い絞るものや、一定の区画を縫い締めて袋状にし、その部分にも糸を巻いて絞るもの、布を二つ折りにし、浅くつまみ縫いにして絞るものなど多数ある。

・ぬいしろ [縫代]

縫い目より外側の、外から見えない不要な部分。洋裁と異なり、切り落とさないので、解いて端ぬいすれば、もとの一反にもどるという利点がある。

・ぬいつけもん [縫い付け紋]

別の布に家紋を描いて切り取り、着物に縫い付ける紋のこと。張り付け紋、切り付け紋ともいう。

・ぬいとり [縫取り]

織物の模様を表す場合に、絵緯(えぬき)(柄を表すために、地の糸と別に織り込む緯糸のこと)を幅全体に通さずに、必要な部分だけ通して、模様を織ることをいう。一見刺繍をしたような感じの模様になる。

・ぬいとりおめし [縫取御召]

御召のなかでは比較的新しいもので、金銀糸を刺しゅうのように縫取った紋御召の一種である。地組織となる緯糸のはかに、小さい抒を用いて文様の一部をさらに加工するなど、多彩で複雑な文様が織り出されている。

・ぬいとりちりめん [縫取り縮緬]

縫取(ぬいとり)とは織物の文様の部分だけにその文様を表現する緯糸を通す紋織り技法の一種ですが、織り上りが刺繍のように見えることからこの名があります。縫取縮緬では手刺繍のように見える縫取技法ではなく、主として様々に着色した箔やそれらを巻き付けた金銀糸等を縮緬地の上に裏浮に織りこんで、後で裏切り(裏面の余分な浮糸を切り取る事)を施したものです。多丁杼の機械が使用される縮緬の場合、縫取に使用される箔は精練に耐える必要があるため、マイラーフィルムにアルミ蒸着したソフトアルミ箔に着色したものがよく用いられ、又、和紙にウルシを塗った細かい糸状ののものも使われることもあります。 主な用途として留袖や訪問着に使われます。
技術的に難しく手数がかかる非常に高価な織物。上級神職が袴に使うこともある。

・ぬいとりもん [縫取り紋]

単に縫紋ともいう。紋付の羽織、きものの紋を刺繍で縫い表すことをいう。白糸、色糸、金糸、銀糸、金銀ぼかし糸などを使用して、普通羽織またはきものの背にひとつつけることが多い。「染め抜き」紋の五つ紋(きもの)三つ紋(羽織)に対して略式である。

・ぬいはく [縫箔]

きものの装飾技法のひとつ。多彩な刺繍技法と、摺箔技法を組み合わせて、豪華絢爛に模様を表すこと。現代では、振袖や留袖の加飾に用いられる。また、桃山時代の小袖や能装束でいう縫箔は、そうした加飾を施した小袖や装束をさす名称となっている。

・ぬいめもよう [縫い目模様]

きものの縫い目に沿って、細かい模様をつけたもの。

・ぬいもん [縫い紋 繍紋]

染抜紋は正式のものだが、縫紋は略式で一ツ紋又は三ツ紋とする。陰紋が多く、縫い方は芥子縫。糸は白の他に色糸、金銀糸を使用。

・ぬきいと [緯糸]

緯糸(よこいと)と同じ、経糸(たていと)と直角に組織する糸の事。

・ぬきえもん [抜き衣紋]

きものの着方のひとつ。抜き衿、抜頸(ぬけくび)ともいう。衿のうなじ(後ろ首)にあたるところを、引き下げて着ることをいうが、江戸時代から日本髪を結うようになり、後方に張り出した髱(たぼ)などのため、自然に起こった着方である。日常に日本髪を結わなくなった現在でもその形は残り、女性のきものは衣紋を少し抜く(後ろ衿を少し下げる)着方が一般的。そのため、に着物を仕立てるときに、普通2cm程度の繰越をつける。大きく衣紋を抜く着方は、現在では花嫁衣裳や舞台衣装など、特別なものに見られるほか、普通のきものでは粋な着方である。

・ぬきえり [抜衿]

衿の後ろを背中の方へ落として着る和服の着方。古くはのけえもん、元禄頃は抜掛、その後、抜衣紋(ぬきえもん)、抜衿となった。18世紀後半から髪型により衿が汚れないように背中へずらして着るようになったもの。

・ぬきぞめ [抜染]

抜染(ばっせん)を参照。

・ぬきもん [抜き紋]

礼装に用いる、紋を染抜いて現す正式の紋。染抜き紋に同じ。白生地を染める前に紋の形をゴム糊で置いて、染色する誂え染と、染上がった生地に、後から抜き剤で紋の部分を染め抜く方法がある。 →そめぬきもん

・ぬの [布]

装束でただ「布」と言った場合は麻の布のことを指す。16世紀に木綿が伝わるまで普段使いの布の代表格が麻の布であった。貴族は絹織物を常用したが、武士や庶民は麻布を用いた。「上布(じょうふ)」と言う場合もある。

・ぬのこ [布子]

木綿の綿入れのこと。綿を多く入れた粗末な衣服のことを、昔は布子とよんだ。

・ぬめ [絖]

うすい繻子織の絹地。江戸時代に日本でも織られるようになり、小袖などに用いられた。滑らかで光沢があり、きもの地のほか、絹絵の代用にした。

・ぬれがき [濡描き(友禅)]

無線友禅の一種で、ぼかしの感じを強調して表現したもの。生地を濡らし、筆や刷毛で模様を手描染するので、滲みが生じる。色調が柔らかく、独特の味わいを生み出す。

・ぬれぬき [濡れ緯]

湿らせた緯糸のこと。濡れ緯を用いて折ることで、よくしまり、しっかりした生地質になる効果がある。例えば、能装束などの高級唐織の地の織物は、濡れ緯で織られる。

・ぬれむし [濡れ蒸し]

虫しの方法の1つ。生地を乾燥させずに蒸すので、水分が多い状態で蒸し工程が行われるため、染料の拡散移行が容易となり、有効な発色効果が得られる。扱染〈シゴキゾメ〉など、多量の糊を使うものに向く蒸し方法。

・ねこあしがすり [猫足絣]

絣柄の名。猫の足跡を文様化したもので、素朴でユーモアが感じられる模様。

・ねつけ [根付け]

たばこ入れや巾着、印籠などの、帯に挟んで腰から下げる袋物の部分名称。帯から落ちないよう紐先につける細工物で、木や象牙、翡翠など素材は多種多様。実用面に加え、装飾的な役割が強く、粋を凝らす小道具でもある。

・ねり ねる [練]

精練のこと。繊維が有する不純物を除去する処理。糸の状態で精練する事を糸練りまたは先練り、布の状態で精練することを後練りという。繊維が有する不純物には繊維自身が有する1次不純物と、紡績、撚糸、製織、などの工程で付与された薬剤や汚れ、埃等の二次不純物があるが、これ等は染色その他加工の妨げとなるのでこれらの加工に先立って精練を行う。 絹の場合絹を構成するたんぱく質フィブロインの回りを包んでいるセリシンを精練により除去する。

・ねりいと [練糸]

生糸を化学処理してニカワ質を落とした糸。白く光沢があり、ねっとりとした手触りでしなやか。通常「絹の布」と呼ばれるのがこちら。

・ねりうす [練薄]

経糸を生糸、緯糸を練糸で織った穀織。夏の下襲や狩衣などに使われる。手機でないと緻密に仕上がらない。

・ねりおりもの [練織物]

練り糸で織った先練の織物。

・ねりぎぬ [練絹]

生絹織物を精錬して、柔らかく光沢を出した絹布。後練りの絹織物。それに対し、練り織物は、経糸、緯糸ともに練り糸で織った織物。

・ねりぬき [練抜]

精練浴をして行う色抜。脱色専業工場で行う色抜きと区別して言う。精練浴を使用するため、単に脱色するだけでなく、再精練の効果も期待できる為、後の染め上がりに好結果が期待できる。

・ねりぬき [練緯]

経糸を生糸、緯糸を練糸にした平織をいう。柔らかく光沢があるので高位者の装束などに用いられた。

・ねりべり [練減り]

生糸を精練すると、セリシン(膠質)などが落ちるが、それだけに目方も減るわけで、これを練減りという。ふつう精練する前に比べて二〇バーセソトくらい減る。

・ねりべりりつ [練減率]

精錬による繊維重量の減少率。繊維の不純物の重量比が練減率とほぼ合致する。絹織物の場合は標準的に25%。25%の練減率の場合、分留り75%だから七五戻りという。1kgの生機反物を精練すると約750gの白生地になる。

・ねりめ [練目]

練り上げた後の織物の重量をいう。これに対し練り上げ前の目方を「生目」(きめ)という。羽二重・縮緬・平織などは普通「練目」で取引され、裏絹は生目で取引される。

・ネル

フランネルの略で、平織りで布の表面を毛羽立たせた、柔らかい感触の毛織物。それに似せて作った綿織物もさす。現在は足袋の裏などに綿ネルを用いる。

・ねんし [撚糸]

糸に撚り(ねじり)をかける作業、または撚った糸のこと。丹後ちりめんの場合独特の八丁撚糸機を使い、水を注ぎながら、糸を1メートルあたり3,000~4,000回の強い撚りをかけてシボのもとを作る。

撚る方向によって右撚糸、左撚糸に、撚りの回数によって甘撚糸、並撚糸、強撚糸、縮緬糸などに分けられる。

・ねんねこ [ネンネコ]

子供を背負うときに、多いかぶせて包む綿入りの袢纏をいう。銘仙が多く使われたが、今はウールやキルティングに代わり、また、洋服感じのママコートができて少なくなっている。

・のある [ノアル]

ノアルナフトール、ノアルレジュートの通称。三度黒でログウッドの中間媒染剤としてログウッドの次に引き染する染液。主成分はログウッドに酢酸、蓚酸、重クロム酸カリ、クロム明礬(みょうばん)、木酢酸鉄等の媒染剤に酸性亜硫酸ソーダ等を適量加えて加工し、ヘチマンと金属との結合を抑制し、安定化した暗青色のログウッド還元液である。これを酸化すれば黒色不溶性レーキになる。ログウッドの上に引くとブルーに変化する。

・のういしょう [能衣装・能装束]

能と囃子から成る日本独特の伝統芸能「能」の楽劇に用いる衣装とその付属品の総称。 小袖には唐織、厚板(あついた)、摺り箔、縫箔(ぬはく)、熨斗目などがある。 能楽は、室町時代に完成し、江戸時代には武士の式楽となったので、将軍をはじめ、諸大名間に流行し、その装束も華麗、気品をむねとし、現代まで、ほとんど変化なく伝承されている。また、友禅染の発生以前に完成したため、能衣装に友禅染は用いられていない。織物のほかは縫箔で模様を表現している。

・のうしゅうつむぎ [能州紬

能州紬とは能登半島、輪島市門前町にある絲藝苑という会社の創設者である上島洋山氏によって考案され創り出されたのが能州紬です。
能州紬の歴史は比較的新しく上島洋山氏が門前町の夕陽に魅せられ京都・西陣から移り住んだのが約40年ほど前です。 能登を訪れ、その自然に心を揺さぶられた上島洋山先生が、現地に移り住み、研究を重ねて考案した「海草染め(うみくさぞめ)」と「手繍い織(てすくいおり)」。「海を染め 風と織る」、独自の手法でうみだされた能州紬は、日本の故郷を思わせる逸品です。海草で下染めした絹糸を、草木染料で多くの色を表現をします。他様々な工程へて糸が出来上がります。その糸を使い一品一品「手繍い織り」で絵柄を表現します。経糸と緯糸の色の組み合わせで表現される絵柄なので織り上げるのに数ヶ月かかります。

・のげ [野毛]

金銀箔を細長く切った切箔の1種。

・のし [熨斗]

湯熨斗(ゆのし)のことで、織物に蒸気をあてて生地の風合いを柔軟にするとともに、しわを伸ばし、幅や長さをそろえる織物仕上げの作業工程のこと。

・のし [熨斗糸]

製糸の際、繭の糸口を見つけ出すためにとった糸を引き伸ばしたもの。紬糸(つむぎいと)などの材料にする。

・のしめ [熨斗目・熨斗目模様]

元来は経糸に生糸、緯に半練糸を用い、段あるいは縞を織り出した絹織物の一種の名称。これ等の織物で仕立てた小袖を熨斗目小袖、略して熨斗目という。熨斗目小袖には無地熨斗目と腰替り(腰の部分にだけ格子や段などの文様を織り出したもの)がある。室町時代頃から大紋や素襖の下に着られるようになり、江戸時代には武家男子の礼装として必ず着用された。現代では腰替りの意匠を、地質・用途などにかかわらず、熨斗目とか熨斗目模様と呼ぶこともある。   柄の付け方から名づけられた名称【熨斗目】はこちらへ

・のしめいろ [熨斗目色] 

日本の色名。あまり厳密な色名とはいえないが、ふつう鈍い青色に用いられる。熨斗目の地色が概して藍染の色であったので、そのような鈍い青色に用いられた。

・のしもよう [熨斗模様]

祝い事の贈り物に添える熨斗を、文様化したもの。さまざまな形で表現され、例えば大柄の束ね熨斗は、中に小さな模様を詰めたりして振袖などに用い、粋な暴れ熨斗は浴衣などに用いる。

・のしもん [熨斗文]

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・のぞきもん [覗紋]

紋所の表現方式で、丸や菱の輪郭の下半分に、紋がのぞいているように染抜いたもの。正式ではなく、洒落紋。

・のとじょうふ [能登上布]

織物の名称・石川県鹿島郡鹿西町、羽咋市
石川県能登地方で生産される麻の織物で,、「能登縮」「阿部屋縮」ともいいます。主に男物の白絣・紺絣が多く作られています。この地は、平安時代から麻の栽培が行われ、江戸時代には多くの麻織物が生産されました。明治31年、国鉄が開通したことにより全国的に広まるようになりましたが、戦後は麻織物の減少により生産も少なくなっています。

・のめりげた [のめり下駄]

下駄の形の一種。後ろの歯が長方体なのに対し、前歯を爪先に向かって斜めに削ったもの。千両下駄、芝翫下駄、神戸下駄とも呼ばれる。

・のりいとめ [糊糸目]

糸目糊置の材料の1つ。もち米粉・ヌカ・石灰・蘇芳〈スオウ〉を混ぜて作った糊で、水ですべて流れ落ちる。糸目とは染め上がったときに糊のあとが糸を引いたように見えるところからこう呼ばれるが、その糸目を表現するのに糊を使うこと。ゴムを使用するゴム糸目に対する言葉。

・のりいとめあげ [糊糸目揚げ]

ゴム糸目に対して、のりを用いた糸目。糊にて細い線や形を防染するのでゴムを用いた場合よりソフトな雰囲気に仕上がる。また黒染後の水元で伏糊とともにおちてしまうため、引染前に友禅をして蒸で染着させた後。糊を伏せ引染となりこれを先友禅という。

・のりおき [糊置]

本友禅染の工程の一つ。生地に描かれた下絵の線に沿って糸目糊を置いていく工程。これは挿し友禅の際、染料がにじまないように防染する働きがある。

・のりおとし [糊落し]

黒引き染め加工後の水元時に、防染糊を洗い落とすこと。糊落しの良否は染色後の手描き友禅での仕上がりを左右するので完全な水洗いが要求される。また防染剤は季節により含まれている塩分の量が異なるので、水元時には注意を要する。よくいわれる「シオの打合」というのもこの水元時に出る難の一種である。煮染(たきぞめ)で紋糊をとる作業も糊落し(紋糊落し)という。

・のりおれ [糊折れ]

生地の模様場にある糊が、過乾燥などにより折れていることで、そのままにしておくと染料がしみ込んで汚染する。また紋糊が折れていても染料が差し込み紋が汚れる。→糊割れ

・のりづけ [糊づけ]

御召の工程で欠かかせないもの。精練、染色したあと緑糸に糊をつけるわけだが、その目的は①練減りをおぎなう、②強撚をかけたとき撚りが戻るのを防ぐ、③シボ出しを効果的に行なう1などである。ふつう糊はデソプン糊、姫糊(ウルチとワラビ粉で作る)、合成糊などを使う。

・のりづつ [糊筒]

友禅染などを手描きにする場合に使用する糸目糊を入れる筒で、渋紙で作られている。大きさは色々とあり15cm~30cmくらいの大きさまである。糊筒には中金を入れて先金をつける。細くて先のとがっているのが糸目用で、友禅染などの細い線を引くのに使用する。また伏せ糊用には平金といって口が平らなものを使用する。

・のりそめ [糊染]

もち米の糊を防染剤に用いた染色技術。本友禅、中形、江戸小紋、紅型などは、防染を目的とするため糊だけを用いる。型友禅や現代風な多彩な小紋は、糊に染料を混ぜた色糊を用いて、直接染色する。

・のりながし [糊流]

直接捺染(なっせん)の一種。糯(もち)米、小麦粉、生麩(しょうふ)その他の澱粉(でんぷん)を糊につくって木箱に流し、染料を滴下して、竹の棒で縦、横あるいは渦状にかき混ぜると、染料は糊に混じって濃淡のある流線を描く。その上から布をあてて転写すると、墨流しに似た図が染められる。

・のりぬき [糊抜]

布の精練・漂白・染色の工程を容易にするため、また良好にするために生地中に存在する糊料を除去すること。糊抜き方法としては、付着している糊剤により異なるが、浸漬法・酸液浸漬法・石鹸法・醗酵法などがある。黒染においては、一般的には水槽の中に糊抜き剤を溶かし出して除去している。

・のりふせ [糊伏]

友禅染などにおいて地色を染める為に柄の部分を糊防染すること(総伏)。 ぼかしなどの技法で模様効果を表現する時ぼかしのかかる部分の柄を部分防染すること(中伏)。 摺りやぼかしとの併用で色糊で柄を伏せること(色伏)

・のりぼうせん [糊防染]

もち米の糊やゴムを用いて防染すること。糊を印捺して行う防染法のこと。防染糊を各種の捺染用型で印捺するか、または筒描き、ときには筆、刷毛などで行う。防染剤は糊層を厚く印捺するか、防染剤を併用する。防染方法には印捺部を「完全に白く残す白色防染や防染すると同時に染料で異色に染色する着色防染や半防染などがある。三度黒引き染めでは、染色時に乾燥させる回数が多いので糊割れしにくいことが一番重要である。

・のりもどし [糊戻し]

乾燥しすぎた糊に水分を与えしなやかにすること。糊伏せ加工時やその後の保管状態が悪いと糊が乾燥されすぎ、その結果、引き染めできる状態に引っ張って地入れをしたときに糊が十分に生地に固着せず生地から浮いたり糊が割れて元通りにつながらないなど故障が発生する。そのために、地入れ前に噴霧器などで糊に水分を与えて、糊を柔らかく戻してやる必要がある。特にマングルによる地入れの場合は、糊が一部生地から浮いてしまうこともある。

・のりもん [糊もん]

糊伏もんともいう。黒引き染に受注する反物で、糊で防染してあるもののこと。他にろうけつ、ダックや無地などがある。

・ばいしぼり [貝絞り]

絞り染の一種。麻糸で巻き上げて絞ったもの。巻いた形がばい貝に似ていることからの名称。

・ばいせん [媒染]

染色の際、繊維に染料が染着しない場合に、媒介することを媒染といい、媒介する薬剤を媒染剤という。天然染料で染める場合などによく用いられる。媒染剤を用いて繊維に染着させる方法を媒染染法と呼ぶ。

・ばいんだー(加工) [バインダー]

一般に顔料や金銀箔などの固着剤の総称。繊維に接着するため、皮膜性や接着性を与えるために増粘剤、乳化剤や解媒などを樹脂に配合したもの。
黒引き染めでは、金彩加工のための接着剤を染色前の柄付けや糸目の変わりに置いてあり、染色後の金加工の際には、糊が不要にとなり加熱、加圧するだけでよい。同一柄の量産の場合の統一性がはかられる。

・はうら [羽裏]

羽織の裏地のこと。並幅で丈は4.36m~5.15mあり、大人物の中羽織、本羽織に必要な用尺になっている。上等の絹物には羽二重、綸子などで、無地・暈染・柄物のほか額裏がある。普段用には甲斐絹、綿甲斐絹、人絹、化繊、交織などを使用。羽裏は表地よりも派手な色や柄のものをつけることが多い。これは江戸時代に庶民が絹物を禁じられていたころ、見えない所で絹をつけたことの名残が、現在まで続いている。

はえばるつむぎ [南風原紬]

織物の名称・
南風原町は「かすりの里」といわれている。ここで産出される琉球絣は沖縄の伝統的な織物工芸として全国的にも有名だ。南風原町はその産地として栄えてきたのである。
南風原町には12の字があるが、 琉球絣は町内の本部、喜屋武、照屋の隣接する三つの字を中心に生産されている。

・はえばるはなおり [南風原花織]

織物の名称・
大正時代まで織られ昭和に入ってからは織られなくなった南風原花織りは、2001年から復元作業が始まった。1998年県指定伝統工芸品に認定

・はおり [羽織]

和服の一種で長着の上に着るもの。膝くらいの丈に仕立てたものを本羽織という。現在では用尺が少なくて済む中羽織が多く着られる。男性礼装は紋付羽織を着用、女性の紋付羽織は略装になる。女性の晴着として絵羽羽織がある。

・はおりした [羽織下]

袖なし胴着のこと。防寒、保温のために羽織の下に着用するもの。その形態は、衿なし、袖なしの胴着で、羽織からはみ出して見えないように前幅は狭く、丈は短く仕立てる。軽くてすべりのよい生地を用い、真綿や合繊綿を入れる。

・はおりひも [羽織紐]

羽織の胸あたりにつける紐。

・はおりはかま [羽織袴]

上衣には羽織を、下衣には袴を着用した着装のことをいい、男子用礼装である。

・はかたおり [博多織]

織物の名称・福岡県福岡市 
鎌倉時代、博多商人が僧侶とともに宋の時代の中国に渡り、織物技術を持ち帰ったのが始まりです。江戸時代になると、現在の福岡県の大部分にあたる筑前国の領主であった黒田長政が博多織を毎年幕府に献上したことから「献上博多」と呼ばれました。
男帯である角帯の博多献上、女帯では単帯、献上博多帯があります。仏具の一種である独鈷(とっこ)が並んだ、独鈷模様が特徴で、着付け小物の伊達締めなどにも用いられています。博多では袋名古屋帯も生産されています。
厚地の平織絹織物で、締めても締めくずれのしない帯地。
独特の絹なりと光沢、それにしゃっきりとした張りをもつ経糸を密にし、太い緯糸を強く打ち込んで、経糸を浮かせ紋様を表す。博多織は大別すると、献上博多織(本献上ともいう。独鈷、華皿を図案化し縞を組み合わせたもの)と、紋織博多織(多彩な色彩を用いた華やかなもの)の二種類に分けられる。 
    *独鈷 密教で用いる法具の一種で、両端がとがった短い棒。煩悩を打ち破る意味を表している。
    *華皿 仏具のひとつ。香を炊くのに用いる皿。

・はかたすずし [博多涼]

博多産の絹綿交織織物の一種で、縮緬としたもので、昔は夏着尺用であった。

・はかたひら [博多平]

織物の名称・福岡県福岡市 
絹袴地の一つ。博多織風の地合いをもつ男袴地。絹袴地として、最も多く生産された。

・はかま [袴]

下半身に両足を別々に通してつける衣のこと。股の無いもの裳(も)という。古墳時代の男子の袴は太いズボンのようなもの。飛鳥時代にはゆったりとした形で裾口を紐でしぼるようにした奴袴、又は指貫といわれるものを着用。平安時代には直衣や狩衣に用いられる。室町時代以後形を整えて、長・短、いろいろな種類の物ができる。江戸時代になって、平袴・襠高袴・馬乗袴・踏込袴・野袴などが出来、南蛮風の裁付袴・細袴なども出来た。明治以後、羽織袴が男子の正装となる。女子の袴は平安時代、袿形式の衣に袴が着用された。鎌倉時代以後に宮廷装束が簡略化され、衣袴・小袖袴となり、近世まで儀礼的なものとして宮廷・神社の女子に用いられた。現在男物には襠袴と行灯袴がある。襠袴は紋付羽織と組合わせて正装用に、行灯袴は普段着に着用。生地としては袴用に織られたものを用いる。仙台平・五泉平・山辺里平など。

・はかましたおび [袴下帯]

帯の一種。袴の下に閉める男性用角帯のこと。後ろで横一文字に結び、その上に袴の腰板を載せると安定し、形よいふくらみが出る。

・はぎもん [萩文]  

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・はく [箔]

金属の持つ展延性〈てんえんせい〉を利用して、薄い膜状になるまでたたいて延ばしたものを箔という。特に、金や銀は展延性にすぐれ、貴金属という高級感からも好まれ、古くから、箔の材料として用いられている。

・はくいと [箔糸]

和紙に金箔を貼り付けて、ごく細く裁断したもの。平金糸ともいう。佐賀錦や金襴、そのほかさまざまな織物に用いる。帯地にも緯糸として多く用いられ、華やかさを添える効果がある。

・はくおき [箔置き・箔押し]

箔押し、古くは摺(すり)箔ともいった。金属箔を布地に部分的に粘着させて模様をあらわす操作である。

・はくくくり [箔くくり]

金彩加工の1つ。模様の輪郭などを金銀箔線で描いていく技法をいう。

・はくさんつむぎ [白山紬

白山紬は、もともとは石川県白峰町で織り出された紬(現在の牛首紬)でしたが、今は金沢市近郊にある織元独自の登録商標となっています。白山紬は力織機で織られたもので、高価な牛首紬とは異なりますが、風合いがとても良く似ています。染め上がりの艶(ツヤ)、頑丈な地風、裾さばきの良さなど、牛首紬に勝るとも劣らぬ豪華な質感があります。紬でありながら光沢があり、渋さと華やかさと、その両方の趣が楽しめます。

・はくとおし [箔通し

金・銀の糸を織物の一方の耳から他方の耳まで全幅を通して織り上げたもので帯地に多い。地が金銀に光って豪華な感じを与える。

・はけ [刷毛]

染色用具の1種で、染刷毛とも呼び、鹿毛、馬毛等で作られている。形状は、丸刷毛・平刷毛・小刷毛に分類される。丸刷毛=毛先が円形で、鹿毛を4手に括くることから四手刷毛〈よつでばけ〉ともいい、大小で大丸〈だいまる〉・中丸〈ちゅうまる〉・小丸〈こまる〉と呼ぶ。引染、摺込用などに使用。平刷毛=毛先を手にして2枚の板ではさんだもので、敷糊や地入れ、引染などに適する。小刷毛=竹柄の先端に毛をはさんだもので、主に挿友禅用に用いる。その他に片端刷毛などもある。

・はけももよう [刷毛目模様]

文様の名。千両を含ませた刷毛で、さっとはいたような、細縞のかすれのある模様。

・はこせこ [筥迫 筥狭子]

懐に入れて持つ女物装身具。紙・櫛・楊子・小銭などを入れるもの。最初は紙入れだったが、だんだん携帯用の装飾品となる。筥迫の名称が生まれたのは宝暦以前で、奥女中、中流以上の武家婦人の正装用懐中物として用いられる。金襴・厚板・ビロード・羅紗などで作られた。現在では花嫁衣裳や七五三の女児の正装用アクセサリーとして残っている。

・はしだてちりめん [橋立縮緬]

丹後(京都府)の宮津地方で織られ、「天の橋立」から名をとった。普通の「縮緬」より「シボ」が深く、「うずら縮緬」に似た感じのものである。

・はじゃく [羽尺]

羽織用に織られた丈の短い生地の総称。着尺に対する語。

・はじゃく [端尺]

規定の長さのない和服地、短尺ともいう。機織りの織終りに残る端切れや、何か仕立てたあとに残る端切れで着尺(長着がちょうど仕立てられる長さ)だけないもの。

・ばしょうふ [芭蕉布]

糸芭蕉の繊維で織った布。沖縄本島喜如嘉を主に、竹富島に産し、夏の着尺地、座布団地、蚊帳(かや)地などに用いられる。茎から皮を取り、それを木炭(あく)を煮つめた液につけて、また煮出し、皮の不純物を除去する。水洗い後、竹製の道具で皮をしごき繊維質だけにする。その後、糸染めをするが染料にはテカチ(奄美大島ではテーチキ。車輪梅のこと)と泥藍(どろあい)の植物染料を用いる。絣(かすり)の場合は括(くく)り絣の技法によって糸染めしてから織る。芭蕉布は宮古上布、八重山上布、久米島紬などとともに江戸時代貢納布として織り続けられてきたものである。

・ばしょうもん [芭蕉文] 

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・はすもん [蓮文]

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・はだじゅばん [肌襦袢]

和服用の肌着。長襦袢の下に着用。肌触りがよく、汗を吸収し、通気性が有り、洗濯のきく生地が良い。晒木綿で単仕立やガーゼで袷仕立てのものがある。

・はたしょうつむぎ [秦荘紬

織物の名称・滋賀県愛知郡秦荘町蚊野外
近江上布に受け継がれていた「櫛押絣技法(くしおしかすりぎほう)」と呼ばれる特殊技法を、真綿紬糸に取り入れたものが秦荘紬です。厳選されたまゆ3000個からつむいだ糸を藍で染め、独特な技法で丹念に織り上げていきます。年数を経るごとに秦荘紬独特の色合いや風合いが出て美しさを増すといわれ、ファンも多いです。
 秦荘紬は、養蚕の技術を習得し、農業と共に機織り・養蚕によって生計を立て、春秋には養蚕をおこない冬には機を織り、そのほとんどが自給自足で良い繭は売りさばき、余った繭は自家用に糸を紡ぎ、糸に出来ない屑繭は真綿にして綿入れなどに使った。紡いだ糸で織り上げた「おかいこさんの着物」をひそかに着たと伝え聞く。
 大正から昭和の初めにかけては、農家の女性は嫁入り支度に自ら機織りをして着物を用意したと伝えられており、それが秦荘紬のはじまりである。

この地域は6世紀に大陸から渡ってきた秦氏が機織りの技術を伝えたことから、養蚕が盛んであった。良い繭は売り、絹糸にならない不良の繭「屑繭」から糸を紡いで、織った「紬」を自家用に着用していた。この絹織物に近江上布(麻織物)に受け継がれる「櫛押絣(くしおしがすり)技法」という特殊な染織技法を取り入れ、織り上げたのが秦荘紬である。1品(反物)を仕上げるのに約1ヶ月を要する。

・ばちえり [撥衿]

女物長着の衿形の一種。広衿と棒衿の中間として工夫されたもの(広衿はかさばりやすく着付けが難しく、棒衿は胸元がはだけやすく貧相に見える)。衿肩明止りから下へ向って衿巾が広がるので、三味線の撥になぞらえてこの名がある。

・はちじょう [八丈]

絹織物の一つ。東京都八丈島で生産される黄八丈を中心とする、絹織物のこと。八丈紬ともいう。また秋田八丈などのように、これに類似した織物のこともいう。経糸と緯糸に練り糸を使い、島に自生する刈安やマダミなどの植物染料を使って、黄色、鳶色、黒などに染色したもの。黄色に染めた黄八丈、鳶色に染めた鳶八丈、黒に染めた黒八丈などがあり、その品質の良さは早くから知られ、着尺地、布団地、座布団地として用いられてきた。

・はちまいしゅす [八枚繻子]

経緯糸それぞれ8本で単位組織を完成している。八枚は、綜絖八枚を示すことから名づけられた。

・はっかけ [八掛]

女性用の袷長着や綿入れなど、裾裏につける布。裾回しともいう。総丈を身頃4つ、衽2つ、衿先2つ、合計8つに裁ったことでこの名がある。女物の袷長着や綿入などの裾や袖口、衿先の裏に付ける裏地のこと。裾まわしともいう。表地と共地でつける場合や別布を使う場合がある。別布では五泉の精華パレス生地が最も多く用いられる。暈しや無地、柄物がある。変わり無地縮緬やチェニー、両駒などの生地も用いられる。

・ばっせん [抜染]

あらかじめ「浸染」(ひたしぞめ・しんせん)した織物に酸化剤または還元剤を混和した捺糊を印捺し、その部分の色を酸化または還元して抜色する方法。抜き染めとも言う。この場合地色を完全に抜くのを「白色抜染」、淡色で残すのを「半抜染」、抜染した部分を新たに着色するのを「着色抜染」または「抜き写し」という。のれん・旗・風呂敷など、地色の部分が大きく簡単な図柄のものの染に適している。

・はっすんなごやおび [八寸名古屋帯]

幅八寸(約30センチ)に製織し、縫製しないで結びの部分のみ折り返してかがった、厚地織の帯

・はったん [八端]

絹織物の一つ。経糸に諸撚りの撚糸を、緯糸に片撚りの撚糸を用いて、山形斜文や、破れ斜文、また、大きな格子を織り出した厚手の絹織物。八端織の略称。黄、茶、黒などの縞や格子柄が多い。丹前地、夜具地、座布団地、風呂敷などに用いられた。八丈島産の八反掛けから出た名称という。

・バッタン

(ひ)に紐をつけ、その紐を引くと滑車によって抒が送り出され、左右運動を繰り返す飛抒装置のこと。1733年、イギリス人のジジョン・ケイル、によって発明された。わが国へは明治初期に輸入され、明治十年代から次第に地方へもジャカードとともに普及した。
それまで緯糸(よこいと)を通すのに、左右の手を交互に使って抒を投げていたが、バッタンの登場で片手が解放されたため、能率は倍加した。また、手による投抒と異なり、自動的に抒が移動するため、熟練した技術なしに均一した品質が得られるようになった。

・はつねもん [初音文]

 

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・はっぴ [法被・半被]

江戸時代に下級武士や仲間が着用した、裾の短い上着。印半纏のこともいう。また能装束の一つ。武将や鬼神に用いる。

・はっぴこーと [ハッピコート]

「袢纏」「羽織」からヒントを得て外国人向けに創製されたもの。富士山・桜などを刺繍や染で背中に表した袢纏風のコート。輸出または観光外国人のお土産用である。

・はつりめ [把釣孔]

綴れ織の緯糸が布幅全体に通らず、経糸を境にして二本以上の緯糸の色糸が互いに接するとき、経方向に生じる隙間のこと。把釣の目とも称している。手織の綴れ組織にだけ生じるもので、他の織物には見られない。

・バティック

インドネシアのジャワ島と、その近辺の島々で作られるろうけつ染めの布で、ジャワ更紗(さらさ)とも呼ばれます。インドネシア語でイカットはろうけつ染めを意味し、一般的にもろうけつ染めを総称してバティックと呼ぶ場合が多いです。

・はとばいろ [鳩羽色]

藤色に似ているが、山鳩の背羽色より、この名がついた。大正初期に流行した。→鳩羽色のページへ

・はないかだ [花筏]

散った桜の花びらが帯状に水に浮かんで流れて行くのを筏に見たてた文様のこと。  文様名 →紋様のページへ

・はないずみなんぶつむぎ [花泉南部紬]

織物の名称・岩手県一関市花泉町
南部紬白地は、昭和43年天皇皇后両陛下並びに秩父宮紀殿下に献上、昭和62年に岩手産業まつり特産品コンクールで金賞を受賞したもので、特徴は草木等の植物を染色の原料としているので、素朴で野趣に富み、ふっくらとしてスベリのないのが特徴です。
 江戸時代、盛岡藩の振興策により城下を中心に盛んに織られており、戦後県の産業として再興すべく、紬糸使いの本格的な手機による南部紬の制作に取り組んできた。その後、クルミ、ハシバミの木、現在では紫根など各種の植物を染料にした紬を織るようになり現在にその技法が継承されています。

・はないろ [花色]

(はなだ)色の略。藍染で得られる赤みを帯びた深い青。紺ほど濃くはないが、鈍い青から鮮やかな青までのいずれをも含む呼称。昔、露草の花で染めたので、この名が残っている。→縹色のページへ

・はなお [鼻緒]

ぞうりや下駄などの履物の部分名称で、台にすげられた緒(紐)のこと。現在ではエナメルや佐賀錦、ビロード、刺繍を施した縮緬などの素材や色、太さなど、豊富に出揃う。近年は花緒と表記することもある。

・はなおおぎもん[花扇文]

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・はなおり [花織]

沖縄で織られる特有の浮き織物をいう。経糸が緯糸を浮かせて、小さな四角の点模様を織表す。産地は、読谷村、首里、与那国で、それぞれに特徴のある花織が作られている。

・はなかごもん [籠文]

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・はなぐるまもん [花車文]

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・はなこん [花紺]

よく冴えた明るみを持った紺色をいう。男物の裏、夜具裏などに使われた。花紺青。

・はなだいろ [縹色・花田色]

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・はなのしもん [熨斗文]

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・はなまるもん [花丸文]

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・はなみまく [花見幕]

本来は、花見のときに張る、宴のための幕のこと。元禄時代には、婦人の豪華な小袖を幕代わりに掛け渡すようになり、江戸風俗として親しまれた。小袖幕、花見小袖ともいう。

・はなむすび [花結び]

組紐による、飾り結びの一種。丸打ち組紐を花の形や植物の形に結んだ飾りで、衣服、袋物、水引、茶壷や社寺などの幕に飾りとして用いる。二つ輪結び、三つ輪結び、梅結び、蝶結び、わらび結び、新橋結び、菊結び、玉房結びなどの種類がある。また、女帯の結び方のひとつのこともいう。文庫結びの羽根を大きく広げた帯び結びのことも、その華やかさから花結びと呼んでいる。

・はばだし [幅出し]

織物仕上げ工程中(精錬・染色・漂白など)に湿り気を帯び、幅・長さの収縮をきたした織物を幅出し機を用いて補整修復すること。また仕上げ後の織物も縮緬・御召などは織り方の関係で湿気を帯びると縮むことが多いので、この場合も幅出しを行う。普通蒸気により多少の湿気を与えながら、機械で織物の両耳を引っ張り長さを修正し、歪みを正した後乾燥する。

・はぶたえ [羽二重]

羽二重餅に代表されるように、羽二重はきめ細やかで滑らかなものの代名詞のように使われます。このきめ細やかさは経緯ともに無燃(平糸)の生糸を使い、製織時には「湿し緯」または「濡れ緯」という、水に濡らして膨潤させた緯糸を織り込む技法を用いてしっかりと打ち込むことによって生まれるものです。主たる産地は新潟県五泉市。主たる用途は男物紋付、襦袢、法衣。

・はまぐりもん [蛤文]

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・はまちりめん [浜縮緬]

浜縮緬の産地、滋賀県長浜市は、元亀元年(1570年)六月の浅井・朝倉連合軍と織田・徳川の連合軍の、一族の命運をかけた合戦で有名な姉川と、それに合流する高時川の流域にあり、古来より両河川はたびたび氾濫を繰り返し、一帯に洪水の被害を与えていました。この被害を防ぐ目的で辺り一帯には多数の桑が植えられており、これを飼料とする養蚕も古くから盛んに行われていました。その後の宝暦二年(1752年)京都丹後より製織技術を導入し始まりました。しかし宝暦四年にはこの田舎絹の京への進出を不快に思った西陣の訴えにより販売禁止とされてしまいます。その後の藩の努力もあり、今では後染用白生地の高級産地として名高く、無地縮緬各種を中心に生産を続けています。

・はまつむぎ [浜紬

織物の名称・滋賀県
長浜地方では元明天皇の和銅年間すでに綾絹が織られ、その歴史は古く、また琵琶湖の水は世界屈指の軟水の宝庫で他産地にまねの出来ない天恵を受けています。
 浜縮緬が縮緬界の最高峰として、八丁撚糸機による独特の撚糸を使用した一越縮緬、古代縮緬、変わり無地縮緬、浜紬などがあります。
男性の羽織、婦人用コート地などに用いられる。

・はら [腹]

帯を締めた時、胴回りの前の部分のこと。太鼓に対する語。

・はらあわせおび 合わせ帯

帯びの一種。表と裏が異なる布地によって、仕立てられた女帯のこと。昼夜帯、くじら帯ともいう。昼夜帯参照。

・はらおび 

妊婦がした腹に巻く帯のこと。晒(さらし)木綿を二つ折り幅にして用いる。岩田帯ともいい、妊娠五ヶ月目の戌の日に、締めるとよいとされている。

・ばらもん [薔薇文]

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・はりぼし [張干し]

乾燥の一方法。羽二重等の平織織物に用いられる事が多い。反末を縫い合わせ、生地を輪状にして、両端に張り棒と呼ばれる丸竹を通して引っ張り、縄で柱に固定して乾燥する。経方向に張力が加わるため、布表面の光沢を増し、布に腰をもたせ、小じわを伸ばす等の利点がある。自然乾燥であるため、風合いが良く染着性に優れている。

・はりつけもん [貼り付け紋]

家紋表現法の一つ。無地のきものや羽織に、同地質の別裂に紋を描いたものを切り抜き、貼り付けて、周りを糸で留めたもの。切り付け紋ともいう。

・ぱれすちりめん [パレス縮緬]

パレス縮緬は古代縮緬や錦紗縮緬と同様に二越系統の縮緬で、左右の片撚り強撚糸を緯糸に、右右左左というように二越ずつ平織りに織り込んで作ります。ただし、経緯ともに錦紗縮緬よりもさらに細い糸を、より密に織り上げることから「シボ」立ちが抑えられ羽二重のような平滑な外観と上品な光沢を得る事が出来ます。昭和時代には全盛を風靡しましたが、現在では長襦袢用もあるが、裏使いがほとんどです。主たる用途は八掛地。主たる産地は新潟県五泉市。

・はんえり [半衿]

長襦袢の衿に掛ける布片のこと。女物長襦袢に今日の半衿形式の掛衿をするようになったのは江戸時代中期から。主として民間で行われた。江戸時代後期には刺繍を施した凝ったものが現れた。明治~大正にかけては着物の色柄が地味であったため、半衿に模様をつけることは服飾美の重要なポイントであった。生地は、綸子・縮緬・塩瀬・紗・絽・麻など。

・はんコート [半コート]

和装用コートの一つ。塵除けと、ある程度の防寒を兼ねて着用する。丈の短い外出用上着。羽織よりも50cmぐらい長いのが普通で、主として春や秋のものである。素材、形、色、柄は、着ていく場所や目的によりさまざまで、防寒用のものもある。

・はんじゅばん [半襦袢]

長襦袢の上半分に相当する、体の上半分に着用するもの。

・はんぞめ [版染]

木版染めのこと。文様を浮き彫りにした木版に、染料をつけて捺染すること。インドのブロックプリントと同じ。版を広義に解すれば、木材以外に金属や紙など、いろいろな材料で作った版を用いたものまで含まれる。

・はんてん [半天・半纏・袢纏]

きものの上に防寒、あるいは職業を表すために着る上着。

・はんのうおおしま [飯能大島]

織物の名称・
文政年間に開発された仮締染色法、1本1本柄合わせをしながら織る緻密な柄が特徴。板締絣の技術は秩父ではもう無くなってしまいましたが、秩父で板締めの技術を身につけた方達が始めたのが飯能大島です。飯能大島も今は作ってるところが1件しかない、貴重なものです。

・はんのうななこ [飯能斜子]

絹織物の一つ。武州(埼玉県)飯能町を中心として産出された白地の練り斜子のこと。
※男物羽織地。
※斜子織(ななこおり)とは、平織の変化組織で経糸(たていと)緯糸(よこいと)ともに、二本以上並べて織った絹織物のことです。厚地でふっくらした感触の織物で、主に帯地に用いられています。七子織、魚子織とも書きます。

・はんはばおび [半幅帯]

女物の帯の一種。普段着・浴衣・羽織下などに用いられる。普通の帯幅は八寸だが、半幅帯は並幅を二つ折りにして4寸の幅に仕立てる。半幅の袋帯を小袋帯という。結び方は貝の口、文庫など。

・はんよう [半洋]

「丸洋」に対する言葉で、麻織物に使われる。経糸に「紡績糸」、緯糸に「手紡ぎ糸」を使うなど半分だけ機械糸を使用した織物。「半洋紺絣」「半洋白縞」などと称される。

 

・ひ [抒]

木製の舟形をした織機の付属晶の一つ。居座機では中央に管室をもった大抒(一幅分もある)で、緯糸は中央上部の管に巻かれてある。この大抒はの経糸の中をくぐらせて経糸を通しながら下部の刀状になった部分で、緯糸を打ち込んでいく。高機では小抒で、緯糸の打ち込みは筬が行なう。

・ひえつむぎ [日枝紬

織物の名称
天台宗総本山延暦寺のある比叡山の古名にちなむ日枝を紬の名称にしたという。戦後、大津市坂本で農業の道を説いた松井浄蓮氏の子女・京さんが郡上八幡の宗広力三氏のもとで修業し紬を創作、父浄蓮氏が日枝紬と名付けた。春繭の生引きと塩蔵繭をいずれも座繰り糸にして草木で染め、手織りで織る。妹の靖子さんと始めた清楚な着物地。

・ひおうぎもん [檜扇文]

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・ひがきもん [檜垣文]

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・ひがのこ [緋鹿の子]

緋色の鹿の子絞りのこと。

・ひき [疋・匹]

布の単位で、並幅物の反物二反分の長さを一疋という。

・ひきかえし [引き返し]

裁縫用語。ひっかえしともいう。引き返し仕立ての略である。表地と同じ布地を裾から裏に引き返し、裾回しとして仕立てた着物。裾回しの分、表布が余分に必要なので、贅沢なきものとして黒紋付、留袖、訪問着などに用いられる。

ひききり [引切]

引染技法の1つ。1色で引染したものをいう。

・ひきもの [疋物]

一般には小巾織物の二反分あるものをいう。

・ひきぞめ [引染]

模様物の地色を染める方法で、浸染に対する染色法。江戸以前の地染法としては浸染が主流であったが、防染糊の開発とともに、少なくとも江戸中期には確立され、以後地染の主流となる。主に高級手描友禅の地色染に用いる。 所要の文様の捺染型紙を用いて防染糊を生地に印捺し、乾燥した後、布を張り広げてその上から染料を刷毛(はけ)引きし、蒸し上げるかまたは染料固着液を通してから水洗いする。引染液はあまり濃厚なものを用いると摩擦に対して弱くなり、また、希薄なものを何回も引いて濃度を増そうとすると、文様部分の防染糊を破損する恐れがある。一回の引染のに要する染液量は生地の約二倍の量である。

・ひきはく [引箔]

金箔糸を緯糸に織り込んだものをいう。金箔糸は、平金箔ともいい、24金あるいは銀をごく薄くのばし、和紙に貼ってから細く裁断して作られる。地はかさばらず平坦だが、金の光沢が豪華な印象となるため、主に改まった装いに用いる。引き箔だけで文様を表した帯や、他の技法を併用して引き箔の地に色糸で文様を織り表したものもある。

・ひきほり [引き彫り]

伊勢型紙を作る技法のひとつ。板の上に型(地)紙を置いて、定規を当て、小刀を手前に引いて縞物を彫る技術で、縞彫りともいう。最も細い縞は、3.3cmに25本の縞が入る。

・ひごがすり [肥後絣]

織物の名称
肥後絣は、江戸中期頃から、現在の熊本市の近郊の農村一帯で自家用として織られてきたもので、肥後木綿ともいわれます。純綿糸の藍染めで、素朴な縞模様と丈夫なことが特長でした。久留米絣の影響を受け、大正、昭和初期には多数の機屋があって盛んに作られました。第二次世界大戦による原糸不足と昭和28年の水害で決定的な打撃を受け、宮崎染織だけが生産を続けていましたが、現在、製造は行なわれていません。

・ひごかみこ [肥後紙子]

織物の名称
紙子は今の八代市に隣接した宮地村で製産されたものと予想される。この村は江戸前期より「御用漉師」というのが指定せられて士分の扱いを受けていたものであるが、これらに関する古文書、文献類は何も遺って居らず、ただ僅かに旧藩主松井家の土蔵に紙子の反物や着物などが少々保存されているだけであるらしい。色は灰色調で文様は墨染めとする。往昔八代染めと呼ばれたのは、前記のような文様の版木染めによったのでないか
 。

 ・ひごもめん [肥後木綿]

織物の名称
肥後木綿は、江戸中期頃から、現在の熊本市の川尻など近郊農村一帯で自家用として織られてきたものである。純綿糸の藍染めで、素朴な縞模様と丈夫なことが特長である。久留米絣の影響を受けて絣が多い。明治以降士族の殖産企業として力食社という会社が設立されて力職絣や縞木綿を製造した。その後動力織に変化し、昭和5~6年頃が最盛期だった。

・ひたしぞめ [浸し染]

染料の液の中に、布地や糸を浸して染めること。浸染に同じ。江戸中形、絞り染め、絣糸の染色などに用いる。

・ひだつむぎ [飛騨紬

織物の名称
飛騨紬は、養蚕で売ることができない屑繭をイトヨリグルマにかけ、その繊維を引き出し撚りをかけた絹糸でできた織物です。当時の文献に飛騨紬の美しさ、質の良さが記されており、全国的にも人気があったようです。

・ひたたれ [直垂]

もとは庶民の平服だったものが、鎌倉時代から武士の衣服となり、室町時代以降には、武士の公服となった男性の衣服。共裂の上衣と袴からなるが、時代によって形状が少し変化している。それまでの礼服が盤領(あげくび)という詰襟状の丸い衿であったのに対し、直垂は垂領(たりくび)という現代の和服と同形の打ち合わせ式の衿である。左右の衿に胸紐があり、袖括り(くくり)に露(括り緒の端)を付け、背や胸の袖付け付近、両袖のつぎめ、袴に組紐の菊綴がある。素材は金襴や唐織物、生絹など多岐にわたる。無紋であったが、室町時代には大きく家紋をつけたものが現れ、大紋と呼ばれるようになり、これが後に素襖に変化してゆく。

・ひった [疋田(匹田)・疋田(匹田)鹿の子]

絞り技法の一つ。布目に対して45度の方向に、鹿子目を全体にびっしりと隙間なく詰めて染めたもので、江戸時代からの贅沢な絞りである。総鹿の子ともいう。指先で一粒ずつ布を摘み、小さく四つ折にし、糸で三回から五回巻き最後に二回くくる。糸を巻く回数によって、本疋田、中疋田、京極鹿の子などがある。きものや帯揚げに用いられる、高級な絞り染めである。小鹿の背の斑点に似ているところからの語。疋田(匹田)絞りに同じ。

・ひとえ[単衣]

裏をつけないきもの。長着・羽織・長襦袢などを総称する「一重」の意味のこと。夏物として、初夏から初秋まで着用する。

 ・ひとえおび[単帯]

裏や芯をつけない織の帯。袋名古屋帯と違って垂の部分を引き返さないので、全体が単で二重になる部分がない。袋帯ほどの長さのもの。夏季専用の帯として、博多織や綴れ織などの厚地でかたい織物が用いられた。しかし最近は少ない

・ひとえじたて [単仕立て]

裏をつけずに仕立てる方法。夏のきものやウールは単仕立てにする。

・ひとえばおり [単羽織]

袷の羽織に対して、単仕立てにした羽織のことで、夏羽織ともいう。生地には縮緬や紬などがある。盛夏用には絽、紗。などが用いられ、薄羽織と呼ぶ。

・ひとえばかま [単袴]

裏をつけない、単仕立ての袴のこと。袴の普通のものは単仕立てである。

・ひとえはじゃく [単羽尺]

単羽織、またはコート専用の絹織物のこと。

・ひとこし [一越]

織物では、経糸を1本、2本と数え、緯糸は一越、二越と数える。転じて緯糸に左撚〈よ〉り、右撚りの強撚糸を一本おきに用いた絹織物(縮緬〈ちりめん〉)を指す。=一越ちりめん。

・ひとつみ [一つ身]

本裁ち(大人物)・中裁ち(四つ身)に対し、三つ身と共に小裁ちと称する。嬰児〈えいじ〉から2歳くらいまでの子供用の長着。後身頃を生地幅いっぱいにとるのでこの名がある。

・ひとつもん [一つ紋]

きものや羽織の背に一つだけつける紋のことで、背紋ともよばれる。

・ひとめかのこ [一目鹿の子]

絞り技法の1つ。下絵に描かれた粒と粒との間隔を詰めて、細かく絞っていく技法で、小粒にくくるところに特徴がある。

・ひとめしぼり [一目絞り]

巻き絞りの一種。糸で布の一部を一粒ずつくくって模様を表す、最も基本的な絞り。疋田絞りが主に模様の綿を埋めるのに対し、主に一粒ならびに絞って線を表すのに用いる。

・ひながた [雛形]

キモノを創る前に、実物を想定して図案に描く。下絵を描く前に描く製図。キモノの平面図に木炭などで描いたもの。

・ひなたもん [日向紋]

紋の表し方の一つ。紋形を布地に白く表す紋で、男女とも正装に用いる。陰紋に対する語で表紋(陽紋)ともいう。

・ひのかんとう [日野間道]

間道の名物裂。間道の中でも異品で地の部分が麻で粗く織り、真田のみ絹糸を用いている。

・ひのはかま [緋の袴]

女官が用いた深紅色の長袴のことで、紅袴ともいう。精好(せいごう)で板引きにするのがほんしきである。

・びーばー [ビーバー]

米国産海狸(ビーバー)の毛皮に似せた毛織物で、「起毛」して毛羽立たせ、さらにその毛羽を刈り込んで一方に伏せて光沢のあるやわらかい逆毛を表面に現す。和装では婦人コート、ショールなどに用いる。

・ひふ [被布 被風]

婦人や女児の和服用外衣の一種。室内用にも用いられる。縮緬や綸子を袷仕立てにする。女児用には袖なしの綿入仕立の物もある。羽織の衿の代りに竪衿をつけて前で重ね、丸い小衿を付けた形。胸に総角をつけた飾りを縫い付けてこれで留めて着る。袖丈、身丈は羽織に準じる。幕末から明治にかけて上流階級に多く着用された。古くは被風と書き、18世紀頃から公家の間で用いた外衣。室内着として高級な絹物で仕立てるようになり、座敷合羽と呼ばれた。19世紀頃から医者・画家・書家などが着用するようになり、民間にも広まる。女物として着用されたのは1820年代。子供の被布が普及したのは明治以降。

・ひめのり [姫糊]

やわらかく炊いた飯に水を加えて、すり潰して作った糊。洗張りに用いる。

・ひもかざり [紐飾り]

組紐を美しい形に結んで、被布やコートの留めなどにつける飾りのこと。単に装飾としてつける場合もある。紐にはバイアスループに芯を入れたものや、丸い打ち紐が用いられる。また、宮参り着や、産着の付け紐につける飾り縫いのことをいう

・びゅーろん [ビューロン]

旭化成が開発したアクリル繊維で、絹との交織や100%使いで胴裏や長襦袢など裏物に使われている。

・ひょうたんもん [瓢箪文] 

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・ひょうはく [漂白]

糸の不純物を薬剤などで取り除き、白くすることで、むかしは「漂(さら)し」といった。

・ひよく [比翼]

比翼仕立てされた長着の下着にあたる部分。同形の布が2枚重なっているように見えるので、この名がある。本比翼と付比翼があり、本比翼は表着の裏地の縫代に比翼の縫代を一緒に縫い込んで仕立てたものを指し、付け比翼は取りはずしができる。現在の留袖は、付比翼のものが多い。

・ひよくじたて [比翼仕立て]

2枚重ね(襲〈カサネ〉)を着たように見せる和服の仕立て方。衿・立褄・裾・袖口・振りの部分の下着を表着に縫い付け、重ね着のように見せる仕立て方。

・ひよくもん [比翼紋]

相思の男女が、互いの紋を組み合わせてつけた紋のことで、並び紋、二つ紋ともいう。江戸中期、庶民の間で流行した。

・ひらおり [平

綾織(斜文織)、朱子織(繻子織)とともに織物の三原組織の一つ。もっとも単純なもので、経糸と緯糸とを一本ずつ交互に織る技法、あるいは織ったものをいう。単純な技法だけに古くから行なわれ、現在も幅広く用いられている

・ひらきなごやじたて [開き名古屋仕立て]

名古屋帯の仕立て方の一つ、胴の部分とお太鼓の部分を同じ幅で仕立てる。踊り帯などに用いられる。胴の幅を自由に調節できるので、最近は多くなった。

・ひらしつけ [平躾]

「躾」のかけ方の一種。表裏ともセンチの単位の針目でかけた躾で、すくう方の針目を少し小さくすることもある。主として「羽織」の衿の飾り躾、「帯」の躾名に用いる。

・ひらぬい [平繍]

刺繍技法の1つ。広い面を縦・横・斜めに糸が重ならないよう平らに、隙間なく刺しうめる方法。主に平糸を用い、花・鳥など、多くの模様に用いられる。

・ひらろ [平絽]

経に駒撚糸、緯に駒撚糸または変わり強撚糸を用いる駒絽に対して平絽は経緯ともに撚りのない平糸を使います。このため駒絽に比べると、手触りも柔らかく羽二重に似た優雅な光沢を持っています。この地風を保つためには製織にあたって、水に濡らして膨潤させた緯糸を打ち込む「濡れ緯」技法を用いてしっかり緯糸を打ち込むことが大切です。 主たる用途は喪服、襦袢。主要産地は五泉、丹後。

・ひろえり [広衿]

女物長着の衿の一種。長着の衿は普通棒衿だが、女物にはほかに広衿、撥衿がある。棒衿の巾は5.5cm、広衿は11~11.5cm。衿幅の自由がきくため斜めに広く折ってゆったり着る事ができる。現在では絹物長着で最も一般的な衿型。棒衿は庶民の小袖の系列の衿であるのに対し、広衿は貴族階級の袿の流れをくむ衿。

・ひろさきており [弘前手織]

織物の名称・青森県弘前市
弘前手織は弘前とその近郊農村で織られたもので、広く野良着として使われました。
初めは紺、浅黄の無地に染めた木綿織物で、昔は村の婦人たちが手織りの麻布を持って町の市日に出かけてゆくと、木綿屋が紺や浅黄の色無地の働着用木綿と取り替えてくれたといわれます。
麻の着物から木綿着へと移り変わる時代の織物の一つで、近来は丹前や7分の上っ張りとしてわずかに残っています。

・ひろせかすり [広瀬絣]

織物の名称島根県能義郡広瀬市、安来市
島根県広瀬町で生産される紺木綿の絣です。図柄は絣足と呼ばれるずれが少なく、「広瀬の大柄」といわれるほどの大きな絵絣が特徴です。 
絣糸の作り方に特徴があり、緯糸に型紙を当てて刷毛で墨を摺り込み糸括りをします。文政年間(1818~1829)に、医者の長岡謙祥の妻・貞子が絣織りを米子で修得し広めたのが始まりとされています。
絵柄が精巧。また、かつて「広瀬の大柄、備後の中柄、久留米の小柄」という評判も得た。
紋様には松竹梅や鶴亀などのめでたい柄が多く、広瀬絣でつくった布団は、嫁入り布団とも、また、死に布団とも呼ばれた。花嫁が嫁入りをする際、広瀬絣でつくった布団を嫁入り道具のひとつとして持参し、初夜に床入りをすませたあと大切に保管して、天寿をまっとうするときにふたたびこれを用いる風習があったためである。
絣工程に、ほかには見られない「まかせ」という方法がとられている。

・ひろそで [広袖]

和服の袖型の一つ。袖口下を縫いふさがず、袖いっぱいに開いた袖のこと。乳児用の一つ身、長襦袢などに用いられる。大袖ともいう。

・ビロード [天鵞絨]

ポルトガル語の velludo 、スペイン語の vellide の転化した語。ベルベットともいう。約350年前にポルトガルかオランダからの輸入品に模して京都で織り始めたもの。防寒用コートとして現在用いられている物に輪奈ビロードがある。白生地反物として、西陣・長浜・丹後で織られており、好きな色に染めて仕立てる。

・びろーど・きもうこう [ビロード(起毛工)

織物の名称・滋賀県
江戸時代中期(享保年間1716~36)に西陣から伝来した。銅またはステンレスの針金を織り込んで、輪奈(わな)をつくり、その先を小さなメスのような小刀で切って、毛羽を立てたもの(毛切、本天)と、針金を引き抜いたままのもの(輪奈天)とがあり、柔和な手ざわりと深みのある色調をもつ。工程の中の「機織」「針切」でいかに光沢を持たせるかが重要となり、特にこだわりがあり、手間がかかるところである。通常、製作には1ヶ月を要する。

・ひろはばおりもの [広幅織物]

幅が45cm以上の織物のこと。並幅に対する語。

・びろん [美ろん]

ニチビが純国産技術で開発した乾式紡糸法によるビニロン・フィラメントで、絹同様の風合い、光沢を持ち合繊の中で最もシルキーといわれる。用途は和装コート、帯、着尺、羽尺、裏地、和装小物など。

・ひわいろ [鶸色]

色の名前。数の少ない鶸鳥(ひわどり)の羽の色より出た色名である。この色は花柳界方面でよく使われた。
日本の色事典 鶸色のページへ

・ひわれもん [氷割れ

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・びんがた [紅型]

沖縄で生まれた独特な染め味を持つ型紙染で、強烈・多彩・華麗な点が特徴とされている。友禅染・江戸小紋と並ぶ日本の代表的な染色。現在では静岡・東京・京都などでも生産されている。

・びんごがすり [備後絣]

広島県福山市、芦品群一体で生産される、紺色の木綿絣です。江戸末期に久留米絣から絣織りの技術が導入され井桁文様の絣が織り出され、当時は「有地絣」「文久絣」と呼ばれていた。明治になり備後絣の名で全国に広まった。また、機械による糸括りが考案され、昭和初期には動力機が用いられるなどで生産高が増えましたが、現在は絣の需要のが減少したことにより生産も少なくなってる。古くから綿の栽培が行われていたこの地域は、同時にわが国屈指の綿の産地でもあった。江戸時代には白木綿、浅葱木綿、縞木綿などが織られていた。とくに縞木綿は藩の保護をうけ、神辺縞または福山縞として広く全国に知られていた。
江戸末期の嘉永6(1853)年には富田久三郎が、竹の皮を用い手くくりで糸を染める井桁絣を織りだした。有地絣、谷迫絣と呼ばれたこれらの織物が、現在の備後絣のもとである。文久元(一八六一)年頃から、輸入の紡績糸で織られるようになり、文久絣と名を変えて大阪方面に出荷された。
備後絣の名称となったのは明治初年のことである。この頃から備後絣は販路を拡大、同時に工程も機械化された。また、久留米の技法を導入して絵絣の生産も開始、昭和35年頃には日本最大の絣産地となった。しかし、その後、絣の需要の減少とともに生産量も減少している。

 

・フィブロイン [Fibroin]

絹を構成するたんぱく質の一種。絹繊維はフィブロインの長い分子がほぼ平行に並んでできた物である。フィブロインは酸性の駆るカルボキシル基と塩基系のアミノ基をもつ両性化合物であるため、絹は酸性染料、塩基性染料のいずれによっても染色できる。水・希酸・希アルカリに対して不溶性。フィブロインを主成分とする絹は、同じたんぱく繊維である羊毛と比べて、日光によりもろくなり、黄褐色に変色しやすい。絹の組成の約75%を占める。

・ふうけいもん [風景文]

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・ふうつう [風通]

表と裏に異なった色糸を用い、表と裏の文様が反対の配色になる織物。「二重織」ともいう。七、八世紀に中国から伝えられたが、国産化したのは天正年間(一五七三~一五九二)のことだという。比軟的小さい形の石畳文などが、表わしやすい。着尺地などに用いられている。
 この「風通」の名称は、二重組織のために表と裏に文様の配色が逆にあらわれるところから、いかにも袋状に織られているように見え、そのなかを風が通る、という意味でつけられたという。

・ふうつうおめし [風通御召]

風通織という特殊な二重組織で織った御召。つまり二重の経糸、緯糸を用いたもので表と裏の文様が反対の配色になる。上品な感じの中柄や小柄が多い。

・ふき [袘]

袷や綿入れなどの仕立て方で、袖口や裾の縁が、表布より裏布を少しはみ出させている部分。紋服以外は、袖口 2ミリ、裾 4ミリが標準。現在に残る特殊な例として、文楽人形の衣裳・歌舞伎衣裳・花嫁衣裳(打掛など)がある。

・ふきいと [吹糸]

紋織物の模様を表す緯糸が、模様以外の他の部分の糸に組み込まれず地糸にからんだだけで浮き上がっている糸をいう。裏の部分に浮き上がった形であらわれているので別名裏吹きともいう。「唐織」の丸帯地などの裏を返してみると良くわかる。

・ふきしめがすり [吹締絣]

糸を綛(かせ=毛糸にみるように一定量の糸枠に巻き、これを取り外して束にくくったもの)のまま半分染めて絣糸にする。

・ふきもよう [袘模様]

和服模様の一種。表が無地で、八掛より袘にかけ、裾一面に模様を散らしたものをいう。

・ふきよせもん [吹寄せ文]

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・ふくさ [袱紗]

進物の上にかけたり、包んだりするもので、大きさ・地質・文様は用途により異なる。現在袱紗と呼ばれているものは、祝儀・不祝儀用の祝儀袋を包むのに主に用いられている。風呂敷の小形のものを指す。紅・紫のちりめんや羽二重を単仕立てにしたものや、表と裏の生地を変えて袷仕立てにしたものなどがある。

・ふくさんし [副蚕糸]

普通の生糸を「繰糸」できない不良繭や屑繭をいい、絹紡糸の原料として開繭機で一度綿状にした後、紡績機械により紡績糸とする。副蚕糸を用い紡績したものを絹紡糸という。「薄皮」(うすかわ=糸が少なくて完全な繭になってないもの)、「出殻」(でがら=蛹(さなぎ)が成虫になって破って出てしまったもの)、生皮苧(繰糸をする際、繭の糸口を見出すまで探りとった切れ端の糸を乾燥したものなど、色々ある。

・ふくしまつむぎ [福嶋紬]

織物の名称・福島県福島市 
伝統工芸技術、真綿を手でつむぎ,手紡機で織りあげる。

・ふくのがすり [福野絣

織物の名称・富山県南砺市福野
生産量は次第に増え、大正末期には縞物をしのぐほどになったのである。 ほぼ同じ頃、栃木県足利市から銘仙の技術者を招き、絵絣や工夫絣を織るようになった。 しかし、太平洋戦争後はポツ絣が主となり、多色使いの絣なども織り出したが、現在は絶えた。
古くから自家用の木綿織物が作られ、文政三年(1820)からは福野手縞(菅大臣縞)を織り出していた。
絣織物が始まったのは明治の中頃からである。それは双子縞の経に茶の矢絣などを入れた締切絣であった。 明治末期には紺緯絣が作られ、手括り、板締めの技法で、花・小判・繋ぎ・ポツ絣(単純な十字絣)などを織り出した。

 ・ふくみつあさふ [福光麻布]

織物の名称・富山県西砺波郡福光町
苧績をすべて手作業で行い、居座機または高機で手織した麻織物。
福光地方で麻布が初めて織られたのは延暦一三(七九四)年といわれる。天正年間(一五七三~一五九二)から慶長年間(一五九六~一六一五)にかけては、加賀藩の奨励により布縮緬、紋布など多くの種類の福光麻布がさかんに生産され、八講布、呉郎丸布、川上布などと呼ばれた。
昭和四十年代まではさかんに生産されたが、現在は少なくなっている。

・ふくらすずめ [脹雀・福良雀]

女帯の結び方の一つ。若い女性が盛装のときに結ぶ、華やかな帯結びの形。また、模様にもあり、ふっくらした形がかわいらしく、子供の着物の柄にも用いられ、紋所にも見られる。

・ふくれおり [膨れ織

立体感のある凹凸で柄を織り出した、二重織物。二重組織の紋織が多く、強撚糸と無撚糸を混ぜて織り、織り上がりを精錬すると、強撚糸が縮み無撚糸が膨れ上がるもので、マトラッセともいう。無地が多く、帯地、コート地、羽尺地などに用いられる。

・ふくろおび [袋帯]

略礼装に用いる女物の帯のことで、帯丈4メートル、幅約30センチの織り帯。近年、留袖などの礼装にも丸帯の代わりに用いられる。

・ふくろおり [袋織

二重折の一種。表裏の耳のところを一重織にし、筒状に織ったもの。主として帯地に用いられる。酒、醤油などの濾し袋は筒状に織ったものの底を縫い合わせたもの。

・ふくろなごやおび [袋名古屋帯

女帯の一種。お太鼓からたれの部分と、手先の一部をかがるだけで仕立てた芯無しの帯。かがり名古屋、新名古屋、八寸名古屋は別称。昭和初期、袋帯の仕立ての簡単さと、名古屋帯の軽さと、それぞれの長所を生かして考案されたものである。

・ふくろぬい [袋縫い]

裁縫用語。縫い代を始末するための、基礎縫いの一つ。単仕立ての場合などに、縫い代の裁ち端がそのままで、ほつれたりしないように中縫いすること。木綿の単物の袖下などに用いられる縫い方。

・ふくろもの [袋物]

和装用の入れ物類のこと。広義には、いろいろなものを携行したり、保存したり、使用したりするのに、具合のいいように革、布帛(ふはく)、合成繊維などを利用して作られた、袋状の物入れの総称。

・ふさ [房・総]

糸処理の方法の一つ。紐や織物の末端を束ねて、糸や紐の状態でたらしたり、形を整えて装飾化したもののこと。大きく分けると、地より出た糸を、総として用いるもの。まったく別に作った房を取り付けるものなど、さまざまな方法がある。

・ふし [節]

繭糸がもつれて生糸の表面に現れたもの、または繭糸の切れ端が離れてできたものなどで、要するに生糸の表面にコブ状・粒状のものがあることをいう。大きさによって「大節」(おおふし)、「小節」(こふし)に分けられ、この種の糸によって織られた裏絹を「節絹}と称する。「玉糸」もこの一種である。

・ふしいと [節糸]

玉繭から作った節の多い生糸のこと。玉糸ともいう。玉繭は繊維が交じり合っているので、繭から繊維を引き出して、均斉な生糸を作ることができない。そのため、玉繭を煮ながら手作業で繊維を引き出し、数本集めて生糸とする。繭から引き出される繊維には引っ張られているものとゆるんでいるものとがあるため、糸に節ができる。そのために付いた名称。また、節糸を緯糸に用いて織った絹織物が節糸織りである。

・ふしいとおり [節糸織]

糸織りの一つ。経糸に地糸として二本諸撚糸、縞糸に三本諸撚糸を用い、緯に玉糸を練り染して、織り込んだ、平織地のこと。また、経、緯ともに玉糸を用いたものを。節織という。

・ふじえっと [フジエット]

人絹とスフ糸の交織物で、富士絹のアジをまねたものである。和装では子供用の友禅や風呂敷生地のどに用いる。

・ふじぎぬ [富士絹]

絹織物の一つ。経、緯共に絹紡糸を、用いた、卵色の平織物。明治39年(1906)頃富士瓦斯紡績株式会社が命名した製品名である。羽二重の代用となる実用的絹布として、無地染め、捺染などが施されて、裾回しや襦袢、風呂敷その他に広く用いられた。

・ふじだなもん [藤棚文]

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・ふしひら [節平]

絹袴地の一種。経緯糸に玉糸または緯だけ玉糸を使用した袴地で、かつては八王子が主産地であった。博多平と同じ。

・ふじふ [藤布

織物の名称・島根県
かつて県下の鹿島町上講武・八雲村・島根村(現・松江市)、広瀬町比田・伯太町赤尾井尻(現・安来市)・佐田町朝原(現・出雲市)・邑智町(現・美郷町)・石見町・瑞穂町(現・邑南町)・五箇村(現・隠岐の島町)など多くの集落で伝承していた。

・ふじもん [藤文]

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・ふじやまぎぬ [藤山絹

群馬県藤岡地方で産出した糸好絹(いとよしぎぬ)で散好絹(ちりよしぎぬ)より重めのもの。

・ふしょくふ [不織布

経糸・緯糸を組み合わせて織った布ではなく、フェルトのように繊維を固め合わせて布状にしたもの。軽く、算段部分にほつれがなく、しなやかで強いため、和装では帯芯などに用いられる。「バイリーン」「トラベロン」「ベネロン」などがこれである。

・ふせのり [伏糊]

模様染めで地色を染めるのに先立って、柄の部分を防染する糊をおく作業、あるいはそれ用に調合された糊。伏せ糊としては粘り気のある糯粉を主成分として作る。 引き染用の伏糊のことをねば糊という。

・ふせばた [伏機]

織物の取引に際し、機屋と契約し、その柄なり品なりを一手に買収して他に出さぬようにすることがある。これを「伏機」あるいは「留機」と称する。

・ふせんりょう [浮線綾]

中古織物の名称。綾織で、模様の線を浮き出させて織ったものの総称。後に、大型の円文、特に中心に唐花を据えて、周囲に4個の割唐花を配して円文としたものの名称に用いられるようになり、さらに、浮織でないものも、この名で呼ばれるようになった。代表的なものとして浮線藤の丸がある。

・ふたえおりもの [二陪織物]

浮織で地紋を付けた上に縫取織で上紋を織りだした織物。きわめて高級な織物であり、平安時代は禁色を許された者だけが使用できた。表着、唐衣などに用いる。

・ふたの [二布]

並幅の布を、二枚合わせたものの意。女性の下帯(腰巻)のことで、下帯が二幅の縫い合わせた布地からできているため、この名が付いた。この名称は、江戸時代初期から使われているが、湯文字、湯具などともいう。昔は、若年は緋色のものを用い、中年といわれる28歳以上になると、白を用いた。

・ぶどうもん [葡萄文]

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 ・ふとおり [太織り]

経緯糸ともに玉糸を使用した織物で、「銘仙」と同じ平織の生地で、着尺用・羽尺用として群馬・埼玉・長野地方で生産されたが、現在はほとんど織られていない。「銘仙」のことをこの名で呼ぶこともある。

・ふともの [太物]

江戸時代、絹織物を呉服といったのに対して、麻や木綿の織物は、織糸が絹よりも太いため、太物と呼ばれた。それから綿織物や麻織物を総称する語として、用いられている。

・ふなこしかんとう [船越間道]

間道の名物裂。利休の門人船越五郎左衛門の家伝品とも、また舟越伊豫守の所蔵品ともいわれているもの。インドかトルコ産との説もあるが、花色地に花色と白の縞、錆びた黄色地に花色と白の細縞で、横に白茶に花色縁を取った浮織縞などがある。

・ふなぞこそで [船底袖]

和服の袖が他の一つ。袖丈が短く、袖下が舟底のようにゆるい丸みを持った袖のこと。袖口の寸法の割りに袖丈が短く活動的なので、乳児用や大人の労働着などの袖に用いられる。

・ふのり [布海苔]

海草類の1つ。乾燥させた後、煮て糊とする。マフノリが最高品質とされる。糊料として、引染や友禅の色挿しなどにもちいる。

・ふばこ [文箱]

書状などを入れる細長い箱。

・ふばこもん [文箱文]

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・ふらっとくれーぷ [フラットクレープ]

普通の縮緬より糸が細かく、「打込み」の糸数も多く「撚糸」の具合も強いので表面のシボも細かく、壁織物のような感じに見える。広幅生地が多く、小幅にあまり使用されない。

 ・ふらんねる [フランネル]

毛織物の一つ。本来は羊毛を平織、または綾織にして、軽く圧縮して起毛したもの。綿糸を用いて作った綿ネルに対して、本ネルともいう。戦前、子供のきものや長襦袢、腰巻などに広く用いられた。フラノはフランネルの略称で、特に緻密に織った洋服地のこと。

・ふり [振り]

袖の明きのこと。女物、子供物の和服の脇明きを八ツ口といい、身頃の明きを身八ツ口というのに対していう。袖八ツ口ともいう。

・ふりそで [振袖]

女性の着物の袖の一種。袖丈の長いものをいう。元来は留袖に対して振りのある袖のことをいった。振袖は小袖からでたもので脇明ききともいった。振袖という名称は江戸時代から一般化。子供と若い女性が着るもので、元服になると振りを縫いふさいだ留袖にした。文化文政ごろに袖丈の長いものを振袖というようになる。歌麿などの美人画は振袖の最も長い時のきもの姿である。現在振袖は女児と未婚女性に限り着用される衣服。例外として七五三男児の紋付袴の祝着は振袖に仕立てる。本振袖、中振袖、小振袖があるが、現在最も多く着用されるのは中振袖。

・ふりちがい [振り違い]

キモノを着た時に、左の内袖(前袖)、右の外袖(後袖)を指していう。

・ふるいぎぬ [篩絹]

昔、製粉用に使用された絹織り地。

・ぶんこ [文庫]

きもの・反物・袱紗などを包む紙。きものを包むものは特に、小袖文庫と呼ぶ。

・ぶんこし [文庫紙]

衣服・反物などを包装するための特別の紙をいう。和紙を包みやすく四つ開きにして上下左右に紙撚りをつけた衣服用の「小袖文庫」この形式により疋物を包む「四手文庫」、三つ折にして包む「反文庫」、御召用の「御召文庫」(丸巻き用)などいろいろな種類がある。用紙も最近は和紙以外にセロハン、ポリエチレン、ボール紙などが用いられ、布地を使う場合もある。

・ぶんこむすび [文庫結び]

女帯の結び方の一種。若い女性が浴衣や普段着の際に、締める方法で蝶々結びの一種。掛下文庫ともいう。

・ぶんどう [分銅]

絣の名称。主として伊勢崎のウール絣や銘仙に応用される。

 

  ・へいけのうきょう [平家納経]

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・へいけん [平絹]

経緯共に精錬しない生糸を用いた平織。生絹(すずし)の平織。サラサラとした手触りがある。裏地全般に用いられる。

 ・へいけんじゅうろく [平絹十六]

生地の厚みを重量で表したもの。1疋(60尺)が160匁の重さを持つ平織りの絹が、平絹十六。

・へいようがすり [併用絣]

大正7年、群馬県伊勢崎で研究の結果完成されたもので、「解織」の方法で「経糸」に模様を表し、「絣」の方法で「緯糸」を染色して経緯の模様を合せた絣。銘仙に多く用いられた。今は少ない。

・へこおび [兵児帯]

並幅の用布をそのまましごいて後で花結びにして締める帯。古くはしごき帯といった。現在では男女児と男子の普段着に使用。帯地は縮緬・メリンス・新モスなどがあり、絞り染が多い。江戸時代は博多帯が全盛。薩摩武士が筒袖股引の上から白のしごきを締めて帯刀するようになる。これが東京で着物の上にしごきを締めるようになった。薩摩ではしごき帯のことを兵児帯といった。

・へちまえり [糸瓜衿]

コートの衿型の一つ。衿の形が植物のヘチマに似ているのでこの名あり。

・べつぞめ べつおり [別染め 別織り]

それ専用に特別に染めた又は織ったもの。汎用でないという意味。

・べっちん [別珍]

綿ビロードの一種で、ベルベッチンが日本語化した名称。経糸、緯糸共に紡績綿糸やガス糸を用いた、平織りか斜文織である。広幅のものは服地に、小幅物は丹前や半纏の衿地、以前は下駄の鼻緒や足袋に多く用いられた。

・べっぷしぼり [別府絞]

徳川初期慶長年間に豊後国(大分)府内城主竹中備中守の侍医であった三浦玄忠の婦人が病気治療のため、別府温泉に滞留中つれづれなるままに布地を糸で絞り温泉の土をもって染色したところ、風趣にとんだ作品が数多く出来上がり、、その秘伝を土地の者に伝授したのがそもそもの始まりといわれ、その後三百年余絞りの技術は伝承され、研究工夫が重ねられ現在の「別府しぼり」になったといわれている。別府しぼりは豊富な温泉熱と泉土を利用し、、近代的な科学染料を加えて染め上げたところに独特の「絞り」としてのとくちょうがある。

・べに [紅]

臙脂(えんじ)、あるいは紅花ともいい、紅花の色素からとった紅色。染料、化粧品、着色料などに用いられる。紅花の原産国はエジプトであるが、古くからわが国にも伝わり、紅染や口紅として用いられた。紅花は花も葉もアザミに似ており、キク科の二年生草木で、紅黄色の花の花冠を採集して紅をつくる。紅花紬は山形地方の特産品。また、京紅(きょうべに)は黒味を帯びた濃い紅で、深い味わいを持っているが、他のものにうつることがある。東紅(あずまべに)は緋に近く鮮やかである。

・べにぎぬ [紅絹]

紅色に染めた「裏絹」をいう。以前は若い人のきものの胴裏はほとんどが紅絹であったが、最近は時絹または白絹であまり使われなくなった。「もみ」とも呼ばれる。

・べにがら [紅殻]

顔料の一つ。ベンガラともいう。成分は酸化鉄で、天然には赤鉄鉱として産出される。赤褐色または紫色を帯びた色で、日光や空気に強く、堅牢な顔料なので、油と混和させてペンキなどの着色料として広く用いられる。また、藍染の際、紺色に赤みを加えるために上掛けとして用いた。

・べにした[紅下] 

絹布を黒染する際、紅色で下染することをいう。こうすることで、黒色の深みを増す効果が得られる。また、藍で下染することを藍下(あいした)といい青みを含んだ上品な黒に染まる。

・べにぞめ [紅染]

紅色に染色することをいい、古くは、植物の茜を用いた。その後、紅花を用いるようになり、その技術の発展とともに、右近で下染めをし、紅花で上染する方法で、ついに京染めを染めるまでに進歩した。紅花で染める紅染めを他の染と区別して、紅花染、紅染、本紅染などという。

・べにばなぞめ [紅花染]

紅花で染色したものの総称。あるいは紅花で染めること。紅染、本紅染などともいう。染色法は、灰汁の上澄み液のアルカリ溶液に、紅花の色素をもみだし、これに糸や布をいれ、1~2昼夜浸して色素を吸収させる。次に、梅酢で赤く染色を固着させる。濃い色を韓紅(からくれない)、紅、緋、淡い色を桜色、鴇色という。また、右近を下染めとして上に紅を掛け、黄色身ががった赤を染めたものを紅緋という。

 ・べにばなつむぎ [紅花紬]

織物の名称・山形県米沢市
糸を紅花(キク科の二年草)で染色して織った絹織物。紅花には末摘花という別名もあります。
紅花はエジプト原産ですが、インド、中国経由で日本に伝わったのはかなり古いことです。
最上地方の紅花の栽培は室町時代末期頃に始められたようです。山形城主・最上義光が移植させたとも、商人がもち込んだともいわれています。
この地方の紅花は、江戸時代には『最上紅花』と呼ばれて染色用、化粧用(京紅)として第一級の名声を得ていました。紅花の生産量も多く、全国生産量の四、五割を占めたといわれています。しかし、明治になって化学染料の普及により衰退し、太平洋戦争の終了後には、紅花は幻の花となっていきました。
昭和二十年代後半から紅花染の復興を志す人々により紅花の栽培、染織の研究がなされ、そして昭和三九年、かつては高級絹布に染めた紅花染を紬織に染めだし、商品化に成功しました。
現在では、箴園紅花紬(紅花、藍、胡桃、刈安などの植物染料使用)と、紅花手織紬の二種類が生産されています。

・へら [箆]

裁縫道具の一つ。布地に印をつけるのに使われる。角・象牙・骨・セルロイド・竹製などがある。長さ12~15cmくらいのが握りやすく使いやすい。

・へりとり [へりとり]

「注染」中形の一種。媒染剤(二種類以上を合せて化学変化により発色させるもの)を利用して、型紙で染めた柄のまわりだけを別の色で縁取りしたもの。

・ペルシアもよう [ペルシア模様]

文様の名。唐草、糸杉、ペイズリー、明るい色の大胆な花柄など、イスラム文化の影響を受けた文様。本来は、じゅうたんの柄であったが、現在はきぬ、綿などにも染めている。

・ベルベット

「ビロード」織物の中で、絹人絹または毛を用い、表面を毛羽で被ったものを、綿を用いた「別珍」と区別してこう呼んでいる。二重織にして表面の部分に輪奈を作り、これを切り開いた後、適当に刈り込んで毛羽立てる。和装ではコート地に多く用いられ、特に新潟県十日町のシフォン(絹モスリンの柔らかく仕上げたものをいうが、この場合は柔らかさを表す言葉として使用している)ベルベットが有名である。表面の毛羽糸に人絹糸を用いるものと本絹糸を用いるものとあり、後者を本ベルベットとしている。

・べんがらいろ[弁柄色]

色の名前。インドの東部ベンガル地方から伝来されたので弁柄の名前がついたといわれる。江戸時代になってから弁柄塗の建物が普及して作られるようになった。故人高島与市郎氏は、京都祇園一力の表格子は弁柄塗であると紹介していた。紅柄とも書くという。

・べんけいじま[弁慶縞]

 縞柄の名称。格子縞の一種で、経と緯とが同じ幅で構成されているので碁盤縞ともいう。

・ベンベルグ

パルプを原料とした再生繊維のこと。ベンベルグとは、ドイツのベンベルグ社の商標で一般名はキュプラである。

 

・ほう [袍]

奈良時代以来の朝服およびその変化形式である束帯や衣冠の上着。(うえのきぬ)ともいう。袍の形に2種あり、文官の用いるものは両脇が縫いふさがり、裾に襴(らん)がついた、有襴(うらん)の袍または縫腋袍(ほうえきのほう)といい、若年や武官の用いるものは両脇を縫いふさがず開いていて、襴をつけていないもので、襖(あお)とか無襴の袍、または闕腋袍(けつてきのほう)と呼んだ。

・ぼうえり [棒衿]

和服長着の衿の一つ。男物長着。浴衣などの衿は棒衿。対する衿型として撥衿、広衿がある。

・ぼうおくみ [棒衽]

和裁で衽の裁ち方の一種。衽先を矩形に裁断することをいう。「丸裁衽」(まるだち)ともいい、鈎衽(かぎおくみ)に対する言葉である。

・ほうおうもん [鳳凰文]

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 ・ぼうししぼり [帽子絞り]

絞染め技法の1つ。絞りの大きさにより、大帽子・中帽子・小帽子がある。他にも太鼓帽子・逆帽子などがある。模様の輪郭線に糸入れし、その糸を引き締める時に芯を包み、芯の周囲に糸入れ線を当てて引き締める。防染部分に、紙とビニールをかぶせて括ると、帽子をかぶせたように見えるのでこの名がついた。

・ぼうししぼり [紡子絞り]

文様の輪郭に沿って木綿糸で細かくぐし縫い(糸入れ)し、糸を引き締めるときに中に芯を入れる。防染部分にビニールなどをかぶせてくくると、帽子をかぶせたような状態になる。それを染液に浸して、白く染め抜く技法で、その形が帽子のような形になるところからの名称である。その大きさによって、大帽子、中帽子、小帽子と呼ばれ、そのほかに太鼓帽子、逆帽子などがある。有松絞りに多く見られる。

・ぼうじま [棒縞]

地糸と縞糸とが、同じ幅で並んだ単純、明快な縞で、棒を並べたように見えるところからの名称。大柄なものを大棒縞、小柄なものを小棒縞という。

・ほうしょつむぎ [奉書紬

 絹織物の一種。羽二重に似た精良な紬。福井・石川県で織られ、染めて紋付などに用いた。

・ぼうせきいと [紡績糸

繭から糸繰り(繰糸)によって作られる「生糸」、また繊維を液状にして細い穴から吹き出して糸状にする(紡糸という)「人絹糸」に対して、機械によって短い繊維を撚り合わせて作った糸を「紡績糸」と称する。綿糸、麻糸、毛糸、スフ糸などはこの類である。絹についても「富士絹」の原料となる「絹紡糸」はこれである。

・ぼうせん [防染]

糸や布地に染料がつかないようにすることです。糸でくくったり、ろうやノリを使う方法があります。

・ぼうせんのり [防染糊]

捺染糊の一つで、一般には直接捺染糊、抜染糊と区別する。防染糊に染料が入っているかどうかで、白色防染糊と着色防染糊を区別する。防染の部分によって、糸目糊、伏糊などとよぶ。

・ぼうすい [防錘]

糸に撚りをかけるための錘(つむ)。土や石、骨などで作った半球、あるいは球状のもので紡績機械の付属具。この中央に、先端がやや細い鉄の丸棒を通し、棒の端に糸をつけて、手で糸を巻くと同時に撚りをかける。この回転作用を手動の車で行うのが紡車であり、紡車では錘が同様の作用をする。わが国において古くから行われている紡糸法で、弥生時代のものが残されている。

・ぼうまき [棒巻]

織物の仕上げのひとつ。丸巻きまたはロール巻ともいう。帯地や袴地のような厚地の織物あるいは反対にごく薄地の織物に用いる。ボール紙または桐製の丸芯(巻芯)に織物の一端から巻取り、最後の一端を少し織り込んで止めるのが普通である。糸で止めた残りの部分を「垂れ」と称する。

・ほうもんぎ [訪問着]

留袖ほど格式ばらずに、社交や外出用の準礼装として着用できる絵羽付けの着物。大正時代に始まり、形式を整えて性格を確立したのは昭和に入ってから。大正時代に三越が命名したという説、大正11年に高島屋百選会で発表されたという説がある。広範囲に着られる晴着として、開発された。。文様は絵羽模様で、生地は縮緬や綸子など。御召に模様を織り出した略式のものもある。第二次世界大戦までは中流以上の人のものであったが、現在では一般化している。

・ほうらいさんもん [蓬莱山文]

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 ・ぼかしぞめ [暈し染]

濃さを変えたり、色を変えたりしながら、ぼかしに染め上げる技法で、キモノの地染に使われる。一色濃淡のぼかしを共ぼかし、または、濃淡ぼかしと呼び、多色づかいのぼかし染は曙(あけぼの)ぼかし、それを段状に変化させたものを段ぼかしという。

・ぼぐしおり [解し織]

織絣の一種。経糸を織機にかけて、粗く緯糸で仮織し、これを一度織機よりはずして文様を捺染する。その後で仮織した緯糸を、取り除きながら本製織をすること。経糸の文様部分がすれること、経糸だけが染色されているため、文様が柔らかく浮き出し、ぼかしに似た効果が表れるのが特徴である。銘仙によく用いられる。

・ほし [星]

型染の場合、色ごとに何枚もの型紙を生地の上に順々において染め上げることになるので、その位置を決めるための小さな点印をいう。その性質上これは最後まで生地の上に残り脱色できない。消費者がシミ・汚点と誤ることがあるから注意すべきである。「合せ星」「送り星」ともいう。

・ほしょく [補色]

ある2色を混色することで、灰色や黒になる場合、その2色は互いの補色である。赤と青緑など

・ほそおび [細帯]

帯の種類。普通の帯幅の半分、約15cm幅の細い帯のこと。半幅帯ともいう。普段用の帯として、羽織下や浴衣などに用いられる。

・ほそかわぞめ [細川染]

注染中形の一種で、型紙を二枚以上使って染重ねた浴衣地をさす。名所の由来は、江戸時代の熊本藩主の細川氏が神経質で何事も二度繰り返さないと気がすまないと伝えられることと、二度染にすることを、かけたのだともいわれている。

・ボーダー [ボーダー]

着物の場合、主として羽織などの裾の部分に平行な一区切りの模様のある柄をいう。

・ほたおり [保多織]

香川県高松市・織物の名称・香川県高松市
江戸初期から香川県(高松藩)で織られた絹織物が、明治時代に綿織物になり一般的に広まりました。丈夫で肌触りがよく、夏の着尺地などに用いられます。
元禄元年、高松藩主の松平頼重が、京都の北川伊兵衛を招いて織らせたものです。丈夫なことから「多年保つ」という意味合いでこの名が付けられたといわれています。
表面に凹凸のある、独特な風合いの木綿織物。通気性、吸湿性がよく、肌触りがさらっとしている。浴衣地によい。
保多織は、元禄五(一六九二)年に高松藩のお抱え織物師・北川伊兵衛常吉により考案された。常吉は高松藩主・松平頼重に、他藩産のもの以上の織物を創出せよという命をうけ、緯糸を浮かびあがらせた縮織に似た絹織物を完成、これが讃岐保多織となった。保多織は、その後、高松藩の幕府への献上品となり、その製法は一子相伝の秘法とされた。 
明治維新後、伊兵衛常吉の子孫、北川勇次郎は製法を公開。さらに、原料を絹糸から綿糸に変えて、綿保多織を完成した。
第二次大戦中は物資統制令により生産を禁じられたが、昭和二六年頃には復活した。
現在では、わずか二機業場が、その伝統を守りながら織っている。

・ぼたんいろ [牡丹色]

色の名前。臙脂(えんじ)系統である牡丹の花の色→牡丹色のページへ

・ぼたんもん[牡丹文]

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 ・ぼたんからくさもん [牡丹唐草文]

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 ・ぽっくり [木履]

下駄の一種。長円形に作った高い台で、前部にのめりをつけて中をくりぬいたもの。蒔絵などで装飾して、女児や舞妓が用いる。

・ポーラー

梳毛織物の一種。織り目が粗く量感のあるもの。無地や霜降りが多く、主に夏用衣料として用いられている。絹ポーラーと呼ぶ夏着尺地があったが、最近ほとんどなくなった。

・ポリエステル

石油を原料とした化学繊維。水に強くシワができにくいなど扱いやすいが、染料に染まりにくいため中間色の糸などが少ない。

・ほんあいぞめ [本藍染]

合成染料を用いず、植物藍だけで染めること。また染めたもののことをいう。重要無形文化財に指定されている久留米絣は。本愛染めがその条件となっている。

・ほんえり [本衿]

地衿のこと。和服長着や長襦袢の衿。本衿には掛衿をかける。

・ほんくろ [本黒]

植物染料で染めた黒。ヘチマン(ロッグウッドともいう)で引き染し、重クロム酸などで媒染した堅牢な黒染のこと。合繊染料の黒染に対する語。下染めに紅下や藍下を用いることによって、つやと深みのある黒色に染め上がる。

・ほんしおざわ [本塩沢]

織物の名称・新潟県/南魚沼市
本塩沢は、塩沢紬とともに塩沢産地の代表的な織物で、これまでは「塩沢お召(めし)」の名で広く親しまれていました。始まりは江戸時代中期と言われ、越後縮(えちごちぢみ)のような「シボ」のある麻織物の技術・技法を絹に生かした絹縮(きぬちぢみ)がもととなっています。
小千谷とともに麻織物の生産地として有名だった塩沢地方では、大正時代に麻織物の需要が少なくなると、越後縮の手づくり風合いを絹織物に応用しようとさまざまな技術の導入を行った。具体的には結城紬の技法の導入、京都西陣のお召し技術の導入、地機から高機への切り換えなどである。そうした努力のすえ、大正中期にできあがったのが、本塩沢の前身の塩沢お召しである

絣糸を染める方法もくびりから板締めになり、現在もすべて手機で織られている。
戦前は製品のほとんどが男物で、色は藍、茶、黒、白の濃淡でできあがっていたが、現在は女物のほうが多く、赤系統の色も用いられている。

・ほんせい [本製]

「玉糸」「絹紡糸」「人絹糸」を用いた織物に対し、生糸だけを用いた織物をいう場合と、紡績麻糸を用いた織物に対し手紡糸だけを使用した織物をさす場合とがある。例として前者は「本製縮緬」、後者は「本製絣上布」などがある。

・ほんぞめ [本染]

染ゆかた地で普通の「注染」(注ぎ込み染)に対し、小紋・友禅を染めるのと同じ色糊を使って手捺染する方法をいう。また「機会捺染」による捺染中形に対し、注染も含めて手捺染によるゆかたを「本染」と称する場合もある。

・ほんだたみ [本畳み]

長着の畳み方の一つ。略式の袖畳みに対して用いる語。

・ほんだち [本裁]

大人物の和服の裁ち方。基本的な裁ち方で大裁ちともいう。子供物の中裁、小裁に対しての大裁。

・ほんだちよつみ [本裁四つ身]

子供物和服の名。本裁ちに裁たれた四つ身のこと。

・ほんてん [本天]

経緯ともに絹糸を用いたビロードのこと。ビロードは天鵞絨と漢字で当てるところから、本来のビロードという意味の略称である。コートやショールに用いる

・ほんねり [本練]

絹精練の工程の一つ。荒練された生地を精練する工程。荒練で除去されていない不純物を完全に除去し、柔軟性・白度などが得られる。本練の後、水洗して仕上げ練を行う。

・ほんのうじぎれ [本能寺裂]

本能寺に伝わる緞子の名物裂。濃い花色地に、薄藍で青海波、唐草、宝尽くしの模様を織り出したもの。

・ほんば [本場]

「勇気紬」や「大島紬」あるいは「黄八丈」など類似品のある織物について、その本来のものをいう。例えば「村山大島」に対して「本場大島」、「多摩結城」に対して「本場結城」、「米沢黄八丈」に対して「本場黄八丈」などである。

・ほんばおおしまつむぎ [本場大島紬]

織物の名称・鹿児島県/名瀬市、鹿児島市、大島郡竜郷町、笠利町、喜界町、宮崎県/都城市他 
鹿児島県奄美大島が産地の絹織物です。第二次世界大戦中に奄美から鹿児島に疎開した人たちによって、戦後鹿児島でも生産されるようになりました。
奄美大島に自生するテーチキ(車輪梅)を煮出した液で糸を染めてから、鉄分の多い泥の中に浸して揉み込む工程を何度も繰り返していくうちに、丈夫で柔軟性のある糸になっていきます。専用の締機(しめばた)で絣糸をつくり、高機で手織りされます。
かつては真綿の紬糸を使用いましたが、現在は経糸・緯糸とも生糸でできているため、ツヤがありツルツルとした手触りをしています。泥染めの細かい絣柄が特徴で、泥だけで染める「泥大島」、泥染めと藍染めの「泥藍大島」のほか、泥染めではない「色大島」や「白大島」などもあります。伝統的工芸品に指定され、奄美大島産のものは地球印、鹿児島産のものは日の丸の旗印の証紙が張ってあります。
奄美における大島紬の始まりは、7世紀頃に遡ります。産地が形成されたのは18世紀初期のことで、その後、技法は鹿児島にも伝わりました。絣模様は締め機(しめはた)という独特の機を用いて作られます。糸を染める「泥染め」の技法は特に有名です。紬のルーツは、遠くインドでうまれたイカットという絣織り(かすりおり)だと言われており、イカットが、スマトラ、ジャワからスンダ列島一帯に広がりを見せた頃に、奄美大島にも伝わったと言われています。

・ほんばきはちじょう [本場黄八丈]

織物の名称・東京都/八丈島八丈町
その昔、本居宣長が「八丈という島の名はかの八丈絹より出ずるらむかし」と書き残しました。島の名の由来とも言われる黄八丈については室町時代から絹を貢いでいた記録があり、江戸時代の中期以後から現代にも通用する粋な縦縞、格子縞が織られるようになりました。
鮮やかな黄色は八丈島の特産である刈安で染められます。刈安を煮た煎じ汁に糸を入れ、一晩置いて乾燥させるという作業を何度も繰り返した後、灰汁に浸けて鮮明な黄色に染めて、高機で織り上げます。ほかにも、まみだで染めた樺色(茶色)の「鳶八丈」、椎(しいのき)で染めた黒色の「黒八丈」などがあります。柄は格子柄のほかに縦縞、染め分けや無地のものもあります。

 ・ほんびよく [本比翼]

和服の仕立方の一種。表着の裏地の縫代に比翼の縫代を一緒に縫い込んで仕立てる。一枚着にすることができない不便さがある。現在では付比翼がほとんどである。「比翼」を参照のこと

・ほんみみ [本耳]

本耳は和装裏絹の本流で、小巾である高級呉服の裏絹としては、両端に耳のあるものが最適とされた。「糸好絹」(いとよしぎぬ)の一種で、屑糸を使った「屑耳」に対する言葉。最近では広幅、軽目羽二重等が裏地として利用されるようになったが、本耳は最初から和装専用裏地として作り出されているので、地風もそのように設計されており、表生地との伸縮性、肌合いや裾捌き等着心地が最適になるよう改善を重ねた裏地として高く評価されてる。主な用途は胴裏、比翼。

・ぼんちゆうぜん [ぼんち友禅]

男児の幼児用「一つ身」から「三つ身」向きの友禅柄をいう。産着(うぶぎ)や着物、ちゃんちゃんこに使用するため羽二重や富士絹、モスリン、人壁地などに染めることが多い。鯉・鶴・鷹・兜や武者人形などの模様や幾何学的な図案が中心である。関西地方の男児を呼ぶ方言「ぼんち」からきている。女児幼児用を「女ぼんち」と呼ぶこともある。

・ほんもん [本紋]

地紋のある綸子地の中でも、紗綾形地紋に菊と蘭を散らした柄のことをいう。

・ほんゆうぜん [本友禅]

手書き友禅の一つ。糸目友禅のことをいう。