・えがいき [絵甲斐絹] 
無地甲斐絹の経糸に肉筆または型紙を用いて顔料で模様を刷り込みつつ、織り上げたもの。
  
・えがきぞめ [描き染]
「書染・描染(かきぞめ)」と同意語。
   
・えがすみもん [エ霞文] 
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・えがすり [絵絣]
緯糸で絵模様を織り出した紺木綿の絣です。主に久留米、広瀬、弓ヶ浜などの絣が有名で、民芸調の着尺としてつくられています。かつては布団地にも織られ嫁入り道具のひとつとされていた地方もありました。
織物の横幅と同じ木枠の両端に竹ぐしを並列させて、下に図案となる下絵を置きます。糸を竹ぐしにからめて下絵に合わせて墨打ちを行い、糸で括って防染を施して絵模様を織り出します。
   
・えーがた [藍型]
藍型の沖縄での発音。他の色彩を用いず藍一食で染める沖縄の型染め。藍型に対して華やかな色彩のものを紅型という。「藍型(あいがた)」
   
・えきがきぞめ [液描染]
「書き染」の一種で、ゴム液で直接模様を書いていくので、液の濃淡、厚薄の加減によって肉筆の筆運びの感じをそのまま表すことができる。
   
・エジプトもよう [エジプト模様]
古代エジプトの工芸品や日用品に多く見られる独特の模様。人間、牛、蛇、雄鷲、スカラベ、山犬などの動物模様やナイル川沿いに生えている葦に似た草のパピルスやすいれん、しゅろなどの植物模様、そして七宝、亀甲、鱗などの幾何学模様が代表的である。エジプトにはじまった植物模様は、その後に大発展した唐草模様のもとになっている。エジプトキリスト教美術として、ナイル川沿いの地域に産した織物のコプト模様は、現在も帯柄として用いられている。
   
・えちごがた [越後型]
戦後に北陸や信越、東北地方一帯で広く用いられた型染めの総称。主に木綿の藍染であるが、型紙は伊勢型が用いられている。
   
・えちごじょうふ [越後上布]
織物の名称・新潟県小千谷市
昔は越後(新潟県)の小千谷(おぢや)市、十日町市、塩沢町を中心に産する麻織物の一つであった。現在は六日町付近でわずかにつくられている。上布とは中布、並布に対する語で上等の麻織物という意であり、細い麻糸で平織りにしたもの。本来、麻には大麻(たいま)、亜麻(あま)、苧麻(ちょま。から、むしともいう)などがあるが、越後上布は苧麻を原料にする。苧麻の茎の皮をはぎ(青苧<あおそ>という)、手で紡ぎ、居坐機(いざりばた)で縞や絣(かすり)を織りだし、雪晒(ざら)しをする。夏用の高級着尺地で、その技法は古くから伝えられ、重要無形文化財になっている。
   
・えちごちぢみ [越後縮]
織物の名称・新潟県小千谷市
越後(新潟県)の小千谷市地方で生産される麻織物の縮です。
この地方で織られる越後上布の糸に、強い撚りをかけた縮み糸で織り上げ、しぼのある縮地にしたものです。越後上布と同じように、縞や絣柄の夏の高級着尺地です。
    
・えちごまんがんがすり [越後マンガン絣]
マンガン染の麻または綿糸を用いた染絣のこと。織絣と区別がつかないほど精巧な染絣である。大正4(1916)年、矢島丑松がマンガン化合物を染色に利用、マンガン絣を発明した。白絣がおもで、夏の着尺地に用いられている。
   
・えちぜんかみこ [越前紙子]
紙子は紙を糊と張り合わせ、その上に渋を引いたりするため、紙自体がこわばりやすくなります。これを柔らかくするには、張り合わせた後、渋を引いて から天日で乾燥させ、その後手でよく揉んで夜干しをします。翌日にはまた干 して、夕刻に取り込みまた揉みます。これを何回か繰り返して、こわばらない ように仕上げます。江戸後期には更紗染めや小紋染めなども行われ、防寒着や 布団地に使用されていました。江戸時代には各地に紙子が作られていましたが、現在ではほとんどが廃れてしまっております。
白石紙子(宮城県)  安倍川紙子(静岡県) 華井紙子(和歌山県)
美濃紙子(岐阜県)  越前紙子(福井県)   大和紙子(奈良県) 
安芸紙子(広島県)  土佐紙子(高知県)   伊予紙子(愛媛県) 
肥後紙子(熊本県)  八女紙子(福岡県)などがあります
   
・えちぜんすみながし [越前紙子]
墨と筆の伝来後、貴族のあいだでは、墨流しは遊戯として行われていた。越前の墨流しの歴史は仁平元(1151)年に、治左衛門が春日大社の神託をうけ「紅藍墨流し鳥の子紙製法」の秘伝を授かり、その製造に適する清水をもとめて諸国を遍歴、最適の水のある武生に定住し、初代・治左衛門となった。それ以来、墨流しの技法は一子相伝に伝えられ、現在の五十五代目の治左衛門にうけ継がれている。墨流しはもともと和紙の染色法である。布染への応用がなされたのは明治になってからのこととされる。
   
・えっちゅうがすり [越中絣]
織物の名称
綿織物で農村での作業着などに用いられた。
  
・えどこもん [江戸小紋]
江戸時代、武家の裃(かみしも)の小紋や、その技術を受けて民間の小袖、羽織となった単色型染め小紋をいう。1955年、文化財保護委員会が、とくに江戸小紋と名づけて、その染めの技術者、小宮康助(1882~1961)を重要無形文化財保持者に指定した。小紋を、小さな図柄のものと広義に解する場合、色差しをした型友禅小紋などと区別するためのよび名である。
   
・えどちゅうがた [江戸中形]
長板本染中形のこと。中形とは小紋や大紋に対しての文様の大きさを示す語。中形が木綿藍染の浴衣専用に染められたことから中形、すなわち浴衣といわれる。江戸中形は、江戸時代からの伝統技法の、長板染で行われるのが特徴である。
   
・えどづまもよう [江戸褄模様]
小袖の模様づけの1つ。長着の袖の褄に近い部分に模様を配置したもので、江戸後期からある。現在では、留袖の模様づけがこれにあたる。  
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・えどときもんよう [江戸解紋様]
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・えどむらさき [江戸紫]
一般に江戸紫というと、青みをおびた紫のことをいう。これに対して赤みを帯びた紫を京紫といっている。本来の紫に江戸の名をつけるのは、京都の京紅に対してのことで、紫染めは江戸が優れているというところからの表現。色そのものを指しているのではない。紫は古くから日本人に愛好されてきた色で、清少納言の『枕草子』にも「すべてなにもなにも、紫なるものは、めでたくこそあれ、花も色も紙も」とあるし、『古今和歌集』には、紫草が武蔵野の名花とされていたことが残されている。紫は紫草の根と藍に染めていた。江戸時代の末期までは、神田紺屋町に紫染を専門にする紫屋があったが、明治初期に合成化学染料が輸入され、紫草による紫染が衰退してしまった。
   
・えぬき [絵緯]
紋織物の色模様をあらわすため、緯糸(よこいと)として用いる色糸や金銀糸のこと。「色緯(いろぬき)」 「縫取糸(ぬいとりいと)」「色糸(いろいと)」などともいう。縫取御召などにも使われている。
  
・えぬきおめし [絵緯御召]
緯糸に使う色糸のことを「絵緯」というが、この絵緯を用いて模様をあらわした御召。また「絵抜御召」と書くこともある。
  
・えば [絵羽]
絵羽は、模様のつけ方、縫い方、模様そのものなど、広範囲に用いられる言葉で、絵羽模様は、生地を染める前に白生地を裁断してから、キモノの形に仮縫いし、背や脇、衽、袖などの縫目を渡って模様が続くようにしたものをいう。この時の仮縫いすることを絵羽縫・仮絵羽仕立てといい、これの良し悪しで次の模様づけに影響を多分に与えるので、重要な工程といえる。現在の振袖・留袖・訪問着・羽織などがこれにあたる。
    
・えばおめし [絵羽御召]
模様を絵羽づけにした御召のこと。絵羽とは、きもの全体を一枚の画布にみたてて模様づけしたもので、もともとは染めのきものに対して行なわれる抜法である。御召を豪華にするため、織模様を絵羽にしたものだが、生産量は少ない。
  
・えばおり [絵羽織・絵羽羽織]
白生地を仮縫いし、縫目に渡って模様を染めた羽織。長着の絵羽づけ同様に、模様が一続きになっているもの。
    
・えばぬい [絵羽縫い]
仮絵羽に対する言葉。下絵羽ともいう。絵羽付けをする前の工程の一つ。絵羽付けする前に白生地を裁って、注文通りの寸法に仮仕立てすること。
     
・えばもよう [絵羽模様]
高級きものの模様付けの一種。模様がきもの全体に絵画的に展開されたもの。白生地のまま裁断して仮縫い(仮絵羽、絵羽縫いという)したものに、絵画のように模様を描く。下絵を描いた後、仮絵羽をほどいてから染加工、刺繍、印金などを施し、すべての加工が終わってから、また仮縫いしてから販売する。この方法で模様付けするものを、絵羽模様という。振袖模様、留袖模様、訪問着模様がこれに該当する。絵羽模様のきものは、ほとんどが礼装、正装用であるため、その模様は豪華絢爛で格調高く品位のあることが多い。
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・えびちゃ [えびちゃ]
色の名前。明治の末期に女学生が用いた海老茶の袴がある。生きた伊勢海老の色である。
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・えびもん [海老文]
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・えぼしちりめん [烏帽子縮緬]
縮緬の緯糸に縮緬二本と平糸二本を交互に打ち込み織り上げたもの。
   
・えもん [衣紋]
着物の着付けの事。公家の装束の着付けから起こった言葉。江戸、明治時代の小袖になっても着付けの事を「衣紋を着付ける」「衣紋をつくろう」「衣紋をとる」といった。元は襞をきれいにとって身体にぴったり着せ付けるという意味。衣紋つき、衣紋風、衣紋を抜く、という言葉は衣服の着付け方をいったもの。室町時代「のけえもん」といって衿の後を深く下げてきた事から出た言葉は、現在の抜衣紋として残っている。
   
・えもんかけ [衣紋掛け]
着用後のキモノをかけて、風を通したり、しわを伸ばしたりするための道具。折り目を正しくするためにも用いられる。和服用のハンガー
     
・えもんぬき [衣紋抜き]
長襦袢の半衿と一緒に縫い付けて着付けを楽にする小道具。衣紋を抜く際に生地を傷めず抜く事が出来る。また着崩れした場合にもそれだけを引っ張ることで、直す事が出来るので便利。
  
・えり [衿]
衣服の首回りにあたる部分の名称をいう。長着の衿には掛衿があり、掛衿には、長衿と半衿がある。江戸時代の長着の掛衿には、ちりめん・ビロード・黒襦子・紋塩瀬などの美しい生地が使われていた。また、襦袢の半衿には、羽二重・ちりめん・絽・紗・絞り染などの絹織物が用いられてきた。また、掛衿はキモノの衿を補強する働きもある。現在の長着には、共通の掛衿を掛けるので、共衿とも呼ばれる。
    
・えりあて [衿当て]
あらかじめ衿に当てて汚れを防ぐ布のこと。
   
・えりうら [衿裏]
衿の裏側のこと。
   
・えりがけ [衿掛]
昔は、旅行などで出かける場合、衿の中に護符(ごふ)、金銭など大切なものを縫いこんでおく習慣があり、これを衿掛といった。
   
・えりかたあき [衿肩明き]
裁縫用語。長着、羽織、長襦袢などの肩に衿を付けるため、あらかじめ裁ってあけたところ。衿の下端の部分のことをいいます。この部分に衿がつきます。通常、男物9cm、女物5センチくらいです。
   
・えりさき [衿先]
着物の部分名称。きものの衿の下端の部分をいう。または女物の袷長着の衿裏の下端につける衿先布を、単に衿先ということもある。これは裾回しと同じ布を用い、普通は衿裏に接ぎ合わされる。
    
・えりじ [衿地]
婦人用襦袢の衿にかける布地。いわゆる「半衿地」のこと。また丹前の衿にかける黒の「繻子」や黒「琥珀」のことをいう。これは普通幅3寸(11.4cm)、長さ6丈(23~24m=疋)のものである。
   
・えりした [衿下]
きものの衿付け止りから衽(おくみ)の褄先(つまさき)までの長さ、およびその部分の名称。
    
・えりしん [衿芯]
和服え用いる衿芯には、きものの三つ衿芯、羽織、長襦袢(じゅばん)の衿芯がある。きものは縫込み分の皆無な衿肩回りに晒(さらし)などを入れて、出来上がりの衿の厚みを一様にする。羽織は衿のかたさと重さを増し、なお、表布が縮緬(ちりめん)や絞りの場合の伸びや垂れを防ぐために新モスなどを入れる。長襦袢には衿肩回りに、かたさを保つために帯芯程度のものを入れる。
   
・えりたけ [衿丈]
和服の衿の背中心から衿先までの長さをいい、時にはその二倍、すなわち一方の衿先までの長さをいうこともある。
    
・えりどめ [衿留]
きものの着付け用具の一つ。衿元の崩れやはだけるのを防ぐために使うクリップ状の金具。現在は男性用だけが使用されている。
   
・えりまき [衿巻]
和装、洋装ともに防寒用として首の部分に巻く布で、明治時代中頃までは男女とも四角形の毛織物の無地や紋織、またはメリヤスなどを用いていたが、次第に男子用は幅が狭く長いものを用いるようになり、最近はマフラーと呼ばれているものに変わった。婦人用は肩の部分まで覆うショールが中心となり、春のレースショールなど防寒用よりむしろ装飾品に近いものもあらわれていろ。毛皮風のシール織、ビーバー織、毛織のモヘアや毛糸手編みなど和装ショールの種類は多い。
   
・えるむゆーからおり [エルムユーカラ織]
北海道の手紬。「エルムユーカラ織」アヤ錦は、北海道の自然とアイヌ、ギリヤーク、オロッコなどの先住民族が伝承した文様文化を織り混ぜて、近年旭川で製作され始めたもので、ユーカラ織独特の色を作り上げている。技法は金糸・銀糸で織る錦織であるが、絹に代えて北海道のすぐれためん羊の毛を素材にしたのが特徴。一部に寒冷地にしか育たない亜麻が使われている。初めは家庭の主婦などの趣味としてネクタイなどが作られていたが、最近ようやく帯地、茶羽織などが製織されるようになった。
   
・えんじ [臙脂]
色の名前。サボテンに寄生する臙脂虫(コチニール)の分泌物から製した染料で染めた色。赤茶系の色。
臙脂のぺーじへ

・えんしゅうつばき [遠州椿]
文様の名称。椿の花を図案化したもので、きもの、帯、羽織などに用いられる。名称の由来は明白でない。一方、遠州緞子は、名物裂の一つで石畳文である。
  
・えんぶたぞめ [鉛蓋染]
防染剤を用いて模様や文字を白く染め残すかわりに、生地に直接型紙を置き、その上から色糊を塗って、一度乾かした上で布全体を蒸し、着色させ、水洗いをして仕上げる簡単な染色法で、のぼりや袢纏などの大型で簡単な染に用いられる。
  
エンブロイダリーレース
刺繍レースのこと。生地に穴を開けてその周辺に刺繍を施し柄を作るもの。盛夏着尺や羽織用に用いるレースの多くはこれである。