・さいし [釵

宮中女官の髪飾りの一種。①中国の隋・唐よりもたらされた二本足の簪(かんざし)。木、金、銀、銅などで作られ、2本を1組とする。古代の宝髻(ほうけい)や中古の蔽髪(へいはつ)にさして用いた。②近世、女房晴れ装束を着用する際、御垂髪(おすべらかし)の前髪に飾る鍍金(めっき)の平額(ひらびたい。中古の蔽髪)をさす。

・さいで [裂帛・裂楮

昔、布帛の切れ端のことを呼んだ。

・さいわいおり [幸織

織物の名称・
絹織物の一つ。組織は、博多織と同じだが、同じ杼口に緯糸一本を打ち込む代わりに、数本連続して並行に打ちこんだもの。 西陣で織られた博多織に似た光沢ある帯地。

・さかきじ [逆生地]

元来、追い裁ちにして一定方向を向くべき生地が、天地反対になること。又は反対になっている生地。

・さかいだんつう [境段通]

大阪府堺市で産出される綿製の手織文様敷物のこと。天保2(1831)年頃、堺の町人で糸物商「藤本荘左衛門」が鍋島緞通と中国製の敷物を模倣して織りだしたのが、堺緞通の始まりだといわれている。明治時代に織機(竪機)が改善されて大幅緞通が織りだされるようになり、明治30年頃には、製品の多くは外国への輸出用となった。第二次大戦後、手織緞通は機械織になり、現在は羽毛緯に羊毛を用いて織られている。

・さがにしき [佐賀錦]

織物の名称・佐賀県佐賀市
平織または綾織の、華やかな織物。金銀の箔紙や漆を塗った和紙をこまかく裁断したものを経糸に用い、緯糸には多彩な絹糸や金銀紙を用いる。
起源には諸説があり明らかではない。ある説によると、江戸時代に、京都から小城藩鍋島家に嫁いだ女性が、京都の紙遊び細工から網代組を織りだし、それが御殿女中の手芸として発達したのだとされる。また別の説では、鹿島鍋島藩の九代藩主夫人・柏岡が病床にあったとき、天井の網代組からヒントを得て、こよりで網代模様を織ったのが始まりとされる。
佐賀錦は、初めは和紙と和紙、あるいは和紙と木綿糸という組み合わせだったが、やがて改良されて現在の形式となった。「組錦」「御組錦」「鹿島錦」と呼ばれた時期もあった。
藩内で守られてきた技法は、明治維新の廃藩置県のために一時途絶えたが、佐賀出身の大隈重信夫人の尽力により復興され、現在に至っている。
  ※鍋島家 肥前藩の藩主。のちに、肥前近郊の小藩である小城藩、蓮池藩、
   鹿島藩も治めた。つまり肥前、小城、蓮池、鹿島のどの藩も鍋島家を藩主に
   もつ兄弟のような藩である。佐賀錦が鍋島家の所領のいずれかの藩で成立
   したことは確実であるが、それぞれの藩に佐賀錦の起源を物語る逸話があ
    るので、確定が難しい。
   肥前藩は江戸開幕時からの藩。小城藩は一六一四年に鍋島勝茂(のちの肥前藩主)の子、
   元茂が分封されたことに始まる。蓮池藩は一六三六年に鍋島直純が分封されたことに始まる。

・さきぞめ [先染め]

織物を織る前に原料糸を、精錬・染色してから織ること。あるいは、その織物のこと。

・さがらぬい [相良繍]

刺繍技法の1つ。布表面に結び玉を作り繍う方法。男物の縫紋や小鳥の目などに用いる。この技法を変化させたものも多い。相良刺繍ともいう。

・さきおり [裂織り]

古い織物を細く裂き、緯糸に使って製織した織物。厚手で丈夫なため、仕事着などに用いられた。貴重な国府の再利用の一手段であったが、味わいのある風合いや無作為に現れる色調のおもしろさが好まれ、今では趣味の織物として帯などに用いられる。

・さきぞめ [先染]

染織用語。布地に織る前、糸の状態で染めてから織ったもの。または、その織物のことをいう。後染織物の反対である。御召をはじめ、紬、上布、絣など、いわゆる織りのきものは「先染織物」である。先染めのものは丈夫で実用性に富んでいるところから、街着や普段着に広く用いられているが、礼装には用いない。しかし、近年は先染めの訪問着風の御召や紬織物があり、社交着に使うようになっている。

・さきねり [先練]

織物にする前の生糸の状態で、不純物であるセリシンなどを取り除く。精錬の作業をすることをいう。先練りの織物には紬やお召しなどがある。

・さきべら [先標]

後標が縦べらだけを先にして縫いながら幅べらを当たっていく方法であるのに対し、縦べら、幅べら両方全てを縫う前にへら付けしていく方法をいう。後標は関東式、先標は関西式と呼ばれることもある。どちらにも長所、短所があってどちらがよいともいえない。学校の家政科では先標方式をとっていることが多い。

・さきゆうぜんかこう [先友禅加工]

糸目糊置をして、地色を染める前に友禅加工する工程を指す。

・さくさんし [柞蚕糸]

柞蚕糸には、野蚕糸がもつ粗野な魅力と独特の色艶のほかに、ヤママユガ科のみに見られる多孔性繭糸(生糸は緻密性繭糸)としての特性があります。多孔性であるため、繊維の中に空気を取り込むことができ、保温・保湿性に優れていて夏は涼しく、冬あたたかい調温機能があるといわれています。

・さくさんつむぎ [柞蚕紬]

織物の名称。紬の一種。経緯ともに柞蚕糸を用いた織物。信州(長野県)や越後(新潟県)の見付地方で産したが、現在はほとんど生産されていない。

・さくしゅうがすり [作州絣]

岡山県津山市一帯で生産される絣の織物。紺木綿の絵絣で、絣の白糸がはっきりとしているのが特徴。鳥取県中部の倉吉の絵絣が始まりで、倉吉から津山へ嫁いだ女性が第二次世界大戦後に織ったものが作州絣と呼ばれるようにった明治以前は、自家用の木綿織物が織られる程度だった。明治中期になると、倉吉絣の技法をもとに絵絣の生産が始められたが、昭和になると衰退した。昭和26年に、織元である杉原博氏が地織絣の伝統を復興した。作州絣の名は、市場に出すためにそのときにつけられたものである。

・さくらもん[桜文]

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・ざぐりいと[座繰り糸]

繭から生糸をとる場合、機械を用いず手で糸を引き出し、座繰り機(糸を巻きつける道具)に巻き取る方法で作る糸のこと。機械製糸に比べて、野趣のある独特の織味となる。略して座繰りともいう。

・さげおび[下帯・提帯]

帯の一種。江戸時代の公家や武家の女性が夏用に用いた帯で、主に帷子(かたびら)の上に締めた。

・ささづま [笹褄]

着物の褄の角の細く尖っているもの。笹の葉のように尖っていることからこの名がある。

・ささひだ [笹襞]

袴のひだの形をいい、笹の葉の形をしているのでこの名あり。男袴では前、女袴では前後両方にとる。いずれも紐付け位置から相引きの上までのひだである。

・ささもん[笹文]

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・ささふねもん [笹船文]

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・ざざんざおり [颯々織]

織物の名称・静岡県浜松市
玉糸と紬糸が織りなすウールのような地風の絹織物。
平織と綾織があり、柄は、大柄な縞と格子が主体。厚手の手織紬で、紬織を現代感覚で織りだしたもの
古くから遠州木綿の産地だった浜松の織物産業も、大正末期の経済不況により衰えた。
ざざんざ織は昭和初期に、節のある絹の玉糸と真綿から手引、手織したユニークな織物が考案されたことに始まる。考案者は平松実氏で、平松家は代々、遠州木綿の織屋であった。
ざざんざの名は室町幕府の六代将軍・足利義教が狂言「茶壺」の、「浜松のおとはざざんざ」と謡った「颯々の松」から名づけられたといわれている。この故事からざざんざ織は、また、茶道の関係者に人気がある。ざざんざ織は、昭和の新伝承織物といえる。

・さじかっぷ [佐志葛布]

織物の名称・佐賀県唐津市
古来葛は衣食住万般にわたる有用植物として重宝がられたものである。木綿が普及したあとも,山間離島に葛布の紡織が残っているのも決して不思議なことではない。佐志は,佐賀県唐津市の農村地帯である。数年前までほ数人の姐が葛布を織っていたが,現在では技術の伝承者は一人だけである。 
葛の茎から採った繊維で織った名古屋帯です。葛布といえば、主な産地として静岡県掛川市が有名なのですが、当地の葛布はそのほとんどが経(たて)糸に絹を用いています。つまり原材料の約半分は絹ということになります。それとは対照的に、コチラ唐津で細々と、丁寧に織られたこの葛布はそのすべてが葛の繊維からできています。しかも織り、糸の染めまでコダワリを見せるこの作品、写真でうまく表現できていないのは残念ですが、あのゴツゴツした葛の茎からは想像を絶するしなやかさと光沢です。お目にかかることがあれば是非お手に取ってその温もりをお確かめ下さい。

・さしこ [刺子]

綿布を重ね合わせて、一面に一針抜きに細かく縫ったもの。衣類を出来るだけ長持ちさせる為に入念な繕刺が必要でありその技法を刺子という。使用の激しい衣類の補強としてあらかじめ新品のうちに刺し縫を施しておく方法。柔剣道着や消防服にみられる。民芸品として帯や着物に応用されている。また、刺子のような外観の刺子織というおりものもあり、風呂敷や座布団などに用いられている。

・さしこぎん [刺しこぎん]

刺しこぎんは青森県弘前市付近を中心に中、南、北の各津軽郡の農村で古くから行われた土地独特の風習に育った民芸品で、そのすぐれた刺繍技術は世界的にも認められている。半年は雪に埋もれて暮す主婦や娘たちは、耐久力と防寒のため野良着の胸と肩の部分を麻地に木綿糸をもって精巧な幾何学模様を刺し続けていた。それは質素ではあるが、不思議にも独特の風趣とパターンの華やかさを表しており、しかも生地は万遍なく補強するので強靭な労働着となった。その刺繍法【(小衣刺=こぎんざし)・織り糸をすくってできたもよう】を新しい材料により今日の用に生かそうとしてなったのが津軽こぎんといわれるいわゆる小物類だが、茶羽織、帯地、ハンドバッグなどがある。

・さしこばんてん [刺子半纏]

刺子を施した丈夫な半纏のことで、主に火消しや鳶職が用いた。

・さしぬい [刺し繍]

刺繍技法の1つ。模様の輪郭線上に針足を揃え、内側へ刺し込み、色の濃淡、糸の太さなどで変化をつけ、絵画的な花や鳥などを表わすのによく用いられる。

・さしぬき [指貫]

中古に用いた男性用の袴のこと。裾を紐で指し貫き、すぼめて着用したところからこの名がある。紐を膝の下ですぼめる場合は上くくり、かかとの上ですぼめる場合は下くくりといい、くくり緒の袴、奴袴(ぬばかま)などとも呼ぶ。主に綾絹や平絹で仕立てられた。

・さじもめん [佐治木綿]

丹波布のこと。明治の末頃まで地元では佐治木綿とか佐治紬・佐治縞、縞貫といわれてきたもので、 近くの畑からとれる綿を紡いで糸としハンノキやヤマモモの木の皮や栗の実の皮等の草木で染めそれを織ったものをいう。木綿の織物の緯糸に絹のつまみ糸を交織し、色目は藍、茶、緑の濃淡に白を含めた四色の見事な組み合わせによって織られた美しい縞織物です。明治末期には途絶えていたものを戦後になって「丹波布」と称して復元されるようになった

・さしぶせ [挿し伏せ]

ゴム糸目と、糊伏を合わせた加工方法の総称。

・さしふせゆうぜん [挿伏友禅]

「書染友禅」の一種。所要の模様を順次彩色していくことである。まず、青花で下絵を描き、そのまわりを糯糊(こめのり)で囲んで他の部分と混じらないようにし、その上に糊をかぶせて(伏糊=ふせのり)から織物全体に染料溶液を「引き染め」して地色染めし、最後に水洗いして糊を落す。

・さしわけちゅうがた [差し分け中形]

注染中形の一技法。中形(浴衣)は、普通、藍の一色染だが、模様を複数の色をつけて表現したいときに、部分的に色を差して別染することをいう。多色染の中形の染色方法。

・さだめこもん [定小紋]

江戸時代に各大名が、それぞれの藩専用の小紋柄を裃に染めて、登城するときに着用したためにこの名がある。裃小紋ともいう。

・さっかー [サッカー]

縬織(しじらおり)といって経糸の幾本づつかを長くしておいて、製織の際これをたるませ布面に凹凸を起こさせて特殊な柄合いを出すとともに、冷涼な感じを起こさせるもので、主として盛夏の婦人服地に用いられる。柄は格子や縞が多い。和服では夏季の浴衣地などに応用される。

・さつまがすり [薩摩絣]

織物の名称・宮崎県都城市/鹿児島県鹿児島市
薩摩(現在の鹿児島県西部)で織られた絣の木綿織物で、「琉球絣」を元にして織られています。藍染めの経緯絣で、紺地や白地の精緻な絣柄が特徴の最高級品で「紺薩摩」とも呼ばれます。
藩政時代、琉球は薩摩藩の統治下にあり、琉球の織物は薩摩を経由されて売り出されていたため薩摩の名で呼ばれていました。元禄年間(1736~1740)に鹿児島でも織られるようになり、戦後は宮崎県都城市を中心に織られています。
絣柄の、藍染木綿織物。高級木綿絣織物として知られる。紺地のものを紺薩摩、白地に紺絣を白薩摩という。
天文年間(一五三二~一五五五)に薩摩紺織という、無地や縞柄、簡単な絣柄などの藍染木綿が織られていた。
鹿児島産の薩摩絣が織られるようになったのは元文年間(一七三六~一七四一)のことである。それまで薩摩藩は、藩に属する琉球(沖縄)産の琉球絣を薩摩絣として販売していた。
第二次大戦後の薩摩絣は、大島紬調の絣柄である。

・さつまじょうふ [薩摩上布]

織物の名称・
宮古上布のことである。宮古上布と産地名でよばれるようになったのは第二次大戦後になってからである。それまでは藩政時代、琉球は薩摩の支配下にあり、琉球の織物は薩摩を経由したので、その名称がそのまま戦前まで続いていたのであった。

・さてん [サテン]

繻子織のこと。繻子の項参照。

・さなだ [真田]

幅の狭い織物、狭織(さなだ)のことで、綺(かむばた)ともいう。平打ちまたは袋打ちした扁平の組み紐。これを帯にしたものを「真田帯」、細幅織物を「真田織」という。

・さなだひも [真田紐]

紐の一種。組み台を使って、平打ちか袋打ちした、扁平な巾のせまい組み紐のこと。または、機械を使って織った巾のせまい織紐のことをいう。真田、真田編みともいう。桐製の道具箱によく用いる。

・さのちぢみ [佐野縮]

織物の名称・栃木県佐野市周辺
綿縮みとは綿縮(めんちぢみ)とは、経糸(たていと)に普通撚り(より)の綿糸、緯糸(よこいと)に強撚(きょうねん)の綿糸を用いて織り上げた後、のり抜き、精練(せいれん)して布面にしぼを出した、綿のちぢみ織りのことをいいます。綿縮には、岩国縮(山口県)や銚子縮(千葉県)、佐野縮(栃木県)、高島縮(滋賀県)、大垣縮(岐阜県)、徳丸縮(石川県)、相馬縮(福島県)などの種類があり、盛夏用の着尺地などに用いられます。

・さびいと [錆糸]

糸巻などの錆が付着した糸でこれを知らずに緯糸として織り込んだ場合、汚点が絣状に横方向に現われることがある。錆糸入りとして不用品である。

・さべりおり [山辺里織]

織物の名称。新潟県村上市山辺里(岩船地方)絹織物の一種。さわやかで、しゃっきりとした風合いの織物で、おもに男性用の絹袴地として用いられる。「山辺里平(さべりひら)」という。平織、綾織、絽織があり、紺地に茶、またはねずみ色の縦縞が多い。文化年間(1804~1818)から織られている。「村上平」ともいう。糸づかいは、本練と半練の二種類がある。また洋服の袖裏地などに用いられたので、のちに「サベリ」として裏地の通称となった。

・さまーうーるきじゃく [サマーウール着尺]

「ウール御召」の盛夏用のもので、薄地あるいは「ポーラー織」などで清涼感を持たせたものである。八王子および西陣で最も多く生産される。

さめこもん [鮫小紋]

小紋染の文様の1つ。鮫皮(さめがわ)のように、生地面に細かい白抜き状の点を染め出したものの代表。一見無地風にみえるが、裃(かみしも)に多く使われた。洋服地でシャークスキン(鮫肌)というのは鮫小紋の表面(織り方)にしたもの。

さやおりもの [紗綾織物]

絹織物の1つ。地が平組織で文様が経の四枚綾のもの。白生地の地紋にも見られる。糸づかいは綸子とほぼ同様だが、紗綾の方が薄い。

・さやがた [紗綾形]

さあやの略。卍形を種々に結合させた連続模様をいう。古典模様。雷文、稲妻形ともいう。「綸子」に良く似た「紗綾」という織物(紗綾形綸子)の図案によく利用されるためこの名が出た。

・さよみ [貲(布)]

奈良時代の布の1種で、麻を原料とした平織物。植物繊維製品としては最も上質とされている。糸は細く、太さも整い、薄くて軽い。肌触りも良い。さよみぬのともいう。

・さらさ [更紗]

南蛮から渡来した模様染めの綿布で、草花模様や幾何学模様を、総柄で捺染したものの総称。現在わが国では「友禅」「小紋」「中形」などの特殊の模様染めを除き、主として綿布に数色の暗色の多い配色で草花模様、幾何学模様を総柄で捺染したものを総称している。語源はポルトガル語のSaraca、インドの地名Surat などから出たといわれるように、桃山時代西欧人によって伝えられたものである。染法は種々あり、型紙で「摺込染」による「摺込更紗」、刷毛や筆で「描き染」にする「描き染更紗」、蝋を用いる「ロウケツ更紗」などである。絹布に染めたものを特に「絹更紗」と称する。現在では染法よりむしろその模様図案の感じをいう。和装では帯側、羽織裏などに、また風呂敷や布団側に多く見られる。
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・さらし [晒]

綿、麻の糸や織物を純白にする工程、およびその製品をいう。 化学薬品(晒粉)を用いて行うものと、天日晒といって自然の日光、空気、水によるものとがあるが、後者は現在ほとんど見られない。普通晒のほか、蛍光染料を用いた「蛍光晒」なども盛んである。浴衣地などはすべて晒した後染色する。

・さらしもめん [晒木綿]

漂白した木綿のこと。小幅の手織綿布で古くから知多晒が有名。肌着、幼児寝巻などに使われ、衛生材料としても使用

・さらせんもよう [サラセン模様]

模様の名称。サラセン帝国(7~8世紀アラビアのイスラム教国)の建築装飾などに多く使われている模様。代表的なものに唐草模様、幾何学模様がある。

・さりん [紗綸]

薄地の綸子のこと。俗に「しゃりん」ともいう。

・さわちどりもん [沢千鳥文]

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・さんがいまつもん [三階松文]

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・さんけち [三纈]

染色の名称。奈良時代の代表的な三種類の模様染のことをう。きょう纈(きょうけち)(現在の板絞り染)、纐纈(こうけち)(絞り染)、﨟纈(ろうけち)(蠟染)の三つの技法の総称である。現在、正倉院の染織品の中に見ることができる。

・さんげんしょく [三原色]

色混合で作り出せない、基本色となる色(赤、黄、青)、この三色を混合することによって、すべての色を作り出すことができる。

・さんげんそしき [三原組織]

「平織」「綾織」「繻子織」の三種の織り方は織物の組織の基本であり、他のすべてはこの組織からの変化あるいは組み合わせである。

・さんじゃく [三尺・三尺帯]

男帯の一つ。古くは三尺の手ぬぐいを用いたことからその名がある。また、子供用の兵児帯のことも三尺という。また、三尺手ぬぐい、三尺帯の略称。

・さんすいもん [山水文]

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さんせいせんりょう [酸性染料]

動物性繊維である絹や羊毛を染めるのに多く用いる染料。染料の構造上、酸性の性質を含むところから、こう呼ばれている。

・さんとめじま [棧留縞]

縞綿織物の一種。薄い木綿地に細かい縞を織り出したもので、徳川初期にインドのサントメ(Santome)からわが国に渡来したのでこの名がある。「唐棧縞(とうざんじま)」ともいう。
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・さんのひだ [三の襞]

袴のひだの名称の一つで男袴の前部の中心のひだの事。女袴、男袴ともひだの外側から一のひだ、二のひだ、三のひだとよぶ。

・さんぶひも [三分紐]

三分紐とは幅が三分(約9mm)の平組みの細いタイプの紐(帯締め)で、帯留めでおしゃれをするときに使うもの。結び目や紐の端は、結んでから後ろに回してお太鼓などの帯結びの中に処理し、見えないようにする。帯留の紐は、戦前には細い二分紐もあり、現在では幅1cm以上の通常の帯締めを用いる場合もあるが、この三分紐が一般的である。帯留との配色、調和を考えることが大切。

・さんぼくしなぬの [山北科布]

織物の名称・新潟県岩船郡山北町
科の木の樹皮繊維で織った布。染料による染色はせず、科の木本来の色のまま織りあげるので、黄褐色をしている。木綿、麻よりも古い織物。かたくゴワゴワしているが、しなやかで強くさらりとした感じがある。科布の歴史は古く、一千年以上も昔から日本各地で自家用として織られていた。しかし明治維新後、近代化が進むにつれて姿を消し、現在では二、三か所の山里でひっそりと織り続けられている。樹皮の糸である科糸は動力機械で織ることができないので、居座機で手織で織る。

・さんぼんろ [三本絽]

絽織および越数の項参照。

 

 

・じあい [地合]

織物の地風の具合をいう言葉。織物はその使用糸や織り方、加工などによって生地の外観や手触り、密度などがさまざまに変わってできる。その具合を示すもので「地合が良い」とか「地合が堅い」などと使われる。

・じあげ [地揚げ・地上げ]

紋織りのとき、綾文を織る場合に綜絖(そうこう)装置によって地糸を表面に浮き上がらせることを地揚げという。

・じいと [地糸]

織物の地を構成する糸。先染織物の地色となる、無地の糸のこと。模様を表すための絣糸(絣模様の場合)や縞糸(縞模様の場合)などに対する語。また、紋織物では、搦(から)み糸以外の糸をいう。経の地糸を地経(じたて)、緯の地糸を地経(じぬき)という。

・じいれ [地入]

染色上の用語。「下付(漬)け」「下引」ともいい、染色の準備工程の一種である。織物に布海苔、アラビアゴム液、豆汁などを刷毛引きして染液の浸透を助け、色相を鮮明にするために行う。また「灰汁漬け」をいう場合もある。

じいろ [地色]

模様や柄以外の部分の色。しごき染・引染などで染められた色。きものの地となる色。模様の部分は目色という。無地の場合は、地色とはいわず、色という。

・じえり [地襟]

着物の襟のこと。襟の上にさらに、共布を用いて掛ける衿を掛け襟といい、これに対して身頃に縫い付ける襟を地襟という。

・しおざわおめし [塩沢御召]

→ほんしおざわ参照。

・しおざわつむぎ [塩沢紬]

織物の名称・新潟県南魚沼市塩沢町
付近で生産されている御召風の紬のこと。新潟県の塩沢産地の織物の歴史は古く、奈良時代に織られた当地方の麻布(現在の越後上布)が奈良の正倉院に保存されています。この麻織物の技術技法を絹織物にとり入れた織物が塩沢紬で、江戸時代に織り始められました。

・しおぜ [塩瀬]

塩瀬羽二重の略で、厚地の羽二重のことである。経糸に細い生糸を使い、緯糸に濡らした太い生糸(ぬれ緯糸(ぬれぬきいと))を使って平織にした後精錬した生地。多く横畝(うね)がある。主として帯地に用いられるが、他に半衿、袱紗、羽織などにも用いられる。模様を織り出した紋塩瀬、合繊でも塩瀬風に仕上げたテトロン塩瀬などがある。

・しおぜはぶたえ [塩瀬羽二重]

普通羽二重は疋280~300匁(1050~1125g)を重目とするが、これよりさらに目方をつけ(330~400匁=1250~1400g)塩瀬風に織ったもの。昔は「着尺」「羽尺」にも使用されたが、最近は多く帯地として用いられ、「描き染」による「染名古屋帯」などに利用されている。産地は福井、石川(北陸地方)、新潟五泉が有名。練り上げ白生地で1疋単位目方で取引されるか、名古屋帯一本分(鯨尺4.5m)に裁断して取引される。

・じおり [地織]

地組織があって別の糸を織り込む場合、別糸に対して基本の布になる織地をいう。その場合の経糸、緯糸をそれぞれ地経(じたて)、地経(じぬき)ともいう。

・しかがずり [鹿絣]

越後地方で産出した絹織物。経緯の小柄で紺・黒・鉄などの地に黄色または白のやや粗い絣を織り出したもの。

・じがみもん [地紙文] 

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・しかもん [鹿紋] 

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・しきくさばなもん [四季草花文]

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・しきしつぎ [色紙継ぎ]

布地が弱ったときに、共布または表地になじむ同色の薄い布を裏にあて、表に針目が目立たないように一目落しまたは二目落しで刺し継ぎすること。

・しきしもん [色紙文]

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・しきのし [敷伸し]

和服をたたんで畳ござの間におき、その上に重しをして皺を伸ばし、衣服の形に整える方法の一種。アイロンが使われる以前は敷伸しや寝押しの方法が用いられた。現在でも繊維の種類や仕立てによって効果もあり、簡易なので行われている。

・しきふく [式服]

儀式に着用する衣服の総称。礼服、礼装に同じである。女性の場合、既婚者は留袖(裾模様、紋付)、未婚者は振袖、男性は紋付羽織、袴を着用する。

・しきもよう [四季模様]

模様の名称。四季の季節感を表す風物や、草木や花などを、一枚のきものの中に盛り込んだ模様の総称である。一つの季節にこだわることなく着用できる利点があり、広く用いられている。高価な振袖や留袖に多くみられる。

・しくんしもん [四君子文]

竹、梅、蘭、菊の四つを揃えた文様のこと。吉祥文様として広く用いられている。
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・しごき [扱き]

帯の一種。扱き帯の略称。並幅のまま縫わずに扱いて締めるのでこの名がある。花嫁衣裳、七五三の女児の祝い着に使用。男児の兵児帯のことを言うこともある。

・しごきぞめ [扱染]

引染・浸染などに対する語。友禅染などの時、文様の型糊を置いた後、地色を染めるために、色糊を扱きベラで布面全体に塗る。その後、挽粉をふり、乾燥させてから蒸熱する。

・しごく [扱く]

縫ったりくけたりした後で、糸と布均合いを良くするために、親指と人差し指で布をなでることを意味する和裁用語。いとこきともいう。

・しこんぞめん [紫根染]

染色法の一種。紫根(紫草ともいう)は。関東、東北、四国などの各地の山野に自生する多年草。その宿根(4、5年に生長したものが最も多量の色素を有している)を紫染に用いるところからこの名がある。
この紫根から染液を採り、あらかじめ灰汁で処理した布を浸し乾燥させる。これを何度も繰り返して紫色を得る。現在は、岩手県の南部紫根染が有名。

・ししゅう [刺繍]

刺繍は糸で模様を表現するので立体的で、とても豪華な印象になります。刺繍をする帯地としては、斜子(ななこ)織、繻子(しゅす)織、紋織、綴、金箔・銀箔の無地などを用い、手刺繍や機械刺繍の加工がなされます。技法では糸の光沢を活かした「すが縫」、糸に結び目を作り点によって模様を表現する「さがら縫い」が多く用いられています。中国の蘇州(そしゅう)刺繍なども有名です。

・しじら [縬・縬織]

織物の名称。布地の表面に、縦方向の縮みを表した縮織物。縮は張力の異なる二種の経糸を用いる場合、太さの異なる二種の経糸を用いる場合、二種の異なる組織を用いる場合などがある。主に放つようの着尺として用いるが、阿波縬(徳島県)が有名である。

・しじらかんとう [縬広東]

間道の名物裂。白地に黒茶の細い縦横格子の縞で地にシボのあるもの。

・じしろちゅうがた [地白中形]

中形の一種。地が白で模様の部分が藍染になった、中形染のことをいう。それに対し、模様が白いものは地染中形という。

・しずり [倭文布]

太古の織物の呼び名。志豆波多(しずはた)または志豆利(しずり)ともいい、志豆は筋の意味。

・しそう [紫草]

植物染料の一種で、紫根(しこん)と同じ。

・じぞめ [地染め]

染め物や紋織りなどの模様以外の部分を地といい、地の色(地色)を染めること、および染めたものをいう。

・じだいぎれ [時代裂]

現存している昔の裂のことをいう。正倉院裂、法隆寺裂灘度がある。古代裂、名物裂ともよぶ。また、室町時代までに中国から伝来した、貴重な染織品の断片の総称。現存する、古くてめずらしい裂のこと。

・したえ [下絵]

絵模様の下描きのことで、布地に染色や刺繍を施す前にその図案を、青花を用いて、細筆で下描きすること。または下描きしたものを言う。

・したえば [下絵羽]

⇒仮絵羽(かりえば)

・したぎ [下着]

上着に対する語で、上着の下に着る衣類の総称。長襦袢や肌襦袢などのことをさす。また、表着と同じ形に仕立てられ、表着の下に重ねて着るきもののこともいう。これは襲下着ともいう。かつては、礼装の留袖には白の下着を一枚重ねた。しかし現代では省略して、比翼仕立てといって、衿や袖口、振りや裾の見えるところだけを重ねたように見せる仕立てが主流である。

・したぞめ [下染]

2色以上の染料を重ねて染める時、先に染めることをいい、上掛〈ウワガ〉けに対する語。引き染で、濃い色を染める時、1度にその濃度で染色せずに、ある濃度で1度引染する。その後、目的の濃度に上げて引染する。その時の先に染めることをいう。

・したてかえ [仕立替]

もとの型から違った種類にリフォームする意味と単に仕立て直しの意味とがある。仕立替、仕立て直し上の注意及び工夫としては、①表裏の無い両面物なら裏返しをする。②袖口と袖付けの交換。③前後身頃を入れ替える。衽の天地を替える。④後身頃の帯下になるところから切って袖にする。⑤着物の膝や居敷が破れた場合は羽織に。⑥着物→羽織→コートのリフォームが可能だが、最近ではあまり見かけなくなった。

・したてや [仕立屋]

裁縫を業とする家、又はその人。洋裁に対し和裁の場合は和裁士という。仕立ては染物、織物の最終工程で「きものを生かすも殺すも仕立屋しだい」というふうに高価な着物の最終工程として重視されている。

・したまえ [下前]

和服の部分名称。右前身頃のことで、きものを着るとき下側になる身頃のことをいう。上前に対する語

・しだもん[羊歯文] 

文様名 →紋様のページへ

・しちごさん [七五三]

祝儀に用いる数で1・3・5・7・9の奇数をめでたいとしてその中の三つを取ったもの。数え年の3才、5才、7才の祝いなので七五三という。11月15日に氏神に参る。正装は和服。3才は髪置の祝。男児は熨斗目模様の着流し。女児は友禅縮緬の4ツ身の着物に錦の帯。五才は袴着の祝い。七五三のうち、男児だけの祝い。羽二重の紋付に羽織・袴・白足袋・畳表の草履。衣服の模様は熨斗目。七才は帯解の祝い。女児の祝い。今まで着ていた付紐のついた着物の付紐をとって腰帯(腰紐)を締める。仕立も四ツ身でなく本裁にして肩揚、腰揚をする。友禅縮緬で二枚襲の振袖に仕立てる。

・しちぶこーと [七分コート]

長コート、半コートの中間のすんぽうのものをいう。

・しちぶねり [七分練り]

生糸の精練法の一種で、絹繊維に付着するセリシン(膠質=にかわしつ)を70%前後除くもの。なお若干のセリシンが残っているため、出来上がりはやや堅い感じである。本練に要する精練剤の量を多少減じて行う。練減量は15~17%程度となる。

・しっかい [悉皆]

悉皆とは全部という意味で、染色、染め直し、シミ落し、洗張り、仕立てなど染織に関する一切を請け負い調製すること。また、その業者を悉皆屋という。必ずしも自分ですべて行うのではなく、各職先を回って段取りをつけて行う。

・しっかいぎょう [悉皆業]

誂悉皆屋と仕入れ悉皆屋と呼ばれる二種の業種に分かれている。悉皆業とは、京都に於いては模様染色の請負業とも言うべきものである。誂悉皆屋は、一般の個人や呉服店などの注文によって、その好みの模様染(無地染)を引き受け、仮絵羽、下絵師、糊置、染色、蒸し屋など、黒紋付に於いては、紋糊、紋洗い、のし、張り、上絵屋等の職人を使って製作し、工賃、手数料の一切を依頼者より支払いを受ける業のことである。素人悉皆ともいう。
また、仕入れ悉皆とは、問屋や商社の注文によって多量に製作をする業で、玄人悉皆ともいう。いわゆる悉皆とは、工賃手数料等一切という意味である。
また、時には洗い張りまたは、他の染物染め直し等を引き受けるこことも含まれる。

・しつけ [躾]

縫い目や折りや、きせを固定しておくための仮の押え縫をいい、その作業を「躾を掛ける」という。布地との均合上、絹物にはぞべ糸という甘撚の絹双糸を、銘仙・モスリン類にはガス躾糸を用いる。躾の主な目的は、①次にする作業をしやすくする。②袖口、裾、褄下等、着用の直前迄仕立上がりの状態を崩さずに保持する。③ぐし躾、かくし躾、かざり躾などの着用中も形崩れを防ぐ為に取り除かない躾もある。④躾の種類としては一目落し(拍子木しつけ)、二目落し、三目落し、縫いびつけ(ぐしびつけ)、かくしびつけなど。

・じっとく [地十徳]

古服の名。僧服の直綴(じきとつ)から転じた語。素袍(すおう)の両脇を縫いつけ、菊綴じ(とじ)をつけて腰から下にひだをとり、袖を広くしたもので、家紋を縫いつけたものもある。
鎌倉時代の末ごろにはじまり、室町時代には旅行着として広く用いられた。江戸時代には礼装として僧、医師、儒者などが用いるようになり、庶民は用いなくなった。黒無地の絽、紗などでつくられ、胸紐が付いており、竹はひざくらいで、羽織のように羽織って着た。現在の羽織の祖型ともいわれている。今日では、茶道の男子専門家が着用している。

・しっぽうつなぎもん [七宝繋文]

一個の輪に四個の輪を四すみに重ねた文様で、輪違い文ともいう。またこれを四方襷(たすき)とよんだり、十方(なまって七宝という)とした。数多くつないだものを七宝つなぎという。七宝とは仏典にでる七つの宝石のことで、これを模様化したもの。室町時代に中国から伝来したといわれる古典文様であるが、現在も帯地、小袖などに広く用いられる。

・じなおし [地直し]

仕立てにはいる前の大切な作業。とくに表地と裏地の縮み率に大差があるときは、縮み率の大きい反物に徹底した地のしが行なわれる。→じのし

・じなしもよう [地無模様]

模様の名称。桃山時代末期から作られ、慶長年間(1596~1615)に大流行した小袖模様のことである。地が見えないほど全体に刺繍、絞り、摺り箔を施したことからこの名がある。この小袖を地無小袖という

・しなぬの [榀布・科布]

「まだぬの」とも呼ばれる古布で、科木の樹皮から繊維をとって織ったもの。地風は固いが強靭でさらりとしており、かつては各地で織られて労働着とされていたが、現在では希少な織物とされる。和装では帯に使われる。

・じぬき [字抜き]

誂品に持ち主の名前をゴム糊で防染し、白く染め抜くことをいう。通常下前の衿先裏側に名前だけを入れる場合が多い。これに対して、仕入れ商品の反物には予め四角い白抜きの衿字抜きを施しておく。

・じぬき [地抜き]

色無地または模様物を黒に染め直す場合、先に染めてある色や模様の影響で、黒が悪くならないようにするために、染める前に色や模様をぬいておくことをいう。

・じのし [地伸し]

衣類の用布を裁断する前の処理の一つとして、布目を正しく整え、耳のつれを伸ばして平らにすること。

・しのぶぞめしぼり [忍染絞]

昔の絞り染めの一種。別名「箱絞り」といい、忍染器(縁付き盆のような器具)を使用して、簡単に布面に優美な漣模様を出したもの。

・じのめ [地の目]

 反物の経(たて)・緯(よこ)の糸の目のこと。

・しのん [シノン]

蛋白性繊維で東洋紡が開発した合繊和装素材。絹同様のしなやかな風合いと光沢で、優れた染色性が特徴で、留袖、染め大島、喪服、雨コートなどの表物から裏物として用途が広い。

・じばた [地機]

原始的な手織り機の一種。経糸を織手の腰に取り付け、張り具合を調節しながら織る。居座り機、下機ともいう。それに対し、枠に経糸を取り付けて織り手が腰をかけて織るものを高機という。

・じばり [地張]

型紙捺染の準備工程のひとつ。捺染板の両面に糯米糊を塗り(敷糊という)さらにその上に姫糊を薄く溶かして引き、繞染する布を張りつけることをいう。その両面、特に両耳をこっすってしわを伸ばし、布地を板面に密着させるため、桜樫などで作った拍木型の木片(地張木)を使用し、また布地を平均に広げるために横約12cm、縦約14cmの角を取った厚紙(地張紙)を用いて布面を摩擦する。布の表面に水を引き伸子(竹を丸く細く削ったもので織物の両耳に刺して幅を整えるもの=しんし)張りして生地のしわ伸ばしを行い、長さおよび幅をそろえることをいう。「水張り」ともいい、仕上げ後の生地の幅、長さをあらかじめ想定して行うもので、「紋付染」の地あつらえなどの準備工程である。

・しふ [紙布]

和紙を細く裁断して撚った糸で織り上げた布のこと。経緯ともに紙を用いたもの。緯糸だけに紙を用いて経糸は絹や麻、木綿糸のものもある。現在では希少性が尊ばれ、趣味的な着尺や帯地などに用いられる。

 ・じふう [地風]

布地がもっている風合い、味わいのこと。

・しふぉん・べるべっと [シフォン・ベルベット]

シフォンとは絹モスリンという言葉で、特にこれらをやわらかく仕上げたものを指す。シフォン・ベルベットはこのシフォンの感じを持った「ベルベット」。地は本絹糸で表面の毛羽糸に人絹糸を用い柔らかな地風をもつ。肩掛け、コートなどに使われ、新潟県十日町、京都西陣が主産地

・しぶがみ [渋紙]

和紙に柿渋を塗布し耐久性を高めた紙のことをいう。原紙の大きさは8丁判(54×90cm)で、薄手から厚手まで用途により様々な厚さがあり、10番、15番などと表され、数が大きくなるほど厚手になる。主に反物につける渋札や板場友禅の型紙に用いられる。渋札や、摺り友禅用型紙には薄手を、型友禅は型伏糊用には糊層が必要なため、厚手のものが用いられる。しかし、最近では、プラスチックシートや、写真型に代わってきている。

・しぶかわふとおり [渋川太織り]

織物の名称
群馬県渋川地方で産する平織物。縱糸に玉糸、横糸に熨斗(のし)糸などを使ったもの。

・しぶき [渋木]

渋木は、日本の南部に産する「楊梅(ようばい)」の樹皮を熱水溶出した煎汁のこと。「楊梅」は、「やまもも」とか「桃皮(ももかわ)」などとも称し、代表的な茶色系の植物染料である。信州紬、大島紬、秋田黄八丈などの植物染料として、古くから現在まで多く用いられている。渋木に含まれるタンニン、煎茶の「渋みの素」ともいわれ、自然界のきわめて多くの植物に存在する。その大部分が黄褐色から黒茶色系統の植物染料として用いられる。

・しぶふだ [渋札]

渋紙で作られた生地の端につける指図札のことをいう。染色時の熱や水分によって普通の紙ではすぐに破れるために和紙に柿の渋をつけて強くする。このしぶ札を使い染の種類、紋の種類、寸法等を書き示し、どこの商品化誰の注文かを区別する。
以前は墨書きが多かったが、最近では油性インクが用いられており、煮染(たきぞめ)の仕入れ商品では札が黒くなるために黄色などのインクで書く。

・しぼ[皺]

縮緬、御召、クレープ・デシン、錦紗などの強撚糸を用いた、織物の布面に表れた波状や粒状の皺のことで、そのしわの深さをしぼ立ちという。しぼは強撚糸の収縮を利用して、製織後にしぼ寄せをすることによってできるものであるが、左右の強撚糸(緯糸)を交互に規則正しく織り込むと両しぼ、左右のどちらかを織り込むと片しぼができる。普通、縮緬や御召は両しぼで、縮は片しぼである。

・しぼすれ[皺擦れ]

スレの一種。アタマズレともいう。生地にできている凹凸をシボというが、シボの山になる部分が水洗い時などにスレて起きる。一般的には簡単なスレなので、スレ直しで容易に直すことができる。

・しぼよせ [皺寄せ]

「シボ」というのは布面にあらわれる細かいシワで、これが御召の特故になっている。織り上がった布を湯につけると、緑糸の撚りが戻って、シワができる。この作業を「シボ寄せ」、あるいは「シボとり」という。 このシボによって御召の風合がきまるの で、丹念に行なわれる。

・しぼり [絞り]

染色技法の1つ。生地全面を均一に染めるのではなく、部分的に染めのこしを作る技法。染め残す部分をつまみ、糸でくくったり、針で縫ったり、強く圧迫したりして、染料液の中に浸して染める。染め上がってから、糸をほどくと、その部分が模様として表れる。

・しぼりゆかた [絞り浴衣]

絞り染で模様を表現した浴衣のこと。愛知県有松の有松鳴海絞りが有名で、藍染がほとんどである。

・しま [縞]

線で構成する模様の総称。二種以上の色糸を用いて織物の経、緯、経緯に筋を織り出したもので、竪縞、横縞、格子縞、斜め縞と大別される。日本では古く竪縞を倭文市(しずり)、横縞を綺(かんはた)とよんでいたが、室町時代末期から江戸時代にかけて、南洋諸島から渡来した、筋柄の木綿織物を珍重して、島布、島渡りなどといい、略して島と呼んだことからこの名がある。現在では染の縞模様も染縞、縞とよぶ。
近世から「しま」に縞の字をあてるようになったが、縞という字は、中国で白絹や練絹を示す語であり、その字をあてた経緯はさだかでない。
縞の種類は、太さや組み合わせによって千筋、万筋、棒縞、大名縞、子持ち縞、滝縞、よろけ縞などがある。また、」縞」が縞織物自体をさすこともある。産地名を冠したものが多く、上田縞、小倉縞などがある。

・しまいばかま [仕舞袴]

袴の一種で襠(まち)のある袴のことをいう。能楽に用いられ、笹ひだが深く襠が低いのが特徴。また流儀により、ひだ山を縫いとめることもある。

・しまおめし [縞御召]

縞柄を織り出した御召で、もっとも御召らしい御召である。その起源は江戸時代「柳条縞緬」として、関東の桐生にはじまるという。つまり徳川家斉の御召物とされて著名になったわけで、現雀の「御召」の源をなすものといってよい。男女の区別なく、また年齢を問わず、粋なきものとして愛されている。

・しまぬきもめん[縞貫木綿]

丹波布(佐治木綿)

・しまちりめん [柳条縮緬]

江戸時代の天和年間(一七八一~一六四二)頃から織られた縞模様を織り出した縮緬。この「縮緬」は天正年間(一五七三~一五九二)に中国の織工が和泉(大阪府)の堺へ渡来して技術を伝え、それ以来、国産されるようになった。「縞縮緬」とも書いた。

・しまばらづまもよう [島原褄模様]

柄の付け方からの名称。 画像と解説はこちらへ

・しまばらもめん [島原木綿]

織物の名称・長崎県
幻の反物と云われる「島原木綿」は有明の湯江川沿いでトンパタトンパタ音を響かせて織られておりました。
たて縞柄が特徴である「島原木綿」は生地が丈夫であることが知られ、国外まで輸出されていました。
江戸時代から太平洋戦争後までの女性の衣服は、この生地が主流だったと云われております。
昭和63年、貴重な技術と伝統を伝承するため「島原木綿保存会」により復興され、現在も織り続けられています。

・しみぬき [しみ抜き]

洗濯では落ちにくい汚れをベンジンや稀アンモニア等の薬品を使って除去すること。

・しめきり [締切り]

絣柄の名。締切り絣の略称。経糸を数色に染め分けて、段模様を表した絣。糸を染めるとき締め付けて防染することから、この名が付いた。鎌倉・室町時代から江戸時代にかけて、主に武家男性の小袖や能装束に用いられた。現代のきものや帯にも生かされている。

・しめばた [締機]

絣糸を作るとき、防染法として綿糸まで織締めるための織機。綿糸を経、絣糸となるべき束を緯として、絣模様にしたがって部分的に織締める。大島紬などはこの代表。

・じもん [地紋]

紋綸子・紋羽二重・紋縮緬などの、紋織物で織り出された模様のこと。地模様も同じ。
小葵のように織物全体に配置した細かい続き文様。二陪織物(ふたえおりもの)の場合はこの上に上紋が作られる。

・じもんおこし地紋起こし]

生地に織り込まれた模様を生かした染色加工の総称。彩色や刺繍、箔などを、地紋に施こし、立体感のある柄に表現する。着尺、コート、羽織などに見られる。

しゃ [紗]

盛夏用の透ける生地で、キモノやコート地の染下生地になる。空間(すき間)の多い組織をもつため通気性がよく、光線の当たり加減で美しい埜目〈モクメ〉が表れる。柄を織り出した紗を紋紗という。非常によく透ける。

・しゃあわせ [紗袷]

絽、もしくは紗の生地の上に薄手の紗を重ねて仕立てた二枚あわせの着物や羽織のこと。裏記事の模様が表の社を通して見えるために独特の趣がある。従来は袷と単の境となる時期に着用されたが、近年は拡大解釈され、単のきものに準じて考えられている。

・じゃかごもん [蛇籠文]

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・じゃかたらじま [ジャガタラ縞]

木綿縞織物の一つ。ジャガタラはジャカルタから渡来した縞織物のことをいう。広義には唐桟(とうざん)も含まれる。

・ジャカード

フランスのジョセフ・マリー・ジャカール(1752~1834)が1800年に発明した紋織装置。小孔をあけた厚紙、数百枚を綴り合わせ大型紡(紋紙)を機の上に掛け、その紋紙による経糸の操作によって、複雑な文様を織ることができる。このジャカードが発明されたため、従来(ドビー織機)に比べて紋織の織る能率が4倍もアップしたといわれる。
 わが国へは明治五、六年、初めて京都西陣へ伝えられた。その後、明治20年頃までに桐生、足利、福井、米沢などに普及していった。現在の紋織機のほとんどはこれによって作られる。

・しゃく [尺]

装束の反物の幅、1尺は約37.8cm(鯨尺)。

・しゃくに [尺二]

尺二幅の反物。装束用の反物は一尺二寸の幅の生地が使われることが多い。

・しゃむそう [紗無双]

広義では紗袷と同じで、紗または絽に紗を重ねて袷仕立てにしたきものや羽織をさすが、「無双」は表裏同じ生地で仕立てたものをいうので、厳密には紗と紗を重ねたものをさす。

・しゃもんおり [斜紋織]

綾織」の別称。

・しゃれもん [洒落紋]

紋所の一つであるが、家紋ではない。多くは女性の好みによって作った花などの装飾的な紋で、伊達紋ともいう。

・じゃわさらさ [ジャワ更紗]

更紗の一種。ジャワ島を中心として生産される、蠟防染による模様染。インドネシアではバティックと呼ばれているが、バティックは、現在では蠟防染による更紗を指す、国際的な共通語である。溶解した蠟液を、チャンチンという銅製の道具にすくい、蠟液を出しながら布面に模様を描き防染する方法。
模様は、主として植物や動物、幾何学模様が多いが、中部地方ではヒンズー教、北部では中国、イスラム、ヨーロッパ文化の影響が濃く出ている。色彩も中部では青と茶色系統、北部では多彩色のものが多い。染料はかつての植物染料に代わり、化学染料が用いられている。

・しゅ [朱]

色の名前。天然には辰砂として産する朱色顔料であり、朱墨・朱肉・朱漆など様々の染色があり、古代朱は鎧兜など武具の紐に見られる。洗朱(あらいしゅ)は朱の薄い色であり、珊瑚朱は珊瑚から来た色名である。 朱色のページへ

・じゅうにしもん [十二支文]

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・じゅうさんまいり [十三参り]

儀式の名。京都で陰暦三月十三日(現在は四月十三日)に、十三歳の少年、少女が盛装して、福徳、知恵を授かるために嵯峨法輪寺の虚空蔵菩薩へ参詣する儀式のこと。これまで四つ身仕立てであったきものを、このときから本裁ちの振袖などを着せて参詣する。近年は全国に見られる。

・じゅうじがすり [十字絣]

絣柄の名。経緯の絣糸を交差させて、十の字形を表したもので、十の字絣とも呼ばれる。絣柄の基本的なもので、小絣、大絣まであり、木綿絣、絹織物、上布類に広く用いられている。

・じゅうにひとえ [十二単]

平安、鎌倉時代にかけての、宮中における女性の盛装で十二の御衣(おんぞ)ともいう。そもそも十二単は俗称で正式には、女房晴装束、唐衣裳姿(からぎぬもすがた)という。構成は唐衣(からぎぬ)、裳(も)、袿(うちぎ)、単で檜扇(ひおうぎ)、たとうなどを持つ。十二単といっても十枚、十五枚のものもあった。
後世、袿を五領(装束などは領と数える)重ねる五衣(いつつぎぬ)が一般的になっても、語だけが残り、江戸時代以降は、主に五衣に唐衣を着た晴装束を指すようになった。

・じゅしかこう [樹脂加工]

織物仕上げ法の一つで、合成樹脂液を布面に浸けこませて「防縮性」「弾力性」「防しわ性」「湿り気に対する強度」などを増加させる。

・しゅすおり [繻子織]

朱子織とも書く。織物の三原組織(三つの基本的な織り方)のひとつで各種の変化応用がある。経糸と緯糸の組織点が一定の間隔をあけて配置されている織物で素材はさまざま。やわらかく肌触りが良いが、糸が長く浮くので摩擦に弱く擦り切れやすい。 ビロードのように滑らかで光沢がある。綸子・緞子などがこれである。裏地などすべりを良くする織物はすべてこれによる。

・しゅちん [朱珍・繻珍]

繻子組織の地に多色の緯糸で文様を織り出した絹織物。中国にならって室町時代末ごろから織られ、幕末から明治時代にはもっぱら打掛や女帯に用いられた。現在では繻珍の帯は少ない。

・しゅっさいおり [出西織]

織物の名称・島根県
戦後、簸川郡斐川町出西で始まった織り活動は、地名に因んで出西織と名付けられた。出雲地方に新風を吹き込んだ民芸織物。工房を主宰する多々納桂子氏(昭和5年生れ)は、陶芸をめざしていた夫君・弘光氏の勧めで、昭和29年4月に倉敷民芸館付属工芸研究所の2期生として入所。外村吉之介館長から織物の精神性と手織り仕事の薫陶を受け、1年の修了で帰郷した。同研究所の同期生の井上佐登子氏と出西手織会を結成したが、新居を工房に綿・絹・毛の繊維素材で、着尺地・帯地・洋服地など現代の装いに必要な織物の制作をめざした。
 昭和48年1月から清冽な藍色の絞染で有名な片野元彦氏(昭和50年逝去)の助言のもと、工房に藍染場を設け灰汁発酵建てによる藍染を手がける。藍染にこだわる中から、すがすがしい絣織を主にした作品が産まれた。

じゅばん [襦袢]

和服用の肌着。元来は丈の短い半襦袢のことを指す。のちに絹製の長襦袢ができた。長襦袢は着物との間に着るもので、半襦袢と共に、単仕立てと袷〈アワセ〉仕立ての物がある。肌襦袢は四季を通じて単衣仕立。襦袢の語源はポルトガル語の gibao 。長襦袢は贅沢品で羽二重、綸子、絖などに絞染、墨絵、刺繍などをした豪華な物も作られた。そのため本来の肌着の役目を失って装飾化したため、肌襦袢を生み出した。

・しゅりおり [首里織・首里紬]

織物の名称・沖縄県/那覇市、中頭郡西原町、島尻郡南風原町
14~15世紀の琉球王国は、東南アジアや中国と盛んに交易を行い、その交流により織の技術を学びました。その後幾百年の年月を積み重ね、沖縄の気候風土に育まれた、様々な個性を持つ琉球織物が生み出されました。
その中でも、首里王府の城下町として栄えた首里では、王府の貴族、士族用に色・柄ともに究極まで追求された、格調の高い、悠々として麗美な織物が織り継がれ、現在に至っています。

・しゅりてじま [首里手縞

織物の名称・沖縄県那覇市首里当之蔵
格子縞に琉球絣を配した絹織物。
一反に五~七色の糸と、紅白あるいは紺白の二色をより合わせた糸(ムディー)を経緯に織り込む。紅白のムディーのある手縞は祝着用、紺白のものは日常用あるいは法事用として用いられた。
部分の色によって白玉(絣部分を白抜きしたもの)、黒玉(白地に色絣のもの)、色玉(色地に色彩絣のもの)の三種類がある。また、特殊なものとして藍の生葉染手縞もある(首里生藍手縞)。
十五世紀に尚氏が沖縄全島を統一すると、首里が琉球王朝の首都となり沖縄染色の中心地となった。
琉球王朝は中国、朝鮮、日本を始め、シャムやジャワなどの南方諸国ともさかんに交易を行ったので、王候貴族などの衣装には外国文化の影響が色濃く現れた。そうした輸入文化は、やがて沖縄独自の文化と融合して新しい染織文化を生みだしていった。

・しゅりなまあいそめてじま [首里生藍染手縞

織物の名称・沖縄県那覇市首里
原始的な染色法で糸を染めた絹織物。琉球藍を発酵させずに生葉で糸を染める。
絣入り格子柄を絽や紗に織る。
起源は明らかではないが、首里に古くから伝わる染色法である。
藍の発酵建てが行われるようになったのが奈良時代の頃とされるので、それ以前の技法が現在でも活かされていることになる。

・しゅりはなおり [首里花織]

織物の名称・沖縄県/那覇市、中頭郡西原町、島尻郡南風原町
花織は沖縄で古来から伝わる織物で、500年ほど前に中国や東南アジアから伝わってきたとも言われていますが、あまりにも古すぎてその起源は定かではありません。
絹糸を琉球藍・福木・モモカワ・サルトリイバラ・シャリンバイ等の天然染料で染め、刺繍のように絹糸を浮かせて織り上げる独特の織り方で織り上げています。
特にこの首里花織は琉球王朝の晴れ着として使われていました。
読谷山の花織の様に真綿風合いではなく、サラッとした風合いで裏糸も出ていません。
平織綜絖によって織り出される紋織の一種で、片面は経糸が浮き、片面は緯糸が浮織になっておりますが、両面、好みによって、どちらでも使用できる合理的な紋織です。

・しゅりはな [首里花倉織]

織物の名称・沖縄県/那覇市、
花織と絽織、紗織などを市松模様に織る紋織で、意図は半練の絹を使用した夏着です。沖縄ではこういう薄ものの布のことをトンボの羽のような美しい布と表現されております。

・しゅりみんさー [首里ミンサー]

織物の名称・沖縄県那覇市首里
首里ミンサーは、畝織と両面浮花織を併用して織られている。

・しゅりろーとんおり [首里道屯織]

織物の名称・沖縄県/那覇市首里汀良町
花織と同様この道屯織も中国から伝えられたといわれている紋織の一種で、両面とも経浮織になっております。昔は着尺ものでしたが、現在ではその技法は帯類に多く生かされているようです。
経糸を浮かせて織る紋織の一種。絹物と綿物がある。
経糸に二色の色糸を用いる。裏表とも経糸のみが浮く、両面使える織物。純植物染料で染めた糸を高機で織り、独特の砧打ちの技法で仕上げる。
一六五九年に中国から紋織の技法が伝えられて以来、長い時間をかけて沖縄独自の織物となり、宮廷の衣装や王府の官服として用いられた。

しゅろ [棕櫚]

ヤシ科の常緑高木。樹皮は強靭(きょうじん)で水や湿気に強いことから、縄・刷毛・帯・敷物などに用いられている。

・じゅんれいそう [準礼装]

正式礼装に準ずる服装のこと。染め抜きの家紋をつけた訪問着や色無地がこれにあたる。
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・しょいあげ [背負揚げ]

和装小物の一つ。通常、帯揚げという。結んだ帯の形を整え、結び目が下がらないようにするための布。薄地の縮緬、綸子、錦紗など、夏は絽や紗などを用いる。絞り染、ぼかし染、無地などがあるが、着物の色や帯、帯締めなどとのコーディネートを考えて用いることが大切である。礼装用として、慶事には白無地、喪服には黒無地か白無地を用いる。振袖には総絞りのものを用いることが多い。

・しょうあいぞめ・おうみもめん [正藍染・近江木綿

織物の名称・滋賀県
正藍染は、昔、阿波特産の葉藍を原料とした紺染であったが、その後四国の葉藍(はあい)を当地で栽培、その染め上がりは従来のものとは異なり、光沢および堅牢さに独特の味を発揮し、名声は全国に及んだ。近江木綿は、染織した糸を手織ったものである。最盛期の大正年間には各農家で織られていたが、現在では一軒だけになった。現在も藍の栽培から発酵、染色、織りまで昔の技法が守り続けられている。ハンカチなどの藍染体験も行われている。

・しょうあいぶしゅうこんおり [成藍武州紺織

織物の名称・埼玉県羽生市
経、緯糸ともに正藍で染める紺織物を指します。経糸には紅殻(顔料の一種)用いることもあり武州青縞ともいわれます。
古くから木綿と藍の栽培がさかんな地域で、天明年間頃から生産されていました。当時は、紺屋が糸をかって賃機にだして織られていましたが、現在では藍染めから製織までの一貫生産がおこなわれています。また、近代化により、藍瓶はタンクに代わり、正藍は割建て(植物と、化学藍の混合)にかわってしまいました。

・しょうけん [正絹]

混じりけのない絹糸、またはその絹糸で織った織物。本絹ともいう。人絹や絹との交織に対する語。

・しょうじょうひ [猩々緋]

色の名前。江戸時代に現れたい露命で能の猩猩等を連想する。また羅紗の陣羽織に用いる。
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・しょうそういんもんよう [正倉院文様]

奈良・東大寺正倉院の宝物に、多くみられる文様の総称。天平時代の文様が最も多いが、飛鳥、白鳳時代の文様も含まれる。正倉院はシルクロードの終着駅ともいわれ、ローマ、ペルシア、インド、西域、中国など西方諸国の影響を受けた文様が多く伝えられている。
文様は多種多様で、大別すると、動物文様(鳳凰、花喰鳥、くじゃく、おうむ、おしどり、鶴、鴨、獅子、虎、羊、象、鹿、馬、竜、きりん、うさぎ、亀)、植物文様(唐草、唐花、牡丹、ぶどう、宝相華(ほうそうげ)、蓮)、幾何模様(連珠、円文、亀甲、石畳、菱形)、自然現象(雲、月、日、星、海、山)などがある。

・しょうぞく [装束]

平安時代の公家の正装から、狩衣などの略装までの総称。古くは「そうぞく」といい、儀式や行事の施設を整備することを指し、季節によって変える調度品のことをいったが、その後、服装を整える意として用いられるようになった。
男性の装束は衣冠、束帯、布袴(ほうこ)、直衣(のうし)、狩衣などがあり、女性の女房装束、子供用の童装束などがある。

・じょうだいおめし [上代御召]

織物の名称
交織の特徴を生かした高級織物。縫糸に御召経と紬糸の二種を用い、紬風の素朴な地風を出している。紋織と紡織とがあり、色彩も柄も多様ながら、上品な街着に適している。
交織といえば、すぐ粗悪品と思いがちだが、これは素材によっては、すばらしい御召が出来るというよい見本だ。

・しょうちくばいもん [松竹梅文]

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・しょうは [紹紦]

名物裂の一つ。千利休の弟子、里村紹紦が所持していたところから、この名があるという。経、緯ともに強撚糸を用いて、細かい横の杉綾文や山形文状の地紋を出し、幾何学模様のほかに、花や唐子が遊んでいる様子を文様化したものもある。現代では帯地にも作られている。

・しょうぶ[尚武

米沢で産出した軽めの高級絹着尺で、経緯とも先染本絹撚糸を使った綾組織のもの。

・しょうぶもん [菖蒲文]

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じょうふ[上

上等な布の意。上質な麻糸を平織にし、薄手で軽い。明治以降は、原糸の品種にかかわらず、上布に似た薄手で、ややかたい風合の夏物着尺地を広く上布と称している。上質な絹を上布と呼ぶこともある。

・しょうへきが [障壁画]

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・じょうもん [定紋]

それぞれの家によって決められている、紋のこと。表紋ともいう。

じょく[褥]

中国でいうしとね(すわったり寝たりする時、下に敷く物)。敷物、ふとんなどを指す。

・しょくせい [織成]

平織組織の紋織で、綴織の一種。本来の綴織は緯畝の平織で、地を表す地緯糸を用いず色緯糸を織り返して織るためハツリ孔を生じるが、織成は地緯糸と文様を表す色緯糸の二種の緯糸を用いて交互に織るため、緯畝やハツリ孔が見られない。正倉院裂にも見られる技法。

・しょくぶつせんい [植物繊維]

天然繊維の一種。植物から採る繊維の一つで、長い管状をしている。種子毛から採るもの(木綿など)、茎からとるもの(亜麻、苧麻(ちょま)、芭蕉など)、葉柄から採るもの(マニラ麻など)がある。

・しょくぶつせんりょう [植物染料]

天然染料の一種。植物の根、樹皮、木質部、花弁、実、葉、茎などから取れる染料の総称。主な材料には藍、茜(あかね)、紅花、蘇芳(すおう)、紫、福木(ふくぎ)、くちなし、はまなす、ログウッド、うこん、丹殻(たんがら)、刈安(かりやす)、やまもも、きはだなどがある。これらは五千年も前から用いられており、日本でも人造染料が発達する明治14年頃まで用いられた。現在では、趣味的に使われることが多い。植物染料による染色を「草木染」と呼んでいる。

じょーぜっと・くれーぷ[ジョーゼット・クレープ

薄地の絹縮緬で、普通は広幅生地とし婦人用ドレス、カーテンなどに用いる。和装では春のショールあるいはその裏地に使用する。

・しょっこうにしき [蜀江錦]

錦の一種。かつて中国の蜀(現在の四川省。蜀江は、現在の同省成都付近を流れる揚子江上流のこと)でつくられた織物のことを蜀江錦といい、日本には天平年間に輸入された。現在も法隆寺の遺品の中に見られる。
その後も蜀江錦は継続して作られたが、中世になると模様は連続した幾何模様が多くなり、八角形と四角形を組み合わせた形がその典型となる。それが日本に渡り、名物裂として茶道の世界などで珍重され、後に国内でもその模様を模した織物をつくるようになった。蜀江錦の模様を蜀江模様という。現在では一般的には名物裂の蜀江錦が知られており、蜀江模様といえば八角形と四角形を組み合わせたものを指す。蜀江模様は帯地などによく用いられる。

・しらさぎもん [白鷺文]

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・しらたかおめし白鷹御召

山形県西置賜郡白鷹町・織物の名称
山形県白鷹町で織られる御召織物です。農家の副業として昭和の初めに作られるようになったもので、手織りの高級品です。経糸に生糸、緯糸は地糸に御召糸、絣糸に生糸を用いて、二越しに打ち込んだ小絣です。この地方にある琉球絣に似た、「米沢紬」の風合いを基礎にしています

しらはり白張

毛加工染色の糊張法の一つ。素張白張りと吟出白張りの二方法がある。白絹を白のまま使用する場合の張り方で、多く法衣、裏地絹などに用いられる。素張りの白張りは、精白した米粉の糊に布海苔汁を加えたものを刷毛引きし、糊付けして陰干しの上、湿気を与えて槌打ちする。吟出白張りは水に晒布海苔および晒膠(にかわ)の少量を加えた溶液に葛粉を入れてよく溶かし、この泥状の汁に絹を浸して絞り出し、台上でもみながら平に伸ばして伸子張りを行い乾燥するもので、もみ込み作業は熟練を要する。

 

・しーるおりシール織

二重織で毛皮のような長い毛羽を持った織物。

・しるくうーるシルクウール

交織織物の名。絹と毛の交織物のこと。経糸に絹糸、緯に毛糸を用いることが多い。毛の丈夫さと防皺性と、絹の柔軟さと光沢を持った単の着尺地として、普段着や街着に適している。無地、縞、絣柄、紋柄がある。

・しるくぽーらーシルクポーラー

絹を使って本来は毛織物である「ポーラー」織物に似せたもの。夏季の着尺として人気がある。

・しるけっとかこうシルケット加工

綿糸を苛性ソーダで処理して絹のような光沢をつける方法で夏季の「綿上布」や「絞り浴衣」の生地にはこの糸を用いるものが多い。

・しるしばんてん [印半纏]

半纏の一つ。紺や茶色の木綿で、衿や背に家紋や屋号を染め出したもの。江戸時代、火消し、大工、左官、鳶職などが用いた。主家から毎年、お仕着せとして出入り職人に与えられた。現在、出初式や一部の職人に残っている。

・しるっくシルック

東レの絹調ポリエステル繊維。絹の美しさとポリエステルの扱い易さを併せ持った新合繊。洗えるという大きな利点があるため神職用普段使いの八藤紋指袴や、白衣(白小袖)などがある。

・しるぱーる [シルパール]

帝人開発のポリエステル繊維の異形断面糸。和装品に適合する素材で、一越、縮緬、駒綸子、羽二重などに用いられる。

・しろあがり [白上がり]

白揚げともいう。地に文様を白く抜くこと。白く残した模様自体をいうこともある。また、模様の部分を白くぬいて地色を染め、後で模様を描くこと。柔らかな感じが特色である。

・しろいしかみこ [白石紙子]

宮城県白石市の織物の名称
和紙製の衣服で紙衣ともいわれ、おもに防寒用として用いられました。
紙子の発祥には、宗教的な色合いが濃いといわれています。修行中の仏僧にとって、紙子は都合のよいものだった。その理由としては、麻布は風を通すが紙子は風を通さないので火の気のない寺院でもあたたかいこと、絹布のように蚕を殺さずにすむこと、女人の手をわずらわさずにつくれるため戒律にかなっていることなどがあげられます。僧侶たちは反古紙を袈裟に着用していた。この伝統は、いまも奈良東大寺二月堂の御水取りの際に垣間見ることができます。
紙子は、僧侶の防寒着や武士の夜陣の際の防寒着として発達し、江戸時代には一般庶民の防寒着や布団の表地として使用されて日本各地で生産されていましたが、現在は白石紙子だけが生産されてます。

・しろいししふ [白石紙布]

宮城県白石市・織物の名称
強い紙を細長く切り、撚りをかけてこより状にしたものを、糸として使用した織物です。宮城県白石市が産地であることから「白石紙布」と呼ばれます。経緯とも紙糸を使って織ったものと、経糸に絹糸や綿糸を用いて緯糸に紙糸を使ったものがあります。出来上がりは軽く、夏の着物地・帯地のほか、芯地や裃・装飾雑貨などにも用いられます。

・しろえりもんつき [白衿紋付]

正装を表す言葉で、紋付の裾模様の表着に白の下着を重ねてきることをいう。現在では受勲や宮中参内などの装いとして、白の比翼襟に白半衿、留袖や訪問着を着て、格調のある袋帯を締める。

・しろきじ [白生地]

染色加工をしない、白地のままの織物。

・しろこがた [白子型]

白子型紙の略称。「いせかたがみ」参照。

・しろつむぎ [白紬]

白地の紬。染下生地として用いられる。

しろむく [白無垢]

汚れのない白衣という意。古代には、麻織物を灰汁などでよく晒〈サラ〉し、神祭りの浄衣に用いた。=祭服。現在では、婚礼の式の時の衣裳を指す。

・しろむじ[白無地]

白生地に同じ。色無地に対する語。

・しん [芯]

衿芯、裾芯、帯芯などがあげられるが、その部分又は商品の薄さを補い、張りを与えるために入れるもの。材料として金巾、晒、モスリン、新モス、ガーゼ、真綿、もめん綿、帯芯などがあって部分により適当なものを選ぶとよい。

しんぎ[芯

反物を巻く時、芯に用いる棒。

・じんけん [人絹]

絹に似せてつくった合成繊維(人造絹糸)。主として木材パルプを原料としたレーヨンのこと。吸湿・吸水性にすぐれ、いろいろな染料によく染まり深みのある美しい色が得られる。ただし水濡れで縮やすくシワも出て、シミもつきやすい欠点がある。Rayonはフランス語で「光沢」を意味する。

・じんけんおめし [人絹御召]

人絹とは人造絹糸の略で、化学紡維を含めていうこともある。人絹御召は凝糸に人絹を使ったもの。第一次大戦後の不況に対応して、桐生などでコストを下げるために盛んに作られた。交織御召の一種で、安さ価だが、縮みが激しい。

・しんこいしまる [新小石丸]

皇居御養蚕所で飼育している日本古来の純粋種「小石丸」を改良した品種です。繭は、日本種特有の「俵型」をしており、生糸は節が少なく繊度ムラが無い為、主に高級呉服用として好まれています。

・しんし [伸子]

竹ひごの両端に真鍮の針を埋め、両端をそれぞれ織物の耳(横端)に留めて、布巾を一定に保つために用いる用具。布の性質に合わせて、その種類(木綿用、絹用など)も多い。加工着尺や絵羽模様などのように、張って染色を施すものには欠かせない用具である。蠟描き、色差し、引き染め、刷毛引きなどの染色に用いる。戦前は一般家庭での洗張りのときに用いられていた。

・しんしゅうつむぎ [信州紬(飯田紬・上田紬)]

織物の名称・長野県/長野市、松本市、上田市、岡谷市、飯田市、駒ヶ根市他
信州紬の始まりは、奈良時代に織られていた「あしぎぬ」まで遡ります。江戸時代初期には、信州の各藩が競って奨励したことから、養蚕が盛んになり、信州全域が紬の織物産地として栄え、毎年京都へ大量の紬が送られていました。
しかしその後紬織物の生産は下火になり、昭和の中頃までは、技術保存の名のもとに、わずかに続けられていたにすぎませんでした。戦後、県や市町村が紬織物の復興に力を入れたため、県下全域で生産が活発になり、高級な反物として、信州紬の名声も次第に高まりました

・しんせん [浸染]

染色法の一つ。染料、または染料と薬品とを溶解した液の中に、糸や布を浸して染める染色法。糸や布の種類によって冷浴、温浴、煮沸浴などの処理法がある。一般に無地染に用いられるが、絞り、蠟纈などの染色にも用いられる。捺染、引き染、描染などに対する語。

・じんばおり [陣羽織]

羽織の一つ。室町時代から江戸時代に、武士が用いた羽織。防寒、防雨のために陣中で鎧、具足の上に着用したのでこの名がある。具足羽織、陣胴服ともいう。
袖のないものがほとんどで、実用的なものの他に、装飾をかねたものもある。布地には絹、羅、紗、ビロードなどが用いられ、刺繍や摺箔を施したものもある。室町時代に渡来した、スペイン人やポルトガル人の服装を、燃したものと伝えられている。江戸時代に入ると、野外における武士の儀礼服として用いられた。

・しんばしいろ [新橋色]

紫などの濃い色が好まれたという。ライトブルー系。 新橋色のページへ

・じんべい [甚平 甚兵衛]

和服の一種。盛夏に男性が家庭で着る着物。多くは麻で作り、着丈は羽織より長く、膝が隠れるほどで、袖は筒袖、帯は用いずにつけひもを結び合わせて着る。袖付けやわき縫いは糸でかがって仕立てる。江戸時代の甚兵衛羽織から出たといわれている。関西地方で起こる。

・しんもす [新モス]

綿モスリンのこと。毛織モスリンの代用品として織られた、薄地の二幅平織綿布。主に裏地、裏衿などに用いられる。

 

 

・すあわせ [素袷]

着物の着方の一つ。長襦袢を着ないで、肌着の上に粋に袷を着ることをいう。

・ずあん [図案]

模様、色彩、配置などの案を図の上に表したもの。いわゆるデザインであるが、着物の業界では昔ながらの「図案」の語を用い、図案を表す人を図案家という。

・すいかん [水干]

昔の庶民の服装で、紗、精好(せいごう)、練平絹などが用いられた。

・すいせんかもん [水仙花文]

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・すいしゃ [粋紗]

絹織物の一つ。紗とはいっても、平織りの絹織物である。玉糸の撚り糸を用いた薄地で、紬の風合いを持つ夏用の先染着尺地。

・すいと [素糸]

織物を製造する際に絹糸一本をそのまま使用するものをいう

・すいり [素入]

筬(織機の経糸を通す装置)の目(羽という)一つに素糸一本を通すことをいい、これによってできるものはあまり糸を多く使わない値頃品の織物である。

・すおう [蘇芳]

植物染料の一つ。東インド原産のマメ科の小潅木で、日本、フィリピン、ブラジルなどで栽培される。木質部に赤色色素を含み、錫塩やみょうばんなどの媒染剤で赤に、クロム塩剤で海老茶色に、鉄塩類で褐色に染色される。日本には上代から大量に輸入され、単独で、あるいは他の色と交染して用いられた。平安朝文学にもよく登場する色名である。
蘇芳色のページへ

・すおう [素襖]

直垂から派生して形成された男性の衣服で、麻地に家紋を染め出した上衣と袴からなる。胸紐や菊綴じは革で、腰紐は共裂で作る。室町時代は下級武士の平常服であったが、江戸時代には武士の礼服となった。

・すがいと [菅糸]

練る前の、生糸一本のままの状態の糸のこと。生糸の桛(かせ)糸に対する方言。

・すがき [素描]

無線友禅ともいう。染料液を含ませた筆や刷毛で生地に直接、絵画のように自由に多彩な色で描き染めた友禅。挿友禅(本友禅)のように糸目がないのでこの名がある。

・すかしおり [透し織]

生地が透けるように薄く絡み織りで織った絹織物の総称。「絽」「紗」およびこれらの織り方が混合した織物で、夏季用の帯地、着尺地などに多く用いられる。

・すがぬい [菅繍]

刺繍技法の1つ。布地の緯の目に沿って糸を渡し、これを細糸で留める技法。

・すぎあやおり [杉綾織]

織物組織の名。綾織の変化で、織りあがった布面に綾が山形に連なる様子から、この名がある。

・すきもんしゃ [透文紗]

平織地に紗で文を作る、つまり文様部分が地よりも薄く、文様が透けて見える紗。下に着る衣の色で文様が浮かび上がる。衣紋道高倉流ではこれを「顕文紗」と呼ぶらしくややこしい。

・すきや [透綾

織物の名称で「すきあや(透き綾)」の転。薄地の絹織物のこと。新潟県十日町地方に産した夏季用着尺であったが今はあまり見られない。元は、縦糸に絹糸、横糸に苧麻(ちょま)糸を織り込んだが、今は縦横ともに生糸を用い、また、配色のために半練り糸や練り糸をも混用する。 非常に薄く、さらりと肌ざわりがよい。糸や織り方によって平透綾(ひらすきや)・壁透綾・絽透綾(ろすきや)・通風透綾・縮緬透綾・より透綾・透綾明石・透綾経綸などの種類がある。
 「越後透綾」,「絹上布」とも呼ぶ。江戸末期の文政年間(1818~1830)、京都西陣の宮本某が越後国(現:新潟県)十日町で創製下とされる。

・すくい

すくいは、木製の舟形をした織機用具の杼(ひ)に緯(よこ)糸を通して、経糸をすくいながら下絵の模様に織っていく技法で、綴織に近いものです。とても細かな作業で、根気がいる仕事だそうです。表と裏はありますが、両面使うことができます。多くのすくいの帯は紬糸で織られた、しゃれ帯です。

・すくいぐけ

縫う時と同じ手つきでくける縫いぐけに対して、すくうようにくけるくけ方。縫いぐけより技術的に劣る、初心者向のくけ方である。

・すくいどめ [抄い留め]

縫い終りでごく小さく一針布を抄い、玉留め(針先に3~4回糸を巻き引き抜き、糸にしっかり撚りをかけること)すること。

・すくりーんなっせん [スクリーン捺染]

手加工捺染法の一種。枠に紗布を張り防水性の皮膜で模様を作り、これを捺染する布の上において、その上から色糊をゴムへらで捺染する。従来の型紙捺染法よりも少量の色糊でかつ模様も複雑、精巧なものが得られるのに加えて捜査や設備も簡単に済む利点があり、近来は広く用いられている。

・すじ [筋]

細長く線が通ったもの。転じて縞の意があり、千筋、万筋は代表的なものである。

・すすきもん [薄文]

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・すずし [生絹]

経緯とも生糸で織った布。これを「後染織物」とも呼ぶこともあるが、正確な呼称ではない。精錬した布は「練絹(ねりぎぬ)」。 精錬していない生糸で織った生絹は、堅く張りのある風合いをもち、紗のように薄く、かつ軽いのが特徴。様相の素材でいうならオーガンジーです。主に仏前の生じ張りなどに用いられていた生絹ですが、最近はこれらの特徴を生かし、夏用のきもの地やスカーフなどが作られています。精錬した柔らかな風合いとはまた一味異なる、張りのある爽やかな質感に人気があります。

・すずめもん [雀文]

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・すずはく [錫箔]

錫でできた箔のこと。金銀箔と同じようとで用いられる。その製造法は同じだが、量目は金、銀箔に比べて15%以上重い。

・すそ [裾]

衣服の下の縁で、着装すると、ひざや足首に接する部分。また、衣服自体の裾と、着装姿の裾とがある。

・すそあげ [裾揚げ]

蹴出し(けだし)のこと。

・すそあわせ [裾合わせ]

和裁用語。和裁の部分縫いの一つで、袷や綿入れの仕立てのときに、表と裏の丈を合わせて裾を縫うことをいう。

・すそご [裾濃]

ぼかし染めで、裾に行くにつれて濃くなる染め方。子ども服としての水干袴などに見られる。

・すそしん [裾芯]

裾のふきにふくらみを持たせる為に入れる芯。布芯、真綿芯等がある。羽織等の裾輪をしっかりさせる為に裾に入れる芯をいうこともある。

・すそさばき [裾捌き]

きものの裾が、歩くときに乱れたりからんだりしないような足のこなし。また、歩いているときの裾の布のまつわり具合を「裾さばきがよい(わるい)」などと表現する。

・すそとじ [裾綴]

和裁用語。和服長着の衿、綿入れの裾袘(すそふき)が崩れないように、表裾の折山から0.5cmほど入ったところを表と裏を綴じ合わせること。普通一方の袘目(ふきめ)より他方の衽(おくみ)縫い目まで表裏ともにきわめて小さい針目で裏には表の一つおきに出すように綴じる。

・すそふき [裾袘]

(ふき)のこと。

・すそまわし [裾回し]

袷の長着の裏地で「八掛」ともいう。「八掛」とは衽・前身頃・後身頃の裾と衿先の裏の、左右二枚ずつをいう。のちに袖口にも同じ生地を用いるようになり現在にいたる。裾回し以外の裏は胴裏。生地は表地が絹物の場合は羽二重、錦紗など、普段着には富士絹、メリンス、人絹、化繊などをつける。

・すそもよう [裾模様]

婦人の小袖の模様配置、及びその模様配置をもつ礼服。18世紀になってから裾だけに模様のある小袖ができた。江戸末期には京・大阪・江戸とも婦人の礼服は黒定紋付か裾模様となる。
柄のつけ方からの名称 画像と解説はこちら

・すそよけ [裾除け]

蹴出しのこと。明治以降に出来た名称と考えられる。肌に腰巻をつけて、その上にさらに巻いて用いた物。多くは縮緬を用いた。色は、白・緋・桃色・水色等が有り、模様を染めた物もある。

・すそわた [裾綿]

和裁用語。袷長着の「裾ふき」の形を整え裾綿をふっくらさせるため、ふきの部分にのみ含ませる綿をいい「ふくみ綿」ともいう。

・すてーぷるふぁいばー [ステーフルファイバー]

略して「スフ」ともいう。「人造絹糸」と同じものであるが、人絹糸が生糸のように一条の長い連続糸となっているのに対し、これを一度切断し綿状としたものを紡績機械によって糸としたものである。人絹糸が生糸の代用とされるのに対し綿糸、麻糸などの紡績糸の代用として用いられたが、最近は人絹糸同様、品質は向上し独特の製品をつくるまでになった。

・すてむじ [捨無地]

紋織帯地などにおいて「界切り」から端の無地の部分をいう。

・すてんしるぞめ [ステンシル染]

手加工捺染法の中の「型紙捺染」の変型で、型紙を使わず木製あるいは鋼製の板に模様を彫りぬき、これを生地にあてて刷毛で染液をすり込むもの。

・すなご [砂子]

金銀箔の粉末。金箔や銀箔の粉末を、接着剤を用いて布地に細かくまきつけ、模様を表す。漆の蒔絵や日本画などの手法を、染織品に応用したものである。立体感があり、まきぼかしもできるので、箔置きや、揉み箔とは違った効果があり、花嫁衣裳や振袖、留袖などの豪華な柄ゆきのものに多く用いられる。金箔の粉末を金砂子、銀箔の粉末を銀砂子という。

・すなごはく [砂子箔]

本金や銀箔の粉末を塗布したもの。

・すぬい [素繍]

地色を引染またh、浸染で無地染やぼかし染にしたものに、刺繍で模様を表現したものをいう。

・すはまもん [洲浜文]

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・すばり [素張]

生地に淡い糊を施してしわ、縮みを伸ばし幅を一定にそろえるためにする作業のことをいう。色染の前工程として行われる。布海苔または澱粉粉に桃仁の絞り汁、グリセリンなどを適宜に加え煮溶かした糊を濾して、濃度を加減しながら刷毛で引き、乾燥後槌で打ってやわらかくする。

・すみうち [墨打]

身丈(みたけ)、袖丈(そでたけ)、等の寸法をはかって生地に墨で印をつけることをいう。

・すみがき [墨描き]

本来は日本画の技法の1つで、墨一色で描いたものを指す。辻が花染など、墨の描線を効果的に用いたものがある。古くから小袖染色の技法に用いられている。

・すみながし [墨流し]

模様染めの一種。水面に墨汁を落とし、棒でかきまわたり、吹き乱したりして、複雑な曲線の模様をつくり、その上に布を置いて模様を写し取って仕上げる。浮かし染ともいう。現在では黒だけでなく樹脂染料を用いて着尺、帯揚げ、半衿、胴裏などに用いられている。

・すみながし [墨流し]

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・すみのくらぎれ [角倉切]

金襴の名物裂。日本で製織との説もあるが、京都の旧家角倉家の所蔵品。ビロード地に金で花、兎、作り土をあしらったもの。 角倉金襴のページへ

・すりえ [摺絵]

型染の1つで、型を用いて模様を布に染め付ける技法。木製の凸型を用い、染料や顔料を布地に摺り描いたもの。

・すりぎぬ [摺衣]

草木花鳥などの形をすり染めた衣の総称。すりごろもともいう。信夫摺、小松摺、紫の根摺、萩の花摺、黄土(はに)摺、山藍摺、榛摺(はりずり)など。

・すりこみかすり [摺込み絣]

主として白絣に用いる。解絣(ほぐしがすり)。解し織を参照。

・すりこみぞめ [摺込み染]

摺り染めともいう。布の上に模様を彫った型紙を置き、丸刷毛に染料を含ませて、上から色を摺りこむようにして染める方法。ぼかしに染めることを、摺りぼかしという。

・すりこみもん [摺込み紋]

はじめに地に伏せ糊を置き、染料を刷毛につけ、模様の部分を型紙の上から摺り込むようにして染めた紋のこと。非常に繊細な線の表現やぼかしなども自由にでき、手挿し紋ともよぶ。

・すりはがし [摺りはがし]

金彩技法の1つ。模様などの上に箔を貼り、刷毛などですり、適度にはがして、下の模様などを透かせて見せる技法。

・すりはく [摺り箔]

布地に金箔や銀箔を、接着剤を用いて付着させること。まず、布地に糊を置き、乾かないうちに箔をのせ、綿や柔らかい刷毛で余分なものを落とす。箔押し、箔置きとも言う。古くから行われた文様装飾法。この技法は、室町時代の辻が花染や、能装束に用いられた手法で、現在では友禅染に用いられ、豪華な効果を出している。

・すりびった [摺疋田]

江戸時代の小袖によく見られる染色法の一つ。絞り染の疋田の形を型紙に彫り、これを布地にあて、染料をつけた刷毛で摺り込みながら模様を表す技法。きもの全体ではなく、模様の空間を埋める場合など、部分的に用いられることが多い。現代でも絞りとは異なった、軽快な感じが好まれる。

・すれ [摺れ]

繊維故障の1例。摩擦によって生ずる。布表面の光沢が部分的に異なる現象。

・すんぽう [寸法]

和裁用語としては、墨打ち寸法、注文寸法、裁ち切り寸法、へら付け寸法、仕上がり寸法がある。

 

・せいおうぼ[西王母]

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・せいがいは [青海波]

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・せいかぱれす [精華パレス]

八掛や比翼、胴裏等の裏地には、昭和30年代までは、ほとんどが錦紗縮緬やパレス縮緬が用いられてきました。しかしこれらの強撚糸を用いた縮緬地では宿命的に、水分や湿気に出合うと縮むという欠点があります。このため昭和30年代後半から緯糸に壁撚糸やダブル壁撚糸を用いてその変形した糸の形で独特の「しぼ」を低く形成した精華縮緬が用いられるようになりました。精華パレスではさらに「しぼ」を押さえ滑らかな地風に仕上げています。新潟県五泉市が主な産地。多くは八掛地として使われる。

・せいけい [整経]

機にかける前に、経糸(たていと)を一定の長さと本数に分ける作業。

・せいごう [精好]

近世初頭には丹後精好として丹後(京都)の特産であった絹織物の精好織のこと。地合が緻密で硬く、厚地。また伊達(仙台)藩の精好仙台平は、男物の縞袴地(精好平)として有名。無地精好は現在では京都、福井で産し、神官の服、女官の緋袴などにする。

・せいごうごつき [精好五付]

精好の厚みを重さで表したもの。尺(一尺二寸)幅の1尺あたりの目方が18.75gであるものを五付、22.5gであるものを六付と呼ぶ。

・せいそう [正装]

法的、または社会的に規制された正式の装いのこと。正式礼装の略。

・せいそう [盛装]

美しく着飾った、華やかな装いのこと。

・セイラスじま [セイラス縞]

江戸時代の初期、オランダ人によって舶来した絹の縞織物。

・せいれん [精錬]

動植物繊維の中の雑物を取り除き、繊維としての機能をもたせること。色染をよくするための準備工程として、漂白も同時に行う事が多く、昔は灰汁を使ったが、現在は苛性ソーダや石灰、ソーダ灰を用いて煮沸する。布に織る前の糸を精練する事を「先練」といい、布に織った後で精練する事を「後練」といい、一般的な白生地のことをいう。

・せきだし [堰出し]

防染方法の1つ。模様のまわりを幅広く防染し、染上がりの時、輪郭線は消えて無線となる。蝋〈ロウ〉堰出し、糊堰出し等がある。

・せっかもん [雪花文]

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・せっかしぼり [雪花絞]

絞染の一種で「板締絞」とも「畳絞」ともいう。普通の絞のように「絞ジワ」ができないもので、次のような方法がある。
①幾何絞り=布地を四つまたは六つ折にして正三角形や二等辺三角形、麻の羽型などに正しく畳み、これに両面から適当な板をあて固く締め付けて染色するもので、たたみ方および板締めの型によっていろいろな模様ができる。
②締め木絞り=幾何的にたたまず、任意な形に折り棒を利用して染める。
③縫絞り=たたんだ布を縫い絞り(糸で部分的に縫って引き締める)にする。
④共絞り=最も簡単な方法で、布にできるだけ細かいひだが外に出るように布を結び堅く引いておいて染色するもの。

・せぬい [背縫]

裁縫用語。衣服の「後身頃」左右腋(わき)を縫い合わせることをいい、通常その縫い目線をも背縫いという。

・せぶせ [背伏せ]

紗・絽・薄御召・上布など表から透けて見えるので居敷当をつけず、背縫いがへばるのを防ぐために背伏せにする。背縫代全部に通して背伏せ布をつけて縫い合せ、表にだけきせをかけ、背伏布にはきせをかけずに縫代をくるんでくける。背伏布は、共地又は同色の薄手絹地を、幅2cmに裁って用いる。薄地でなくても白地で肩当や居敷当が目立つものは背伏せにする。

・せーみかこう [セーミ加工]

織物仕上げ法の一種で、一般に「銘仙」「富士絹」などの平織りの絹織物に「縮緬」のような「シボ」を出す仕上げ法を言う。綿製の原型布と重ね合わせて金属製の円筒に巻き取り、蒸気を通して原型布の収縮しようとする力を利用してシボを移すものである。また型ロールを用い縮状を出す方法も有る。この加工をした銘仙をセーミ銘仙或は御召銘仙と呼ぶ。

・せもん [背紋]

家紋のつけ位置による名。背縫いの上部、衿肩明きの裁ち切ったところから7cmほど下につける家紋のこと。一ツ紋といえば、背紋だけのことである。

・せもり [背守]

産着や宮参り等の一ツ身で、背紋の入ってないものにつける背飾りのことで地方によって種々の形がある。現在では省略される場合もある。

・せやふじぬの [世屋藤布]

織物の名称・京都府宮津市
藤蔓の繊維を手機で織った素朴な布。麻織物に似ているが、麻より繊維が太く、目が粗い。
万葉時代から織られているという古代織物。
明治時代までは各地で織られていたが、現在は当地のほか、山形県の山村など数か所で織られているだけである。

・セル

ウールの先染め和服地。縞や格子、霜降りの柄が多く、その感触が柔らかいことから、戦前までは男女ともに着尺、羽織、袴地などに広く愛用されていた。春先や秋口の季節の変り目に着るいわば合着で、「セルの頃」という季節語さえあったほどだ。毛織物の「セルジス」「サージ」から日本語に転化した言葉。

・せんこう [鮮紅]

染色の名。赤色に黄味を有した、特に鮮やかな緋色で、緋色木綿のことを鮮紅ともいう。

・せんざいみどり [千歳緑]

染色の名。深濃緑のことで、千歳(ちとせ)の松の緑の意味。 千歳緑のページへ

・せんしょくほせい [染色補正]

単に補正、地直しともいう。染色加工中に発生した汚れや、余分に付着した色素などの故障を衣裳から取り除くこと。または、その方法。洗い張り・生洗いは、衣裳全体が汚れている場合に行う方法。

・せんすじ [千筋]

縞柄の名称。筋は縞意があり、非常に細かい縞柄のこと。織物のほか、江戸小紋にもある。

・せんだいひら [仙台平]

織物の名称絹袴地の一種。仙台から産出されたことからこの名がある。男物袴地の総称として使われることもあり、糸の精練技術や植物染料による糸染、生地の締りをよくするための打ち込みの強さなどに特徴がある。
仙台伊達藩主が、西陣の織工の小松弥右衛門を招いて織られるようになり、幕府や諸大名への贈答品などに用いたのが始まりです。なかでも精巧な袴地が諸侯に好まれて全国的に広まるようになった。

・ぜんつう [全通]

帯の通し柄をいい、帯のたれ端からたれ端まで、全体に柄が付けられている。これに対する語として「六通」「太鼓柄」などがある。

・せんど [繊度]→糸の番手

生糸・人絹糸の太さをいう。「デニール」で表す。重さと長さの相関関係により示され、恒重式と恒長式とがある。前者は主として「紡績糸」(綿糸・麻糸・毛糸など)に用いられ、後者は「生糸・人絹糸」「合繊長繊維糸」に使用される。

・ぜんまいはくちょうおり [薇白鳥織]

織物の名称・秋田県
よこ糸に入っている薇綿(ぜんまいわた)・白鳥の羽根綿などが、処々に白く綿毛を含んでふんわりと横に流れる。民話の「鶴の恩返し」の中で鶴の羽で織られた布は豪華なものだったというが、これは素朴な温かみのある織物といったほうがよい。秋田県岩城町亀田で、山野に自生するぜんまいの頭部の繊維(薇綿)・白鳥の羽根綿・綿花を合わせた混合糸を用いて織り出している。 昭和初期に途絶えています。

・せんめんもん [扇面文]

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・せんやぞめ [千弥染]

宝永の頃、歌舞伎役者の中村千弥が着用した染絞衣装で、紫色の纐纈をいう。

・せんりょう [染料]

合成染料の中で主としてきものに用いられるのは、直接染料と酸性染料である。これらは染めるのが容易であるばかりでなく、脱色も容易なため、染かえなどにも適している。植物染料では藍をはじめ、種々の植物染料が用いられる。

 

 

・そありおん [ソアリオン]

鐘紡のポリエステル系異形断面糸の和装用素材。付下げ、羽尺などの表地のほか、八掛、胴裏、長襦袢と用途は広い。

・そううら [総裏]

総裏仕立ともいう。衣服全体に裏をつける仕立。総裏は、芯や縫代を隠して裏側をしまつするとともに、補強の役目をする。形崩れを防ぎ、表地を保護し、保温にも役立ち、すべりをよくする。和服の場合これを袷仕立てという。

・そうかくもん [双鶴文]

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・そうがすり [総絣]

経緯糸に地糸を使わず、絣糸のみで絣柄を表したもので、緯だけのものは緯総(よこそう)という。

・そうがら [総柄]

生地全体に模様をおり、または染め出されている柄付けのこと。
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・ぞうがんもよう [象嵌模様]

模様の一種。古代によく用いられた模様で、白を細く切ってはったり、絵の具で細く隈取ったりして模様を表した。

・そうくんぎれ [宗薫切]

緞子の名物裂で、今井宗薫の家伝来のもの。花色に薄い黄白の紋で、3cmくらいの輪違いの中に宝尽くしを配したもの。 宗薫緞子のページへ

・そうこう [草稿]

紙に描いた草案、図柄などをいう。

・そうこう [綜絖]

織具の付属品の一種。経糸を上下に開きわけるもの。いいかえると緯糸を入れるために抒(ひ)の通りみちをあける道具である。古代では「綜」といい。地方によって「綾(よこ)」「綾(あや)取り」「遊び」 「掛糸(かけいと)」などと呼はれる。

・そうし [繰糸]

繭から糸を引いて生糸にする作業をいう。繭を煮てその正しい糸口を求めて、これを何本か集めて抱き合わせ、一筋の生糸とする。昔は、すべて手作業であったが次第に機械化され、現在は自動繰糸機が用いられている。これは糸の繊度(太さ)を一定に保つ感知機が自動的に働き、糸が細くなると、つなぐべき繭が自然に飛び出してくるので、ほとんど人手を要しない。機械による機械製糸に対し、手加工により繰糸した糸を「座繰糸」といい、品質は機械に比べてむらがあり劣っているが、むしろこれが特徴になって価格は高く、手織り織物に多く利用される。

・そうしぼり [総絞り]

着物、羽織、帯、帯揚げなどの一面に絞りだけで模様を表現した物。

・そうしもん [冊子文]

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・そうたけ [総丈]

裁断前の反物や布地、あるいは衣服の全長をいう。和裁の場合、反物を裁つ前に必ず総丈を計り、その総丈を基本にして断ち切り寸法を決めていく。

・そうづけ [総付け]

「総模様」「総柄」ともいう。着物全体に模様を配したものをいう。総模様(総付け)に対するものとして、「飛び模様」「裾模様」がある。
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・ぞうり [草履]

和装はきものの一種で、厚みのある台の底は歯がなく平らで、鼻緒がすげられている。原型は藁の草履であったが、江戸時代に発達し、さらに明治以降改良されて、現代では礼装から普段まで履ける種類がそろい、和装履物の主流となっている。

・ぞうりょう [増量]

薬剤その他で織物などの重量を増すことである。単に目方を増やす以外に、糸をあまり多く使わない織物の手触りや外観をよく見せ、また縮緬などの織り方のものは縮みを防ぐ効果がある。ただし過度に行うと生地を傷めることになり、またカビや変色などの原因ともなるので注意しなければならない。方法としては、①薬品を繊維に吸収固着させるタンニンあるいは錫増量(繊維と化学薬品との親和性を利用するもの、水洗いや摩擦に落ちない、主として絹に応用される)②薬品を単に固着させるだけのもの、砂糖、塩化バリウムなどの濃溶液を用いる(水洗いをすると落ちるこれも絹に使われる)③糊製の物質、澱粉、布海苔、膠草と粘土、陶土、石膏、生葛粉、片栗粉などの混合物を塗りつける(水洗い、摩擦で落ちる=綿に使用されることが多い)方法などがある。また、生糸や練絹を染め上げる際、あわせて増量を行うことを「増量染」という。

・そくぬい [束縫]

元来表生地と裏生地を別々に縫って綴を入れるところを、表裏一緒に束にして縫う事。表2枚、裏2枚を束ねて縫う場合が多いので四ツ縫いともいう。

・そだいぎぬ [曽代絹]

絹織物の一種。岐阜県武儀郡地方の良質の生糸で織り出したもので、その後、石川・小松地方で精練染色して裏地用として製織。

・そで [袖]

元来は「外手」であり、衣服の袖口部分をさしたが、着物の腕を覆う箇所の全部を意味するようになった。古代の日本の衣服は筒袖であった。中国文化が入るとそれをまねて袖が広くなった。平安中期以後、唐ふうの朝服の国風化がなされ、広袖の装束類が公家の服装となった。このため袖には2つの文化を生じ、日本古来の小袖と装束系統の広袖に分かれる。平安末期には小袖も筒袖ではなく丸みを帯びる。鎌倉時代には脇明小袖。室町以降、脇明は元服前の子供の衣服に用いられる。江戸初期に振袖・なぎ袖が現れる。装束類の広袖は、奥袖にさらに一幅又は半幅の鰭袖を縫い足して指先を覆うほど幅広く仕立てる。庶民の衣服としては丹前、長襦袢、一ツ身等は広袖に仕立てる。農民、漁民は労働着が衣服で、働きやすいものが工夫される(筒袖、鉄砲袖、巻袖、ジン袖など。

・そでぐちした [袖口下]

袖口の留の下から袖丸までをいう。略して口下ともいう。袖口下に凸凹が出たり、ねじれたりせず、真直ぐになっている事が大切。

・そでぐちぬの [袖口布・袖口切]

袖口の裏としてつける小布。表布が手首に当たって汚れるのを防ぐ目的と袖口のきれいさを誇張する目的がある。袷きもののの場合は八掛布、羽織、コートの場合は前落し共布、単着物の場合は共布、男物着物の場合は共布又は四日町等の別布を使用。普通は回し掛けをしてつける。

・そでした [袖下]

→そでぐちした

・そでたけ [袖丈]

きものの部分名称。袖の長さのことで、袖山から袖下までの長さをいう。年齢や着物の種類によって、その長さは様々である。一般的な着物の場合、身長の3分の1の袖丈がバランスがよいとされる。鯨尺1尺3寸(約49cm)が最も一般的で多い長さ。

・そでだだみ [袖畳]

略式の和服の畳み方。本仕立てした着物にはほとんど使わないが、仮絵羽状態のものはほとんどが袖畳。背を中心に内表に2つに折り、両袖を合わせ、身頃の上へ折り返し、裾と肩山を合わせ半分に折り、さらに半分に折る。

・そでつけ [袖付]

袖を身頃に縫い付けること。あるいは、袖と身頃が接続する部分のことを言う。袖付きともいい、袖付き衣は、袖のある衣服の意。

・そでなしばおり [袖無し羽織]

袖をつけないもので俗に「ちゃんちゃんこ」と呼ばれている。現在はマチを入れ、衿を折り、胸元に共紐をつけて用いる。綿入れや、袷仕立てにして、老人や幼児の防寒用として用いられている。

・そでもん [袖紋]

左右の外袖に付ける紋のこと。紋の付け方には一つ紋、三つ紋、五つ紋があるが、三つ紋と五つ紋のとき、袖紋が付く。一つ紋は背紋のみ、三つ紋の場合、背紋と袖紋をつけて三つになる。五つ紋の場合、背紋と袖紋と抱き紋をつけて五つとなる。

・そでやま [袖山]

着物の部分の名称。袖の一番上の部分、つまり、袖の前部と後部の折り目の所(山)をいう。

・そとそでん [外袖]

袖の、袖山より背側の部分をいう。それに対し、袖山より前側は内袖という。袖紋は左右の外袖に付ける。また、現代の訪問着や付け下げでは、胸と裾のほか、左の内袖、右の外袖に柄を付けることが多い。

・ぞべ・ぞべ糸 [ぞべ糸]

片撚りした絹しつけ糸(ぞべ糸)のこと。白練の2本撚りである。しつけ用、ぐししつけ用に使用。

・そめおび [染帯]

帯の一種。先染めの帯に対して、後染の帯のことをいう。染帯の生地としては塩瀬羽二重や縮緬が多く、夏用として紗や絽もある。

・そめかえ [染替]

着古して色が退色したもの、好みや年齢に合わなくなったものを、再利用するために、別の色や柄に染め替えること。染め直しと同じ。

・そめがすり [染絣]

絣模様の一種。捺染を施して、織絣のように仕上げたもの。直接捺染したものや、防染したもの、または抜き染して絣柄を表したものなどがある。織絣に比べて工程が簡単なため安価である。

・そめきじ [染生地]

染色を施す前の染下生地、白生地のことをいう。主に縮緬類、紋綸子、白紬、白お召、絽、紗、岡木綿、綿縮などである。

・そめきじゃく [着尺地]

織った後に色や模様を染めた(後染のもの)着尺地のこと。染めた糸を用いて柄を織り出す、織着尺に対する語。

・そめこもん [染小紋]

小紋はもともと型染であるが、織物の小紋が製作されるようになったので、それと区別するために生まれた言葉。

・そめぬきもん・そめもん [染め抜き紋]

紋の表し方の一つ。最も格式の高い正式な紋。地色に紋を白く抜いたものである。礼服だけでなく幔幕やのぼりなどにも用いられる。

・そめわけしぼり [染め分け絞り]

絞り染め技法のひとつ。2,3種類の色を入れて染められたもの。産地の名で呼ばれる有松鳴海絞、京絞りなどには染め分け絞りがある。

・そもうし [梳毛糸]

梳毛紡績機によって作られた毛糸をいう。普通ウーステッドと呼ばれる毛織生地は、この糸を使用する。ラシャ、毛布などの糸である。「紡毛糸」に対し、糸になる前の原料の毛は梳(と)きそろえられているから、品質が均整であり細い糸ができる。和装用の「ウール」あるいは「モスリン」「セル」などはすべてこの糸を使用している。

・そろばんしぼり [算盤絞り]

絞り染の一種。算盤の珠を並べたような模様の絞り染め。主に、木綿などに多く染められている。

・そらびきばた [空引機]

紋織に使用した織機の一種。高機に「空引」という装置をつけたもので、紋紙を使う紋織機が出現するまで使われた。 織物を織るのに必要な最小限度の道具といえば、経糸(たていと)を張っておく装置、緯糸(よこいと)を通すためのロを開く綜絖(そうこう)、さらに経糸の間に緯糸を通したり、緑糸を平行に固く経糸の間に打ち込んだりするための抒(ひ)や筬(おさ)などだが、紋織にはきらに多くの綜絖が必要になってくる。
 また、多くの綜絖を操作するために、高機の上部に鳥居状の構造のものを取り付け、これに大通糸をつるしてある。この紋織の装置を「空引」(花楼装置ともいう)といい、その機を「空引機」と呼んでいる。大通糸を操作して経糸を開口させ、緑糸を通して模様を織り出していくわけだが、操作が複雑なため、一人では操作することができず、一~二人の補助者が必要になる。