和の色着物手帖

日本の色名には、固有の伝統的な色の名前が、数多くあります。どの色も、名前をきくだけで、不思議とイメージが浮かんできます。
美しさの微妙な違いを、的確にとらえ楽しむ、日本人の繊細な感覚を、それらの名前から知ることがでます。

きものは意外と柔軟性に富んでいます
帯だけでなく、帯〆や帯揚げ、かさね衿を変えるだけで、印象はおどろくほど変わります。
同じ色のきものなのに、明るく見えたり、おちついたり・・・・・・・。

着物を楽しむとき、いつもあたまを悩ませるのが、着物と帯や小物のコーディネート、というお話をよく耳にします。そんな時、むかし着物は普段着だったことを考え、自分なりのコーディネートでいいんだという思いにいたれば、お悩みは解決下も同然。そして、少しだけ色あわせになれてくれば、もっと楽しく着物が着れるようになるでしょう。

その日の気分や、お出かけの場所など、あなたのセンスのみせどころ・・・!?
でも、ちょっと自信のない方は、下の特集を参考にして、あなただけのコーディネートを
見つけてみてはいかが。

 

紅梅色

16進表記【#f2a0a1】
RGB(242, 160, 161)

   

【同類語】

(くれない)、韓紅花

【由  来】



 



紅梅の花の色に似た淡い紅色です。梅の花は別名「春告草」とも言われ、春の始まりを告げる花として、古くより親しまれてきました。服色としては、冬から春にかけて愛好され、平安文学にも登場します。染色として、織色として、また重ねの色目としても親しまれた伝統色です。

王朝の詩歌や物語に多く見られる「紅梅色」。平安時代、紅梅色は早春(11~2月)の着物の色として愛好され、その服色は平安文学にしばしばあらわれる。紅梅色は、紅染の濃さによって、濃紅梅・中紅梅・淡紅梅の三級に分けられる。

※濃紅梅
平安時代、「濃紅梅」は「今様色(いまよういろ)」と呼ばれた。「今様」とは「今、流行り」と言う意味で、当時の流行色のひとつだったようだ。
※中紅梅
文献に、単に「紅梅」とある場合は、中紅梅を指す。これは、紅梅の花の色にあたる。
※淡紅梅
薄紅梅(花色が薄い紅梅)の花の色。

明治・大正に一般に普及した色として知られている。

   
 
 

     
     
     

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桃色

16進表記【#F58F98】
RGB(245, 143, 152)

   

【同類語】

 

【由  来】

色・花


 



桃の花の色にちなんだ淡い紅色です。桃は古くに中国より伝わり、花は鑑賞用に、実は食用に用いられてきました。日本では雛祭りと結びつき、かわいい花なのですが、梅や桜と比べると品位において劣るとされてきたようです。重ねの色目にもあり、表を淡紅、裏を萌黄で表現します。

モモは古来より中国や日本では魔除けの力を持つとされたため、現代の日本でも桃の節句などで女の子の健やかな成長を祈る風習が残っており、 桃色は若く健康的な女性をイメージを喚起することが多い。

桃色の起源は古く、万葉集にはすでに「桃花褐(ももそめ)」記述が見られる。当時の桃色は桃の花で染めた色のことであったらしい。 今日では、必ずしも桃の花で染色した色のことを意味せず、桃の花のような淡い赤色のほとんどを桃色もしくはピンクと呼ぶ傾向がある。 英語にはピーチという色名があるが、これはモモの果肉に近い色で表現され、桃色とは別の色である。 桃色と同じくモモの花の鮮やかなピンクを表す場合にはピーチブロッサムという色名が用いられる。

   
 
 

     
     
     

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ぼたんいろ

16進表記【#ffd3e4】
RGB(255, 211, 228)

   

【同類語】

Peony Purple

【由  来】



 



牡丹の花の色を模したかなりはなやかな赤紫色です。ボタンの花弁が幾重にも重なって見える濃い赤紫からとられたといわれている。牡丹の花そのものはかなり古くから観賞されており、文様としても古くからキモノや工芸品に取り入れられてきました。

色として取り上げられるようになったのは、平安時代のかさねの色目としてが最初です。この色名そのものの染色が行われるようになったのは、化学染料が導入されるようになった明治以降のことです。現代では赤紫系の色を表す唯一の日本語の色名といえます。

「紺色の可憐な燕の雛が懐かしさうに、牡丹いろの頬をちらりと巣の外に見せて」

        ──北原白秋 思ひ出・わが生ひたち(1911)

   
 
 

     
     
     

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つつじいろ

16進表記【#e95295
RGB(233, 82, 149)

   

【同類語】

Azalea

【由  来】


 



躑躅色とは紫みの赤い色をさします。躑躅の花には白、赤、黄、紫などがありますが、赤紫系の色を指す。躑躅色は、牡丹色とともに赤紫系を表す伝統色の一つなっている。英色名のアザレアは、紫味が少なく、躑躅色は仏色名アザレアの色に近い。

躑躅は春を彩る花として古くから鑑賞されており、今でも庭の彩りによく植えられていますが、当時は躑躅といえば山躑躅のことを言いました。重ねの色目としても、表を蘇芳、裏を萌黄であわせて表現しました。、『枕草子』で清少納言は下襲は「躑躅」が良いと記している。

躑躅の語源は「つづきさきぎ(続き咲き木)の意味といわれています。漢字の「躑躅」は漢名から来ていて、「てきちょく」とも読みます。この「てきちょく」には「行って止まる」という意味があり、見る人の足を引き止める美しさから、この漢字が使われたとされています。本来は「羊躑躅」で、葉を食べた羊がてきちょくして死ぬことからきているという説もある。

   
 
 

     
     
     

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すおういろ 16進表記【#973C3F】
RGB(151, 60, 63)
   

【同類語】

すほう、赤蘇芳

【由  来】

染色、植物


 



蘇芳というのは、熱帯性の豆科の木の実や木質部を煎じて作られた染料のことで、かなり濃い目の紅色です。もちろん当時は輸入品ですが、正倉院の御物のなかにも見られるくらい古くから親しまれたようです。ただし、着用はかなり上流階級の人に限定されたようです。

蘇芳は、正倉院には薬物として保存され、また、これで染められた和紙もあり、蘇芳染の木箱も収蔵されている。そのうちの代表的な一点は「黒柿蘇芳染金銀如意箱」で、ほかにも何点も伝来しているところを見れば、木工品の染色もかなり盛んであったことがうかがわれる。

平安時代にもこの傾向は続いたようで『宇津保物語』に「すわうのつくゑに・・・・・」、また、『源氏物語』「絵合(えあわせ)」の巻には「紫檀の箱に蘇芳の花足」などと見える。王朝文学研究者の訳註には蘇芳の木で作った机であるように記していあるが、蘇芳の木は家具には向かないので、これらも正倉院宝物のごとく、蘇芳染の木工品と解してよいだろう。
しかし、なんといっても一番用いられたのは布や糸の染色のようで、『延喜式』に「深蘇芳」「中蘇芳」「浅蘇芳」と見えるだけでなく、蘇芳染、あるいは蘇芳の襲(かさね)は王朝文学のいたるところに見られる。鎌倉時代の終わり頃になると、琉球との貿易によっても盛んに輸入され、桃山から江戸時代の能装束や小袖の染色にも多く用いられている。

ただ、「蘇芳の醒(さ)め色」という言葉があるように、この染料で染めた色は褪(あ)せやすく、現在まで遺されている染織品は、ほとんど茶色の変色している。

   
 
 

     
     
     

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