|
|
16進表記【#973C3F】 RGB(151, 60, 63) |
|
|
【同類語】
|
すほう、赤蘇芳 |
【由 来】
|
染色、植物 |
蘇芳というのは、熱帯性の豆科の木の実や木質部を煎じて作られた染料のことで、かなり濃い目の紅色です。もちろん当時は輸入品ですが、正倉院の御物のなかにも見られるくらい古くから親しまれたようです。ただし、着用はかなり上流階級の人に限定されたようです。
蘇芳は、正倉院には薬物として保存され、また、これで染められた和紙もあり、蘇芳染の木箱も収蔵されている。そのうちの代表的な一点は「黒柿蘇芳染金銀如意箱」で、ほかにも何点も伝来しているところを見れば、木工品の染色もかなり盛んであったことがうかがわれる。
平安時代にもこの傾向は続いたようで『宇津保物語』に「すわうのつくゑに・・・・・」、また、『源氏物語』「絵合(えあわせ)」の巻には「紫檀の箱に蘇芳の花足」などと見える。王朝文学研究者の訳註には蘇芳の木で作った机であるように記していあるが、蘇芳の木は家具には向かないので、これらも正倉院宝物のごとく、蘇芳染の木工品と解してよいだろう。 しかし、なんといっても一番用いられたのは布や糸の染色のようで、『延喜式』に「深蘇芳」「中蘇芳」「浅蘇芳」と見えるだけでなく、蘇芳染、あるいは蘇芳の襲(かさね)は王朝文学のいたるところに見られる。鎌倉時代の終わり頃になると、琉球との貿易によっても盛んに輸入され、桃山から江戸時代の能装束や小袖の染色にも多く用いられている。
ただ、「蘇芳の醒(さ)め色」という言葉があるように、この染料で染めた色は褪(あ)せやすく、現在まで遺されている染織品は、ほとんど茶色の変色している。
|