・ながいたぞめ [長板染め]

長板染めとは江戸中期から伝わる手染めの技術で、長板と呼ばれる6m50cm程のもみの一枚板に生地を張り付け、精緻に掘られた型で糊置きをし、正藍で染めていくという、手の込んだ作業から産まれる着物。

・ながいたちゅうがた [長板中形]

中形(浴衣)の一種。長板本染中形の略称。木綿の藍染中形で、江戸中形ともいう。浴衣の模様染めの技法で、地色を藍にして模様を白く染め抜いたものと、白地に藍で模様を表したものとがある。藍の一色染が特色。明治の末期に能率のよい折付け中形(注染中形)が出現して、急速に普及したため、新しい中形と本来の伝統ある中形を区別するために、長板本染中形とよぶようになった。長板とは、樅(もみ)材で作られた、長さ約6m36cm、幅34cmの捺染板のことで、この板の両面に中形一反分の木綿生地を張り伸ばして、防染の型付けを行うためにこの名がある。両面に糊置きして浸染するため、裏表ともくっきりと染め上がる。製作に熟練を要する。高級浴衣である。

・ながいつむぎ [長井紬]

織物の名称・
米沢藩の上杉鷹山が奨励した殖産振興によって興った米沢地方の織物の一つ、長井紬。結城紬の製法を取り入れ、絣に工夫を凝らした絣紬。努力によって、品質を高めていった長井の人々の手法。古くは米沢に近いこともあって、米琉(米沢紬)の名で売り出されていたが、明治からはその名も「長井紬」として商品化され、独特の糸遣いで独自の風合を産み出している。

・ながぎ [長着]

キモノと見なした場合は、広く和服全般をさすが、仕立て業者の間では、長着を長物、羽織やコートなどの丈の短いものを半物と呼び区別している。

・ながさきにしき [長崎錦

織物の名称
丸帯や袋帯などの格の高い帯に用いられる金銀糸を使ってとても豪華なものです。

・ながしぞめ [流し染]

水面に染料を流し、これを棒でかきまわしたり、風を送ったりすると水面の染料が動き、曲線が現れる。この上に布を静かに置いて曲線を写し取る染色技法。墨流し染めなど。

・ながじゅばん [長襦袢]

長着と肌襦袢の間に着る衣服。身丈は対丈、袖は広袖、袖丈は長着に合わせてそろえ、半衿をかけて着る。礼装用には白無地。夏物には絽、麻、レース地、等。季節によって袷仕立て、単仕立、無双仕立がある。仕立て方には本襦袢仕立、別衿仕立、関西仕立、胴裏抜仕立、摘み衿仕立、中奥仕立、二部式仕立などがある。本襦袢仕立が基本的なもので、一反を用いて無双袖無垢とし、衿は通しの撥衿。関西仕立は衿を広衿に仕立てたもので、裾周りが広く着やすい。

・なかとじ[中綴]

和裁用語。和服の袷・綿入などの表地と裏地の離れるのを防ぐため、脇縫い・背縫い・衽付の縫い目を内側で綴じ合わせること。

・なかのがすり [中野絣]

織物の名称・群馬県邑楽郡、館林市
板締め染色の手織白絣。男物の夏の着尺地。
幕末に木綿紺絣が織られ、明治の末には白絣が織られるようになった。

・ながばおり [長羽織]

丈の長い羽織。中羽織に対する、本羽織の意に用いることもある。

・ながはまちりめん 長浜縮緬

琵琶(びわ)湖の東、滋賀県長浜市を中心に生産される縮緬の総称。浜縮緬ともいう。とくに後染め用白生地として最も需要の多い*一越縮緬が名高く、生糸(きいと)による高級品をつくっている。

・なかみみ 中耳

広幅織機を使用して小幅織物を織る際、普通二つ以上並べて織るが、これは織り上げの後に切断して二反とする。この時切断した部分がほつれないように「耳」をつけておく。方法としては、切断予定箇所の端の緯糸を一部紗織にするか、または経糸2本を緯糸1本ごとに撚る方法がある。広幅織機による製織は小幅織機に比べて能率が高いため、量産を必要とするもの、また減価を切り下げるためにこの中耳を利用する2反掛け、3反掛けの方法が行われることが多い。普通耳の織物と比べて、中耳は耳の外側に切断した部分の糸が若干残って見えるので、注意すれば判別は難しくない

・なごやおび [名古屋帯]

外出用の女帯の一種で一般的に幅広く用いられています。模様の付け方によって、お太鼓柄、六通柄、四通柄、全通柄、に分けることができます。お太鼓になる部分を並幅(八寸~八寸四分ほど)とし、手掛け(垂れ)胴回りの部分を半巾に仕立てたもの。大正時代に名古屋にて考案されたのでこの名あり。名護屋帯とは別物。

・なごやおび [名護屋帯]

組紐の帯で丸打ちと平打ちがある。丸州名護屋(佐賀県)に朝鮮の韓組(からぐみ)の技術が伝えられてこの帯が出来た。長さ1丈2尺、総の長さは八寸。色は男女とも赤が多い。形態が縄に似ているので縄帯ともいう。江戸初期の風俗画に多く見かける。 名古屋帯とは別物。

・なしじおり [梨地織]

格子に似た織り方で、布面に梨の果実の表皮に似た外観を表わしたもの。表面に砂粒を一面にまき散らしたような、ちょうど「縮緬」の細かい「しぼ」風の外観を表した織物。「砂子地」ともいう。サラリとした感触があるので、夏の着尺地や半襟地、また帯地などによく使用される。

・なすもん [茄子文]

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・なせん [捺染]

なっせんとも発音する。単色または多色を用いて、布地に模様効果を発揮する染色法のうち、一般には浸染によらないもの。使用機器により手捺染(手描き染や型紙捺染など)と機械捺染(ローラー捺染、自動スクリーン捺染など)に分類される。和装関係では機械捺染(ローラー捺染)の意としてよく使用される。

・なせんいた [捺染板]

「小紋染」「友禅染」などの手加工捺染に使用する器具。「型板」とも「張板」ともいう。普通狂いが少なく水を吸収しやすく、しかも早く乾燥する樅(もみ)等で作った長さ3間2尺(6メートル)幅1尺3寸~1尺5寸(40~45cm、広幅生地を染色する場合はこの倍)、厚さ7~8分(2.1~2.4cm)くらいの板で両端に狂いを防ぐために横に幅1.5~2寸(4.5~6cm)位の端木をはめ込み、この一方は布を裏面に折り返すために次第に薄く削り、刃形(剣先)とする。これを鳥と称する丁子型の台の上に乗せて、まず表面を捺染し、ついで裏返して別面を捺染する。この板が何面あるかで染色能力を表示することができる。

・なせんがすり [捺染絣]

各種の道具または機械を用い糸束に捺染する方法をいう。

・なつおおしま [夏大島]

糸の撚りを強くして、薄地に仕上げた夏用の大島紬のこと。時代の多様化によって作られたものといえる。肌触りのよさが特色である。

・なつおび [夏帯]

主に夏に使用する帯で、生地は絽、紗、博多単衣などがある。

・なつおめし [夏御召]

明石、すきや、上布、ポーラなど盛夏に着る「御召」の総称。紗織のもが多い。

・なつしおざわ [夏塩沢]

絹織物の一種。新潟県南魚沼市(旧塩沢町・六日町)地方で織られている。駒撚糸という強撚糸を使用し、薄地でシャリ感がある盛夏用の着尺である。

・なつばおり [夏羽織]

羽織の一種。夏に着る単の羽織のこと。五月の単の時期から、盛夏にかけて着る羽織で、絽、紗、透綾(すきや)などの透けて通気性のある生地を用いる。単羽織ともいう。

・なつばかま [夏袴]

夏の礼服用袴としては「絽織」「紗織」「壁織」などが用いられているが、最近では絽織がほとんどである。

・なつめやし [棗椰子]

ヤシ科の常緑高木で、インド西部・メソポタミア地方の原産。

・なでしこもん [撫子文]

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 ・ななこおり [斜子織り]

経緯とも二本以上の糸をそろえて織るため、織り目が方形で魚卵のように打ち違いに粒だって見えるための名称。厚地で主に帯に用いる。畳織り、バスケット織りともいう。「七々子」「魚々子」とも書く。

・ななすんもよう [七寸模様]

裾模様の一種。模様の位置によるよび名。裾から七寸(約21cm)ぐらいの位置に置かれた模様。

・ななつぎれゆうぜん [七布友禅]

「柄友禅」(本友禅)の一呼称で、織物を袖・衽・衿・身頃四つ切れの七つに裁断し、仮仕立てして友禅染を行うもので反物のまま行われる「反物友禅」に対する言葉。訪問着、留袖、絵羽友禅などはすべてこれである。

・なまつむぎ [生紬]

生紬とは、生糸の精練を途中段階で終わらせて、セリシンという成分を残した糸で織られた紬織物
ざっくりした風合いで夏に涼しく、冬に暖かい。

・なみはば [並幅]

 和服や寝具の反物の普通幅を意味し、小幅ともいう。通常36センチぐらいが普通である。

・なみもん [波文]

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・ならぎれ [奈良裂

金襴の名物裂。地色が繻子地のように見えるもの。模様は太鼓の和違いの間に剣先があって、剣太鼓ともいう。また萌黄色地に紋金糸で亀甲と花とを大紋に配したものもある。

・ならざらし [奈良晒]

織物の名称・奈良県奈良市
麻の白生地(生平)を天日で晒し、自然漂白をする。
昔、晒布のことを曝布といった。曝布の歴史は古く、奈良時代にはすでにあったという。 
奈良地方で奈良曝が生産されるようになったのは江戸時代初期の慶長年間(一五九六~一六一五)のことである。寛永年間(一六二四~一六四四)の頃から、幕府の御用晒として、また礼服として需要が伸びた。
奈良晒の原料は苧麻だが、青苧は会津、越後から、生平は近江、伊賀から買って、奈良で晒して奈良晒として諸国に送った。現在では、糸は苧麻の手紡ぎ糸からラミー糸に変わり、生産量も少なくなっている。

・なりひらごうし [業平格子

格子縞の一種で、三筋格子が斜めに交差し、その中にもうひとつ十字の菱形をいれたもの。業平菱ともいう。

・なるみしぼり [鳴海絞

 絞染木綿の一種。愛知県有松および鳴海付近で生産される絞り織物。有松絞と同種のものである。主として夏季浴衣地に使用される。

・なんぐり [難ぐり]

染難、織難が発生していないか検品すること。加工の各段階で反物を巻きながら、難点を見つけるだけでなく、それらの原因になる要素はないかもチェックする。早期発見により、的確な処理で、未然に防ぐことができる。

・なんてんもん [南天文]

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・なんどいろ [納戸色]

色の名前。納戸とは、衣服の調度品を納めるための部屋で、その部屋の役人がよく着ていた着衣の色という説がある。婦人がこの色を用いるのは、多く花柳界の人達などが好んだという。青藍色。

・なんぶ [南部]

盛岡付近の旧名称で、ここで生産された南部縮緬、南部紬の略称。明治の中頃まで盛んに生産された。

・なんぶいと [南部糸]

岩手、青森の旧称南部地方で産出した生糸で、主に琴糸や三味線糸に多用されたもの。

・なんぶさきおり [南部裂織]

織物の名称。江戸中期に、いたんだ布の再生を南部藩が奨励したことから、経糸に丈夫な麻糸、緯糸に丹念に細かく裂いて紐状にしたボロ布を用いて織ったのが始まりです。今日は経糸に木綿糸を使いカラフルなものが多い。

・にかわ[膠]

動物の皮・骨・腱などを水で煮て得た液をさらに煮つめ、干し固めたものがゼラチン。水で煮ると溶け、粘着性のある液になり、冷えると凝固する。この性質を利用し、顔料などを生地に固着させるのに使用する。

・にしき [錦

色糸を用い、文様を織り出した絹紋織物の総称。綾錦ともいい、織物の中で、豪華で美麗なものを指す。中国の秦時代に創始されたという。日本では、正倉院・法隆寺などの遺品に見られる。古くは京都で生産され、江戸時代中期以降、加賀(石川県)・越前(福井県)・丹後(京都府北部)・郡内(山梨県)・仙台(宮城県)などでも生産されている。

・にしじんおり [西陣織]

織物の名称・京都府/京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、長岡京市他
京都市中心部の北西部、西陣地域で生産される織物の総称。西陣は日本を代表する織物の産地。西陣織の名は、応仁の乱で西軍が本陣とした場所に乱の後、織職人が集まって織物をしたことに由来する。西陣で織られる織物は綴、錦、唐織、緞子、金襴、御召、紬など袋帯、名古屋帯、着尺、法衣、幕など様々です。  

・にしじんじょうだいつむぎ [西陣

織物の名称
上代紬は、京都市西陣で生産される着尺地。西陣織のひとつ。

・にじゅうおり [二重織]

二陪織物のように見える織り技法。一重織物を上下に二枚重ね合わせて同時に織り出してひとつに絡ませて織り上げたもの。

・にじゅうだいこ [二重太鼓]

帯のお太鼓結びでお太鼓の部分が二重になるように結ぶ帯結びの方法。普通のお太鼓より重厚で格調深い。主に礼装用に締める。

・にじゅうぬい [二重縫]

裁縫用語。二度縫いともいい、合せ縫いをしたものを縫い目が開かないようにさらに縫い代の端を縫い合わせることで、単衣長着の背縫いなどに用いられる。

・にじゅうまわし [二重回し]

男子の和装用外套。生地は主に毛織物が用いられる。マント風で、肩の部分が二重になっているのでこの名がある。

・にたやまぎぬ [仁田山絹]

織物の名称・群馬県仁田山桐生市
太織絹の一種。その歴史は古く、上州(群馬県)仁田山(桐生市)で製織された物で、創製は和銅(七〇八~七一四)以前と伝えられる。群馬県は絹織物の産地として古くから発達していて、西上州の日野絹や桐生の仁田山絹などの名前が知られていました。
桐生地域も大間々を中心とする周辺地域から集まる豊富な絹糸を使い、同様に江戸時代には有数の織物産地として発展していて、今日に続く長い歴史を刻んでいます。慶長5年(1600)、関が原の戦いに出陣する家康の要請で、桐生領54か村から旗絹(はたぎぬ)2410疋(ひき)を献上(けんじょう)し、それ以降幕府の保護を受け発展して行ったと伝えられています。

・にどぞめ [二度染]

染色法の一つ。同色系で二度染めて、濃淡を表すことをいう。また、深みのある色にするため、二度染めることをいう場合もある。

・にのじがすり [二の字絣]

緯糸だけに「絣糸」を使用し、二の字型を全幅50から70通しに規則的に配列した絣柄をいう。別名やね絣。

・にほんししゅう [日本刺繍]

刺繍は、針を使って糸で布地を装飾すること。古くはインドに起源を持ち、仏教の伝来とともに中国を経て、日本に伝えられた。それが日本で発達したもので、桃山時代には服飾関係に多く用いられるようになった。その技法には、平繍、相良繍、菅繍、けし繍、割繍、刺し繍などがある。

・にぶしき [二部式]

本来はひと続きのきものや帯、長襦袢を、便利のために二つに分けて仕立てたもの。帯が二部式になっているものをつけ帯という。きものや長襦袢は上半身に羽織るものと腰に巻くもの、帯は胴の部分とお太鼓の部分に分ける。

・にぶしきコート [二部式コート]

上とし下つまりツーピース式になっているコート。下(スカート)になっている部分をとると上が道行コートになる。雨コートによく見られる。

・にまいがさね [二枚重ね]

和服の着方の一つ。女性の盛装に重厚さと色彩の効果を目的として、長着を二枚重ねて着ること。明治の中ごろには、三枚重ねが流行したこともある。

・にょうぼうしょうぞく [女房装束]

平安時代に、宮中に仕えた女性の衣服。晴れの装束の十二単と日常に着る小袿(こうちぎ)がある。

・にんぎょう [人形]

男物着物又は男物襦袢の袖の袖底から袖付留までの間をいう。女物の振りに当たる部分であるが、男物は開けずに縫い合わせて仕立てる。

・にんぎょうじたて [人形仕立て]

人形の衣装の仕立て方。着物を重ねた仕立て方で、比翼仕立てのことをいう。

・ぬいあけ [縫揚げ]

和裁用語。「一つ身」「三つ身」「四つ身」などの子供用の着物の背丈、裄丈を体に合せて摘み縫いすること。単に「揚げ」ともいう。

・ぬいぐけ [縫いぐけ]

2枚の布のくけ代を内側に合わせ、折り山から1~2ミリ内側を5ミリぐらいの針目で、糸がながれないように布をすくったもの。着物の衿、褄下、羽織の衿等をくけるときに使う技法 。

・ぬいこみ[縫込み]

衣服の縫製に際して布の余りを裁切らず、縫込んでおくこと。又、縫い込んだ部分。仕立直しの時に利用できるので便利。衿先や衿付けの縫込みは、衿を整える芯の働きも兼ねる和服独特の処理をする。

・ぬいじつけ [縫い躾]

縮緬(ちりめん)など、布自体の重さのために縫い目の*きせがとれるのを防ぐため、袖口合せ、共衿のつけぎわ、袖合せ、内揚げに*ぞべ糸4~5ミリ間隔に、小針を表に出しておさえの躾をかける。これを縫い躾、またはなまって縫いびつけといい、着用時もとらない躾である。

・ぬいしぼり [縫い絞り]

絞り染の一種。布を縫い、縫い糸を引き締めて染色する方法。縫い締め絞りともいう。平縫い引き締め絞り、巻き上げ絞り、摘まみ縫い絞りなどがある。

・ぬいじめ [縫い締め]

紋染の1つ。文様の部分を縫った糸を引き締めて染める方法。文様の輪郭だけを縫い絞るものや、一定の区画を縫い締めて袋状にし、その部分にも糸を巻いて絞るもの、布を二つ折りにし、浅くつまみ縫いにして絞るものなど多数ある。

・ぬいしろ [縫代]

縫い目より外側の、外から見えない不要な部分。洋裁と異なり、切り落とさないので、解いて端ぬいすれば、もとの一反にもどるという利点がある。

・ぬいつけもん [縫い付け紋]

別の布に家紋を描いて切り取り、着物に縫い付ける紋のこと。張り付け紋、切り付け紋ともいう。

・ぬいとり [縫取り]

織物の模様を表す場合に、絵緯(えぬき)(柄を表すために、地の糸と別に織り込む緯糸のこと)を幅全体に通さずに、必要な部分だけ通して、模様を織ることをいう。一見刺繍をしたような感じの模様になる。

・ぬいとりおめし [縫取御召]

御召のなかでは比較的新しいもので、金銀糸を刺しゅうのように縫取った紋御召の一種である。地組織となる緯糸のはかに、小さい抒を用いて文様の一部をさらに加工するなど、多彩で複雑な文様が織り出されている。

・ぬいとりちりめん [縫取り縮緬]

縫取(ぬいとり)とは織物の文様の部分だけにその文様を表現する緯糸を通す紋織り技法の一種ですが、織り上りが刺繍のように見えることからこの名があります。縫取縮緬では手刺繍のように見える縫取技法ではなく、主として様々に着色した箔やそれらを巻き付けた金銀糸等を縮緬地の上に裏浮に織りこんで、後で裏切り(裏面の余分な浮糸を切り取る事)を施したものです。多丁杼の機械が使用される縮緬の場合、縫取に使用される箔は精練に耐える必要があるため、マイラーフィルムにアルミ蒸着したソフトアルミ箔に着色したものがよく用いられ、又、和紙にウルシを塗った細かい糸状ののものも使われることもあります。 主な用途として留袖や訪問着に使われます。
技術的に難しく手数がかかる非常に高価な織物。上級神職が袴に使うこともある。

・ぬいとりもん [縫取り紋]

単に縫紋ともいう。紋付の羽織、きものの紋を刺繍で縫い表すことをいう。白糸、色糸、金糸、銀糸、金銀ぼかし糸などを使用して、普通羽織またはきものの背にひとつつけることが多い。「染め抜き」紋の五つ紋(きもの)三つ紋(羽織)に対して略式である。

・ぬいはく [縫箔]

きものの装飾技法のひとつ。多彩な刺繍技法と、摺箔技法を組み合わせて、豪華絢爛に模様を表すこと。現代では、振袖や留袖の加飾に用いられる。また、桃山時代の小袖や能装束でいう縫箔は、そうした加飾を施した小袖や装束をさす名称となっている。

・ぬいめもよう [縫い目模様]

きものの縫い目に沿って、細かい模様をつけたもの。

・ぬいもん [縫い紋 繍紋]

染抜紋は正式のものだが、縫紋は略式で一ツ紋又は三ツ紋とする。陰紋が多く、縫い方は芥子縫。糸は白の他に色糸、金銀糸を使用。

・ぬきいと [緯糸]

緯糸(よこいと)と同じ、経糸(たていと)と直角に組織する糸の事。

・ぬきえもん [抜き衣紋]

きものの着方のひとつ。抜き衿、抜頸(ぬけくび)ともいう。衿のうなじ(後ろ首)にあたるところを、引き下げて着ることをいうが、江戸時代から日本髪を結うようになり、後方に張り出した髱(たぼ)などのため、自然に起こった着方である。日常に日本髪を結わなくなった現在でもその形は残り、女性のきものは衣紋を少し抜く(後ろ衿を少し下げる)着方が一般的。そのため、に着物を仕立てるときに、普通2cm程度の繰越をつける。大きく衣紋を抜く着方は、現在では花嫁衣裳や舞台衣装など、特別なものに見られるほか、普通のきものでは粋な着方である。

・ぬきえり [抜衿]

衿の後ろを背中の方へ落として着る和服の着方。古くはのけえもん、元禄頃は抜掛、その後、抜衣紋(ぬきえもん)、抜衿となった。18世紀後半から髪型により衿が汚れないように背中へずらして着るようになったもの。

・ぬきぞめ [抜染]

抜染(ばっせん)を参照。

・ぬきもん [抜き紋]

礼装に用いる、紋を染抜いて現す正式の紋。染抜き紋に同じ。白生地を染める前に紋の形をゴム糊で置いて、染色する誂え染と、染上がった生地に、後から抜き剤で紋の部分を染め抜く方法がある。 →そめぬきもん

・ぬの [布]

装束でただ「布」と言った場合は麻の布のことを指す。16世紀に木綿が伝わるまで普段使いの布の代表格が麻の布であった。貴族は絹織物を常用したが、武士や庶民は麻布を用いた。「上布(じょうふ)」と言う場合もある。

・ぬのこ [布子]

木綿の綿入れのこと。綿を多く入れた粗末な衣服のことを、昔は布子とよんだ。

・ぬめ [絖]

うすい繻子織の絹地。江戸時代に日本でも織られるようになり、小袖などに用いられた。滑らかで光沢があり、きもの地のほか、絹絵の代用にした。

・ぬれがき [濡描き(友禅)]

無線友禅の一種で、ぼかしの感じを強調して表現したもの。生地を濡らし、筆や刷毛で模様を手描染するので、滲みが生じる。色調が柔らかく、独特の味わいを生み出す。

・ぬれぬき [濡れ緯]

湿らせた緯糸のこと。濡れ緯を用いて折ることで、よくしまり、しっかりした生地質になる効果がある。例えば、能装束などの高級唐織の地の織物は、濡れ緯で織られる。

・ぬれむし [濡れ蒸し]

虫しの方法の1つ。生地を乾燥させずに蒸すので、水分が多い状態で蒸し工程が行われるため、染料の拡散移行が容易となり、有効な発色効果が得られる。扱染〈シゴキゾメ〉など、多量の糊を使うものに向く蒸し方法。

・ねこあしがすり [猫足絣]

絣柄の名。猫の足跡を文様化したもので、素朴でユーモアが感じられる模様。

・ねつけ [根付け]

たばこ入れや巾着、印籠などの、帯に挟んで腰から下げる袋物の部分名称。帯から落ちないよう紐先につける細工物で、木や象牙、翡翠など素材は多種多様。実用面に加え、装飾的な役割が強く、粋を凝らす小道具でもある。

・ねり ねる [練]

精練のこと。繊維が有する不純物を除去する処理。糸の状態で精練する事を糸練りまたは先練り、布の状態で精練することを後練りという。繊維が有する不純物には繊維自身が有する1次不純物と、紡績、撚糸、製織、などの工程で付与された薬剤や汚れ、埃等の二次不純物があるが、これ等は染色その他加工の妨げとなるのでこれらの加工に先立って精練を行う。 絹の場合絹を構成するたんぱく質フィブロインの回りを包んでいるセリシンを精練により除去する。

・ねりいと [練糸]

生糸を化学処理してニカワ質を落とした糸。白く光沢があり、ねっとりとした手触りでしなやか。通常「絹の布」と呼ばれるのがこちら。

・ねりうす [練薄]

経糸を生糸、緯糸を練糸で織った穀織。夏の下襲や狩衣などに使われる。手機でないと緻密に仕上がらない。

・ねりおりもの [練織物]

練り糸で織った先練の織物。

・ねりぎぬ [練絹]

生絹織物を精錬して、柔らかく光沢を出した絹布。後練りの絹織物。それに対し、練り織物は、経糸、緯糸ともに練り糸で織った織物。

・ねりぬき [練抜]

精練浴をして行う色抜。脱色専業工場で行う色抜きと区別して言う。精練浴を使用するため、単に脱色するだけでなく、再精練の効果も期待できる為、後の染め上がりに好結果が期待できる。

・ねりぬき [練緯]

経糸を生糸、緯糸を練糸にした平織をいう。柔らかく光沢があるので高位者の装束などに用いられた。

・ねりべり [練減り]

生糸を精練すると、セリシン(膠質)などが落ちるが、それだけに目方も減るわけで、これを練減りという。ふつう精練する前に比べて二〇バーセソトくらい減る。

・ねりべりりつ [練減率]

精錬による繊維重量の減少率。繊維の不純物の重量比が練減率とほぼ合致する。絹織物の場合は標準的に25%。25%の練減率の場合、分留り75%だから七五戻りという。1kgの生機反物を精練すると約750gの白生地になる。

・ねりめ [練目]

練り上げた後の織物の重量をいう。これに対し練り上げ前の目方を「生目」(きめ)という。羽二重・縮緬・平織などは普通「練目」で取引され、裏絹は生目で取引される。

・ネル

フランネルの略で、平織りで布の表面を毛羽立たせた、柔らかい感触の毛織物。それに似せて作った綿織物もさす。現在は足袋の裏などに綿ネルを用いる。

・ねんし [撚糸]

糸に撚り(ねじり)をかける作業、または撚った糸のこと。丹後ちりめんの場合独特の八丁撚糸機を使い、水を注ぎながら、糸を1メートルあたり3,000~4,000回の強い撚りをかけてシボのもとを作る。

撚る方向によって右撚糸、左撚糸に、撚りの回数によって甘撚糸、並撚糸、強撚糸、縮緬糸などに分けられる。

・ねんねこ [ネンネコ]

子供を背負うときに、多いかぶせて包む綿入りの袢纏をいう。銘仙が多く使われたが、今はウールやキルティングに代わり、また、洋服感じのママコートができて少なくなっている。

・のある [ノアル]

ノアルナフトール、ノアルレジュートの通称。三度黒でログウッドの中間媒染剤としてログウッドの次に引き染する染液。主成分はログウッドに酢酸、蓚酸、重クロム酸カリ、クロム明礬(みょうばん)、木酢酸鉄等の媒染剤に酸性亜硫酸ソーダ等を適量加えて加工し、ヘチマンと金属との結合を抑制し、安定化した暗青色のログウッド還元液である。これを酸化すれば黒色不溶性レーキになる。ログウッドの上に引くとブルーに変化する。

・のういしょう [能衣装・能装束]

能と囃子から成る日本独特の伝統芸能「能」の楽劇に用いる衣装とその付属品の総称。 小袖には唐織、厚板(あついた)、摺り箔、縫箔(ぬはく)、熨斗目などがある。 能楽は、室町時代に完成し、江戸時代には武士の式楽となったので、将軍をはじめ、諸大名間に流行し、その装束も華麗、気品をむねとし、現代まで、ほとんど変化なく伝承されている。また、友禅染の発生以前に完成したため、能衣装に友禅染は用いられていない。織物のほかは縫箔で模様を表現している。

・のうしゅうつむぎ [能州紬

能州紬とは能登半島、輪島市門前町にある絲藝苑という会社の創設者である上島洋山氏によって考案され創り出されたのが能州紬です。
能州紬の歴史は比較的新しく上島洋山氏が門前町の夕陽に魅せられ京都・西陣から移り住んだのが約40年ほど前です。 能登を訪れ、その自然に心を揺さぶられた上島洋山先生が、現地に移り住み、研究を重ねて考案した「海草染め(うみくさぞめ)」と「手繍い織(てすくいおり)」。「海を染め 風と織る」、独自の手法でうみだされた能州紬は、日本の故郷を思わせる逸品です。海草で下染めした絹糸を、草木染料で多くの色を表現をします。他様々な工程へて糸が出来上がります。その糸を使い一品一品「手繍い織り」で絵柄を表現します。経糸と緯糸の色の組み合わせで表現される絵柄なので織り上げるのに数ヶ月かかります。

・のげ [野毛]

金銀箔を細長く切った切箔の1種。

・のし [熨斗]

湯熨斗(ゆのし)のことで、織物に蒸気をあてて生地の風合いを柔軟にするとともに、しわを伸ばし、幅や長さをそろえる織物仕上げの作業工程のこと。

・のし [熨斗糸]

製糸の際、繭の糸口を見つけ出すためにとった糸を引き伸ばしたもの。紬糸(つむぎいと)などの材料にする。

・のしめ [熨斗目・熨斗目模様]

元来は経糸に生糸、緯に半練糸を用い、段あるいは縞を織り出した絹織物の一種の名称。これ等の織物で仕立てた小袖を熨斗目小袖、略して熨斗目という。熨斗目小袖には無地熨斗目と腰替り(腰の部分にだけ格子や段などの文様を織り出したもの)がある。室町時代頃から大紋や素襖の下に着られるようになり、江戸時代には武家男子の礼装として必ず着用された。現代では腰替りの意匠を、地質・用途などにかかわらず、熨斗目とか熨斗目模様と呼ぶこともある。   柄の付け方から名づけられた名称【熨斗目】はこちらへ

・のしめいろ [熨斗目色] 

日本の色名。あまり厳密な色名とはいえないが、ふつう鈍い青色に用いられる。熨斗目の地色が概して藍染の色であったので、そのような鈍い青色に用いられた。

・のしもよう [熨斗模様]

祝い事の贈り物に添える熨斗を、文様化したもの。さまざまな形で表現され、例えば大柄の束ね熨斗は、中に小さな模様を詰めたりして振袖などに用い、粋な暴れ熨斗は浴衣などに用いる。

・のしもん [熨斗文]

文様名 →紋様のページへ

・のぞきもん [覗紋]

紋所の表現方式で、丸や菱の輪郭の下半分に、紋がのぞいているように染抜いたもの。正式ではなく、洒落紋。

・のとじょうふ [能登上布]

織物の名称・石川県鹿島郡鹿西町、羽咋市
石川県能登地方で生産される麻の織物で,、「能登縮」「阿部屋縮」ともいいます。主に男物の白絣・紺絣が多く作られています。この地は、平安時代から麻の栽培が行われ、江戸時代には多くの麻織物が生産されました。明治31年、国鉄が開通したことにより全国的に広まるようになりましたが、戦後は麻織物の減少により生産も少なくなっています。

・のめりげた [のめり下駄]

下駄の形の一種。後ろの歯が長方体なのに対し、前歯を爪先に向かって斜めに削ったもの。千両下駄、芝翫下駄、神戸下駄とも呼ばれる。

・のりいとめ [糊糸目]

糸目糊置の材料の1つ。もち米粉・ヌカ・石灰・蘇芳〈スオウ〉を混ぜて作った糊で、水ですべて流れ落ちる。糸目とは染め上がったときに糊のあとが糸を引いたように見えるところからこう呼ばれるが、その糸目を表現するのに糊を使うこと。ゴムを使用するゴム糸目に対する言葉。

・のりいとめあげ [糊糸目揚げ]

ゴム糸目に対して、のりを用いた糸目。糊にて細い線や形を防染するのでゴムを用いた場合よりソフトな雰囲気に仕上がる。また黒染後の水元で伏糊とともにおちてしまうため、引染前に友禅をして蒸で染着させた後。糊を伏せ引染となりこれを先友禅という。

・のりおき [糊置]

本友禅染の工程の一つ。生地に描かれた下絵の線に沿って糸目糊を置いていく工程。これは挿し友禅の際、染料がにじまないように防染する働きがある。

・のりおとし [糊落し]

黒引き染め加工後の水元時に、防染糊を洗い落とすこと。糊落しの良否は染色後の手描き友禅での仕上がりを左右するので完全な水洗いが要求される。また防染剤は季節により含まれている塩分の量が異なるので、水元時には注意を要する。よくいわれる「シオの打合」というのもこの水元時に出る難の一種である。煮染(たきぞめ)で紋糊をとる作業も糊落し(紋糊落し)という。

・のりおれ [糊折れ]

生地の模様場にある糊が、過乾燥などにより折れていることで、そのままにしておくと染料がしみ込んで汚染する。また紋糊が折れていても染料が差し込み紋が汚れる。→糊割れ

・のりづけ [糊づけ]

御召の工程で欠かかせないもの。精練、染色したあと緑糸に糊をつけるわけだが、その目的は①練減りをおぎなう、②強撚をかけたとき撚りが戻るのを防ぐ、③シボ出しを効果的に行なう1などである。ふつう糊はデソプン糊、姫糊(ウルチとワラビ粉で作る)、合成糊などを使う。

・のりづつ [糊筒]

友禅染などを手描きにする場合に使用する糸目糊を入れる筒で、渋紙で作られている。大きさは色々とあり15cm~30cmくらいの大きさまである。糊筒には中金を入れて先金をつける。細くて先のとがっているのが糸目用で、友禅染などの細い線を引くのに使用する。また伏せ糊用には平金といって口が平らなものを使用する。

・のりそめ [糊染]

もち米の糊を防染剤に用いた染色技術。本友禅、中形、江戸小紋、紅型などは、防染を目的とするため糊だけを用いる。型友禅や現代風な多彩な小紋は、糊に染料を混ぜた色糊を用いて、直接染色する。

・のりながし [糊流]

直接捺染(なっせん)の一種。糯(もち)米、小麦粉、生麩(しょうふ)その他の澱粉(でんぷん)を糊につくって木箱に流し、染料を滴下して、竹の棒で縦、横あるいは渦状にかき混ぜると、染料は糊に混じって濃淡のある流線を描く。その上から布をあてて転写すると、墨流しに似た図が染められる。

・のりぬき [糊抜]

布の精練・漂白・染色の工程を容易にするため、また良好にするために生地中に存在する糊料を除去すること。糊抜き方法としては、付着している糊剤により異なるが、浸漬法・酸液浸漬法・石鹸法・醗酵法などがある。黒染においては、一般的には水槽の中に糊抜き剤を溶かし出して除去している。

・のりふせ [糊伏]

友禅染などにおいて地色を染める為に柄の部分を糊防染すること(総伏)。 ぼかしなどの技法で模様効果を表現する時ぼかしのかかる部分の柄を部分防染すること(中伏)。 摺りやぼかしとの併用で色糊で柄を伏せること(色伏)

・のりぼうせん [糊防染]

もち米の糊やゴムを用いて防染すること。糊を印捺して行う防染法のこと。防染糊を各種の捺染用型で印捺するか、または筒描き、ときには筆、刷毛などで行う。防染剤は糊層を厚く印捺するか、防染剤を併用する。防染方法には印捺部を「完全に白く残す白色防染や防染すると同時に染料で異色に染色する着色防染や半防染などがある。三度黒引き染めでは、染色時に乾燥させる回数が多いので糊割れしにくいことが一番重要である。

・のりもどし [糊戻し]

乾燥しすぎた糊に水分を与えしなやかにすること。糊伏せ加工時やその後の保管状態が悪いと糊が乾燥されすぎ、その結果、引き染めできる状態に引っ張って地入れをしたときに糊が十分に生地に固着せず生地から浮いたり糊が割れて元通りにつながらないなど故障が発生する。そのために、地入れ前に噴霧器などで糊に水分を与えて、糊を柔らかく戻してやる必要がある。特にマングルによる地入れの場合は、糊が一部生地から浮いてしまうこともある。

・のりもん [糊もん]

糊伏もんともいう。黒引き染に受注する反物で、糊で防染してあるもののこと。他にろうけつ、ダックや無地などがある。