藤唐草(ふじからくさ)



「藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし」と清少納言に言わしめた藤の花の栄華は、時代を超えて、やがて「くたびれて宿かる頃や藤の花」と芭蕉に詠まれ、大津絵の「藤娘」やこれを題材にした長唄として謡われ、江戸のわび・さび、粋のシンボルとして愛されていきます。同時に藤蔓の意匠化は衣装ばかりでなく工芸品、建築装飾としてもさかんに行われ、単独の藤紋は晩春・初夏の季節感を奏でる文様としてなくてはならない存在感を今に漂わせ続けています。この藤唐草も唐草文様と同様で、蔓のある植物は自在にフォルムが整えやすく文様化されやすいということも含んでいます。

藤唐草 ※拡大画像

この記事はアシェット婦人画報社2003/10から引用しています。