花菱(はなびし)



四本の平行線で囲まれた四辺形を基本とする文様です。直線で織に適した形なので、有職文様の織物に数多く用いられました。菱形はその角度で形の動きや表情が変わり、それぞれにわかりやすい雅な名がつけられています。普通に菱といえば横向きの平らなもので横菱といい、竪になれば竪菱です。菱の配置が間遠なら遠菱、菱が隣接して密のときは繁菱、菱の中に二重にも三重にも同じ菱を組み入れたものは入子菱といいます。花菱は唐花を菱形にした四花弁の美しい菱文です。幸菱は先合い菱ともいい、花菱の大小を取り混ぜて大きい菱を作り、やや間を置いて配置した華やかな菱文です。現代でも上品な文様として、きものや帯に多用されています。

花菱 ※拡大画像

この記事はアシェット婦人画報社2003/10から引用しています。