ことわざの歳時記

 

 
 
暑さ寒さも彼岸まで

秋の彼岸頃になれば夏の暑さも、春の彼岸頃になれば冬の寒さもおさまって、ともにしのぎやすくなる、ということわざ。暑さ寒さに苦しんできた人へのいたわり、慰めの気持ちが感じられる。

桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿

桜は枝を切ると生命力が弱まり、梅は手入れをすると見事な花実をつける。桜の枝は切らずに、梅の枝は切って手入れをするのがよい、という剪定の難しさを伝える教え。

三月平目は犬も食わぬ

産卵のために岸近くまで上がってくる春のヒラメは美味しくないから犬も食べないとのたとえ。魚は旬に食してこそ、そのありがたみもひとしおというもの。「六月の鱚(きす)は絵に描いたのでも食え」「夏の鱸(すずき)は絵にも見よ」なども旬の魚を愛でることわざ。

飛んで火に入る夏の虫

夏、虫は明るい炎に向かって飛んでくるが、その熱さで焼け死んでしまうことから、自ら進んで困難や危険にかかわること。「夏虫の火に入るごとし」ともいう。

夏座敷と鰈は縁側がよい

暑い夏は座敷よりも縁先がよく、鰈(かれい)もヒレのあたりの縁側こそが美味しい、とのたとえ。鰈は種類により旬はそれぞれ異なるが、暑い季節には真子鰈が美味。縁側で真子鰈の縁側をつまみにビールが乙。

夏炉冬扇(かろとうせん)

夏に囲炉裏、冬に扇とは、いずれも季節はずれで役に立たない。そのようなもののたとえ。夏に炉で湿を炙り、冬に扇で火をあおぐ、というように、無用と思われるものも、使い方によっては役に立つたとえに用いることもある。「冬扇夏炉」「六日の菖蒲、十日の菊」「寒に帷子、土用に布子」なども同じ。

男心と秋の空

男性の女性への愛情は秋の天候のように変わりやすいという意味。「女心と秋の空」も同じ。お互いさまということか。

柿が赤くなると医者が青くなる

柿も赤くなって食欲が戻る秋。体調もよくなって、医者にかかる人も少なくなる。医者にとっては商売上がったりの季節。

秋茄子嫁に食わすな

秋の茄子で身体を冷やすといけないから、または、種が少ないので子宝に恵まれなくなるといけないから嫁には食べさせない、あるいは、秋茄子は美味しいから嫁に食べさせるのはもったいないという意味。この「嫁」は「嫁が君」つまり鼠の意であったという節もある。

香り松茸、味しめじ

きのこなら、香りのよさでいえば松茸、味でいえばしめじが一番。物事にはそれぞれ長所がある、ということのたとえ。

紅葉に置けば紅の露

透明の露も、紅葉の上に乗ると赤く見える。環境によって見え方が変わることのたとえ。

枯れ木も山の賑わい

何もないよりは枯れ木でもあったほうが山も賑わう。役に立たなくても、また地味なものでも、ないよりはあったほうがいいことを意味し、謙遜して述べる際に用いる。「枯れ木も森の賑わい」「枯れ木も山の飾り」ともいう。

歳寒の松柏

松や柏などの常緑樹は、寒い季節でもその緑の色を変えることなくある。どのような状況でも、信念を貫き通すことのたとえ。「松柏の操」ともいう。

柳の枝に雪折れなし

柳の枝は丈夫で雪が積もっても折れることがない。弱々しく見えても柔軟なものは堅強なものよりよく耐えることのたとえ。

 
 
 
 

この記事は自由国民社「現代用語の基礎知識」別冊より引用しています