細川緞子(ほそかわどんす)



名物裂の中で「細川」の名を冠した金襴、緞子が数種あるが、その中で鈍すとして三種あるうちの一つである。浅黄地に綾杉折入菱地紋内に卍があり、木瓜の内に雨龍を織り出したものである。 この名称の細川は所伝によれば、岸和田城主の細川幽斉、三斉とは別人の細川紹幸を指すものであるが、紹幸については分明ではないがおそらく徳川初期の茶人であろうといわれる。 この緞子は、藤種緞子と同じ組織の同種品であるが、組織の程度から見て、藤種緞子が明時代中期のものであるから、これより若干時代が新しく、明時代末期の製作と思われる。わが国には延宝、天和の頃に渡来したものと伝えられている。非常に古格を示しており、茶入れの袋としては実に格好な渋みと佗びをもつ織物である。

細川緞子 ※拡大画像