飛雲鳥獣文緞子(ひうんちょうじゅうもんどんす)


この緞子は、巾11センチ長15センチ余りの面積の中に実に雑多な、しかも怪奇的な零鳥、霊獣、霊雲が織り出されている。即ち麒麟、獅子、虎、天馬、殻の五獣と四鳥との間に天綴する10個の飛雲を表している。この雲は古瑞を鳥獣類も悉く瑞相であって、古代より中国人の愛用する意匠である。わが国には、他の名物裂とともに、足利末期か桃山時代に渡来した明代の作であると思う。 この古瑞鳥獣文は殆んど日本人の常識的な智識の中にないものが多く、むしろ怪奇的に見えるものである。古代裂に属するものであって、名物裂の中には編入されていないにしても、名物裂に劣らない稀品であると思われるので、敢て収録した。

飛雲鳥獣文緞子 ※拡大画像