織部緞子(おりべどんす)


数多い名物裂中、所有者の名をつけた裂である、即ちこの緞子は古田織部正重然が愛用した裂であった。藍地に一面に変化のある波文様を出し、波にただよう中に梅花を浮かべているが、梅花にも大小の差異をつけ、更に、その水面は梅花の重さで、小波の立たない状態をよく写している。図案と写実の美しい調和を形成していて、これほど絵画的要素を移した作品は少ない。 この水面に浮かぶ梅花文様を見ていると「白氏文集」にある「白片落梅花浮澗水」の一句が浮かぶ。茶道における三傑の一人として、漢学に造詣の深かった織部は、湖水をスケールの大きい大河に求め、その構図を明国に注文し、この裂を織製されたとも想像される。

織部緞子 ※拡大画像