無地の着物の紋の周囲に輪を描いたような変色があります。

 

この事例は抜き紋を行う際に使用した抜染剤の水洗い不足と考えられます。紋を抜く前に、紋洗いといって染色工程での汚れを取り除き、紋を白くさせる目的で、酸性亜硫酸ソーダ、亜鉛末および酢酸などを混ぜた三品改良液などの抜染剤を使用します。三品改良液は、塗布した後、蒸熱による還元作用で抜染し、その後よく水洗いします。しかし、水洗いが不十分な場合は、抜染剤が生地上に残留し、水とともに移動した抜 染剤は紋から少し離れたところにきわづいた形で残り、これ変色の原因です。
 そのほか、紋洗いに関連し、紋の周辺だけが元の地色で、それ以外の地色が変色している事例を見かけることがありますが、この現象は、浸染などの水洗い不足によることが多く、生地上に残留したアルカリ成分が、紋洗いした部分だけ除去され、それ以外の部分で、経時的に変色したものです。