金襴は、金箔糸(平金糸)を用いて文様を織り出したものの総称でもあり、特に文様だけでなく、地を金箔糸で埋め尽くしているものを金地金襴といいます。中国では「織金」といわれてる。また、銀箔糸を用いたものは銀襴となる。 繻子(しゆす)・綾などの地に、緯(よこ)糸に金糸を織り込んで紋様を表した豪華な織物をいう。室町時代に中国から伝来、江戸時代には日本でも織った。金襴は、豪華さ、華麗さをもつ織物で、名物裂のなかでも最も尊ばれ、茶人や武家の盛んに用いられた。袈裟(けさ)・能装束・袋物など伝統工芸の場でよく用いられる。
緞子は先染同色の経(たて)糸と緯(ぬき)糸を用い、地組織は繻子、文様は地の裏組織をもって表出させた絹織物のこと。多くは地組織は五枚繻子ものである。中国で宋の代末期には織り出されていたとされています。日本には明代に伝わったようです。日本に伝わった緞子は名物裂(めいぶつきれ)と呼ばれ、珍重されました。日本では堺や西陣で中国緞子をまねて織られますが、やがて日本独自の技術を持った物も多く生まれます。 緞子は、段子、純子などの当て字が用いられている。金襴とは対称的に渋く、深い美しさと手触りのよい織物で、名物裂のなかで金襴についでよく用いられている裂といえる。 また、名物裂緞子のうち、白極緞子、正法寺緞子、本能寺緞子、宗薫緞子、下妻緞子の五種を「五種緞子」と呼んでいる。
縞、格子縞、横縞、または縞の一部に浮織のあるものなどの特色のある織物を間道といいます。特に茶道での名物裂の縞物を称することが多い。名物裂の縞織物はほとんどが絹織物であるところから、中国からの舶載によると思われる。間道という名の由来は定かではないが、一説には広東を中心に作られたことからこの名があるといわれている。
間道は、広東、漢東、漢島、漢渡などの当て字が用いられています。
錦とは二色以上の色糸で文様を織り出した裂をいう。錦には、経糸で文様と地を織り出した経錦と、緯糸で文様と地を織り出した緯錦(ぬきにしき)がある。わが国でも飛鳥時代から奈良時代にかけて、盛んに織り出されていた。ただし、名物裂の中に見られる錦は国産のものではなく、舶載のものです。
錦は、金襴とは少し趣の異なる、重厚な美しさをもつ織物です。ただ、裂地が厚く、茶入の袋などには適さないので、挽家の袋などに用いられることが多い。
風通は、表と裏、あるいは地と文様とが別々に組織されている二重織のものです。経糸二色を重ね。緯糸も同じ二色を用いて織り出されています。その際に同色同士の経緯を組織していくことから、表と裏で異なる色の織物になります。その二色の色変わりの間にできる袋状の空隙に風を通すとみることから、この名になったとされています。また、風通はそれぞれの文様が明確に現れ、独特の地合をもっている絹織物であるという点もすぐれた特徴といえるでしょう。
紹巴は、柔軟で手触りのよい織物で、細かい横の杉綾状、あるいは山形状の組織地文をもち、通常、経糸・緯糸ともに強い撚りのかかった糸を用いて織り成したものですが、中には異なるものもあります。
紹巴は、蜀紦、紹紦、諸紹、焦芭、祥波等の当て字が用いられ、呼び方も「しょっぱ」「じょっぱ」などともいわれます。
モールは、莫臥児、毛織などの当て字が用いられており、金襴とは少し異なる感じの織物になります。この織物は、ムガール帝国時代に織り成されたものとペルシャのものとが南蛮貿易に余って舶載されたものといえます。絹糸を芯にした細い金線を巻きつけた金モール糸を用いたものを金モール、同じく銀を用いたものを銀モールと呼んでいます。