娘の嫁入り用に喪服を作ったところ、私の喪服に比べて黒が濃い用に見えます

 

現在の喪服では、黒の色がより濃く見える加工(深色加工)した製品が増えています。ご質問の喪服もこの加工がされているものと思われます。
一般に物体は当たった光の反射量が多いほど白く見え、逆に少ない場合は黒く見えます。したがって、反射光量を少なくすれば(反射率を下げれば)染色物の色を黒く(濃く)見せることができます。
染色物は濡れると色が濃く見えますが、染色物の表面に低屈折率の被膜を作ると、これと同様の現象となり、黒染品では〝カラスの濡れ羽色〟ということになります。
実際加工したものと未加工のものでは、色の濃さという点ではっきりと差が認められます。この深色加工に対し業界では賛否両論あります。
消費者サイドに立った取り扱い注意点などを記載した文章がなく、知らないために発生する事故が増加しているのも事実です。

そこで、深色加工のメリットとデメリットを記載します。メリットはその黒色の深さ(濃さ)といってよく、この加工の最大の特徴といえるでしょう。
デメリットとしては、
①被膜によって反射率を下げるため、深色加工前の記事に不純物がある場合には、深色加工用樹脂の付着量が変わり、その部分にムラが生じやすくなります。
②深色加工を施した着物にシミが付いたからといって、水や溶剤(ベンジンなど)で処理すると、被膜に影響を与え、色が変化して見えます。(この場合専門家に任せます)
③深色加工に使用されているシリコン系樹脂は撥水性を有し、従来の方法では、紋上絵が入りにくい状態になります(最近では浸透剤の使用によって紋上絵を行っています)。
④シリコン系樹脂を多用すると。経と緯の糸の間の摩擦抵抗が低下し(滑りやすくなり)、経糸がずれる、いわゆるスリップ(目寄れ)現象が生じやすくなります。